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Polk Audio「Signature Elite」を聴く。風通しの良い低音は、この価格帯で貴重だ
■オーケストラでもエネルギー感を感じる「ES55」
ES55は同じツインウーファーでも口径が16.5cmに拡大し、空気の絶対量はES50よりもさらに一段階大きくなる。編成の大きな弦楽器と管楽器に加えて強力な打楽器群が活躍するオーケストラ曲をこのスピーカーで聴くと、音圧が最大に上がったときでも全体の響きが混濁しにくく、これまで聴いた3機種と比べても同時に鳴っている楽器の種類を特定しやすくなった。
弱音とフォルテシモのダイナミックレンジが大きいエラス=カサド指揮パリ管弦楽団の《春の祭典》を聴けば、その長所がはっきりわかる。第2部のクライマックスでは弦楽器群が打楽器のように力強くリズムを刻んでも金管楽器のアタックは鋭い音色を保ち、両者の対比が鮮やかに浮かび上がる。
近現代の管弦楽曲を少し大きめの音量で聴いてみたが、ES55で鳴らすオーケストラはスケール感、エネルギー感どちらも広めのリビングルームまでカバーするぐらいの余裕がある。外見から想像する以上に鳴りっぷりの良いスピーカーだ。
■「ES60」は“クラスが一つ上かと思えるほど”のクオリティ
シリーズ最上位のES60は3つの16.5cmウーファーをカスケード接続で駆動したり、磁気回路を見直すなど、シリーズの他の製品よりもハイファイ志向の強い設計アプローチが目を引く。
実際の再生音もこのモデルだけクラスが一つ上かと思えるほど質感が向上し、ディテール描写や音場の見通しも改善。ES55に比べて3割ほど高価格だが、設置スペースと予算に余裕があるなら、積極的に選びたくなるスピーカーだ。
ロックやジャズからクラシックまでジャンルを選ばず忠実度の高いサウンドが楽しめる。ヴァイオリンソナタはピアノの透明感が向上して旋律の動きが鮮明になるだけでなく、伴奏にまわって分散和音を奏でるヴァイオリンのアーティキュレーションまで克明に聴き取れる。この価格帯でそこまで演奏の表情を伝えるスピーカーは珍しい。
ジェーン・モンハイトのヴォーカルはホーン楽器とリズム楽器のアタックが精密に揃うことで音圧が上がり、アンプの音量をそれほど上げなくても十分な音圧感が得られる。ムジカ・ヌーダのベースは付帯音が乗らず、一音一音の動きが敏捷で、ヴォーカルの発音やブレスが生々しく感じられた。
大編成の管弦楽では弱音と強奏の間のダイナミックレンジが広がり、スケール感がひとまわり大きくなったように聴こえる。量感が向上するだけでなく、楽器ごとの音色の違いや特殊奏法がもたらす効果など、他の楽器に埋もれがちな情報まで正確に引き出していることに感心させられた。
5つのスピーカーをじっくり聴くと、それぞれサイズに応じて用途が異なり、情報量やスケール感にも違いがあることがわかる。
だが、Signature Eliteシリーズを全体としてとらえると、各製品の音調がとても良く揃っている。
特に、動きが重くならず風通しの良い低音は共通の長所であり、この価格帯では貴重な資質だと思う。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)