公開日 2012/03/23 09:37
JiLL-Decoy association特別インタビュー − DSDが“音の合間にあるもの”を伝える「Lovely e.p.」
ジャズやファンク、R&Bをベースにしたハイクオリティな楽曲と、高い演奏/歌唱力で人気と注目を集めている3ピースバンド、“ジルデコ”ことJiLL-Decoy association。今年2012年は、結成10周年というアニバーサリーイヤー。それを記念して、JiLL-Decoy associationの頭文字(J/D/A)を取り、Jazz/Dance/Acousticをコンセプトにしたアルバム3作が連続リリースされる。
第1弾アルバムは、「Acoustic」がコンセプトの「Lovely」(4月11日発売)。楽器本来の響きを活かした音を目指し、過度なアレンジや音楽スタイルを排除。さらに、全てのプレイヤーがひとつの空間で同時に音を出すスタジオライブ録音にて収録している。
また、e-onkyo musicにて、CD版とは違うマスターを用いた特別な“direct mix ver.”を収めた「Lovely e.p.」の先行配信を実施しているのにも注目だ。こちらは演奏のライブ感やスタジオの空気感がよりダイレクトにリスナーに伝わるよう、メンバーの演奏をアナログ・ミキサーでリアルタイムに調整、EQやエフェクターを一切省いたかたちで、そのままDSD録音したもの。配信がスタートしてすぐトップチャートにランクインしており、いまハイレゾファンから最も熱い視線を浴びている一作となっている。
今回、JiLL-Decoy associationのボーカル・chihiRoさん、ギターのkubotaさん、ドラム担当でリーダーのtowadaさんにお話をうかがうことができた。
■“ライブの良さ”が伝わるアルバムを作りたい
−− 10周年記念アルバムの第1弾である本作は、CDで発売されるアルバム「Lovely」と、DSDと96kHz/24bitで先行配信されるミニアルバム「Lovely e.p.」が用意されていますね。CD版と配信版では、マスターも異なるものを使用しています。 “direct mix ver.”を先行配信することになったきっかけはどんなものだったのですか?
towadaさん:いろいろなきっかけがあるのですが…僕は昔からレコードの音が好きで。MP3もいいんだけど、何かもっと他の選択肢がないかなと考えていたときに、e-onkyo musicがCD以上のクオリティで音楽を配信していることを知ったんです。こういうかたちもあるんだよ、というのを、打ち出してみたかったのが大きなきっかけですね。
それにもともとDSDには興味があって、前作(2010年10月発売「ジルデコ4 〜ugly beauty〜」)の収録のときも、メインのレコーダーにコルグの「MR-2000」を使ってみていたんです。「Lovely e.p.」ではすごくピュアなものをやってみたいと思ったので、レコーダーも楽器のひとつとして考えた結果、またMR-2000を選びました。
chihiRoさん:私たちはライブを沢山やっているのですが、生演奏の良さ − 「ライブ良いね」って言ってもらっている感じを、録音でも感じてもらいたいなと思っていたんです。ライブって音楽だけじゃなくて、歌っている人・演奏している人の表情なんかも伝わったりするじゃないですか。そういうものが、声や音から伝わってほしいな、音が良ければもっと伝わるんだろうな、と。
DSDを聴いて、生々しいな、と思いました。きれいに整頓された音を聴き慣れているので、最初は「このまま出して大丈夫かな…」と思ったほど。でも、それ以上の感動みたいなものがあって。レコーディングした次の日に音源を聴いて「やって良かった〜〜」って思うくらい、すごく良かったです。
towadaさん:圧倒的に奥行き感がありますよね。それに、バラードの音と音との隙間が良く録れていると思います。そういったところがDSD、そしてハイレゾ音源の特徴なのかなと感じました。スタジオで聴いた音の感じにいちばん近いのはDSDですね。
kubotaさん:うちの家族はハイレゾなんて全然知らなくて普段聴くのはMP3とかですけど、DSDの音源を聴いて「レコードみたい。あったかい音」って感動していましたね。してやったり、と思いました(笑)。
■その場の空気感をそのまま収めたスタジオライブ録音
−− そして今回は、スタジオライブ録音をしているのもポイントですよね。
chihiRoさん:スタジオライブ録音は、「ジルデコmini2」(2011年4月発売)の時もやったことがありましたが、あのときは3人だけだったので、バンドでやるのは初めてですね。
−− 普段からライブを頻繁にされていますが、今回のようにライブのような形式の収録でも、“録る”となると感じが違うものなのでしょうか?
