公開日 2018/03/31 15:49
家族連れなど“新しいオーディオファン”で賑わう第3回「北陸オーディオショウ」レポート
気軽に足を運べるイベント
北陸地方最大のオーディオイベント、第3回「北陸オーディオショウ」が、本日3月31日と明日4月1日の2日間に渡って開催されている。多くの来場者で賑わうイベントの模様をレポートしたい。
2016年からスタートし、本年で3回目を迎えた北陸オーディオショウ。今回は国内外メーカー37社が協賛し、オーディオ製品の展示や試聴、ホームシアターシステム体験、生演奏&生録音などの企画が多く用意されている。
本イベントの特徴は、来場者と出展内容にある。会場には、家族連れやご夫婦、親子、学生の友人同士、女性などが3割程度を占める。そしてその多くが、オーディオを趣味とするオーディオファイルではなく、よりカジュアルに「音楽再生用のデザイン家電を見に来た」方々だ。
これは会場が富山県内でもアクセスの良い富山国際会議場の2階で、たまたま立ち寄った方が多いこともあるだろうが、出展される製品の幅広さも大きな要因となっている。
受付からすぐ目に入るのは、ヘッドホン、システムコンポ、Bluetoothスピーカーやスマートスピーカー、レコード、CD/レコードの販売コーナー。ジャンルが多岐にわたっており、試聴しやすい、また手に取りやすいように配置されている。
スマートスピーカー「JBL LINK」や、アウトドアユースも想定したBluetoothスピーカーを展示するハーマンインターナショナルの担当者は「ベテランから高校生くらいの方まで、年齢層が幅広いイベントなので、入り口付近のブースには手頃な価格の製品を中心に展示しています。奥にはMark Levinsonなども用意していますが、オーディオをこれから始めてみたいという方に、まずは気軽に楽しめるということを知っていただければ」と語る。
ほかのブースでも、スマートフォンとの組み合わせで単体再生が可能なモデルや、多機能で、初期投資を抑えられるエントリー機などが目立つ。これらのモデルは、省スペースで設置しやすいというメリットもあり、「リビングに導入してみようか」など、具体的なイメージが浮かびやすい。イベントの根底に「誰でも楽しめるオーディオ」という理念が感じられるのだ。
一方、本格的なオーディオシステムのサウンドもしっかりと確かめることができる。各ブースは、それぞれのシステムの音が邪魔にならないよう、タイムスケジュールに沿った試聴プラグラムを実施している。
タイムスケジュールに合わせて動けば「両方聴きたいのに同時刻だから片方を諦めないといけない」といったことが起こらないし、また再生が続くのでメーカー担当者に話を聞きたくても遠慮してしまう、ということも避けられる。実際に来場者は、次の試聴までの待ち時間で別ブースを回ったり、担当者に質問するなどしており、活発に会場内を動いていた。
富山在住の演奏家である渋谷優花(Vn)、守護菊野(Via)、木村有子(Vc)による生演奏を、その場でハイレゾ録音し、FOCALのスピーカーで再生するという企画も人気だ。室内では壁のギリギリまで使っていたが、それでも立ち見の人で隙間なく埋まるほどだった。その後の再生時にも、誰も席を立つことはなく、違いにじっくりと演奏に耳を傾けていた。演奏者も「凄くクリアで、こうした録音では低音が薄くなりがちですが、チェロもしっかりと響いていました」とハイレゾとオーディオシステムの再生音に嬉しそうな様子を見せた。
いくつかのブースでは、新製品をいち早く聴くこともできた。アキュフェーズは、DDS方式FMステレオチューナー「T-1200」を用いたラジオ再生をデモ。「感度を限界まで高めている一方で低雑音特性の復調方式で高S/Nを実現しています」というハイエンドチューナーには、「これがラジオ放送の音?」と驚く声もあった。発売は4月末ごろを予定しており、価格は360,000円(税抜)。
またフォステクスでは、4月上旬に発表予定という音楽再生用サブウーファー「CW250D」を再生。新設計のアンプを搭載しており、1次側の電源、2次側のコンデンサーを見直し、動特性の改善を図ったという。そのサウンドについては「もたつきがなく、S/Nが良くなりました」とアピール。ステレオ使用がオススメとのこと。価格は予価で110,000円。同ブースは完実電気と共同の部屋となっており、同社が取り扱うREGAやPS Audioといった製品との組み合わせでサウンドが確認できる。
