公開日 2010/06/10 11:16
これまでのPCで得られなかった高音質体験を − オンキヨー“E7シリーズ”の高音質スピーカー技術に迫る
新製品スペシャルインタビュー
オンキヨーは今年の夏、スリムな筐体に独自開発の新スピーカーを搭載したオールインワンタイプのデスクトップPC“E7シリーズ”を発売する。「音の良い、マルチエンタテインメント対応のPCが欲しい」というユーザーの要望に応えるべく、“音質に徹底してこだわり抜いた”というオンキヨーが、本機に搭載した超スリム&高音質なスピーカーを誕生させるまでの開発秘話を、オンキヨー(株)開発センター センター長の小野祐司氏にインタビューした。
− 本機に搭載されたスピーカーには、小野さんを中心にどのような方々が開発に関わって来られたのでしょうか。
小野氏:私はオンキヨーの開発センターに所属しております。開発センターのスピーカー部門がスピーカーの要素技術開発を担当しており、スピーカーの振動板に使う材質や形状、磁気回路の開発などを行っています。これまでHiFiスピーカーのシリーズでは「D-302E」「D-312E」や「D-TK10」といったモデルの開発にも関わってきました。開発センターでは従来のスピーカーから、新しい付加価値をもった製品をつくるための要素技術を日々研究しています。今回の薄型スピーカーユニットも、厚み10mmというターゲットを決めて開発をスタートさせました。
通常、PC製品の開発期間というものは、企画がスタートしてから製品になるまで数ヶ月しかないことが多く、オーディオ・ビジュアル製品と比べても圧倒的に時間が短いのが一般的です。そのため、短い製品開発の期間内で、スピーカーについては既存のユニットから「すぐに採用できるもの」を選んで搭載していくことになり、元々は他の製品に搭載するために開発されたユニットを流用することが多くありました。
“E7シリーズ”の開発がスタートしたのは、今から約8ヶ月ほど前でした。その頃ちょうど時期を同じくして、開発センターでは薄型スピーカーユニットの開発に取り組んでいました。元々このユニットは、壁掛け対応の薄型スピーカーやサウンドバー、薄型テレビへの組み込み用途など、様々な展開を想定したユニットとして開発していましたが、やがて「高品質サウンドのオールインワンPCをつくりたい」という、当社のPCカンパニーのニーズと合致して、E7シリーズに組み込まれることになりました。これまでのPCと比べて製品の開発期間が長めだったこともあり、スピーカーユニットも比較的じっくり開発して来られたと思います。
− この超薄型のスピーカーユニットは、今後オンキヨーのPC以外の製品にも展開されていく可能性があるということでしょうか。
小野氏:それは十分に考えられると思います。ホームシアターやHiFiオーディオにも、薄型であることのメリットを活かした、オンキヨーらしい製品を開発していく上で重要なユニットが完成したと考えています。
− ユニットの形状をスリム化していく時点でのご苦労から聞かせてください。
小野氏:薄型化を狙うと、一般的には低域が出づらくなりますので、そこを本機の場合はどうやって克服するかが最初の大きなポイントになりました。本機ではユニットの形状を「細く・長く」することで、通常のスピーカーに搭載されている円形の10cmウーファー振動板と同等の面積を持ちながら、約10mmという極薄なユニットを完成させました。
ユニットだけで低域のパワーを克服できても、今度はPCの筐体に組み込んでみた時にまた音質評価が変わりますので、そこから次の段階の音質チューニングを繰り返しました。低域の豊かさ、ヌケ感をうまく表現するために、筐体を背面開放構造にしました。開発当初は密閉型も検討したのですが、残念ながら密閉にしてしまうと音がこもって広がらず、ユニットの良さが活かされないことがわかりました。バスレフ構造も検討しましたが、やはり背面開放の方が良い特性を得られたため、現在の形状で方向性を決定しました。背面から出た音は、ユニット後部に配置したメッシュ状のネットを通って、PC本体の背面から放出されます。音をPCの接地面や背後の壁に反射させ、前方に回り込ませることで音の広がり感を高める効果も狙っています。
− 振動板の素材に発泡材を使用した点も本機のユニークな部分ではないでしょうか。
小野氏:そうですね。今回の薄型オールインワンPCのコンセプトを実現するためには、軽量で厚みのある振動板が求められました。そこで私たちはポリプロピレンを素材とした発泡材料に着目しました。一般的にポリプロピレンを振動板に使うことはよくありますが、発泡させたものを使う事例はなかなかないと思います。振動板の形状に成型していくにあたっては、リブを深く入れないと剛性が保てないということがわかっていましたので、軽くて剛性があり、しかも成型しやすいという特長も発泡材を選んだ理由です。発泡素材を独自に成型したことで、剛性が高まり、クセの少ない振動板に仕上がったと自負しています。
