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公開日 2018/01/05 08:00

<新春インタビュー>オーディオ協会 校條会長が語る「ハイレゾ推進」と「OTOTEN」のこれから

「Senka21」トップインタビュー
聞き手・構成:音元出版 永井光晴・徳田ゆかり
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ハイレゾの推進に取り組み、イベント強化で顧客創造を図っている日本オーディオ協会。その着実な活動で手応えを得て課題も明らかにし、次なる一歩を踏み出していく。2018年、さまざまな歩みを進めていく協会の方向性について、校條会長が語る。

條亮校治氏

一般社団法人日本オーディオ協会
会長
校條亮治氏
Ryoji Menjo

<プロフィール>
1947年11月22日生まれ。岐阜県出身。1966年 パイオニア(株)入社後、パイオニア労働組合中央執行委員長。パイオニア(株)CS経営推進室長を経て2004年6月 パイオニア(株)執行役員CS経営推進室室長に。2005年7月 パイオニアマーケティング(株)代表取締役社長に就任。2007年(社)日本オーディオ協会副会長を経て、2008年6月11日 現職に就任。2011年4月1日、日本オーディオ協会が一般社団法人となり現在に至る。



よい音を追求する原点をふまえハイレゾ推進を加速

ハイレゾ推進を強化音楽製作から再生まで

ーー 2017年の取り組みを振り返ると、まずハイレゾ推進の活動が躍進しました。

校條氏 日本オーディオ協会がハイレゾの導入に取り組んでから3年半が経過し、参入企業は約140社、アイテム数は約1,500にのぼりました。参入企業も国内にとどまらず、中国や欧州の企業も加わっています。ハイレゾはすでにスタンダードになったと言えるでしょう。

解決すべき問題もあります。1つはいい音を追求する原点に立ち返ること、2つめはトレーサビリティの明確化、3つめは人材の枯渇への対応です。そして推進を加速させなくてはいけません。新たなカテゴリーに対して締め付けを厳しくしてばかりでは、進められませんね。

ハイレゾは日本オーディオ協会が定義を司り、監修しています。新しいカテゴリーが参加してきたなら、認める姿勢が必要だと思います。色々な議論があり、あるカテゴリーに対してオーディオとは認めたくないといった声も聞かれますが、厳格に管理するよりも商品自体の将来性、お客様の信頼と利便性を考慮した上で新しいものを認めていく、そういう姿勢で推進しております。

そして「ハイレゾ=よい音」ということではありません。ハイレゾはフォーマット提案ではなく、伝送における大改革。だからこそ、よい音を追求する原点をしっかりと押さえていかなくてはなりません。協会のカンファレンスでは、ハイレゾ時代におけるよい音の答申書を出しました。ハイレゾ・オーディオの導入に際し、最低限のポイントを押さえて3つの定義をつくりました。

技術的なスペックとして96kHz/24bit、アナログで40kHz以上、それからメーカーに聴感評価を義務づけようというもの。メーカーが自社の商品に対し、自信をもって良い音であると認める。そのためによい音の根源に関わる考え方を整理してほしいと。低音が重要ならそこに注力すればいいし、ボーカルが重要なら中音に注力すればいい。メーカーとして、きちんと言い切れる指針をもつべきであると考えました。この3点を基本定義としています。

ハイレゾのトレーサビリティを明確化することも、ぜひ推進していきたい。ハイレゾの環境は整いましたが、音源やハードに対するクレジット表記は進んでいません。特に音源は、いつ誰がどこでどのように録音したものか、明確にする必要があるはずです。仮にアップサンプリングしたものであっても、アップサンプリングしたと明確にされていればいいと思うのです。

トレーサビリティを明確にすることは、作った側の責任だと思います。昔はLPやCDのライナーノーツに記載されていました。今の音源にはそれがないわけですから。

もう一つの大きな課題として人材の問題があります。オーディオ業界全体に言えることですが、「オーディオ」を熟知した人材が枯渇していることです。大変難しい問題ですが、手をこまねいているわけにはいきません。新しい世代の人達に教育を行い、オーディオや音楽の世界を司る人材として勉強してもらい、業界をリードできるようになって欲しいですね。

メーカーは再生側の考えに縛られがちですが、まず音楽をつくることから思いを致す。どう録音するか、さらにはアーティストがどんな音楽を聴かせたいかにまで遡る。レコーディングエンジニアはそこまで思いを巡らせ、音にアーティストの意志を入れこまなくてはならないと思います。

メーカーはそれを受け止め、十二分に再生する。最終目標は音場の再現です。音楽制作から再生までの過程を一気通貫で見ないと、ハイレゾが進んだとは言えないでしょう。

今の時代、デジタルパーツを買って来て組めば、音の出るオーディオが作れます。スペックもちゃんとしている。しかし、それだけではいかがなものかと。音源そのものも、ハイスペックなデータで録ればいいというものでもない。今や音楽はパソコンで作ることができ、それはそれでいいのですが、なぜ作品をこんな音にしたかは、本来アーティスト自身が確認していくところ。それをきちんと伝える再生側としても、音楽がどうつくられているのかを根本から知らなくては難しいでしょう。ただ再生機器のスペックを見ているだけではなし得ません。

ハイレゾを推進する中で、そういうことがわかってきました。演奏者とレコーディングエンジニア、再生するもの、再生する場所、それらすべてを見ていかなければ音楽は伝わらない。音楽産業の方々とメーカーの方々で、意志の疎通ができていなくてはと思います。だからこそ人材の育成は急務なのです。

ハイレゾの名のもとに、新たなカテゴリーがどんどん出てきます。それに対して私は肯定的に考えており、レギュレーションを締め付けすぎるのはよくないと思います。ただ新しいカテゴリーの人達には、これまで我々がもっていたオーディオに対する概念がないため、オーディオではないというアンチの目で見られがちです。そうならないよう、オーディオリテラシーを維持できないかと考えます。

例えば形状や質感、手触りとか、そこにオーディオらしさを求めてもいいと思うのです。新しい生活スタイル、新しい音楽の聴き方を提案できるのなら、それにこしたことはありません。そして心強い音で鳴っていて欲しいものですね。

次ページ進化した「音展」で見えてきた課題

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