PR当時を知る開発スタッフの貴重な証言も
歴代CDプレーヤー名機を聴き比べ!マランツ「SACD 30n」「CD-34」「SA-1」一斉レビュー
「CD-34」に比べ音場が広々と大きく、硬さが消え肉付き豊かな音楽をきかせる。メリュジーヌ(CD)は、ボーカルが聴き手に息がかかるような近さ、音場の奥行き感、立体感。音楽の背景に澄み渡った静けさが広がる。
SACDはCDに比べ飛躍的に大きな情報量を持つ。シーネ・エイのジャズ(SACDハイブリッド)は、ビッグバンドの多彩な楽器定位がレンズフォーカスを追い込んだように正確さを増し、S/Nの伸長で、楽音にノイズがまとわりつかず清澄、すっきりと見通しがいい。
八代亜紀(CD)は「CD-34」比で分解能に大きな進展。バンドの楽器が塊にならず、身長162cmの八代の立ち姿がバックの演奏からくっきり浮き上がるリアリズムがある。
ティーレマンのブルックナー第七交響曲(SACDハイブリッド)は、分解能とS/Nで大きく進展したが、SACDの広帯域、高解像度をもってしても弦楽合奏のざわつくような高調波歪みの残存に未だ途上と感じさせる。
「SACD 30n」音質レビュー:現役フラグシップ機は「解像度、S/Nとも向上」
3機種目は現在のマランツを代表するSACD最上位機種、「SACD 30n」。内容から外装まですべて一新した21世紀のディスクプレーヤーである。
最大の注目点に自社製の新開発メカ「SACDM-3L」を搭載。SACD/CDそれぞれの専用機に匹敵する再生能力をそなえ、DVD-ROMディスクに記録したハイレゾファイルも再生する。オリジナルのディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」を、後段のアナログステージに看板技術のディスクリート回路「HDAM/HDAM-SA3」を採用した。
外装デザインも大きな話題となった。デザインを担当したディーアンドホールディングスの鈴木丈二氏は、「螺旋」をモチーフに「ここから音楽が発生しているというイメージと音の広がりをビジュアライズしました」と説明。
また、「ストリーミングで簡単に音楽が手に入るようになり、良い音で聴くというのはひとつの贅沢になる。その贅沢を担う部分がマランツブランドの提供する製品で、それにふさわしいたたずまいを考えました」と語っている。新世代デザインはその後の同社アンプ、プレーヤー共通の顔になる。
ブルックナー第7交響曲は、クロック、デジタルフィルターの進歩と後段のアナログ回路の高品位化で解像度、S/Nとも向上。高調波歪の抑圧の進展はあきらかで、CDの課題であり続けた弦楽合奏や金管の歪みが減ったことに感無量。
八代亜紀の声のハスキーな地肌の再現にハイレゾ時代のディスクプレーヤーの描写の冴えをみせる。サルヴァントは、ピアノの打鍵のスピードとうねるような響きの広がりに心捉われる。滾々と沸き上がるようなボーカルのクレシェンドにCD最前線とオーディオのいまがある。
マランツの特徴は「伝統の上に立った革新」。オーディオファイルの信頼を裏切らない
「CD-34」、「SA-1」、「SACD 30n」。マランツのCD(SACD)3機種を聴いたが、3台の間に数十倍する数のマランツCD(SACD)プレーヤーが存在する。筆者が愛用した「CD-95」は「CD-34」と「SA-1」の中間(1988年発売)のプレーヤーだ。
ここまで聴いてきて、マランツはこれからもディスクプレーヤーを作り続けると確信した。
世界中にオーディオメーカーは数多いがマランツの他にない特徴は、伝統の上に立った革新だ。自社の培ってきたもの(技術、着想)を大切にしそれに立脚して次を創造する姿勢である。
それは、アンプやプレーヤーのアイコニックなデザインからも窺える。オーディオがフロー(現在の技術、製品)とストック(過去の所産、文化の蓄積)がバランスして成り立っている世界である以上、当然のことであり、それは世界中のオーディオファイルの明日の信頼を裏切らないことにつながる。
マランツの次なる一章に期待大である。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)