chihiRoさん:やっぱり違いますね。そして今回はヘッドホンを付けず、周りのみんなの音を直接聴きながらやったのですが、普段のレコーディングの感覚と違うので細かな表現のニュアンスを出すのが大変でした。それに、各プレイヤーのバランス − 特にコーラスの音量バランス − を調整するのも難しかったです。
kubotaさん:でもヘッドホンなしでスタジオライブ録音というのは、今までのレコーディングと全く違う環境で、逆に良かったですね。ヘッドホンから返ってくる音ってやはりある程度加工されているわけで。たとえばアコースティックギターを弾く場合なんかは「こんな音じゃないんだけどな」と感じていたのですが、今回はノンストレスでできました。
towadaさん:部屋に対して自然な感じでセッションをしている風にしたかったので、プレイヤーみんなで円陣を組むかたちで、向かい合って録りました。今回は、普段ライブPAをされている羽生田徳美さんにレコーディング/マイキングエンジニアをお願いしました。「Lovely e.p.」は、羽生田さんが現場で作ったミックスを収録したものです。
−− ライブのPAをされている方なら、その空間に合った音づくりをするのも得意そうですよね。
towadaさん:レコーディングのスタイルや考え方は色々あると思うのですが、今回のようにひとつのマイクにボーカルやギターなど色々な音がかぶるのを、「扱いにくい」と感じるのではなく「ライブ感・空気感につながる」と前向きに考えてくれる方を探していたら、ライブPAをやっていらっしゃる羽生田さんがいた、という感じでしたね。
−− DSDレコーディングは後で編集ができないので、演奏者としては普通のレコーディングとは違う緊張感があるのではないですか?
towadaさん:そうですね、やはり違います。理想としては違ってはいけないかも知れないですが、自分たちとしては、環境によって違う演奏をするのはすごく自然なことだと思っています。「後で編集すればいいや」ではなく、その場の空気感をすごく大事にすることができたので、いい縛りをつくるきっかけになったなと思います。
kubotaさん:こういった録音の形態も色々な選択肢のなかのひとつだと思っていますが、僕はドキュメンタリーみたいな録音に心惹かれる部分があって。一発録り・編集ナシで、その場で起こったことを正直に記録することで、聴いた方が何かを感じてくれたら、そして新しい発見をしてくれたら、嬉しいなと思っています。
■音と音の間にある空気感が、正直な言葉を素直に伝える
−− 「Lovely e.p.」は、「Lovely」から3曲を選んで収めていますよね。この3曲にした理由は何だったのですか?
kubotaさん:音と音の間に入った空気感を味わえる曲がいいだろうというのが、バラード3曲になった理由です。今までやっていたレコーディングスタジオでは、バラードのこの雰囲気は出せないだろうな、と。ボーカルもバンドもみんな同じ部屋に入って録音しているので、全員の音色が独立したものではなく“ひとつの音”として聞こえる感じになっていると思うので、そこを楽しんでいただければ嬉しいです。
−− chihiRoさんは、普段とは歌い方も変えたそうですが?