− オンキヨーのスピーカーが特徴とする「Vラインエッジ」の技術は、本機にどんなかたちで活かされていますか。
小野氏:「Vラインエッジ」は、ユニットのエッジに一般的なロール型ではなく、V型のエッジ形状を持たせることにより、振動板の十分な振幅を確保し、不要なノイズを低減させるという技術です。本機に搭載した細長い形状のユニットでは、長径部分のエッジだけにVライン処理を施すことで、不要な分割共振を防いでいる点が特徴です。短径にもVライン処理を施してしまうと、不要な共振を発生してしまいますので、短径ではユニットのエッジを固定だけしています。この構造を新たに特許出願しています。Vラインエッジを採用することでエッジ幅そのものを狭くできるので、振動板の面積が拡大できるメリットもあります。
− ユニットを完成させてから、PCの筐体に組み込む段階ではどんなご苦労がありましたか。
小野氏:本機のユニットは、始めからE7シリーズへの組み込みを想定していましたので、既存のユニットを流用して組み込む場合よりも、音質評価は比較的スムーズに行うことができました。今回のモデルではユニット自体の性能を損なわないため、PC本体のキャビネットの強度や形状、補強の検証にも力を入れて、共鳴が発生しないようになど色々と気を配りました。
− 本機の音質決定はどのように進められていったのでしょうか。
小野氏:当社には“音質責任者”がおり、オンキヨーすべての音質について、責任を持っております。そのため、その者がOKしない限り、当社では製品としてリリースできませんので、音質合格を貰うには様々な葛藤があります。前機種のオールインワンモデルは、筐体にかなり苦労しまして、音質責任者の評価をなかなかパスできずかなり音質チューニングに時間が掛かりました。今回のE7シリーズでは、前回の反省もあり筐体をしっかりと強固につくってきたこともあり、1回目から非常に素直な音を再生することに成功し、音質決定はとてもスムーズでした。
− 音質評価にはどのくらいの時間がかかりましたか。
小野氏:およそ2ヶ月ほどです。ユニットを組み込んでからすぐに音を聴いて、技術試作から量産というステップでものづくりを進めていくのですが、その間に材料を変更したり、改良を加えたりということもよくあります。進化することもありながら、ときによっては悪くなってしまうということもあります。そのことを踏まえたうえで、いくつものカット・アンド・トライを繰り返しながら、2ヶ月ぐらいはかかったと思います。
− 音づくりはどのようなユーザーをターゲットにしましたか。
小野氏:当初はパーソナルユースも視野に入れていたのですが、当社でユーザー調査を重ねていったところ、OSにWindows XPを搭載したPCを使っているユーザーがまだ結構いらっしゃることがわかりました。去年から今年にかけて、マイクロソフトの「Windows 7」、インテルの「Core iシリーズ」という、Windows PCをめぐる大きなトピックスがありましたので、E7シリーズではWindows 7のPCへ買い換えを検討している方や、Core iシリーズを使ってみたいという方のニーズを想定しました。そこで製品の位置づけとしても、家庭のメインPCとしてファーストユースで使えるスペックを備えた“プレミアム・モデル”として、本機をラインナップに加えることになりました。
一方でリビングに大型のテレビとホームシアターを持っていて、でも書斎や個室にセカンドテレビの役割も担える上質なPCが欲しいという、セカンドユースのユーザーニーズもカバーできるモデルにもなっていると思います。こうした使い方では、主に30代から40代前後の“大人のユーザー”も楽しんで使っていただけると考えています。エンタテインメントマシンとしての性能を完備するPCとしては、大人の方がメインユーザーになりますので、本機では外観にもこだわって、上質なカラーリングとシンプルなデザインに仕上げました。男女問わず、幅広い大人のユーザーが使っていただけるようなモデルを意識しています。
