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PRデノンのサウンドマスターも評論家宅に来訪して聴いた

デノン「900シリーズ」は“作り手の感性の高さ”が見えるエントリー機だ。高級スピーカーに負けない素性の良さに感動

公開日 2022/10/29 07:30 土方 久明
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作り手の感性の高さを実感させるサウンド。そして山内氏のリアクションは……

セッティングも終了し、いざ試聴開始。土方氏も心なしか緊張した面持ちだ

さて、セッティングが一段落した。「やるだけやった」と脱力したが、山内さん達が来るまでに殆ど時間がない。気持ちを入れ替え、まずはCD再生から、ジョン・ウィリアムズ 「ライヴ・イン・ウィーン」のディスクをトレイに乗せて再生ボタンを押す。

サウンドキャラクターは解像感と音楽性のバランスが良い音。2台の価格は安価だが、先述したとおり聴感上のS/Nも良く分解能も高い。ヴァイオリンなどの弦楽器には適度な色彩もあり、サウンドステージの広さや奥行き表現も合格点。

もちろん、価格が大幅に上がる、ハイエンドのソース機器やアンプなどの様に圧倒的に壮大な音ではないが、作り手の感性の高さを実感させる音で、「本当に上手に作っているな」と感心する。この状態でDCD-900NEのピュアダイレクトモードとPMA-900HNEのソースダイレクトを有効化すると、中高域の透明感が上がり、全帯域の分解能と明瞭度が上がる。

次に、iPadのHEOSアプリを立ち上げ、アデルのアルバム「30」より『To Be Loved』(44.1kHz/24bit)を再生する。僕の自宅2Fのシステムはシステム前段のネットワークの品質にかなり拘っていることもあるが、HEOSによるネットワーク再生の音はさらに良質に感じた。

総合的な出音は事前の予想以上で、「アンプ内蔵のネットワーク再生機能でこの音が出るのか? 安すぎないか?」と感じるほどだ。ノイズフロアが低く、イントロのピアノには色彩感があり、ピアノタッチの質感も良好。曲中盤に低域楽器が出てきて盛り上がるが、価格を感じさせないアンプの駆動力により、低域の制動力もしっかりとしている。

「よし、これなら行けるかも」とDCD-900NEとPMA-900HNEを頼もしく感じた数分後に、家の呼び出し音が鳴った。山内さんと田中さんが来たのだ。最初にシステムの概要を説明し、山内さんに試聴のソファーに座ってもらい、改めてアデルを再生した。先ほど聞いた時と同じノイズフロアの低い透明感のあるピアノ、続いて聞こえるボーカルはスピーカーセッティングの効果もあり、リアルな口元のまま、しっかりと前へ飛び出してくる。

山内さんの表情をずっと横から伺っていたが、かなり真剣に聴いている。その後、低域の表現力と制動力を聴いてもらうべく、ジャミロクワイのアルバム 「Automaton」から『シェイク・イット・オン』(96kHz/24bit)を再生して僕のデモは終わった。

すると、なんと山内さんは自分の音決めに使うリファレンスCDをDCD-900NEのトレイに乗せて、女性ボーカルからクラシックまで次々と楽曲を再生していく。普段聴く音源だとさらに良く分かるようで、「この楽曲は厳しいな」とか「このくらい鳴っていれば良いですね」と、気が付いた点を指摘していく。やはりシビアだ。

普段はデノン試聴室のリファレンス機器での試聴が主なこともあってか、山内氏も終始楽しそうな様子だった

最終的には「普段は自分のシステムでしか聴かないのでかなり新鮮です。ネットワーク再生の音の良さが印象的」と山内さんは話してくれた。正直、かなり嬉しかった。



DCD-900NEとPMA-900HNEの音を決めた山内さんが自宅にくるという、またとない機会となった。印象的だったのは、両モデルとも価格のネガを殆ど感じないコストパフォーマンスの高さを持っていたことだ。

そして両機種の仕様から読み解けるのは、オーディオ、電源回路が前モデルよりフルモデルチェンジされ、今までであれば搭載されなかった上位モデルのパーツも投入された、エントリークラスとは思えない力の入ったモデルであるということ。

DCD-900NEの安定したCD再生も魅力だったし、PMA-900HNEはアンプとしての駆動力や音の表現力はこの価格帯では頭1つ抜けているようにも感じた。また、HEOSを搭載した事で、Amazon Music HDのハイレゾソースを単体で楽しむこともできるのは大きなメリットだ。そして2台を組み合わせれば、最良のコストパフォーマンスで新旧ソースを楽しむこともできる。

円安や世界情勢の影響もありオーディオ機器の価格が上がっている昨今だが、このような基本性能が高いモデルを安価な価格で出してくれたことは高く評価したい。組み合わせたスピーカーが大幅に価格の高いモデルだったにもかかわらず、それに負けずかなりの音を出せた事は両モデルの性能の高さを証明できたとも言える。本当に頼もしい2台だった。

もう少し時間があれば音の飛び出しやフォーカスなどを上げられたとも思うが、山内さんのサウンドポリシーである「Vivid & Spacious」を僕は出す事ができたのか、今度お会いした時に改めて聞いてみたいと思う。


(協力:D&Mホールディングス)

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