デジタルオーディオ再生のノウハウが学べる「デジ研」も、北陸オーディオショウで好評の企画だ。逆木 一氏が講師を務める本企画では、用意された部屋はずっと満員。これからUSB/ネットオーディオを始めてみたいというオーディオファンのほか、デジタルネイティブ世代の若い方の姿も多い。
またアイ・オー・データ機器のブースには土方久明氏が参加。同社が展開するfidataブランドのミュージックサーバーや、エントリー向けオーディオNAS「Soundgenic」について、メーカー担当者とともに技術的・音質的な特徴を解説すると、来場者がその話を聞きながら頷く姿が見られた。
TEACがネットワークプレーヤーやアナログプレーヤーと合わせて展示するカセットデッキも、注目を集めていた。特に発売されたばかりのダブルカセットデッキ「W-1200」は売れ行きも非常に好調とのこと。海外でカセット人気が再燃するなか、日本国内においても開発を待ち望む声が多かったという。
JVCやソニーの4Kプロジェクター、パイオニアのサラウンドシステムやマランツのAVアンプなどによるホームシアターブースも人が絶えない。これは視聴の機会が限られていることもあるが、富山県および北陸地方の、持ち家率の高さも関係しているだろう。家を新築するにあたって、ホームシアターの導入を検討するケースが多いそうだ。
クリアーサウンドイマイの代表である今井芳範氏は、北陸オーディオショウについて「第1回から、お客様とのコミュニケーションを大事にすることを出展される方々にもお願いしています。そのおかげもあって『また来たい』という声をいただけています」と語る。
そして来場者の幅広さについて「“オーディオ分母” を増やすことを目標に取り組んできたことが良い結果につながっていると思います」という。今井氏は第2回が終了した段階から一年をかけて、地元のラジオやフリーペーパー、新聞などでもオーディオや北陸オーディオショウについてアピールを続けてきた。
さらに今回からは、新しい目標も掲げているという。「裾野を広げることは継続しながら、次は “顧客分子” を増やしたい。つまり、オーディオに興味を持ってくれた方を、今度は実際にオーディオを楽しんでくれるようにしていきたいのです」と今井氏。手の届く価格帯、気軽に音楽再生ができるオーディオ製品が多く展示される理由もここにあるのだろう。
「音楽の素晴らしさを多くの人に知っていただくことも、オーディオの楽しさにつながります。生演奏の企画も、そうした考えからスタートしています。生演奏とオーディオで再生されるものは同じとは言えません。しかしオーディオを推進する身として、好きなアーティストが演奏に込めた心を、オーディオ再生から少しでも感じ取っていただけるようにと考えています。それが、いつでも何度でも楽しめるのがオーディオの魅力でもあります。ぜひ会場を一周して、一度でも体験いただけたら嬉しいです」(今井氏)。
富山の桜は、この土日が見頃だろう。会場の富山国際会議場の目の前には富山城址公園、ほんの少し歩けば花見のスポットとなる松川が流れており、遊覧船で桜を下から眺めながらゆったり川を下ることもできる。イベント開催中の天気は晴れの予報。花見に出かけるという方も、ここで音楽に触れてみてはいかがだろうか。
以下、フォトレポートにて現地の様子をお伝えする。
2016年からスタートし、本年で3回目を迎えた北陸オーディオショウ。今回は国内外メーカー37社が協賛し、オーディオ製品の展示や試聴、ホームシアターシステム体験、生演奏&生録音などの企画が多く用意されている。
本イベントの特徴は、来場者と出展内容にある。会場には、家族連れやご夫婦、親子、学生の友人同士、女性などが3割程度を占める。そしてその多くが、オーディオを趣味とするオーディオファイルではなく、よりカジュアルに「音楽再生用のデザイン家電を見に来た」方々だ。
これは会場が富山県内でもアクセスの良い富山国際会議場の2階で、たまたま立ち寄った方が多いこともあるだろうが、出展される製品の幅広さも大きな要因となっている。