音づくりはとことん突き詰めましたが、マニアの方だけでなく、音楽や映画をライトなスタイルで楽しみたいという方にも、オンキヨー製品の“良い音”を実感していただけるサウンドに仕上がっていると思います。当社としては「きちんと、良い音が楽しめるPC」をコンセプトに、独自のスピーカーを開発して、他のオールインワンPCと違った個性をアピールしたいと考えています。オーディオ製品では、これまでにいくつものヒットモデルを開発してきたオンキヨーだけに、「原音追求」も本機では大事なテーマでした。ユニット振幅の応答性能がひじょうに高いので、小音量でもたわまず、正確な音を再現できる点も本機が搭載するスピーカーの特徴であると言えます。仕事が終わって、夜にご自宅で音楽や映画を、ゆっくりと楽しみたいという方にも満足いただける製品だと自負しています。
− 本機はDTS Premium SuiteTMの技術を初めて採用したPCとなりましたが、開発の初期段階から本技術を採用する計画はあったのでしょうか。
小野氏:E7シリーズのアイデアが生まれた当初から、DTS Premium SuiteTMの技術を搭載することは決まっていました。DTSとはホームシアター製品でとても長い間、友好なパートナーシップを築いております。例えばDTS-HD Master AudioTMを世界で初めて搭載したのは、オンキヨーのAVセンターでした。このように元々深いつながりがありながら、3年ほど前からDTSがPC用のオーディオソリューションパッケージを出されると聞いて、すぐにオンキヨーとしてこれを搭載した製品をつくってみたいと、決定しました。
− E7シリーズのスピーカーと、DTS Premium SuiteTMの各機能との相性はいかがですか。
小野氏:音楽や映画など、コンテンツの楽しみ方はユーザーそれぞれに異なるものですが、基本スペックとして最高のものをつくり、ユーザーに提供したいという考え方はDTSとオンキヨーで完全に合致しました。同時に既存のPCにはなかったエンターテインメントの世界をつくることも互いの目標にありましたので、「それならば一緒にやった方がインパクトがあるのでは」ということで、今回DTS Premium SuiteTMを初めて当社の製品に搭載させていただく運びとなりました。
DTS Premium SuiteTMはユーザーに新しいPCエンターテインメントを提供することを目的とした技術です。一方で当社のスピーカーはどんなソースも最高のサウンドで出力するために開発されおり、原音に忠実な再生を理念につくっています。どのような音響解析やバーチャル再生にも、ベストのサウンドを提供できるスピーカーに仕上がっています。
これまでにない上質なサウンド体験をひとつ例に挙げてみたいと思います。スピーカーユニットをご覧いただくと、一般的に横長の振動板は周波数特性が暴れる傾向にありますが、本機が搭載する振動板では突起を持った扁平楕円形状を立体成型して、その上で両端を固定することで振動板の真ん中を揺らす構造にしています。この工夫によって、“人の声”の響きが最も明瞭に再現できる150Hz〜250Hzの特性における乱れを改善した点も特徴です。従来のオールインワンPCでは味わうことのできなかった、上質なホームシアターサウンドが楽しんでいただけるものと思います。
− E7シリーズの上手な使いこなし方について、ご紹介下さい。
小野氏:特に「オーディオ的にこう楽しまなければならない」という決まりはありませんので、ユーザーの方々がそれぞれ自由な使い方で高品質サウンドPCを楽しんでもらいたいと考えています。敢えて、オススメしたい使い方としては、スピーカーユニットの背面が開放型の形状になっていますので、後ろの壁が近い環境に設置すれば、低音がより明瞭でパワフルに楽しめると思います。スタンドは角度が変えられるので、反射角を変えることで背圧も変えられますので、好みの音にアレンジいただけます。ローボードやデスクトップに設置する際にも、壁際に近い方が反射音の効果が得られますので、音の包囲感がさらに広がり、映画をご覧になる際には良い効果を得られることもあるかと思います。
本体背面のスタンド部分は開き具合を自由に調節できますので、最薄時の奥行きが183mmと、ノートPCよりもコンパクトなスペースで設置ができます。シンプルで落ち着いたデザインなので置き場のアレンジも自在に楽しんでいただけるのではないでしょうか。そのほかにもテレビはデジタル3波チューナーをダブルで搭載していますし、BD再生・録画も楽しめます。23型ワイドながらディスプレイはフルHDの高解像度なのも魅力ではないでしょうか。テレビ録画もできますので、HDDレコーダーとしても活躍します。
◆ONKYO DIRECTモデル「DE713」はBTOにて選択可能
オーディオ的には光デジタル音声出力やサブウーファー出力も設けているので、シアターシステムとの拡張性も高いと思います。スライド式のiPodドックも搭載していますが、PCの電源を入れていない状態でもiPodの充電や再生が行えますので、「PCを立ち上げるのは面倒だけど、気軽に音楽をいい音で楽しみたい」という方のライフスタイルにも最適だと思います。
