PRデノンのサウンドマスターも評論家宅に来訪して聴いた
デノン「900シリーズ」は“作り手の感性の高さ”が見えるエントリー機だ。高級スピーカーに負けない素性の良さに感動
■セッティング時間はたった2時間……。それでも見えてくる“素性の良さ”
いよいよ山内さん達が来る日が訪れた。しかし、なんということか手違いもあり、僕の手元にDCD-900NEとPMA-900HNEが届いたのは当日の午前中だった。
山内さん達が家に来る時間までわずか2時間ほどしかない。だけど、こうなったら2台の能力を信じてやるしかない。と自分を奮い立たせる。まずは2台をクワドラスパイアのラックに設置した。シャンパンゴールドのいかにもオーディオ機器然としたデザインで、ラックとの視覚的な相性も悪くない。
昨今ではコンパクトなシャーシのオーディオ機器は、スペースファクターの優位性もあり人気がある。だがフルサイズシャーシは、僕のような古くからオーディオをやっている人間からすると安心感があるし、音質的な優位点も大きい。
例えば、CDプレーヤーのDCD-900NEはフルサイズボディを活かしており、場所を取るメカ部と回路部を、余裕を持って設置できる。また、前モデルのDCD-800NEよりも奥行きが大きく伸びており、パーツや基板配置にさらに余裕ができた。PMA-900HNEのような純粋なAB級のアナログアンプは電源部のスペースが必要だし、HEOSやD/Aコンバーターを搭載するから、デジタル回路とアナログ回路の距離に余裕が取れるのだ。
ケーブル類は音のクセのない製品を投入した。スピーカーケーブルはカナレ「4S8」 、2台を結ぶRCAラインケーブルは、オーディオクエストのエントリーモデル「アルファスネーク」を使う。接続をしていて嬉しかったのは、どちらも金メッキ端子が当然のように付いていたこと。また端子類は余裕のある間隔で配置されており、もっと大型のRCAプラグがついたケーブルも使用できるので、ケーブルをグレードアップする楽しみも残されている。
組み合わせたスピーカーは、パラダイム「ペルソナB」とした。なんと、ペア180万円(税込)である。
実は、当初はペア55,000円程度の安価なブックシェルフスピーカーとの組み合わせを想定していた。しかし数枚のリファレンスCDを再生したところ、PMA-900HNEの駆動力や空間表現力が高く、さらにDCD-900NEの音質が間違いなくクラス以上に感じたのが理由だ。また、山内さんに聞いたのだが、2台の開発時にはB&Wの大型フロア型スピーカー「802 D3」を使用していたとのこと。
組み合わせる機材も決まり、2時間という短い時間の中、スピーカーセッティングとルームチューニングを実施。ソースとアンプを一気に入れ替えると低域の量が変わってくるから、背面からスピーカーまでの距離を変えて、さらに定在波の変化にも対応するため、試聴位置を前後にずらした。
また、音場の広さとセンター定位するボーカルの口元の大きさに合わせて、スピーカー左右の広さと内ぶり角度、さらに左右の一時反射のオーディオボードの前後も調整した。最後はレーザー墨出し機を使って0.5mm単位で左右のスピーカーの設置位置を合わせる。
セッティング中に1つ気が付いたのだが、PMA-900HNEとDCD-900NEはシャーシ性能も価格以上に感じた。クワドラスパイアラックのガラス板は美しいけど、機器によっては若干音に響きが乗りディテールがぼやける時がある。
そのような時はソルボセインかαゲルのインシュレーターを挟んでいたのだが、両機は上位モデルにも使用されている高密度かつ高剛性なリブ入りフットを装着しているせいもあるだろう、これらのインシュレーターを使う必要を感じない。シャーシと足回りもしっかりと対策されていることに嬉しくなる。