公開日 2019/05/08 16:45
松本隆さんが語る「Pro iDSD」〜最先端のオーディオがもたらす悦楽〜
日本音楽界の最重要人物の心をも掴んだiFIオーディオの魅力
■日進月歩のデジタルは新しいものの方が良い
ミュージシャンとして、作詞家として。伝説的ロックバンド「はっぴいえんど」でのデビュー前から日本の音楽シーンにおける最重要人物のひとりとして活躍しつづけてきた松本 隆さんは、オーディオファイルとしての顔もよく知られている。ヴィヴィッド・オーディオとジェフ・ロゥランドがセッティングされた松本さんのご自宅の写真を見たことがある、という方も多いだろう。
しかし、松本さんは決してハイエンド志向というわけではない。ことにデジタルオーディオ関連の機器に関しては、「価格帯よりも新しいものの方がいい」と言い切るほどだ。その証拠のひとつとして、松本さんは長らくiFIオーディオのmicro iDSD、そしてその後継として登場したmicro iDSD BLを愛用してきた。iFIオーディオの音を初めて聴いた時、「デジタルは日進月歩だから、やっぱり値段が高いものを選ぶよりも新しいものの方が確かだな」と思ったと振り返る。
先日、iFIオーディオからフラッグシップとしてPro iDSDが登場し、大きな注目を集めたことはご存じのとおりだ。現在は松本さんの自宅でも、このPro iDSDがデジタルオーディオの中心的役割を担っている。
「もともとiFIの音が好きなんですよ」と話す松本さんだが、そんなiFIオーディオのテクノロジーのすべてを注ぎ込んだPro iDSDのサウンドについて、どのような感想を抱いているのだろうか。
「一番感じたのは、音に芯ができたということですね。ひとつひとつの音に存在感が出てくるというところ。ここです。音の傾向はmicro iDSDから変わっていないんだけど、もっとひとつひとつの音がしっかり鳴るんです」
価格面だけ見ればPro iDSDは税別で36万円。これまでのiFIオーディオのDAC製品と比べると、ひと桁違う価格設定となっている。これまで抜群のコストパフォーマンスで人気を博してきたiFIだが、「これは価格に見合ったレベルアップ」と松本さんもPro iDSDのサウンドの進化に納得の表情だ。
■良い音と言うのは解像度が上がるということ
Pro iDSDには、注目のDSD1024アップサンプリングを可能とした「Crysopeia FPGAデジタル・エンジン」や、ソリッドステート/真空管を完全に独立させた回路など、盛り込まれたその機能は実に多彩だ。しかし松本さんが第一に評価するのはその機能性ではなく、あくまで出音そのものである。良い音を得るためのさまざまな過程を楽しめるのももちろんPro iDSDの魅力だが、松本さんは、シンプルに得られた音としての「結果」を高く評価しているのだ。
「過程を詰めていくとね、結果も良くなるっていうことは確率的にも正しいです。でも、過程ばっかり気にしちゃうと、トータルで見失うんです。ほんのちょっとしたことで音ってパッと変わっちゃいますから。例えば、スピーカーケーブルでも変わるし、USBケーブルでも変わるし。でも、そういうことばっかり気にしていたら、全体像が見えなくなっちゃう。いい音っていうのは多分、平たく言えば解像度が上がるってことだと思います。よりクリアになって、粒立ちが細やかになって、奥行きがはっきりする。『良い音』というのはすごく曖昧な言い方だけど、『解像度』と言えばはっきりしますよね」
ちなみに、参考までに松本さんが使っているPro iDSDは、駆動モードを「Tube+」、アップサンプリングはDSD1024にセッティングされていた。これは輸入代理店から薦められたセッティングとのことだが、ここからも松本さんがiFIオーディオへ寄せる信頼が感じられる。
■最先端に対する対応力も大きな魅力のひとつ
このほかに、Pro iDSDの特徴といえば、いま大きな話題を集めているMQAフルデコードの対応だ。MQAについては特にロスレスストリーミングサービスのTIDALが採用したことで爆発的な注目を集めるに至ったが、Pro iDSDはそうした音源も正しく再生することができる。松本さんもいま、「評判が良くて興味があった」というRoonと共にTIDALのアカウントを入手して、そのサウンドを楽しんでいる。こうした最先端テクノロジーへの柔軟な対応も、やはりiFIオーディオだからこその魅力といえるだろう。「デジタルは新しいものの方が良い」という松本さんの言葉を裏づけるポイントのひとつともいえそうだ。
