公開日 2015/03/27 19:52
LINN、新DSシリーズ発表会を開催 - ギラード社長がクロック強化や新低域補正機能の詳細を明かす
「“部屋そのものがスピーカー”という考え方になっていく」
リンジャパンは、先日発表された第三世代となる新DSシリーズ(関連ニュース)、およびDSシリーズの最新アップデート(関連ニュース)について、発表会を開催。英国リンプロダクツの社長であるギラード・ティーフェンブルン氏が来日し、新製品とアップデートによって実現した「スペース・オプティマイゼーション」機能について説明を行った。
こちらの記事でもお伝えしたとおり、今回刷新されたのは旗艦モデル「KLIMAX DS」をはじめとする下記の4機種。各モデルでオーディオ基板が刷新され、精度を向上させたクロックを搭載。オーディオ信号や電源供給の経路を適化するために8層基板を採用した。
<新DSシリーズ・ラインナップ>
KLIMAX DS/2 ¥2,400,000(税抜)
AKURATE DS/K/2 ¥900,000(税抜)※日本限定仕様
MAJIK DS/2 ¥350,000(税抜)
MAJIK DSM/2 ¥500,000(税抜)
■クロック回路を刷新して、さらなるジッター抑制を実現
発表時には断片的であった新DSシリーズの情報だったが、今回の発表会にてその詳細が明らかになった。特に大きな変更点となったのは新DS各モデルのクロック回路だ。前世代のDSに搭載されているオーディオクロック素子はジッターレベルの低い優れたものだったが、発信器から出力されるクロックは、1つのロジック回路を通過するだけでジッターを増加させてしまっていたという。リンは、ジッター発生の要因がロジック回路への給電経路に起因するノイズであることを発見。このノイズが個々のクロックエッジのタイミング偏差(クロックが不安定になること)を起こしていることを突き止めたのだという。
そこで同社は、KLIMAX DSのクロック発振器とDACの間に存在する全てのロジック回路を排除。この設計変更により、ジッターを基板上の実測値で10.3354psから5.6675psまで低減させた。またAKURATE DSについても従来モデルの11.66psから6.58psにまでジッターを低減。ギラード社長は「KLIMAX DS/2、AKURATE DS/2ともにほぼジッターを半減した。この数値はハイエンドオーディオ業界のなかでもたぐいまれな数値だと考えている」と述べていた。なお、このクロックの変更はKLIMAX DS/2はもちろん、そのほかの3機種でも行われたという。
■DAC部の基板レイアウトを最適化することでさらなる低歪を実現
D/Aコンバーター部の基板レイアウトの変更も重要な変更ポイントとなる。DACチップは従来通りだが、新DSでは新しい回路レイアウト技術を用いて、さらなる低歪特性を実現した。DACチップはアナログ電力供給に対して非常にセンシティブで、電源がクリーンであるというだけでは音質対策が十分でないため、DACに送り込まれる基板上の電源の経路を変更する必要があったという。そのため新DSでは、オーディオ製品では珍しいという8層基板を採用。立体的にマッピングされた回路を用いて電源・信号経路を最適化することで、従来機以上の歪の低減を可能とした。
■新モデル4機種全てがEXAKT LINK端子を搭載
今回のモデルチェンジにより、4つの新DSにEXAKT LINK端子が搭載。EXAKTシステムへのシンプルなアップグレードが可能となった。EXAKTシステムは、スピーカー内部にアンプ、デコードやD/A変換などを行うEXAKT ENGINEを搭載した「EXAKTスピーカー」により、スピーカーまで音楽信号を損失なくデジタル伝送できるという独自システム。従来は専用のEXAKTスピーカーとEXAKTヘッドユニットで実現するものだったが、今後は「新DSユーザーがEXAKTスピーカーを買い足してシステムアップする」ということも可能になる。なお各モデルのEXAKT LINK端子は、メイン基板のデジタル部にレイアウトすることでアナログ回路部との干渉を防いでいる。
従来のDSを使用しているユーザーに対して、新DSへのアップグレードサービスも実施。対象となるのはKLIMAX DS、およびAKUTATE DSの2機種のみで、オーディオ基板のみを交換する方式となる。価格などの詳細はこちらの記事で紹介している。
