公開日 2022/07/02 10:00
マニアに“刺さる”レコード漫画『音盤紀行』はどうやって生まれたのか。作者・毛塚了一郎さんインタビュー
音楽遍歴から作品誕生の背景まで聞いた
音楽をテーマにした作品は多くあるが、そんな中、レコードをテーマにした漫画があることをご存知だろうか。KADOKAWAの漫画誌「青騎士」で連載中の『音盤紀行』という作品だ。
5月20日には待望の第1巻が刊行。レコード、そしてレコード屋愛のあふれる内容は音楽ファン・レコードファンにも刺さっているようで、作者にとって初の商業誌単行本ながら、早くも重版が決定したという。
実際に読んでみると、レコード屋独特の空気感、臭いのようなものが濃く伝わってくる。この作者、ガチだ。是非とも話を聞いてみたいということで、作者の毛塚了一郎先生にインタビューをさせていただいた。
■60's洋楽ロックからレコードの道へ
ーー毛塚先生は1990年生まれとのことなので、世代的には決してレコードに馴染みが深いわけではありませんよね。どのようなきっかけでレコードを聴くようになったのでしょうか?
毛塚了一郎先生(以下:毛塚):音楽自体が昔から好きで、家の近所にあったお店で、よく中古CDを買い漁っていたんです。江古田の「おと虫」さんという、もう閉店しちゃったお店なんですけど、そこはどちらかといえばレコードがメインのお店だったんですね。
最初はCDしか見てなかったのですが、大学生になったあたりでビートルズなど昔の洋楽を聴くようになって、「こういう音楽をレコードで聴いたらどうなんだろう」とレコード棚を覗くようになったのがきっかけです。
ーー毛塚先生が大学生の頃ということは、大体10年ちょっと前くらいでしょうか。ということは、今のようにアナログレコードが流行する前ですし、なんならiPodの全盛期くらいですよね。
毛塚:中学・高校の頃は当時の邦楽ロックなどを聴いていましたけど、大学生になってからは彼らに影響を与えた、起源になった音楽を遡っていく方に夢中になっていたので、そう考えるとレコードに辿り着くのも自然な流れだったのかなと思います。
ーーなるほど。今もビートルズなどの名前が出てきましたが、好きな音楽ジャンルとなると、具体的にどのあたりなんですか?
毛塚:ジャンルは色々ではありますが……昔からロックをよく聴いていましたから、今でも中心はロックですね。洋楽だと60年代くらい、ちょうどビートルズあたりの世代を最初に好きになって、そこから70年代、80年代と上っていく感じで聴いていました。
あと、中学生くらいの頃から沖縄音楽が好きなんですが、そういった流れもあってか、民族音楽も好きなんです。
ーーなんでも一時期は南米のプログレにハマっていたとか?
毛塚:南米のロック関係は面白いですよ。ビートルズとかが入ってきた時代から始まって、そういう英米の影響を受けながらも自分達のアイデンティティのある音楽を作ろう、という精神性があって。日本のロックもそういう時代を経ての今じゃないですか。なので最近は民族音楽と英米のポップミュージックの掛け合わせ、みたいな音楽が好きだったりします。
ーー日本でいうシティポップの南米バージョン、といった感じでしょうか。かなりディープですけど面白そうですね……。
■レコード屋ごとの“色”の違いに面白さがある
ーーレコードというと、人によってはかなり強いこだわりを持っていたりもしますが、毛塚先生はなにかこだわりなどお持ちですか?
毛塚:オーディオ的にこう、というこだわりはまだあまりないのですが、「このレコードはどのお店で買ったのか」は全部覚えているようにしています。
最近は色々なレコード店、特に個人経営のお店に足を運ぶようにしていまして、これまでに130店くらいに行ったのですが、個人店ってそれぞれに傾向があるじゃないですか。どんなジャンルを揃えているか、どんな雰囲気なのか、というような。そういうお店ごとの“色”の違いが面白いところだと思うんですよね。
そういうお店の色を記憶しておけば、買ったレコードを聴きながら「これを買ったお店はこうだったな」と思い出すことができますし、実際、漫画を描くときにも役に立っている部分があります。
ーー確かに『音盤紀行』を読んでいても、レコード愛と同時に“レコード屋愛”を強く感じました。ちなみにお好きな店、印象に残っている店などはありますか?
毛塚:やはり江古田のおと虫さんは印象深いですね。CDやレコードの他にもクラシックカメラだったり、漫画雑誌の「ガロ」だったりとサブカル系な物を置いているところで、小さいお店でしたが原体験という意味でもよく覚えています。当時はそこと、「ココナッツディスク」さんの江古田店によく行っていました。
あと、ここも閉店しちゃいましたけど、渋谷の「レコファン」さんもよく覚えています。すごく大きなお店でしたから全部見て回るのが大変で、毎回途中で疲れて帰っちゃってましたね(笑)。
他にも荻窪にある「月光社」さんは思い出深いですね。荻窪の学校に通っていたので、ずっと横目に見ながら通学していたんですけど、レコードを聴くようになって初めて入ってみたら、レコード針の販売ケースのような昔ながらのお店にしかないようなアイテムがいっぱいあって。ああいう昭和のレコード屋の雰囲気を残している場所ってあまりないので、あれば行ってみたいなと思っています。
ーーなるほど。しかし今の時代、音楽を聴くこと自体はサブスクなどで簡単、かつ手軽にできますよね。そんな中、毛塚先生にとって“あえて”レコードを選ぶ魅力とはなんでしょうか?
毛塚:個人的には、ジャケットの印刷やレーベルのデザインなど、全部をひっくるめた製品としてのレコードに魅力を感じているのかな、と思います。僕は大学でデザインを学んでいたので、当時、それらをひとつのモノとしてパッケージしたデザイン性に興味を惹かれた部分もあったのかなと。
それに、盤をセットして針を落として……と色々な作業を経て音楽を聴く、という行為も好きですね。サブスクやCDのようにボタン押して再生、というわけにはいかないですし、管理も大変だったりしますが、そういう手間のかかるところが結構好きだったりします。
5月20日には待望の第1巻が刊行。レコード、そしてレコード屋愛のあふれる内容は音楽ファン・レコードファンにも刺さっているようで、作者にとって初の商業誌単行本ながら、早くも重版が決定したという。
実際に読んでみると、レコード屋独特の空気感、臭いのようなものが濃く伝わってくる。この作者、ガチだ。是非とも話を聞いてみたいということで、作者の毛塚了一郎先生にインタビューをさせていただいた。
■60's洋楽ロックからレコードの道へ
ーー毛塚先生は1990年生まれとのことなので、世代的には決してレコードに馴染みが深いわけではありませんよね。どのようなきっかけでレコードを聴くようになったのでしょうか?
毛塚了一郎先生(以下:毛塚):音楽自体が昔から好きで、家の近所にあったお店で、よく中古CDを買い漁っていたんです。江古田の「おと虫」さんという、もう閉店しちゃったお店なんですけど、そこはどちらかといえばレコードがメインのお店だったんですね。
最初はCDしか見てなかったのですが、大学生になったあたりでビートルズなど昔の洋楽を聴くようになって、「こういう音楽をレコードで聴いたらどうなんだろう」とレコード棚を覗くようになったのがきっかけです。
ーー毛塚先生が大学生の頃ということは、大体10年ちょっと前くらいでしょうか。ということは、今のようにアナログレコードが流行する前ですし、なんならiPodの全盛期くらいですよね。
毛塚:中学・高校の頃は当時の邦楽ロックなどを聴いていましたけど、大学生になってからは彼らに影響を与えた、起源になった音楽を遡っていく方に夢中になっていたので、そう考えるとレコードに辿り着くのも自然な流れだったのかなと思います。
ーーなるほど。今もビートルズなどの名前が出てきましたが、好きな音楽ジャンルとなると、具体的にどのあたりなんですか?
毛塚:ジャンルは色々ではありますが……昔からロックをよく聴いていましたから、今でも中心はロックですね。洋楽だと60年代くらい、ちょうどビートルズあたりの世代を最初に好きになって、そこから70年代、80年代と上っていく感じで聴いていました。
あと、中学生くらいの頃から沖縄音楽が好きなんですが、そういった流れもあってか、民族音楽も好きなんです。
ーーなんでも一時期は南米のプログレにハマっていたとか?
毛塚:南米のロック関係は面白いですよ。ビートルズとかが入ってきた時代から始まって、そういう英米の影響を受けながらも自分達のアイデンティティのある音楽を作ろう、という精神性があって。日本のロックもそういう時代を経ての今じゃないですか。なので最近は民族音楽と英米のポップミュージックの掛け合わせ、みたいな音楽が好きだったりします。
ーー日本でいうシティポップの南米バージョン、といった感じでしょうか。かなりディープですけど面白そうですね……。
■レコード屋ごとの“色”の違いに面白さがある
ーーレコードというと、人によってはかなり強いこだわりを持っていたりもしますが、毛塚先生はなにかこだわりなどお持ちですか?
毛塚:オーディオ的にこう、というこだわりはまだあまりないのですが、「このレコードはどのお店で買ったのか」は全部覚えているようにしています。
最近は色々なレコード店、特に個人経営のお店に足を運ぶようにしていまして、これまでに130店くらいに行ったのですが、個人店ってそれぞれに傾向があるじゃないですか。どんなジャンルを揃えているか、どんな雰囲気なのか、というような。そういうお店ごとの“色”の違いが面白いところだと思うんですよね。
そういうお店の色を記憶しておけば、買ったレコードを聴きながら「これを買ったお店はこうだったな」と思い出すことができますし、実際、漫画を描くときにも役に立っている部分があります。
ーー確かに『音盤紀行』を読んでいても、レコード愛と同時に“レコード屋愛”を強く感じました。ちなみにお好きな店、印象に残っている店などはありますか?
毛塚:やはり江古田のおと虫さんは印象深いですね。CDやレコードの他にもクラシックカメラだったり、漫画雑誌の「ガロ」だったりとサブカル系な物を置いているところで、小さいお店でしたが原体験という意味でもよく覚えています。当時はそこと、「ココナッツディスク」さんの江古田店によく行っていました。
あと、ここも閉店しちゃいましたけど、渋谷の「レコファン」さんもよく覚えています。すごく大きなお店でしたから全部見て回るのが大変で、毎回途中で疲れて帰っちゃってましたね(笑)。
他にも荻窪にある「月光社」さんは思い出深いですね。荻窪の学校に通っていたので、ずっと横目に見ながら通学していたんですけど、レコードを聴くようになって初めて入ってみたら、レコード針の販売ケースのような昔ながらのお店にしかないようなアイテムがいっぱいあって。ああいう昭和のレコード屋の雰囲気を残している場所ってあまりないので、あれば行ってみたいなと思っています。
ーーなるほど。しかし今の時代、音楽を聴くこと自体はサブスクなどで簡単、かつ手軽にできますよね。そんな中、毛塚先生にとって“あえて”レコードを選ぶ魅力とはなんでしょうか?
毛塚:個人的には、ジャケットの印刷やレーベルのデザインなど、全部をひっくるめた製品としてのレコードに魅力を感じているのかな、と思います。僕は大学でデザインを学んでいたので、当時、それらをひとつのモノとしてパッケージしたデザイン性に興味を惹かれた部分もあったのかなと。
それに、盤をセットして針を落として……と色々な作業を経て音楽を聴く、という行為も好きですね。サブスクやCDのようにボタン押して再生、というわけにはいかないですし、管理も大変だったりしますが、そういう手間のかかるところが結構好きだったりします。
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