公開日 2019/05/29 16:56
ハードオフ新社長が見据える“最終ゴール”とは? オーディオ特化店/オムニチャネル/海外展開など戦略を訊く
リアル店舗にさらに磨き。「“Re”NK CHANNEL」を強力推進
循環型社会で認知・注目がますます高まるリユース市場で、圧倒的な存在感を示すハードオフコーポレーション。4月1日に新社長として山本太郎氏が就任した。全国約900におよぶリアル店舗の強みに磨きをかけ、次代を勝ち抜く独自のオムニチャネル「“Re”NK CHANNEL(リンクチャネル)」の推進を加速していく構え。ハードオフのDNAとも言える“オーディオ”の象徴「オーディオサロン」の気になる3店舗目の動向を含め、就任一年目の意気込みを山本太郎社長に聞く。
山本 太郎氏 Taro Yamamoto
株式会社 ハードオフコーポレーション
代表取締役社長
Profile 1980年11月16日生まれ、新潟県出身。2005年3月 株式会社ファーストリテイリング入社。2007年10月に株式会社ハードオフコーポレーションに移り、社長室や経営企画室を経て、2011年6月 常務取締役経営企画室長、2013年4月 常務取締役店舗運営本部長、2016年4月 取締役副社長兼店舗運営本部長、2019年4月 代表取締役社長(現任)
■大きな強みとなるリアル店舗を強化
―― 4月1日付けで、創業以来社長を務められてこられた山本善政氏が会長となり、社長にご就任されました。
山本 私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。ネットへの対応や本格的に海外出店を進め、新しい成長のステージを切り開いていく上で、ひとつの事業承継のタイミングにあるのではないかと、会長と私で1年くらい前から話を重ねてきました。これまでも副社長の立場からさまざまな事業に携わる立場にはありましたので、社長になり何が変わったのか、まだあまり実感がないのが正直なところです。
―― 御社が手掛けるリユースは、これからの循環型社会の大事なテーマとしての認識がますます高まりつつあります。フリマアプリ等も浸透していますが、消費者との接点になる店舗についてのお考えをお聞かせください。
山本 CtoCを対象にしたメルカリをはじめとするフリマアプリが急成長をはじめた4〜5年前には、小売業界でamazonがシェアを急拡大したのと同様な図式がリユース市場でも起こり得るのではないかと危惧しました。しかし、実際には悪影響はほとんどなく、反対にリユースに対する認知がより深まることで、リアル店舗がより身近な存在となりました。我々の約900もの地域に根差したリアル店舗は、さらに大きな強みになると確信しています。社長就任初年度となる2019年度は、リアル店舗にしっかりと軸足を置いて、さらに磨きをかけていく方針を示しました。
ただし、長期的観点に立つと、リアル店舗だけで勝負ができるかと言えば、それもまた違います。最終的にはリアル店舗を中心にしたオムニチャネル、我々は「“Re”NK CHANNEL」と称していますが、その強化がポイントになると考えています。
「“Re”NK CHANNEL」の概念は、「リンク(LINK)」=「つながる」を意味しますが、店舗、ネットモール、ホームページ、オファー買い取りなど、これまで分断してつながっていなかったひとつひとつのチャネルをつなげて、さらにその中に循環(Re)を起こし、加速していくイメージです。単にオムニチャネルと言っても理解しにくく、フランチャイズ38社の皆さんにもわかりやすく、ハードオフらしいオムニチャネルの概念をつくりあげました。
何でも“ネット在りき”“ネット万能”のような風潮は非常に危険です。リアル店舗を中核に据え、チャネル間の結びつきをこれからどんどん強化していきます。
―― 約900のリアル店舗の存在は大きな強みですね。
山本 「10万商圏で1店舗」が基本モデルですから、国内にもまだまだ出店余地があります。これまで日本国内の出店目標を1,000〜1,200店舗としてきたのですが、例えば、新潟県は約230万人の人口に対して55店舗あります。新潟の人口は日本の約2%ですから、単純計算では50倍の約2,750店の出店が可能になります。