さらに、アップグレードを行った際に交換して不要となった旧基板を、シンプルな筐体に納めて“もう一台のDS”に仕立てる「RENEWサービス」も再開。今後は恒久的なサービスと行っていく。価格などの詳細は追って発表されるとのこと。
■全DSでオプティマイゼーションが使用可能に。一方で「EXAKTの優位は変わらない」
今回の発表会では、新DSの発表と共に、DSの最新アップデートについても大々的に取り上げられた。アップデートの目玉となるのは、これまでEXAKTシステムのみで可能だった音場補正機能「スペース・オプティマイゼーション」機能が、2007年のKLIMAX DS初号機発売以降の全てのDS、DSMで使用可能となったことだ(関連ニュース)。ギラード氏は「リンは、製品を過去に購入したユーザーから、将来購入するユーザーにまで、同様に最高の環境で音楽を聴けるように努力し続ける」と同社の姿勢をアピールしていた。
スペース・オプティマイゼーションは、部屋のサイズなど再生環境の情報を入力し、組み合わせるスピーカーを選択することで、最適な音場補正を行う機能だ。今回のアップデートでは設定項目も強化され、「スピーカーの設置位置の高さの入力」「四方の壁の構造」「床・天井の構造」「窓・ドアの有無」などの選択が追加。より精度の高い補正が可能となった。
本機能を使うためには、組み合わせるスピーカーに本機能が対応している必要がある。当然リンのスピーカーは主要モデルが対応済みだが、他社のスピーカーについても対応を開始。他社スピーカーとの組み合わせでもスペース・オプティマイゼーションの機能が使用できるようになった。
B&W「805 Diamond」がスペース・オプティマイゼーション対応したことはすでにアナウンスされていたが、ほかにも現時点で30モデルの他社スピーカーが対応済みとのこと。ギラード氏は「これから数週間かけて50モデル、今夏の終わりには100モデルを対応させる」とコメントしていた。
現時点(2015年3月現在)で対応している具体的なモデルは、B&Wが最も多く「Nautilus」「802 Diamond」「804 Diamond」「683 S2」「685 S2」「686 S2」「CM1 S2」「CM6 S2」「CM8 S2」「CM9 S2」。その他、KEF「Blade」「Blade Two」「LS50」、MONITOR AUDIO「Silver6」「Silver8」、SPENDOR「A3」「A5r」「A66」などが対応している。
■スペース・オプティマイゼーションがスピーカーの概念を変える
スペース・オプティマイゼーションはアンプを内蔵したDSMシリーズにも対応している。「外部入力に対しても本機能は有効なのなか」という質問に対してギラード氏は、「デジタル信号に対しては有効。そしてDSMはアナログ入力を内部でデジタル処理するので、全ての入力に対して有効と言える」と説明した。
スペース・オプティマイゼーションの設定を行うDS用設定ソフトウェア「Konfig」も強化され、より直感的に項目が入力ができるグラフィカルなデザインとなった。設定も保存でき、2通りの補正値を交互に試すといったことも可能となる。
またギラード氏は「スペース・オプティマイゼーションが全てのDSで使用可能となると、これまで本機能が使用可能だったEXAKTシステムの優位性がなくなると思われるかもしれないが、そんなことはない。EXAKTではさらに精度の高い補正が可能になる」と説明。具体的にはEXAKTシステムでは「スペース・オプティマイゼーション+」機能が用意される。DSではソフトウェアレベルでの対応だが、EXAKTシステムではハードウェアからの対応となるため、より高精度かつ踏み込んだ補正ができるとのこと、具体的には、スピーカーユニットの個体差を測定しての補正などが「+」では行える。
さらにギラード氏は「DSにおけるソフトウェアレベルでのオプティマイゼーションは、すでにポテンシャルに対してギリギリまで行っている。しかしEXAKTシステムにおける『+』にはまだまだ機能の追加や向上を行う伸びしろがある。EXAKTシステムのユーザーはアップデートでこれら機能を日々追加していくことが可能だ。リンにとっての現段階での究極はEXAKTシステムであり、DSにおけるスペース・オプティマイゼーションは『EXAKTへの旅の第一歩』だ」と述べていた。
