【PR】ブックシェルフ/フロア型を試聴
Polk Audio「Signature Elite」を聴く。風通しの良い低音は、この価格帯で貴重だ
ES15はサラウンド用のES10を除けばシリーズで最もコンパクトなモデルで、ウーファーは13cm口径。ラックやローボードに載せても邪魔にならず、ナチュラル志向のデザインが周囲に溶け込む。
本機と最も相性の良い音源はヴォーカルだ。声のイメージが自然なサイズで浮かび、ピアノやベースが勢いよく動いても発音は明瞭さを失わない。モンハイトとブーブレが歌う「I Wont’t Dance」は左右に分かれて歌い交わす様子を立体的に再現し、二人の微妙な距離感が歌詞の中身に説得力をもたらす。
ピアノやオーケストラもそうだが、音圧が控えめでも低音不足を感じさせないのが不思議だ。小さめのスピーカーが無理して低音を強調するような鳴り方にはならないのだが、サックスやトロンボーンの低音は音が痩せず、良い意味で小型スピーカーらしくない太さや重量感も引き出す力がある。中低域の密度の高さがチェロや男性ヴォーカルに潤いをもたらすのも長所の一つだ。
■「ES20」では低音の支えが厚くなる
16.5cm口径のウーファーを積むES20はキャビネット容積にも余裕が生まれ、ES15に比べて重心が一段階低く感じる。低音の支えが厚くなると旋律楽器が伸びやかに歌い始めることがあるが、このスピーカーの聴きどころはまさにそこにある。
ツィンマーマンとヘルムヒェンが演奏したベートーヴェンのソナタ「春」を聴くと、手前に定位するヴァイオリンとスピーカー後方に展開するピアノの距離感を正確に再現しつつ、演奏では見事な一体感を作り出し、両者に交互に現れる旋律の受け渡しが実にスムーズだ。ピアノは一番低い音域まで混濁がなく、弦と楽器のフレームが共鳴する澄んだ響きが広がる。
Signature Eliteでは、キャビネットの共振を抑えるリファインが功を奏しており、バランスは低重心でも低音の動きが鈍くなることはない。ビッグバンドのベースとドラム、オーケストラのティンパニなど、低音楽器が刻むリズムが重くならないのはES15と共通の美点だ。
■ベースのリアリティがランクアップする「ES50」
低音楽器が繰り出す空気の押し出し感を味わいたいなら、フロアスタンディング型の3モデルから候補を選ぶといいだろう。2つの13cmウーファーを積むES50は小型ブックシェルフスピーカーと比べられるほどスリムだが、ベースのリアリティは確実にランクが上がり、太く重いE線やA線のピチカートは振れ幅の大きい振動が耳を心地よく刺激する。
ベースとヴォーカルが力強く交錯するムジカ・ヌーダの演奏はベースが鈍ると面白さが半減してしまうのだが、ES50はベースとヴォーカルどちらも緊張が緩まず、アグレッシブなテンポが停滞しない。
バスレフポートの風切り音が目立ちやすい曲もあえて聴いてみたが、このスピーカーでは耳障りなノイズは確認できなかった。「パワーポート」は実質的な開口面積が広がる効果があり、いわゆるポートノイズが発生しにくいのだ。オーケストラの大太鼓も余分な尾を引かず、楽器本来の音色を聴き取ることができた。