【特別企画】人気のレッドシリーズにKT150モデルが登場!
スッキリ抜けのよい現代的な表現。TRIODEの真空管アンプ「TRV-A150XR」の魅力
ひと目でTRIODEと分かるトライオードレッドを纏った真空管アンプ「TRVシリーズ」に、新たなモデルが加わった。傍熱ビーム出力管「KT-150」をシングルで用いたプリメインアンプ「TRV-A150XR」、そのサウンドを探ってみよう。
TRIODEのメインストリームは赤い筐体のプリメインアンプ「TRVシリーズ」と言ってよいだろう。3極管代表として300Bシングルの「TRV-A300XR」、KT88プッシュプルの「TRV-88XR」が現行のラインナップだったが、そこに大型5極管KT150採用の新製品「TRV-A150XR」が加わった。
本機は初段とドライバー段に12AU7×2本と12AX7×1本が採用され、出力段のKT150はシングルのウルトラリニア(UL)接続が採用されている。大型管であることに加え効率の良い方式のため、シングルで18W+18Wという大出力を発揮、周波数特性も特に高域62kHzまでよく伸び、S/Nも90dBというからソリッドステートと遜色ない。
入力はフォノ(MM)1系統、LINE3系統。いずれもRCAで金メッキ削り出しの良質な端子が使われている。スピーカー端子は1系統で大ぶりの金メッキ削り出し、4〜8Ω対応と記されている。例によってキャビネットはどこを叩いてもコチコチでほとんど鳴かず、ボリュームもセレクターもノブは上質の削り出し、脚も同様だ。ACはIECインレットで、付属ケーブルはやや細身だがしっかりした丸型断面のものである。
まずCDから聴いたが、オケは力強く輝かしく、弦は分厚く濃厚な艶を乗せてスッキリ抜けが良いのが素晴らしい。低弦は大変な量感だが膨らまず混濁せず、このあたりはさすが現代真空管アンプだけのことはある。魅力的な音だ。
リートは声に厚みと温かみが乗り、伴奏ピアノは若干の奥ゆかしさを伴いつつ、艶やかで芸術的な表現を聴かせる。常々「真空管アンプはヴォーカルをエコヒイキする」と述べているが、まさにそういう質感の表現である。
ジャズはどっしりと構えたドラムスが繰り出す強力なリズムにベースとキーボードが気持ち良く乗っていくさまが見えてくる。ソリッドステートの表現とは一風違うが、これも21世紀の表現と大いに納得するものだ。
フュージョンは吹っ飛ばされそうなパワーへさらに力こぶが加わり、さほど音量を上げなくとも大変な大迫力を楽しむことができる。このコクと力こそ真空管の旨味だよなぁ、と思わず独り言ちた。
ポップスは複雑な重層的音場の分解力よりも、音楽の厚みとヴォーカルへ魂が籠る。もっとメジャーな楽曲なら積極的にこちらを選びたくなる状況が生まれよう。
フォノイコライザーが内蔵されているので、レコードも聴いてみた。MM専用だからカートリッジは中電のMG-3675を起用する。まずS/Nは合格、クラシックはやはり豪快で艶やかなオーケストラを描き出し、アナログならでは、真空管ならではの持ち味を濃厚に聴かせる。このフォノ入力が「とりあえずつけておきました」という代物とは一線を画すということが、再生音からひしひしと伝わってくる。ちょっといい昇圧トランスを加え、一度MCも試してみたいものである。
ジャズはカルテットのそれぞれが艶やかで実体感にあふれ、パンチのある演奏を繰り広げる。「あぁ、俺はこういう音でこのレコードを聴きたかったんだよ」と、長年追い求めていた存在と出会ったような、そんな不思議な気持ちで試聴することとなった。プリメインの内蔵フォノイコでそんな感慨に耽るとは思わなかったが、それはスピーカー出力まで含めたトータルのサウンドによるものであろう。
ポップスはドラムスが量感豊かだがボンヤリした質感にならず、むしろ肉太でパワフルな演奏に痺れる。ヴォーカルはガンガン伸び、吐息の温かみがシャウトに乗って、惹き込まれるような爆音を楽しむことができた。これも迂闊に聴くと惚れてしまいそうな表現である。
TRIODEには、KT150を採用したモデルにプッシュプル方式の「MUSASHI」もラインナップしている。以前に聴いた印象で比較すると、MUSASHIとは音の傾向が少し違うように感じられた。圧倒的な厚みと迫力で音楽をグイグイ豪快に描き出すMUSASHIに対し、本機はもう少ししなやかで一陣の風が吹き去ったような爽やかさを感じさせる。
本機の高域方向への抜けの良さは格別なものがあるが、こういうポイントは概してシンプルなシングル構成の方が有利なところもある。ともあれ、現代設計の大型管による大出力シングルアンプの登場を大いに喜びたい。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です。