− ありがとうございました。
【オンキヨーの製品に関する問い合わせ先】
ONKYO DIRECT
TEL/0570-001900
− 本機に搭載されたスピーカーには、小野さんを中心にどのような方々が開発に関わって来られたのでしょうか。
小野氏:私はオンキヨーの開発センターに所属しております。開発センターのスピーカー部門がスピーカーの要素技術開発を担当しており、スピーカーの振動板に使う材質や形状、磁気回路の開発などを行っています。これまでHiFiスピーカーのシリーズでは「D-302E」「D-312E」や「D-TK10」といったモデルの開発にも関わってきました。開発センターでは従来のスピーカーから、新しい付加価値をもった製品をつくるための要素技術を日々研究しています。今回の薄型スピーカーユニットも、厚み10mmというターゲットを決めて開発をスタートさせました。
通常、PC製品の開発期間というものは、企画がスタートしてから製品になるまで数ヶ月しかないことが多く、オーディオ・ビジュアル製品と比べても圧倒的に時間が短いのが一般的です。そのため、短い製品開発の期間内で、スピーカーについては既存のユニットから「すぐに採用できるもの」を選んで搭載していくことになり、元々は他の製品に搭載するために開発されたユニットを流用することが多くありました。
“E7シリーズ”の開発がスタートしたのは、今から約8ヶ月ほど前でした。その頃ちょうど時期を同じくして、開発センターでは薄型スピーカーユニットの開発に取り組んでいました。元々このユニットは、壁掛け対応の薄型スピーカーやサウンドバー、薄型テレビへの組み込み用途など、様々な展開を想定したユニットとして開発していましたが、やがて「高品質サウンドのオールインワンPCをつくりたい」という、当社のPCカンパニーのニーズと合致して、E7シリーズに組み込まれることになりました。これまでのPCと比べて製品の開発期間が長めだったこともあり、スピーカーユニットも比較的じっくり開発して来られたと思います。
− この超薄型のスピーカーユニットは、今後オンキヨーのPC以外の製品にも展開されていく可能性があるということでしょうか。
小野氏:それは十分に考えられると思います。ホームシアターやHiFiオーディオにも、薄型であることのメリットを活かした、オンキヨーらしい製品を開発していく上で重要なユニットが完成したと考えています。
− ユニットの形状をスリム化していく時点でのご苦労から聞かせてください。
小野氏:薄型化を狙うと、一般的には低域が出づらくなりますので、そこを本機の場合はどうやって克服するかが最初の大きなポイントになりました。本機ではユニットの形状を「細く・長く」することで、通常のスピーカーに搭載されている円形の10cmウーファー振動板と同等の面積を持ちながら、約10mmという極薄なユニットを完成させました。
ユニットだけで低域のパワーを克服できても、今度はPCの筐体に組み込んでみた時にまた音質評価が変わりますので、そこから次の段階の音質チューニングを繰り返しました。低域の豊かさ、ヌケ感をうまく表現するために、筐体を背面開放構造にしました。開発当初は密閉型も検討したのですが、残念ながら密閉にしてしまうと音がこもって広がらず、ユニットの良さが活かされないことがわかりました。バスレフ構造も検討しましたが、やはり背面開放の方が良い特性を得られたため、現在の形状で方向性を決定しました。背面から出た音は、ユニット後部に配置したメッシュ状のネットを通って、PC本体の背面から放出されます。音をPCの接地面や背後の壁に反射させ、前方に回り込ませることで音の広がり感を高める効果も狙っています。
− 振動板の素材に発泡材を使用した点も本機のユニークな部分ではないでしょうか。
小野氏:そうですね。今回の薄型オールインワンPCのコンセプトを実現するためには、軽量で厚みのある振動板が求められました。そこで私たちはポリプロピレンを素材とした発泡材料に着目しました。一般的にポリプロピレンを振動板に使うことはよくありますが、発泡させたものを使う事例はなかなかないと思います。振動板の形状に成型していくにあたっては、リブを深く入れないと剛性が保てないということがわかっていましたので、軽くて剛性があり、しかも成型しやすいという特長も発泡材を選んだ理由です。発泡素材を独自に成型したことで、剛性が高まり、クセの少ない振動板に仕上がったと自負しています。
− オンキヨーのスピーカーが特徴とする「Vラインエッジ」の技術は、本機にどんなかたちで活かされていますか。