まず、地元でもある新潟の店舗を意識して、もっと収益性の高い強い店舗にしていきたい。そうすることで、全国のフランチャイズ加盟店さんが、新潟県○○市に特徴が似ている○○市へ出店を検討してみたいなど、より具体にイメージが描きやすくなります。「クルマで10分行けばハードオフがある」、日本全国を新潟県のようにしていきたいですね。
―― 数を増やすためには、同時に質を高めていく必要がある。地元・新潟がひとつのモデルケースとなるわけです。
山本 南北に長い新潟県の形は日本列島に似ていて、日本の縮図のようなイメージを抱いています。成功事例は都市部にも地方にも通用する。ここ3、4年は関東、関西へ積極的に出店していますが、地方や10万都市でも未出店の地域へも積極的に展開していく方針です。
■金太郎飴ではない店舗の“色”を生み出すのは“人”
―― 店舗とともに大きなテーマとなる「人材」と「在庫(買い取り)」についてはいかがですか。
山本 人材面では「好きを仕事に」を謳い、オーディオ好きや楽器好きの方に、好きなものを仕事にしていただいているのが特長です。以前は全国転勤がネックとなっていた時期もありましたが、現在は「地域限定社員」制度をつくり、地元により根差した働きができる環境も整えています。
採用に際しても、企画から集客までを自らで行った採用イベントを、ネーミングライツを持つHARD OFF ECOスタジアム新潟の会議室を会場に、初めてのトライアルとして、5月25日(土)・26日(日)に開催しました。新潟市近郊の店舗でチラシを配布、テレビCMも打ちました。チラシは裏面が履歴書になっていて、そこに記入して当日持参する仕組みにしました。24時間以内に合否を連絡するスピード勝負も特徴のひとつです。ハードオフが好きな方、ハードオフをよくご存じの方に参加していただいたこともあり、2日間で8名の優秀な方に合格を出させていただきました。
ハードオフらしい、ハードオフの魅力をより伝えることができるイベントは今後も行っていく予定です。日本国内へのさらなる出店、さらに、米国・台湾にも本格的に出店していきます。その時に、日本から店長を駐在として送り込みたい。いざ、アクセルを踏むときに慌てることがないよう、人材の育成・強化は大事なテーマと認識しています。
―― 在庫についてはいかがですか。
山本 買い取りに関しては大変好調です。CtoCのフリマアプリとはニーズが異なりますね。例えば、引越しで部屋中に売りたい商品が数多くあるときに、ひとつひとつ写真を撮ってネットで売ることはまずしません。多くのお客様が商品をまとめてリアル店舗に持って買取を希望されます。さらに、オーディオや楽器など専門性の高い商品では、リテラシーの高い販売員がいる店に売りたいと思うのが心情で、そこで、ハードオフの価値を認めていただけています。
―― 専門性の高さから、各店舗では店長やスタッフの個性が表れた店舗が多いとお聞きしたことがあります。
山本 ハードオフコーポレーションでは経営理念として、「社会のためになるか」「お客さまのためになるか」「社員・スタッフのためになるか」「会社のためになるか」を掲げています。店舗では基本としての掃除やあいさつはもちろんのことですが、さらに、店長や各スタッフの個性が出なければ面白くない、全国約900ある店舗の1店舗1店舗が違うべきだと考えています。
どの店舗でも高いレベルが維持されることは、チェーン店のあるべき姿であり、ハードオフもチェーン店ですが、どこを切っても金太郎飴ではいけない。置いてある商品も違うし、それぞれの店舗に店長やスタッフさんの個性が表れていることが大切だと考えています。まさに一期一会です。だからこそ、1日に4つも5つお店を回る “ハードオフ巡り”をされるお客様もいらっしゃるわけです。
―― “好きを仕事に”ですね。