chihiRoさん:そうですね、今回は「言葉を伝えたい」「喋るような歌を歌いたい」と思ったんです。私は言葉遊びが好きなんですが、今回は言葉がメロディーに嵌らなければ言葉を優先しました。そうしてできあがった歌詞に込めた思いを、そのまま伝えられるように歌いました。
−− 繊細な感情まで読み取れる空気感がある音と相まって、正直な言葉がより心に伝わってくる感じがします。アルバムのコンセプトである「Acoustic」かつナチュラルな雰囲気にもマッチしているなあと思いました。
■全国各地でライブも敢行中
実際に「Lovely e.p.」を聴いてみたが、まさしく彼らの10年が集約されている一作。ライブを得意としているジルデコだからこそなし得る、演奏者どうしの自由で豊かなやりとり、そして心のひだに直接触れてくるようなchihiRoさんの歌声をたっぷりと味わうことができる。DSD版、96kHz/24bit版、そしてCD版の3種類を聞き比べてみるのも楽しいのではないだろうか。
また「Lovely」のリリースを記念したライブも行われている。ぜひお近くのライブ会場で、ジルデコサウンドの魅力を生でも味わってみてほしい。
・3/25(日) 谷津elcorazon
・3/29(木) 京都 SOLE Cafe
・3/30(金) 神戸 cafe FISH
・3/31(土) 奈良 LUSH LIFE
・4/1(日) 岡山 城下公会堂
・4/3(火) 大阪 ROYAL HORSE
・4/4(水) 和歌山 proyect・g・oficina
・4/14(土) 渋谷JZ Brat
・4/15(日) 渋谷JZ Brat
・4/29(日) 宇都宮 悠日カフェ
・5/3(祝木) 静岡 富士 ケルン
・5/4(祝金) 名古屋 金山 Mr.Kenny's
・5/5(土)石川 小松 SILKBEAT
・5/13(日) 水戸 B2
第1弾アルバムは、「Acoustic」がコンセプトの「Lovely」(4月11日発売)。楽器本来の響きを活かした音を目指し、過度なアレンジや音楽スタイルを排除。さらに、全てのプレイヤーがひとつの空間で同時に音を出すスタジオライブ録音にて収録している。
また、e-onkyo musicにて、CD版とは違うマスターを用いた特別な“direct mix ver.”を収めた「Lovely e.p.」の先行配信を実施しているのにも注目だ。こちらは演奏のライブ感やスタジオの空気感がよりダイレクトにリスナーに伝わるよう、メンバーの演奏をアナログ・ミキサーでリアルタイムに調整、EQやエフェクターを一切省いたかたちで、そのままDSD録音したもの。配信がスタートしてすぐトップチャートにランクインしており、いまハイレゾファンから最も熱い視線を浴びている一作となっている。
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今回、JiLL-Decoy associationのボーカル・chihiRoさん、ギターのkubotaさん、ドラム担当でリーダーのtowadaさんにお話をうかがうことができた。
■“ライブの良さ”が伝わるアルバムを作りたい
−− 10周年記念アルバムの第1弾である本作は、CDで発売されるアルバム「Lovely」と、DSDと96kHz/24bitで先行配信されるミニアルバム「Lovely e.p.」が用意されていますね。CD版と配信版では、マスターも異なるものを使用しています。 “direct mix ver.”を先行配信することになったきっかけはどんなものだったのですか?
towadaさん:いろいろなきっかけがあるのですが…僕は昔からレコードの音が好きで。MP3もいいんだけど、何かもっと他の選択肢がないかなと考えていたときに、e-onkyo musicがCD以上のクオリティで音楽を配信していることを知ったんです。こういうかたちもあるんだよ、というのを、打ち出してみたかったのが大きなきっかけですね。
それにもともとDSDには興味があって、前作(2010年10月発売「ジルデコ4 〜ugly beauty〜」)の収録のときも、メインのレコーダーにコルグの「MR-2000」を使ってみていたんです。「Lovely e.p.」ではすごくピュアなものをやってみたいと思ったので、レコーダーも楽器のひとつとして考えた結果、またMR-2000を選びました。
chihiRoさん:私たちはライブを沢山やっているのですが、生演奏の良さ − 「ライブ良いね」って言ってもらっている感じを、録音でも感じてもらいたいなと思っていたんです。ライブって音楽だけじゃなくて、歌っている人・演奏している人の表情なんかも伝わったりするじゃないですか。そういうものが、声や音から伝わってほしいな、音が良ければもっと伝わるんだろうな、と。
DSDを聴いて、生々しいな、と思いました。きれいに整頓された音を聴き慣れているので、最初は「このまま出して大丈夫かな…」と思ったほど。でも、それ以上の感動みたいなものがあって。レコーディングした次の日に音源を聴いて「やって良かった〜〜」って思うくらい、すごく良かったです。
towadaさん:圧倒的に奥行き感がありますよね。それに、バラードの音と音との隙間が良く録れていると思います。そういったところがDSD、そしてハイレゾ音源の特徴なのかなと感じました。スタジオで聴いた音の感じにいちばん近いのはDSDですね。
kubotaさん:うちの家族はハイレゾなんて全然知らなくて普段聴くのはMP3とかですけど、DSDの音源を聴いて「レコードみたい。あったかい音」って感動していましたね。してやったり、と思いました(笑)。
■その場の空気感をそのまま収めたスタジオライブ録音
−− そして今回は、スタジオライブ録音をしているのもポイントですよね。
chihiRoさん:スタジオライブ録音は、「ジルデコmini2」(2011年4月発売)の時もやったことがありましたが、あのときは3人だけだったので、バンドでやるのは初めてですね。
−− 普段からライブを頻繁にされていますが、今回のようにライブのような形式の収録でも、“録る”となると感じが違うものなのでしょうか?