■本当の楽器の音を知っているということ
音楽を生業としている松本さんは、誰よりも「生の音」を知っている。だからこそ、音について語る言葉にはこれ以上にないほどの重みがある。
「ピアノはピアノ、ヴァイオリンはヴァイオリン。本当の楽器の音を知っているというのは、大きいと思うんですよね。クライバーが振ったウィーン・フィルの音も知っている。こういのは、記憶としてDNAに入っているんです。そうすると、その音にどれだけ機械で近づけることができるかってなるんですよ。あと、世の中で一番機械を通した良い音と言うのは、スタジオのミキサーに直接つないだ音なんです。例えば、鈴木 茂がミキサーに直接ギターを繋いで、その音がほとんどロスなくスピーカーから出てくる。そういうのを体験しているんです。それを知っているか知っていないかということですね。これは強みかもしれません。僕は自分の耳を信じていますから」
松本さんにとって最も大事な「結果」という高いニーズに見事に答えたPro iDSD。サウンド、そしてあらゆる音源への対応力。そこにはこれからの音楽を語るための要素が存分に詰め込まれているのである。
松本 隆Profile
1949年7月16日東京都生まれ。作詞家/ミュージシャン。1969年に「エイプリルフール」でプロデビュー。同年に「はっぴいえんど」を結成し、70年にアルバムデビューする。はっぴいえんど解散後、作詞家へ転身。80年代には松田聖子を始めとして多くの詞を提供、希代のヒットメーカーとなる。以後も中山美穂、KinKi Kidsらビッグネームの詞を手がけ、文筆家としても活躍。2000年にはその功績をまとめた『風街図鑑』をリリース。作詞家生活45周年を迎えた2015年にはトリビュート・アルバムの発表や記念公演を開催するなど、音楽界に留まらず多大な影響を与え続けている。
Specification of ProiDSD
●最大対応サンプリングレート:PCM 768kHz、DSD 49.152MHz(DSD 1024)、DXDおよびdouble-speed DXD(2×DXD)●入力端子:USB3.0(Bタイプ)×1、AES/EBU(XLR)×1、S/PDIF(RCA同軸/丸型光TOSコンボ)×1、BNC(S/PDIF入力またはSync入力)×1●出力端子: XLR×1(4.6V=+15dBu、HiFiポジション/11.2V=+22dBu、Proポジション)、RCA×1(2.3V=HiFiポジション/5.6V=Proポジション)、φ6.3mmステレオ標準ヘッドフォン×1(5.6Vまたは最大11.2V)●ヘッドフォン出力:1,500mW RMS×2(64Ω)、最大4,000mW×2(16Ω)●ボリュームコントロール:バランス型(6-gang)アルプス製ポテンショメーター ※RCA、XLR出力は固定、可変に設定可能●その他の機能: DSDとPCM(384kHzまで)用にデジタルフィルター、アナログフィルターが選択可能 ※PCMフィルター:Bit-Perfect(44.1〜192kHz、352.8〜768kHzは常に使用)/Bit-Perfect+:44.1〜96kHz/Gibbs Transient Optimised(44.1〜384kHz)/Apodising(44.1〜384kHz)/Transient Aligned(44.1〜384kHz) ※DSDフィルター:固定三次アナログフィルター@80kHz(DSDの-6dBゲイン用に補正)●ゲイン(ヘッドフォン・セクション):0/9/18dBから選択●ダイナミック・レンジ:119dBA(ソリッドステート、PCM、-60dB FS)●入力電圧(Pro iDSD本体):DC9V/6.7A〜18V/3.35A●入力電圧(付属電源アダプタiPower+):AC85〜265V、50/60Hz●消費電力:<22W(アイドリング時)、50W(最大)●サイズ:220W×63.3H×213Dmm●質量: 1.98kg●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