山本 マニュアルはありますが、ガチガチに縛るものではありません。「こう並べなさい」「こう音を出しなさい」と指示することはできますが、それでは個性がどんどん失われてしまいます。ハードオフはワクワクするところ。そのための“色”を店舗ごと出していく必要があります。その“色”を生み出すのが“人”。「この人に売りたい」「この人から買いたい」という気持ちは、ネットにはない、リアル店舗ならではの大きな強みになります。
山本 太郎氏 Taro Yamamoto
株式会社 ハードオフコーポレーション
代表取締役社長
Profile 1980年11月16日生まれ、新潟県出身。2005年3月 株式会社ファーストリテイリング入社。2007年10月に株式会社ハードオフコーポレーションに移り、社長室や経営企画室を経て、2011年6月 常務取締役経営企画室長、2013年4月 常務取締役店舗運営本部長、2016年4月 取締役副社長兼店舗運営本部長、2019年4月 代表取締役社長(現任)
■大きな強みとなるリアル店舗を強化
―― 4月1日付けで、創業以来社長を務められてこられた山本善政氏が会長となり、社長にご就任されました。
山本 私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。ネットへの対応や本格的に海外出店を進め、新しい成長のステージを切り開いていく上で、ひとつの事業承継のタイミングにあるのではないかと、会長と私で1年くらい前から話を重ねてきました。これまでも副社長の立場からさまざまな事業に携わる立場にはありましたので、社長になり何が変わったのか、まだあまり実感がないのが正直なところです。
―― 御社が手掛けるリユースは、これからの循環型社会の大事なテーマとしての認識がますます高まりつつあります。フリマアプリ等も浸透していますが、消費者との接点になる店舗についてのお考えをお聞かせください。
山本 CtoCを対象にしたメルカリをはじめとするフリマアプリが急成長をはじめた4〜5年前には、小売業界でamazonがシェアを急拡大したのと同様な図式がリユース市場でも起こり得るのではないかと危惧しました。しかし、実際には悪影響はほとんどなく、反対にリユースに対する認知がより深まることで、リアル店舗がより身近な存在となりました。我々の約900もの地域に根差したリアル店舗は、さらに大きな強みになると確信しています。社長就任初年度となる2019年度は、リアル店舗にしっかりと軸足を置いて、さらに磨きをかけていく方針を示しました。
ただし、長期的観点に立つと、リアル店舗だけで勝負ができるかと言えば、それもまた違います。最終的にはリアル店舗を中心にしたオムニチャネル、我々は「“Re”NK CHANNEL」と称していますが、その強化がポイントになると考えています。
「“Re”NK CHANNEL」の概念は、「リンク(LINK)」=「つながる」を意味しますが、店舗、ネットモール、ホームページ、オファー買い取りなど、これまで分断してつながっていなかったひとつひとつのチャネルをつなげて、さらにその中に循環(Re)を起こし、加速していくイメージです。単にオムニチャネルと言っても理解しにくく、フランチャイズ38社の皆さんにもわかりやすく、ハードオフらしいオムニチャネルの概念をつくりあげました。
何でも“ネット在りき”“ネット万能”のような風潮は非常に危険です。リアル店舗を中核に据え、チャネル間の結びつきをこれからどんどん強化していきます。
―― 約900のリアル店舗の存在は大きな強みですね。
山本 「10万商圏で1店舗」が基本モデルですから、国内にもまだまだ出店余地があります。これまで日本国内の出店目標を1,000〜1,200店舗としてきたのですが、例えば、新潟県は約230万人の人口に対して55店舗あります。新潟の人口は日本の約2%ですから、単純計算では50倍の約2,750店の出店が可能になります。
まず、地元でもある新潟の店舗を意識して、もっと収益性の高い強い店舗にしていきたい。そうすることで、全国のフランチャイズ加盟店さんが、新潟県○○市に特徴が似ている○○市へ出店を検討してみたいなど、より具体にイメージが描きやすくなります。「クルマで10分行けばハードオフがある」、日本全国を新潟県のようにしていきたいですね。