chihiRoさん:やっぱり違いますね。そして今回はヘッドホンを付けず、周りのみんなの音を直接聴きながらやったのですが、普段のレコーディングの感覚と違うので細かな表現のニュアンスを出すのが大変でした。それに、各プレイヤーのバランス − 特にコーラスの音量バランス − を調整するのも難しかったです。
kubotaさん:でもヘッドホンなしでスタジオライブ録音というのは、今までのレコーディングと全く違う環境で、逆に良かったですね。ヘッドホンから返ってくる音ってやはりある程度加工されているわけで。たとえばアコースティックギターを弾く場合なんかは「こんな音じゃないんだけどな」と感じていたのですが、今回はノンストレスでできました。
towadaさん:部屋に対して自然な感じでセッションをしている風にしたかったので、プレイヤーみんなで円陣を組むかたちで、向かい合って録りました。今回は、普段ライブPAをされている羽生田徳美さんにレコーディング/マイキングエンジニアをお願いしました。「Lovely e.p.」は、羽生田さんが現場で作ったミックスを収録したものです。
−− ライブのPAをされている方なら、その空間に合った音づくりをするのも得意そうですよね。
towadaさん:レコーディングのスタイルや考え方は色々あると思うのですが、今回のようにひとつのマイクにボーカルやギターなど色々な音がかぶるのを、「扱いにくい」と感じるのではなく「ライブ感・空気感につながる」と前向きに考えてくれる方を探していたら、ライブPAをやっていらっしゃる羽生田さんがいた、という感じでしたね。
−− DSDレコーディングは後で編集ができないので、演奏者としては普通のレコーディングとは違う緊張感があるのではないですか?
towadaさん:そうですね、やはり違います。理想としては違ってはいけないかも知れないですが、自分たちとしては、環境によって違う演奏をするのはすごく自然なことだと思っています。「後で編集すればいいや」ではなく、その場の空気感をすごく大事にすることができたので、いい縛りをつくるきっかけになったなと思います。
kubotaさん:こういった録音の形態も色々な選択肢のなかのひとつだと思っていますが、僕はドキュメンタリーみたいな録音に心惹かれる部分があって。一発録り・編集ナシで、その場で起こったことを正直に記録することで、聴いた方が何かを感じてくれたら、そして新しい発見をしてくれたら、嬉しいなと思っています。
■音と音の間にある空気感が、正直な言葉を素直に伝える
−− 「Lovely e.p.」は、「Lovely」から3曲を選んで収めていますよね。この3曲にした理由は何だったのですか?
kubotaさん:音と音の間に入った空気感を味わえる曲がいいだろうというのが、バラード3曲になった理由です。今までやっていたレコーディングスタジオでは、バラードのこの雰囲気は出せないだろうな、と。ボーカルもバンドもみんな同じ部屋に入って録音しているので、全員の音色が独立したものではなく“ひとつの音”として聞こえる感じになっていると思うので、そこを楽しんでいただければ嬉しいです。
−− chihiRoさんは、普段とは歌い方も変えたそうですが?
chihiRoさん:そうですね、今回は「言葉を伝えたい」「喋るような歌を歌いたい」と思ったんです。私は言葉遊びが好きなんですが、今回は言葉がメロディーに嵌らなければ言葉を優先しました。そうしてできあがった歌詞に込めた思いを、そのまま伝えられるように歌いました。
−− 繊細な感情まで読み取れる空気感がある音と相まって、正直な言葉がより心に伝わってくる感じがします。アルバムのコンセプトである「Acoustic」かつナチュラルな雰囲気にもマッチしているなあと思いました。
■全国各地でライブも敢行中
実際に「Lovely e.p.」を聴いてみたが、まさしく彼らの10年が集約されている一作。ライブを得意としているジルデコだからこそなし得る、演奏者どうしの自由で豊かなやりとり、そして心のひだに直接触れてくるようなchihiRoさんの歌声をたっぷりと味わうことができる。DSD版、96kHz/24bit版、そしてCD版の3種類を聞き比べてみるのも楽しいのではないだろうか。
また「Lovely」のリリースを記念したライブも行われている。ぜひお近くのライブ会場で、ジルデコサウンドの魅力を生でも味わってみてほしい。
・3/25(日) 谷津elcorazon
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・3/30(金) 神戸 cafe FISH
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