小野氏:「Vラインエッジ」は、ユニットのエッジに一般的なロール型ではなく、V型のエッジ形状を持たせることにより、振動板の十分な振幅を確保し、不要なノイズを低減させるという技術です。本機に搭載した細長い形状のユニットでは、長径部分のエッジだけにVライン処理を施すことで、不要な分割共振を防いでいる点が特徴です。短径にもVライン処理を施してしまうと、不要な共振を発生してしまいますので、短径ではユニットのエッジを固定だけしています。この構造を新たに特許出願しています。Vラインエッジを採用することでエッジ幅そのものを狭くできるので、振動板の面積が拡大できるメリットもあります。
− ユニットを完成させてから、PCの筐体に組み込む段階ではどんなご苦労がありましたか。
小野氏:本機のユニットは、始めからE7シリーズへの組み込みを想定していましたので、既存のユニットを流用して組み込む場合よりも、音質評価は比較的スムーズに行うことができました。今回のモデルではユニット自体の性能を損なわないため、PC本体のキャビネットの強度や形状、補強の検証にも力を入れて、共鳴が発生しないようになど色々と気を配りました。
− 本機の音質決定はどのように進められていったのでしょうか。
小野氏:当社には“音質責任者”がおり、オンキヨーすべての音質について、責任を持っております。そのため、その者がOKしない限り、当社では製品としてリリースできませんので、音質合格を貰うには様々な葛藤があります。前機種のオールインワンモデルは、筐体にかなり苦労しまして、音質責任者の評価をなかなかパスできずかなり音質チューニングに時間が掛かりました。今回のE7シリーズでは、前回の反省もあり筐体をしっかりと強固につくってきたこともあり、1回目から非常に素直な音を再生することに成功し、音質決定はとてもスムーズでした。
− 音質評価にはどのくらいの時間がかかりましたか。
小野氏:およそ2ヶ月ほどです。ユニットを組み込んでからすぐに音を聴いて、技術試作から量産というステップでものづくりを進めていくのですが、その間に材料を変更したり、改良を加えたりということもよくあります。進化することもありながら、ときによっては悪くなってしまうということもあります。そのことを踏まえたうえで、いくつものカット・アンド・トライを繰り返しながら、2ヶ月ぐらいはかかったと思います。
− 音づくりはどのようなユーザーをターゲットにしましたか。
小野氏:当初はパーソナルユースも視野に入れていたのですが、当社でユーザー調査を重ねていったところ、OSにWindows XPを搭載したPCを使っているユーザーがまだ結構いらっしゃることがわかりました。去年から今年にかけて、マイクロソフトの「Windows 7」、インテルの「Core iシリーズ」という、Windows PCをめぐる大きなトピックスがありましたので、E7シリーズではWindows 7のPCへ買い換えを検討している方や、Core iシリーズを使ってみたいという方のニーズを想定しました。そこで製品の位置づけとしても、家庭のメインPCとしてファーストユースで使えるスペックを備えた“プレミアム・モデル”として、本機をラインナップに加えることになりました。
一方でリビングに大型のテレビとホームシアターを持っていて、でも書斎や個室にセカンドテレビの役割も担える上質なPCが欲しいという、セカンドユースのユーザーニーズもカバーできるモデルにもなっていると思います。こうした使い方では、主に30代から40代前後の“大人のユーザー”も楽しんで使っていただけると考えています。エンタテインメントマシンとしての性能を完備するPCとしては、大人の方がメインユーザーになりますので、本機では外観にもこだわって、上質なカラーリングとシンプルなデザインに仕上げました。男女問わず、幅広い大人のユーザーが使っていただけるようなモデルを意識しています。
音づくりはとことん突き詰めましたが、マニアの方だけでなく、音楽や映画をライトなスタイルで楽しみたいという方にも、オンキヨー製品の“良い音”を実感していただけるサウンドに仕上がっていると思います。当社としては「きちんと、良い音が楽しめるPC」をコンセプトに、独自のスピーカーを開発して、他のオールインワンPCと違った個性をアピールしたいと考えています。オーディオ製品では、これまでにいくつものヒットモデルを開発してきたオンキヨーだけに、「原音追求」も本機では大事なテーマでした。ユニット振幅の応答性能がひじょうに高いので、小音量でもたわまず、正確な音を再現できる点も本機が搭載するスピーカーの特徴であると言えます。仕事が終わって、夜にご自宅で音楽や映画を、ゆっくりと楽しみたいという方にも満足いただける製品だと自負しています。