―― 数を増やすためには、同時に質を高めていく必要がある。地元・新潟がひとつのモデルケースとなるわけです。
山本 南北に長い新潟県の形は日本列島に似ていて、日本の縮図のようなイメージを抱いています。成功事例は都市部にも地方にも通用する。ここ3、4年は関東、関西へ積極的に出店していますが、地方や10万都市でも未出店の地域へも積極的に展開していく方針です。
■金太郎飴ではない店舗の“色”を生み出すのは“人”
―― 店舗とともに大きなテーマとなる「人材」と「在庫(買い取り)」についてはいかがですか。
山本 人材面では「好きを仕事に」を謳い、オーディオ好きや楽器好きの方に、好きなものを仕事にしていただいているのが特長です。以前は全国転勤がネックとなっていた時期もありましたが、現在は「地域限定社員」制度をつくり、地元により根差した働きができる環境も整えています。
採用に際しても、企画から集客までを自らで行った採用イベントを、ネーミングライツを持つHARD OFF ECOスタジアム新潟の会議室を会場に、初めてのトライアルとして、5月25日(土)・26日(日)に開催しました。新潟市近郊の店舗でチラシを配布、テレビCMも打ちました。チラシは裏面が履歴書になっていて、そこに記入して当日持参する仕組みにしました。24時間以内に合否を連絡するスピード勝負も特徴のひとつです。ハードオフが好きな方、ハードオフをよくご存じの方に参加していただいたこともあり、2日間で8名の優秀な方に合格を出させていただきました。
ハードオフらしい、ハードオフの魅力をより伝えることができるイベントは今後も行っていく予定です。日本国内へのさらなる出店、さらに、米国・台湾にも本格的に出店していきます。その時に、日本から店長を駐在として送り込みたい。いざ、アクセルを踏むときに慌てることがないよう、人材の育成・強化は大事なテーマと認識しています。
―― 在庫についてはいかがですか。
山本 買い取りに関しては大変好調です。CtoCのフリマアプリとはニーズが異なりますね。例えば、引越しで部屋中に売りたい商品が数多くあるときに、ひとつひとつ写真を撮ってネットで売ることはまずしません。多くのお客様が商品をまとめてリアル店舗に持って買取を希望されます。さらに、オーディオや楽器など専門性の高い商品では、リテラシーの高い販売員がいる店に売りたいと思うのが心情で、そこで、ハードオフの価値を認めていただけています。
―― 専門性の高さから、各店舗では店長やスタッフの個性が表れた店舗が多いとお聞きしたことがあります。
山本 ハードオフコーポレーションでは経営理念として、「社会のためになるか」「お客さまのためになるか」「社員・スタッフのためになるか」「会社のためになるか」を掲げています。店舗では基本としての掃除やあいさつはもちろんのことですが、さらに、店長や各スタッフの個性が出なければ面白くない、全国約900ある店舗の1店舗1店舗が違うべきだと考えています。
どの店舗でも高いレベルが維持されることは、チェーン店のあるべき姿であり、ハードオフもチェーン店ですが、どこを切っても金太郎飴ではいけない。置いてある商品も違うし、それぞれの店舗に店長やスタッフさんの個性が表れていることが大切だと考えています。まさに一期一会です。だからこそ、1日に4つも5つお店を回る “ハードオフ巡り”をされるお客様もいらっしゃるわけです。
―― “好きを仕事に”ですね。
山本 マニュアルはありますが、ガチガチに縛るものではありません。「こう並べなさい」「こう音を出しなさい」と指示することはできますが、それでは個性がどんどん失われてしまいます。ハードオフはワクワクするところ。そのための“色”を店舗ごと出していく必要があります。その“色”を生み出すのが“人”。「この人に売りたい」「この人から買いたい」という気持ちは、ネットにはない、リアル店舗ならではの大きな強みになります。
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