スペース・オプティマイゼーションについて、ギラード氏の説明で印象的だったのは以下の言葉。「スペース・オプティマイゼーションを念頭に置いたとき、もはや部屋自体がスピーカーであると考えることができる。そうなると今後、スピーカーの形やサイズの概念もかわっていくだろう」。この辺りに、ネットワーク再生で先行したリンが、すでに次のステージを見据えていることが窺えると感じた。
なお、以前も説明があったとおり(関連ニュース)、スペース・オプティマイゼーションで補正を行うのは80Hz以下の特に低い周波数のみとのこと。同社の研究では100Hz以上の帯域を補正するとボーカルの帯域にまで補正がかかるため、忠実な再現性に影響が出てしまうのだという。また、補正は「ピークをつぶす」ことで行い、基本的には「ディップを持ち上げる」ことは行っていないという。ギラード氏はその理由を「ディップの部分にエネルギーを足してもあまり意味がなく、音質的にはディップの影響はピークのそれより少ないと考えている。ピークを消すことで、後ろに隠れてしまっていた音楽を引き出すことができる」と説明していた。
■DSの「TIDAL」対応は大きな魅力。早く日本でもサービスインしてほしい
プレゼンテーションの最後では、ギラード氏はDSシリーズがロスレスストリーミングサービス「TAIDAL」の再生に対応(関連ニュース)したことについても言及。「TIDALはCDクオリティでストリーミングを行うサービスです。非常に素晴らしいもので、いわばクラウド上のNASに保存された2,200万曲のCDクオリティの音源を、家庭内のサーバーに保存した音源と分け隔てなく、DSで自由に再生することができるのです。どんなに素晴らしいものか説明したいくらいですが、残念ながら日本ではサービスが開始されていません。TIDALはDSオーナーにも非常に好評で、すでに世界で3,000人を超えるDSオーナーがTIDALに登録しています。また、TIDALを広めていく上でも、リンで再生できる点はマーケティング的に非常に有効と考えています。今日お越しいただいたプレスの方々には、ぜひ日本でTIDALのサービスが始められるように声をあげていただければ」と話した。
「TIDALはハイレゾ・ストリーミングを行うと発表している(関連ニュース)が、DS側で対応へのロードマップはあるのか」と質問を向けると、「TIDALは今年中にハイレゾ・ストリーミングを始めたいと言っているが、現時点では難しいだろう。個人的には早く24bitのストリーミングに対応したいが、サービスも含めて実現に至るまでには3年程度かかるのでは」と答えてくれた。
こちらの記事でもお伝えしたとおり、今回刷新されたのは旗艦モデル「KLIMAX DS」をはじめとする下記の4機種。各モデルでオーディオ基板が刷新され、精度を向上させたクロックを搭載。オーディオ信号や電源供給の経路を適化するために8層基板を採用した。
<新DSシリーズ・ラインナップ>
KLIMAX DS/2 ¥2,400,000(税抜)
AKURATE DS/K/2 ¥900,000(税抜)※日本限定仕様
MAJIK DS/2 ¥350,000(税抜)
MAJIK DSM/2 ¥500,000(税抜)
■クロック回路を刷新して、さらなるジッター抑制を実現
発表時には断片的であった新DSシリーズの情報だったが、今回の発表会にてその詳細が明らかになった。特に大きな変更点となったのは新DS各モデルのクロック回路だ。前世代のDSに搭載されているオーディオクロック素子はジッターレベルの低い優れたものだったが、発信器から出力されるクロックは、1つのロジック回路を通過するだけでジッターを増加させてしまっていたという。リンは、ジッター発生の要因がロジック回路への給電経路に起因するノイズであることを発見。このノイズが個々のクロックエッジのタイミング偏差(クロックが不安定になること)を起こしていることを突き止めたのだという。
そこで同社は、KLIMAX DSのクロック発振器とDACの間に存在する全てのロジック回路を排除。この設計変更により、ジッターを基板上の実測値で10.3354psから5.6675psまで低減させた。またAKURATE DSについても従来モデルの11.66psから6.58psにまでジッターを低減。ギラード社長は「KLIMAX DS/2、AKURATE DS/2ともにほぼジッターを半減した。この数値はハイエンドオーディオ業界のなかでもたぐいまれな数値だと考えている」と述べていた。なお、このクロックの変更はKLIMAX DS/2はもちろん、そのほかの3機種でも行われたという。