「KT150」をシングルで採用、18W×2の大出力を実現する
TRIODEのメインストリームは赤い筐体のプリメインアンプ「TRVシリーズ」と言ってよいだろう。3極管代表として300Bシングルの「TRV-A300XR」、KT88プッシュプルの「TRV-88XR」が現行のラインナップだったが、そこに大型5極管KT150採用の新製品「TRV-A150XR」が加わった。
本機は初段とドライバー段に12AU7×2本と12AX7×1本が採用され、出力段のKT150はシングルのウルトラリニア(UL)接続が採用されている。大型管であることに加え効率の良い方式のため、シングルで18W+18Wという大出力を発揮、周波数特性も特に高域62kHzまでよく伸び、S/Nも90dBというからソリッドステートと遜色ない。
入力はフォノ(MM)1系統、LINE3系統。いずれもRCAで金メッキ削り出しの良質な端子が使われている。スピーカー端子は1系統で大ぶりの金メッキ削り出し、4〜8Ω対応と記されている。例によってキャビネットはどこを叩いてもコチコチでほとんど鳴かず、ボリュームもセレクターもノブは上質の削り出し、脚も同様だ。ACはIECインレットで、付属ケーブルはやや細身だがしっかりした丸型断面のものである。
スッキリ抜けがよく、現代的な音作りを聴かせる
まずCDから聴いたが、オケは力強く輝かしく、弦は分厚く濃厚な艶を乗せてスッキリ抜けが良いのが素晴らしい。低弦は大変な量感だが膨らまず混濁せず、このあたりはさすが現代真空管アンプだけのことはある。魅力的な音だ。
リートは声に厚みと温かみが乗り、伴奏ピアノは若干の奥ゆかしさを伴いつつ、艶やかで芸術的な表現を聴かせる。常々「真空管アンプはヴォーカルをエコヒイキする」と述べているが、まさにそういう質感の表現である。
ジャズはどっしりと構えたドラムスが繰り出す強力なリズムにベースとキーボードが気持ち良く乗っていくさまが見えてくる。ソリッドステートの表現とは一風違うが、これも21世紀の表現と大いに納得するものだ。
フュージョンは吹っ飛ばされそうなパワーへさらに力こぶが加わり、さほど音量を上げなくとも大変な大迫力を楽しむことができる。このコクと力こそ真空管の旨味だよなぁ、と思わず独り言ちた。
ポップスは複雑な重層的音場の分解力よりも、音楽の厚みとヴォーカルへ魂が籠る。もっとメジャーな楽曲なら積極的にこちらを選びたくなる状況が生まれよう。
MMフォノも内蔵。濃厚な表現力で艶やかなオケを演出する
フォノイコライザーが内蔵されているので、レコードも聴いてみた。MM専用だからカートリッジは中電のMG-3675を起用する。まずS/Nは合格、クラシックはやはり豪快で艶やかなオーケストラを描き出し、アナログならでは、真空管ならではの持ち味を濃厚に聴かせる。このフォノ入力が「とりあえずつけておきました」という代物とは一線を画すということが、再生音からひしひしと伝わってくる。ちょっといい昇圧トランスを加え、一度MCも試してみたいものである。
ジャズはカルテットのそれぞれが艶やかで実体感にあふれ、パンチのある演奏を繰り広げる。「あぁ、俺はこういう音でこのレコードを聴きたかったんだよ」と、長年追い求めていた存在と出会ったような、そんな不思議な気持ちで試聴することとなった。プリメインの内蔵フォノイコでそんな感慨に耽るとは思わなかったが、それはスピーカー出力まで含めたトータルのサウンドによるものであろう。
ポップスはドラムスが量感豊かだがボンヤリした質感にならず、むしろ肉太でパワフルな演奏に痺れる。ヴォーカルはガンガン伸び、吐息の温かみがシャウトに乗って、惹き込まれるような爆音を楽しむことができた。これも迂闊に聴くと惚れてしまいそうな表現である。
同じKT150を使った「MUSASHI」との違いは?
TRIODEには、KT150を採用したモデルにプッシュプル方式の「MUSASHI」もラインナップしている。以前に聴いた印象で比較すると、MUSASHIとは音の傾向が少し違うように感じられた。圧倒的な厚みと迫力で音楽をグイグイ豪快に描き出すMUSASHIに対し、本機はもう少ししなやかで一陣の風が吹き去ったような爽やかさを感じさせる。
本機の高域方向への抜けの良さは格別なものがあるが、こういうポイントは概してシンプルなシングル構成の方が有利なところもある。ともあれ、現代設計の大型管による大出力シングルアンプの登場を大いに喜びたい。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です。