※本記事は「季刊・ネットオーディオ」34号所収記事を転載したものです。本誌の購入はこちらから。
ミュージシャンとして、作詞家として。伝説的ロックバンド「はっぴいえんど」でのデビュー前から日本の音楽シーンにおける最重要人物のひとりとして活躍しつづけてきた松本 隆さんは、オーディオファイルとしての顔もよく知られている。ヴィヴィッド・オーディオとジェフ・ロゥランドがセッティングされた松本さんのご自宅の写真を見たことがある、という方も多いだろう。
しかし、松本さんは決してハイエンド志向というわけではない。ことにデジタルオーディオ関連の機器に関しては、「価格帯よりも新しいものの方がいい」と言い切るほどだ。その証拠のひとつとして、松本さんは長らくiFIオーディオのmicro iDSD、そしてその後継として登場したmicro iDSD BLを愛用してきた。iFIオーディオの音を初めて聴いた時、「デジタルは日進月歩だから、やっぱり値段が高いものを選ぶよりも新しいものの方が確かだな」と思ったと振り返る。
先日、iFIオーディオからフラッグシップとしてPro iDSDが登場し、大きな注目を集めたことはご存じのとおりだ。現在は松本さんの自宅でも、このPro iDSDがデジタルオーディオの中心的役割を担っている。
「もともとiFIの音が好きなんですよ」と話す松本さんだが、そんなiFIオーディオのテクノロジーのすべてを注ぎ込んだPro iDSDのサウンドについて、どのような感想を抱いているのだろうか。
「一番感じたのは、音に芯ができたということですね。ひとつひとつの音に存在感が出てくるというところ。ここです。音の傾向はmicro iDSDから変わっていないんだけど、もっとひとつひとつの音がしっかり鳴るんです」
価格面だけ見ればPro iDSDは税別で36万円。これまでのiFIオーディオのDAC製品と比べると、ひと桁違う価格設定となっている。これまで抜群のコストパフォーマンスで人気を博してきたiFIだが、「これは価格に見合ったレベルアップ」と松本さんもPro iDSDのサウンドの進化に納得の表情だ。
■良い音と言うのは解像度が上がるということ
Pro iDSDには、注目のDSD1024アップサンプリングを可能とした「Crysopeia FPGAデジタル・エンジン」や、ソリッドステート/真空管を完全に独立させた回路など、盛り込まれたその機能は実に多彩だ。しかし松本さんが第一に評価するのはその機能性ではなく、あくまで出音そのものである。良い音を得るためのさまざまな過程を楽しめるのももちろんPro iDSDの魅力だが、松本さんは、シンプルに得られた音としての「結果」を高く評価しているのだ。
「過程を詰めていくとね、結果も良くなるっていうことは確率的にも正しいです。でも、過程ばっかり気にしちゃうと、トータルで見失うんです。ほんのちょっとしたことで音ってパッと変わっちゃいますから。例えば、スピーカーケーブルでも変わるし、USBケーブルでも変わるし。でも、そういうことばっかり気にしていたら、全体像が見えなくなっちゃう。いい音っていうのは多分、平たく言えば解像度が上がるってことだと思います。よりクリアになって、粒立ちが細やかになって、奥行きがはっきりする。『良い音』というのはすごく曖昧な言い方だけど、『解像度』と言えばはっきりしますよね」
ちなみに、参考までに松本さんが使っているPro iDSDは、駆動モードを「Tube+」、アップサンプリングはDSD1024にセッティングされていた。これは輸入代理店から薦められたセッティングとのことだが、ここからも松本さんがiFIオーディオへ寄せる信頼が感じられる。
■最先端に対する対応力も大きな魅力のひとつ
このほかに、Pro iDSDの特徴といえば、いま大きな話題を集めているMQAフルデコードの対応だ。MQAについては特にロスレスストリーミングサービスのTIDALが採用したことで爆発的な注目を集めるに至ったが、Pro iDSDはそうした音源も正しく再生することができる。松本さんもいま、「評判が良くて興味があった」というRoonと共にTIDALのアカウントを入手して、そのサウンドを楽しんでいる。こうした最先端テクノロジーへの柔軟な対応も、やはりiFIオーディオだからこその魅力といえるだろう。「デジタルは新しいものの方が良い」という松本さんの言葉を裏づけるポイントのひとつともいえそうだ。
■本当の楽器の音を知っているということ
音楽を生業としている松本さんは、誰よりも「生の音」を知っている。だからこそ、音について語る言葉にはこれ以上にないほどの重みがある。
「ピアノはピアノ、ヴァイオリンはヴァイオリン。本当の楽器の音を知っているというのは、大きいと思うんですよね。クライバーが振ったウィーン・フィルの音も知っている。こういのは、記憶としてDNAに入っているんです。そうすると、その音にどれだけ機械で近づけることができるかってなるんですよ。あと、世の中で一番機械を通した良い音と言うのは、スタジオのミキサーに直接つないだ音なんです。例えば、鈴木 茂がミキサーに直接ギターを繋いで、その音がほとんどロスなくスピーカーから出てくる。そういうのを体験しているんです。それを知っているか知っていないかということですね。これは強みかもしれません。僕は自分の耳を信じていますから」
松本さんにとって最も大事な「結果」という高いニーズに見事に答えたPro iDSD。サウンド、そしてあらゆる音源への対応力。そこにはこれからの音楽を語るための要素が存分に詰め込まれているのである。
松本 隆Profile
1949年7月16日東京都生まれ。作詞家/ミュージシャン。1969年に「エイプリルフール」でプロデビュー。同年に「はっぴいえんど」を結成し、70年にアルバムデビューする。はっぴいえんど解散後、作詞家へ転身。80年代には松田聖子を始めとして多くの詞を提供、希代のヒットメーカーとなる。以後も中山美穂、KinKi Kidsらビッグネームの詞を手がけ、文筆家としても活躍。2000年にはその功績をまとめた『風街図鑑』をリリース。作詞家生活45周年を迎えた2015年にはトリビュート・アルバムの発表や記念公演を開催するなど、音楽界に留まらず多大な影響を与え続けている。
Specification of ProiDSD
●最大対応サンプリングレート:PCM 768kHz、DSD 49.152MHz(DSD 1024)、DXDおよびdouble-speed DXD(2×DXD)●入力端子:USB3.0(Bタイプ)×1、AES/EBU(XLR)×1、S/PDIF(RCA同軸/丸型光TOSコンボ)×1、BNC(S/PDIF入力またはSync入力)×1●出力端子: XLR×1(4.6V=+15dBu、HiFiポジション/11.2V=+22dBu、Proポジション)、RCA×1(2.3V=HiFiポジション/5.6V=Proポジション)、φ6.3mmステレオ標準ヘッドフォン×1(5.6Vまたは最大11.2V)●ヘッドフォン出力:1,500mW RMS×2(64Ω)、最大4,000mW×2(16Ω)●ボリュームコントロール:バランス型(6-gang)アルプス製ポテンショメーター ※RCA、XLR出力は固定、可変に設定可能●その他の機能: DSDとPCM(384kHzまで)用にデジタルフィルター、アナログフィルターが選択可能 ※PCMフィルター:Bit-Perfect(44.1〜192kHz、352.8〜768kHzは常に使用)/Bit-Perfect+:44.1〜96kHz/Gibbs Transient Optimised(44.1〜384kHz)/Apodising(44.1〜384kHz)/Transient Aligned(44.1〜384kHz) ※DSDフィルター:固定三次アナログフィルター@80kHz(DSDの-6dBゲイン用に補正)●ゲイン(ヘッドフォン・セクション):0/9/18dBから選択●ダイナミック・レンジ:119dBA(ソリッドステート、PCM、-60dB FS)●入力電圧(Pro iDSD本体):DC9V/6.7A〜18V/3.35A●入力電圧(付属電源アダプタiPower+):AC85〜265V、50/60Hz●消費電力:<22W(アイドリング時)、50W(最大)●サイズ:220W×63.3H×213Dmm●質量: 1.98kg●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
※本記事は「季刊・ネットオーディオ」34号所収記事を転載したものです。本誌の購入はこちらから。
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