■DAC部の基板レイアウトを最適化することでさらなる低歪を実現
D/Aコンバーター部の基板レイアウトの変更も重要な変更ポイントとなる。DACチップは従来通りだが、新DSでは新しい回路レイアウト技術を用いて、さらなる低歪特性を実現した。DACチップはアナログ電力供給に対して非常にセンシティブで、電源がクリーンであるというだけでは音質対策が十分でないため、DACに送り込まれる基板上の電源の経路を変更する必要があったという。そのため新DSでは、オーディオ製品では珍しいという8層基板を採用。立体的にマッピングされた回路を用いて電源・信号経路を最適化することで、従来機以上の歪の低減を可能とした。
■新モデル4機種全てがEXAKT LINK端子を搭載
今回のモデルチェンジにより、4つの新DSにEXAKT LINK端子が搭載。EXAKTシステムへのシンプルなアップグレードが可能となった。EXAKTシステムは、スピーカー内部にアンプ、デコードやD/A変換などを行うEXAKT ENGINEを搭載した「EXAKTスピーカー」により、スピーカーまで音楽信号を損失なくデジタル伝送できるという独自システム。従来は専用のEXAKTスピーカーとEXAKTヘッドユニットで実現するものだったが、今後は「新DSユーザーがEXAKTスピーカーを買い足してシステムアップする」ということも可能になる。なお各モデルのEXAKT LINK端子は、メイン基板のデジタル部にレイアウトすることでアナログ回路部との干渉を防いでいる。
従来のDSを使用しているユーザーに対して、新DSへのアップグレードサービスも実施。対象となるのはKLIMAX DS、およびAKUTATE DSの2機種のみで、オーディオ基板のみを交換する方式となる。価格などの詳細はこちらの記事で紹介している。
さらに、アップグレードを行った際に交換して不要となった旧基板を、シンプルな筐体に納めて“もう一台のDS”に仕立てる「RENEWサービス」も再開。今後は恒久的なサービスと行っていく。価格などの詳細は追って発表されるとのこと。
■全DSでオプティマイゼーションが使用可能に。一方で「EXAKTの優位は変わらない」
今回の発表会では、新DSの発表と共に、DSの最新アップデートについても大々的に取り上げられた。アップデートの目玉となるのは、これまでEXAKTシステムのみで可能だった音場補正機能「スペース・オプティマイゼーション」機能が、2007年のKLIMAX DS初号機発売以降の全てのDS、DSMで使用可能となったことだ(関連ニュース)。ギラード氏は「リンは、製品を過去に購入したユーザーから、将来購入するユーザーにまで、同様に最高の環境で音楽を聴けるように努力し続ける」と同社の姿勢をアピールしていた。
スペース・オプティマイゼーションは、部屋のサイズなど再生環境の情報を入力し、組み合わせるスピーカーを選択することで、最適な音場補正を行う機能だ。今回のアップデートでは設定項目も強化され、「スピーカーの設置位置の高さの入力」「四方の壁の構造」「床・天井の構造」「窓・ドアの有無」などの選択が追加。より精度の高い補正が可能となった。
本機能を使うためには、組み合わせるスピーカーに本機能が対応している必要がある。当然リンのスピーカーは主要モデルが対応済みだが、他社のスピーカーについても対応を開始。他社スピーカーとの組み合わせでもスペース・オプティマイゼーションの機能が使用できるようになった。
B&W「805 Diamond」がスペース・オプティマイゼーション対応したことはすでにアナウンスされていたが、ほかにも現時点で30モデルの他社スピーカーが対応済みとのこと。ギラード氏は「これから数週間かけて50モデル、今夏の終わりには100モデルを対応させる」とコメントしていた。
現時点(2015年3月現在)で対応している具体的なモデルは、B&Wが最も多く「Nautilus」「802 Diamond」「804 Diamond」「683 S2」「685 S2」「686 S2」「CM1 S2」「CM6 S2」「CM8 S2」「CM9 S2」。その他、KEF「Blade」「Blade Two」「LS50」、MONITOR AUDIO「Silver6」「Silver8」、SPENDOR「A3」「A5r」「A66」などが対応している。
■スペース・オプティマイゼーションがスピーカーの概念を変える
