• ブランド
    特設サイト
公開日 2012/07/18 10:36

歴史的価値ある音源が甦る 「N響アーカイブシリーズ」 、誕生の舞台裏に迫る

取材・構成/ファイル・ウェブ編集部
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
日本を代表するオーケストラ・NHK交響楽団の貴重な過去録音を、“配信”というかたちで提供する「N響アーカイブシリーズ」が、注目を集めている。

この音源は、(株)NHKエンタープライズの協力のもと、NHKに保管されている多数の演奏録音テープの中からセレクトされた貴重な録音を、(株)音響ハウスが編集・マスタリングしたもので、ナクソス・ジャパン(株)が商品化とディストリビューションを手掛ける。若き日のカラヤンやストラヴィンスキーとの共演、日本のオーケストラとして初の海外演奏旅行での演奏など、日本のクラシック音楽史を語る上で欠かせない歴史的名演を楽しむことができる。

なかにはこれまでレコードやCDで一度も発売されたことのない録音も含まれており、歴史的価値のあるアーカイブとしての意味も持つ、大変貴重な音源と言えるだろう。

配信は、定額制ストリーミング配信サイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)」(AAC/128kbps)と、高品質音楽配信サイト「e-onkyo music」(192kHz/24bit、96kHz/24bitのWAV/FLAC)で行われている。

NMLでは4月、e-onkyo musicでは6月から配信がスタートしており、TwitterやFacebookをはじめ各所から大きな反響を得ている。

今回、(株)NHKエンタープライズの中村京子さん、音源のセレクトや配信を担当したナクソス・ジャパン(株)の長門裕幸さん、萩生哲郎さん、アナログテープのデータ化・マスタリング作業を行った(株)音響ハウスの尾崎紀身さん、石井 亘さんに、本プロジェクト誕生のきっかけや、アナログテープから音源を甦らせる作業の裏話などについてうかがった。

左からナクソス萩生さん、音響ハウス石井さん、NHKエンタープライズ中村さん、ナクソス長門さん

実務の中心となったお二人。音源のセレクトと配信担当の萩生さん(左)と、アナログテープデータ化とマスタリングを担当した音響ハウス石井さん

   ◇  ◇  ◇   


−−− この「N響アーカイブプロジェクト」が始まったきっかけはどんなものだったのか教えてください。

長門さん:NHKさんの方で、保有している膨大な数の古い放送音源テープを少しずつDAT化していたそうなんです。こうやって作られた貴重なアーカイブを、NHKエンタープライズさんの方でなんとかしたいということになったのですが、その際、これは単にデジタルアーカイブ化するだけではなく、きちんとリスナーに届けなければいけない、ということになったそうなんですね。

ただ、古い録音だし映像も付いていないので、どういったかたちで流通させようか…と。それで、我々ナクソスに一緒にやろうとお話をいただいたんです。

パッケージ化は念頭に置かず配信というかたちを使おうと考えていたので、まずは我々のインターネットストリーミングサービス「ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)」で提供し、その次に、今考えられる一番良い状態で聴いていただけるようにもしようということで、e-onkyo musicさんでのハイレゾ配信もスタートしました。

−−− 膨大な音源のなかから、今回第一弾として配信されている作品(ナクソスでは10タイトル、e-onkyo musicでは6タイトル)はどんな基準で選ばれたのでしょうか?

中村さん:まずはNHK交響楽団の、最近のものではなく古くてもうなかなか放送されない音源のなかから選ぼうということになって。ラジオの方のアーカイブを探してピックアップし、そのなかから「これは聴きたいと思ってもらえるだろう」という音源を、ナクソスさんと相談して決めました。e-onkyo musicさんでハイレゾ配信する際には、10タイトルのなかからハイレゾに耐えうるものをピックアップしました。

萩生さん:N響の過去の音源を発掘して発売する、というのはナクソスが初めて行ったことではなく、他のレーベルからこれまでに何度かCDが発売されています。ただ、これらは有名楽曲や有名演奏家に焦点を置いたものが多く、真に歴史的な価値ある音源にはなかなかスポットが当たりづらい状況でした。私たちは、これら貴重な記録こそ復刻させる意味があると考え、NHKさんのリストに溢れている音源の数々を検証していきました。まさに伝記でしか名前を見たことのないような演奏家、あるいは公演の数々が多数保存されていることがわかり、改めて今回のシリーズの意義を実感しました。

もっとも、プロジェクトの開始当初は、高い技術レベルの演奏や録音に慣れきっている現代の我々の耳に、往年の録音がどう響くか、一抹の不安もありました。しかし、蔵出しされてくるテープを聴いてみたところ、今聴いても全く遜色がないどころか、むしろ今の時代に失われてしまったようなものが感じられる、素晴らしいものばかりだったのです。

たとえばソ連公演のチャイコフスキーの交響曲第5番。初の海外演奏旅行で、ソ連に行ってロシアの曲をやっているから面白そうだという理由だけで選んだのですが、実際に聴いてみたらとんでもない名演奏で、ロシアのオーケストラがやったと言って出しても信じてもらえそうなほどのものだったんですよ。オーケストラが日本に輸入されて40年ほどというこの時代に、これだけの演奏をしていたのかと…本当に驚きました。

何より、初めて海外の舞台を踏み「本場」での演奏を実現された、当時のプレイヤーの方達の情熱、気概、思いの丈がものすごい強度で伝わってきて、社内で音質をチェックするために聴き始めたのに、演奏の良さにみんなシーンとして聴き入ってしまったほどです。日本がともすれば元気がないといわれる今の時代に、この演奏はいろいろなことを教えてくれるような気がします。

−−− 当時この演奏旅行のために沢山練習したんだろうな…とか、色々想像がふくらんで感慨深いですよね。

長門さん:当時の状況を想像すると、ロマンがありますよね。それも込みで味わっていただければと思っています。ソ連公演のチャイコフスキーの他にも、岩城宏之さんや外山雄三さん、堤剛さんや松浦豊明さんなど、その後も一流演奏家として日本の音楽界を牽引する方達の熱演を聴けるということも、大きな魅力だと思います。

次ページ細心の注意と沢山の熱意のもと行われた、アナログテープのデジタル化

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 「オーディオのオンキヨー」復活へ。新スピーカーとセパレートシステムを年明けのCESで発表
2 【完全ワイヤレスイヤホン特集 PART.10】音のプロが選ぶベストバイは?
3 CD再生とファイル再生の架け橋に!Shanlingからリッピング機能付きトランスポート「CR60」が登場
4 今こそ「ミニコンポ」が面白い! デノン/マランツ/B&Wの令和ライフにマッチする厳選5モデルレビュー
5 水月雨、『崩壊:スターレイル』とのコラボ完全ワイヤレス。ダイナミック+環状平面駆動の同軸ドライバー搭載
6 【ミニレビュー】空き電源コンセントに挿入するだけ。オーディオみじんこ「SILVER HARMONIZER AC-ADVANCE」
7 モニターオーディオ「GOLDシリーズ」レビュー。ユニット大幅刷新の第6世代機は「ハイスピードで焦点の明確な音調」
8 AVIOT、『らんま1/2』コラボ完全ワイヤレスイヤホン。完全新録ボイス240種類以上搭載
9 Nothing、スマホ/イヤホンが最大30%オフ価格になるウィンターキャンペーン。先着順で靴下もらえる
10 要注目の新興ブランド、ラトビア「アレタイ」スピーカー試聴レビュー!広大な空間描写力が魅力
12/20 10:05 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.195
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX