公開日 2011/11/10 16:04
大日本印刷、音楽に雑音データを埋め込む電子透かし技術を開発 − 違法コピーするとノイズが発生
「ゲンコーダ Mark for COPY PROTECT」
大日本印刷(株)は、音楽コンテンツを違法にコピーすると、再生時に雑音を発生させて感傷を妨害する雑音データを埋め込む電子透かし技術「ゲンコーダ Mark for COPY PROTECT」を開発した。
音楽コンテンツのクオリティーを損なうことなく、低コストで容易に雑音データを埋め込めるという技術。違法にコピーされた音楽コンテンツを既存のAV機器で再生すると雑音を生じさせることができる。これにより抑止効果が見込まれることから「音楽著作権の保護対策として最適」としている。
人間の聴覚が知覚できる音波帯域は20Hz〜20kHzと言われており、音楽用CDや多くのAV機器はこの帯域に対応している。一方、レコーダーやマイクロフォンなどの音響入力機器の多くは、人間の聴覚よりも狭い200Hz前後〜12kHz前後の音波帯域に対応。インターネット配信用などに音楽コンテンツの録音や圧縮を行う場合、この狭い音波帯域のみを利用する場合も多い。
本技術では、人間の聴覚と音響入力機器の感度範囲の差を利用し、特定の帯域に雑音データを埋め込むことで、違法コピーした音源を再生すると雑音を発生させることができる。妨害雑音を発生させる仕組みには2種の方式があり、1方式のみ、または両方式を組み合わせての利用が可能だ。
1種類めが、聴覚マスキングを利用した「妨害雑音:X」という方式。同方式では20Hz〜20kHzの音源のうち、下限部の20Hz〜400Hzの帯域を20Hz〜200Hzの「A帯域」と200Hz〜400Hzの「B帯域」に分ける。レコーダーなどの音響入力機器が対応する音波の下限付近のB帯域に、A帯域よりも音が高く、音量が小さい「妨害雑音:X」を、本来のB帯域の音成分に重ねて埋め込む。
このA帯域よりも周波数が高いB帯域に「妨害雑音:X」を埋め込まれた状況では、「妨害雑音:X」が聞こえにくくなる「聴覚マスキング」という現象が起きるため、通常の再生では妨害雑音の影響は出ない。
一方で、この音源を音響入力機器でコピーすると、音波帯域が200Hz〜12kHzに狭められてA帯域の音が消失するため、聴覚マスキングが作用せず「妨害雑音:X」が明確に聞こえるようになる。
2種類めの方式は、音脈分凝を利用した「妨害雑音:Y」という方法。こちらでも上記と同様、可聴域上限部の6kHz〜18kHzについて、6kHz〜12kHzのC帯域と12kHz〜18kHzのD帯域に分ける。そして、音響入力機器が対応する上限付近のC帯域に、本来のC帯域の音成分に強弱を加えた「妨害雑音:Y1」を、D帯域にはC帯域と正反対の関係になる強弱を加えた「妨害雑音:Y2」を埋め込む。
通常の再生時には、人間の脳がC帯域・D帯域双方の強弱変化を平準化しようとする「補完作用(音脈分凝)」が働き、この影響により「Y1、Y2」は聞こえない。だが音響入力機器でコピーするとD帯域の音が消失するため音脈分凝が作用せず、「妨害雑音:Y1」を含んだC帯域の音が再生され、違和感を感じるようになる。
現在、多くの音楽コンテンツはDRM(Digital Rights Management)によって違法コピー防止を図っている。しかし再生されてスピーカーから出る音にはDRMがかかっておらず、性能の高い録音機器などを使えば一定の品質で録音できてしまうため、DRMを外して違法コピーされた音楽コンテンツの流通を抑止しきれていなかったと同社は指摘。
また、電子透かしについても現状では、インターネット上にアップロードされている音楽コンテンツを電子透かし専用ソフトで読み取り、違法かどうかをチェックして著作者が自らの権利を主張するのが実態で、違法コピーを直接的に抑止できるものではないとコメント。こうした問題に対処するため、今回の技術を開発したと説明している。
同社では今後、本技術の実用化を目指して評価実験を行い、音楽コンテンツの制作・配信事業者に対し、違法な複製・流通の抑止についての提案を行っていく。なお開発成果を、11月14日に東北大学電気通信研究所で開催される「電子情報通信学会・マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント研究会」で発表する。
※【追記】
上記のことから、本技術を用いると、CDからリッピングする際などでも、MP3などの非可逆圧縮フォーマットを用いるとノイズが発生する。WAVなど非圧縮のリッピング、およびロスレスフォーマットでのリッピングであればノイズは発生せず、通常どおり音楽再生が行えるという。
音楽コンテンツのクオリティーを損なうことなく、低コストで容易に雑音データを埋め込めるという技術。違法にコピーされた音楽コンテンツを既存のAV機器で再生すると雑音を生じさせることができる。これにより抑止効果が見込まれることから「音楽著作権の保護対策として最適」としている。
人間の聴覚が知覚できる音波帯域は20Hz〜20kHzと言われており、音楽用CDや多くのAV機器はこの帯域に対応している。一方、レコーダーやマイクロフォンなどの音響入力機器の多くは、人間の聴覚よりも狭い200Hz前後〜12kHz前後の音波帯域に対応。インターネット配信用などに音楽コンテンツの録音や圧縮を行う場合、この狭い音波帯域のみを利用する場合も多い。
本技術では、人間の聴覚と音響入力機器の感度範囲の差を利用し、特定の帯域に雑音データを埋め込むことで、違法コピーした音源を再生すると雑音を発生させることができる。妨害雑音を発生させる仕組みには2種の方式があり、1方式のみ、または両方式を組み合わせての利用が可能だ。
1種類めが、聴覚マスキングを利用した「妨害雑音:X」という方式。同方式では20Hz〜20kHzの音源のうち、下限部の20Hz〜400Hzの帯域を20Hz〜200Hzの「A帯域」と200Hz〜400Hzの「B帯域」に分ける。レコーダーなどの音響入力機器が対応する音波の下限付近のB帯域に、A帯域よりも音が高く、音量が小さい「妨害雑音:X」を、本来のB帯域の音成分に重ねて埋め込む。
このA帯域よりも周波数が高いB帯域に「妨害雑音:X」を埋め込まれた状況では、「妨害雑音:X」が聞こえにくくなる「聴覚マスキング」という現象が起きるため、通常の再生では妨害雑音の影響は出ない。
一方で、この音源を音響入力機器でコピーすると、音波帯域が200Hz〜12kHzに狭められてA帯域の音が消失するため、聴覚マスキングが作用せず「妨害雑音:X」が明確に聞こえるようになる。
2種類めの方式は、音脈分凝を利用した「妨害雑音:Y」という方法。こちらでも上記と同様、可聴域上限部の6kHz〜18kHzについて、6kHz〜12kHzのC帯域と12kHz〜18kHzのD帯域に分ける。そして、音響入力機器が対応する上限付近のC帯域に、本来のC帯域の音成分に強弱を加えた「妨害雑音:Y1」を、D帯域にはC帯域と正反対の関係になる強弱を加えた「妨害雑音:Y2」を埋め込む。
通常の再生時には、人間の脳がC帯域・D帯域双方の強弱変化を平準化しようとする「補完作用(音脈分凝)」が働き、この影響により「Y1、Y2」は聞こえない。だが音響入力機器でコピーするとD帯域の音が消失するため音脈分凝が作用せず、「妨害雑音:Y1」を含んだC帯域の音が再生され、違和感を感じるようになる。
現在、多くの音楽コンテンツはDRM(Digital Rights Management)によって違法コピー防止を図っている。しかし再生されてスピーカーから出る音にはDRMがかかっておらず、性能の高い録音機器などを使えば一定の品質で録音できてしまうため、DRMを外して違法コピーされた音楽コンテンツの流通を抑止しきれていなかったと同社は指摘。
また、電子透かしについても現状では、インターネット上にアップロードされている音楽コンテンツを電子透かし専用ソフトで読み取り、違法かどうかをチェックして著作者が自らの権利を主張するのが実態で、違法コピーを直接的に抑止できるものではないとコメント。こうした問題に対処するため、今回の技術を開発したと説明している。
同社では今後、本技術の実用化を目指して評価実験を行い、音楽コンテンツの制作・配信事業者に対し、違法な複製・流通の抑止についての提案を行っていく。なお開発成果を、11月14日に東北大学電気通信研究所で開催される「電子情報通信学会・マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント研究会」で発表する。
※【追記】
上記のことから、本技術を用いると、CDからリッピングする際などでも、MP3などの非可逆圧縮フォーマットを用いるとノイズが発生する。WAVなど非圧縮のリッピング、およびロスレスフォーマットでのリッピングであればノイズは発生せず、通常どおり音楽再生が行えるという。