スペース・オプティマイゼーションはアンプを内蔵したDSMシリーズにも対応している。「外部入力に対しても本機能は有効なのなか」という質問に対してギラード氏は、「デジタル信号に対しては有効。そしてDSMはアナログ入力を内部でデジタル処理するので、全ての入力に対して有効と言える」と説明した。
スペース・オプティマイゼーションの設定を行うDS用設定ソフトウェア「Konfig」も強化され、より直感的に項目が入力ができるグラフィカルなデザインとなった。設定も保存でき、2通りの補正値を交互に試すといったことも可能となる。
またギラード氏は「スペース・オプティマイゼーションが全てのDSで使用可能となると、これまで本機能が使用可能だったEXAKTシステムの優位性がなくなると思われるかもしれないが、そんなことはない。EXAKTではさらに精度の高い補正が可能になる」と説明。具体的にはEXAKTシステムでは「スペース・オプティマイゼーション+」機能が用意される。DSではソフトウェアレベルでの対応だが、EXAKTシステムではハードウェアからの対応となるため、より高精度かつ踏み込んだ補正ができるとのこと、具体的には、スピーカーユニットの個体差を測定しての補正などが「+」では行える。
さらにギラード氏は「DSにおけるソフトウェアレベルでのオプティマイゼーションは、すでにポテンシャルに対してギリギリまで行っている。しかしEXAKTシステムにおける『+』にはまだまだ機能の追加や向上を行う伸びしろがある。EXAKTシステムのユーザーはアップデートでこれら機能を日々追加していくことが可能だ。リンにとっての現段階での究極はEXAKTシステムであり、DSにおけるスペース・オプティマイゼーションは『EXAKTへの旅の第一歩』だ」と述べていた。
スペース・オプティマイゼーションについて、ギラード氏の説明で印象的だったのは以下の言葉。「スペース・オプティマイゼーションを念頭に置いたとき、もはや部屋自体がスピーカーであると考えることができる。そうなると今後、スピーカーの形やサイズの概念もかわっていくだろう」。この辺りに、ネットワーク再生で先行したリンが、すでに次のステージを見据えていることが窺えると感じた。
なお、以前も説明があったとおり(関連ニュース)、スペース・オプティマイゼーションで補正を行うのは80Hz以下の特に低い周波数のみとのこと。同社の研究では100Hz以上の帯域を補正するとボーカルの帯域にまで補正がかかるため、忠実な再現性に影響が出てしまうのだという。また、補正は「ピークをつぶす」ことで行い、基本的には「ディップを持ち上げる」ことは行っていないという。ギラード氏はその理由を「ディップの部分にエネルギーを足してもあまり意味がなく、音質的にはディップの影響はピークのそれより少ないと考えている。ピークを消すことで、後ろに隠れてしまっていた音楽を引き出すことができる」と説明していた。
■DSの「TIDAL」対応は大きな魅力。早く日本でもサービスインしてほしい
プレゼンテーションの最後では、ギラード氏はDSシリーズがロスレスストリーミングサービス「TAIDAL」の再生に対応(関連ニュース)したことについても言及。「TIDALはCDクオリティでストリーミングを行うサービスです。非常に素晴らしいもので、いわばクラウド上のNASに保存された2,200万曲のCDクオリティの音源を、家庭内のサーバーに保存した音源と分け隔てなく、DSで自由に再生することができるのです。どんなに素晴らしいものか説明したいくらいですが、残念ながら日本ではサービスが開始されていません。TIDALはDSオーナーにも非常に好評で、すでに世界で3,000人を超えるDSオーナーがTIDALに登録しています。また、TIDALを広めていく上でも、リンで再生できる点はマーケティング的に非常に有効と考えています。今日お越しいただいたプレスの方々には、ぜひ日本でTIDALのサービスが始められるように声をあげていただければ」と話した。
「TIDALはハイレゾ・ストリーミングを行うと発表している(関連ニュース)が、DS側で対応へのロードマップはあるのか」と質問を向けると、「TIDALは今年中にハイレゾ・ストリーミングを始めたいと言っているが、現時点では難しいだろう。個人的には早く24bitのストリーミングに対応したいが、サービスも含めて実現に至るまでには3年程度かかるのでは」と答えてくれた。