− 本機はDTS Premium SuiteTMの技術を初めて採用したPCとなりましたが、開発の初期段階から本技術を採用する計画はあったのでしょうか。
小野氏:E7シリーズのアイデアが生まれた当初から、DTS Premium SuiteTMの技術を搭載することは決まっていました。DTSとはホームシアター製品でとても長い間、友好なパートナーシップを築いております。例えばDTS-HD Master AudioTMを世界で初めて搭載したのは、オンキヨーのAVセンターでした。このように元々深いつながりがありながら、3年ほど前からDTSがPC用のオーディオソリューションパッケージを出されると聞いて、すぐにオンキヨーとしてこれを搭載した製品をつくってみたいと、決定しました。
− E7シリーズのスピーカーと、DTS Premium SuiteTMの各機能との相性はいかがですか。
小野氏:音楽や映画など、コンテンツの楽しみ方はユーザーそれぞれに異なるものですが、基本スペックとして最高のものをつくり、ユーザーに提供したいという考え方はDTSとオンキヨーで完全に合致しました。同時に既存のPCにはなかったエンターテインメントの世界をつくることも互いの目標にありましたので、「それならば一緒にやった方がインパクトがあるのでは」ということで、今回DTS Premium SuiteTMを初めて当社の製品に搭載させていただく運びとなりました。
DTS Premium SuiteTMはユーザーに新しいPCエンターテインメントを提供することを目的とした技術です。一方で当社のスピーカーはどんなソースも最高のサウンドで出力するために開発されおり、原音に忠実な再生を理念につくっています。どのような音響解析やバーチャル再生にも、ベストのサウンドを提供できるスピーカーに仕上がっています。
これまでにない上質なサウンド体験をひとつ例に挙げてみたいと思います。スピーカーユニットをご覧いただくと、一般的に横長の振動板は周波数特性が暴れる傾向にありますが、本機が搭載する振動板では突起を持った扁平楕円形状を立体成型して、その上で両端を固定することで振動板の真ん中を揺らす構造にしています。この工夫によって、“人の声”の響きが最も明瞭に再現できる150Hz〜250Hzの特性における乱れを改善した点も特徴です。従来のオールインワンPCでは味わうことのできなかった、上質なホームシアターサウンドが楽しんでいただけるものと思います。
− E7シリーズの上手な使いこなし方について、ご紹介下さい。
小野氏:特に「オーディオ的にこう楽しまなければならない」という決まりはありませんので、ユーザーの方々がそれぞれ自由な使い方で高品質サウンドPCを楽しんでもらいたいと考えています。敢えて、オススメしたい使い方としては、スピーカーユニットの背面が開放型の形状になっていますので、後ろの壁が近い環境に設置すれば、低音がより明瞭でパワフルに楽しめると思います。スタンドは角度が変えられるので、反射角を変えることで背圧も変えられますので、好みの音にアレンジいただけます。ローボードやデスクトップに設置する際にも、壁際に近い方が反射音の効果が得られますので、音の包囲感がさらに広がり、映画をご覧になる際には良い効果を得られることもあるかと思います。
本体背面のスタンド部分は開き具合を自由に調節できますので、最薄時の奥行きが183mmと、ノートPCよりもコンパクトなスペースで設置ができます。シンプルで落ち着いたデザインなので置き場のアレンジも自在に楽しんでいただけるのではないでしょうか。そのほかにもテレビはデジタル3波チューナーをダブルで搭載していますし、BD再生・録画も楽しめます。23型ワイドながらディスプレイはフルHDの高解像度なのも魅力ではないでしょうか。テレビ録画もできますので、HDDレコーダーとしても活躍します。
◆ONKYO DIRECTモデル「DE713」はBTOにて選択可能
オーディオ的には光デジタル音声出力やサブウーファー出力も設けているので、シアターシステムとの拡張性も高いと思います。スライド式のiPodドックも搭載していますが、PCの電源を入れていない状態でもiPodの充電や再生が行えますので、「PCを立ち上げるのは面倒だけど、気軽に音楽をいい音で楽しみたい」という方のライフスタイルにも最適だと思います。
− ありがとうございました。
【オンキヨーの製品に関する問い合わせ先】
ONKYO DIRECT
TEL/0570-001900
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