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PR当時を知る開発スタッフの貴重な証言も

歴代CDプレーヤー名機を聴き比べ!マランツ「SACD 30n」「CD-34」「SA-1」一斉レビュー

公開日 2024/05/28 06:30 大橋伸太郎
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若い世代の読者のためにCD誕生の経緯をかんたんに紹介しよう。フィリップス考案の音楽専用デジタルディスクにソニーが賛同し、エラー訂正等の技術で開発に参加、1982年にコンパクトディスク(CD)として商品化された。記念すべき初号機として、ソニー「CDP-101」と、フィリップスと親子関係にあった民生機メーカー・マランツから「CD-63」が同年10月に発売された。今回試聴する「CD-34」の発売はその2年後、1985年のことだ。澤田氏は語る。

マランツ 澤田氏

「CDは急坂をかけあがる普及期にありました。当時の親会社のフィリップスからは『それなのにソニーに比べ同じオリジネーターのフィリップス・マランツは日本ではシェアが低い、もっと伸ばせ』ということになり、それには戦略価格が必要と、フィリップスと交渉してヨーロッパ向けの『CD-104』を、中身は一緒のまま59,800円で発売したのが『CD-34』です。

『CD-104』は10万円の高級プレーヤーなのでシャーシはダイカスト、当時160万円した業務用機『LHH2000』と同じ『CDM-1メカ』を搭載しています。当時、フィリップス以外はすべて3ビームでリニアトラックメカでした。3ビームは前後のビームでトラックの道を読みながら、真ん中のビームが音楽信号を読み取ります。

一方、『CDM-1メカ』は1ビームですべての仕事をしてトーンアームのようにバランスをとったスウィングアームでトラッキングを行います。リニアトラックに比べサーボの量が少なくてすむ合理的な設計でした。ぜいたくにも最初はツァイス、その後になるとローゼンストックのガラスレンズを搭載していました。

他と違う2番目がDACです。CD規格の量子化数は16ビットですが、フィリップスは同社製14ビットDAC『TDA1540』に『SAA7030』という4倍オーバーサンプリング、2次ノイズシェービング機能を持ったデジタルフィルターを組み合わせて所定の分解能を得るやり方でした。NECを除いて当時どのメーカーもオーバーサンプリングやノイズシェービングをやっていません。

さらにアナログフィルターは他社の9次や11次などに比べ緩やかなスロープの3次という先進的なスペック。『CD-34』は59,800円という価格が信じられないくらい音がよいと評判になり、月産最大7,000台、総計10万台に迫る大ヒット作になり日本でのCD普及に貢献しました」

「CD-34」音質レビュー:「CDのありのままの音がある」



目の前にある「CD-34」はコンパクトだが、実際には7kgの重量があり、抱えてみるとずっしり重い。ロープライス機の手応えではない。

「再生できますか?」(筆者 ※大橋氏)

「もちろんです。」(澤田氏)

「CD-34」発売1年後の1986年、CDは生産枚数でレコードを抜き音楽ソフトの主流となる。40年前のゲームチェンジャーの音を聴いてみよう。

CD-34を試聴

40年前に初めてCDを聴いた時の蒸留水のような静寂から音が立ち上がった衝撃が生々しい既視感として甦ってきた。CDのダイナミックレンジを存分に発揮した骨太でくっきりした実在感を感じさせる。

その後CDはアナログの質感に近づけるための技術を積み重ねしなやか、なめらかになっていくが、「CD-34」にはCDのありのままの音がある。

初心にして原器。しかし決して荒い音ではない。

ノイズシェービングの効果はあらたかで、爽快感さえ感じさせる清々しい再生音である。サルヴァントの「メリュジーヌ」は、歌とピアノの位置関係、響きの成分が美しく再現されその点現在のCDプレーヤーに遜色ない。

マランツのSACD初号機「SA-1」。開発の裏側には苦心の数々が……



2番目に登場したのは、マランツのSACD初号機「SA-1」である。澤田氏は愉快そうに回想する。

次ページ「SA-1」音質レビュー:「音場が広々と大きく、硬さが消え肉付き豊かな音楽をきかせる」

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