8K/4K放送までのショート・アンド・ワインディング・ロード
また次世代の4K放送を巡っては、2014年にも欧米で4K放送が開始される可能性を指摘。さらに韓国では、2012年10月に地上波で4K放送の実験が行われたほか、「2014年や2018年のスポーツイベントに合わせた4K放送の実現に向け作業を進めている情報がある」とも報告では付け加えた。海外での動きが活発化していることから、乗り遅れて主導権を握られることがないよう、日本の動きを加速させる必要があると判断したと考えられる。
もちろん、気持ちだけでスケジュールを前倒しすることはできない。技術的な裏付けが必要となるが、その進歩が予想以上に早く進んでいることも、今回の決定を後押しした。映像圧縮技術では、H.265という新たな圧縮技術が、標準規格として今年1月に国際電気通信連合で承認された。H.265は現在のH.264の後継規格で、通称「HEVC」(High Efficiency Video Coding)と呼ばれている。H.264/MPEG-4 AVCに比べて半分程度のビットレートで同等の画質を実現できることが特徴で、4Kなどのほか、携帯電話などでの利用も見込まれている。実際の4K放送などにも、このHEVCが使われることが予想される。
今後のスケジュールは、大きなスポーツイベントの開催にあわせて目標を設定していくのが基本的な考え方だ。歴史的に、大規模スポーツイベントにあわせてテレビの新規格が導入され、ビッグイベントを新規格で見たいというユーザーが需要を牽引してきた。4Kや8Kでもその伝統を踏襲する。
具体的な8K/4K放送のロードマップとしては、2014年のブラジル・ワールドカップでは関心を持つユーザーが4Kを体験できる環境を、2016年には関心を持つユーザーが8Kを体験できる環境を、それぞれ整備することを目安として提示。さらに2020年のオリンピックの時点では、8Kと4Kをともに視聴できるテレビの普及を図ることを、時期的な目標として取り組んでいく。報告では表現が曖昧な部分もあるが、素直に解釈すると、4K放送が試験的に行われるのが来年、そして8K放送の試験放送が行われるのが3年後という目標設定となる。
なお、伝送にはCSやCATV、IPTVなどを活用する計画だ。ただし衛星で今後新たな空き周波数が確保されるなど、既存の視聴者に影響を与えない範囲で新サービスを導入できる環境が整った場合は、別途検討するとしている。
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