受付からすぐ目に入るのは、ヘッドホン、システムコンポ、Bluetoothスピーカーやスマートスピーカー、レコード、CD/レコードの販売コーナー。ジャンルが多岐にわたっており、試聴しやすい、また手に取りやすいように配置されている。
スマートスピーカー「JBL LINK」や、アウトドアユースも想定したBluetoothスピーカーを展示するハーマンインターナショナルの担当者は「ベテランから高校生くらいの方まで、年齢層が幅広いイベントなので、入り口付近のブースには手頃な価格の製品を中心に展示しています。奥にはMark Levinsonなども用意していますが、オーディオをこれから始めてみたいという方に、まずは気軽に楽しめるということを知っていただければ」と語る。
ほかのブースでも、スマートフォンとの組み合わせで単体再生が可能なモデルや、多機能で、初期投資を抑えられるエントリー機などが目立つ。これらのモデルは、省スペースで設置しやすいというメリットもあり、「リビングに導入してみようか」など、具体的なイメージが浮かびやすい。イベントの根底に「誰でも楽しめるオーディオ」という理念が感じられるのだ。
一方、本格的なオーディオシステムのサウンドもしっかりと確かめることができる。各ブースは、それぞれのシステムの音が邪魔にならないよう、タイムスケジュールに沿った試聴プラグラムを実施している。
タイムスケジュールに合わせて動けば「両方聴きたいのに同時刻だから片方を諦めないといけない」といったことが起こらないし、また再生が続くのでメーカー担当者に話を聞きたくても遠慮してしまう、ということも避けられる。実際に来場者は、次の試聴までの待ち時間で別ブースを回ったり、担当者に質問するなどしており、活発に会場内を動いていた。
富山在住の演奏家である渋谷優花(Vn)、守護菊野(Via)、木村有子(Vc)による生演奏を、その場でハイレゾ録音し、FOCALのスピーカーで再生するという企画も人気だ。室内では壁のギリギリまで使っていたが、それでも立ち見の人で隙間なく埋まるほどだった。その後の再生時にも、誰も席を立つことはなく、違いにじっくりと演奏に耳を傾けていた。演奏者も「凄くクリアで、こうした録音では低音が薄くなりがちですが、チェロもしっかりと響いていました」とハイレゾとオーディオシステムの再生音に嬉しそうな様子を見せた。
いくつかのブースでは、新製品をいち早く聴くこともできた。アキュフェーズは、DDS方式FMステレオチューナー「T-1200」を用いたラジオ再生をデモ。「感度を限界まで高めている一方で低雑音特性の復調方式で高S/Nを実現しています」というハイエンドチューナーには、「これがラジオ放送の音?」と驚く声もあった。発売は4月末ごろを予定しており、価格は360,000円(税抜)。
またフォステクスでは、4月上旬に発表予定という音楽再生用サブウーファー「CW250D」を再生。新設計のアンプを搭載しており、1次側の電源、2次側のコンデンサーを見直し、動特性の改善を図ったという。そのサウンドについては「もたつきがなく、S/Nが良くなりました」とアピール。ステレオ使用がオススメとのこと。価格は予価で110,000円。同ブースは完実電気と共同の部屋となっており、同社が取り扱うREGAやPS Audioといった製品との組み合わせでサウンドが確認できる。
デジタルオーディオ再生のノウハウが学べる「デジ研」も、北陸オーディオショウで好評の企画だ。逆木 一氏が講師を務める本企画では、用意された部屋はずっと満員。これからUSB/ネットオーディオを始めてみたいというオーディオファンのほか、デジタルネイティブ世代の若い方の姿も多い。
またアイ・オー・データ機器のブースには土方久明氏が参加。同社が展開するfidataブランドのミュージックサーバーや、エントリー向けオーディオNAS「Soundgenic」について、メーカー担当者とともに技術的・音質的な特徴を解説すると、来場者がその話を聞きながら頷く姿が見られた。
TEACがネットワークプレーヤーやアナログプレーヤーと合わせて展示するカセットデッキも、注目を集めていた。特に発売されたばかりのダブルカセットデッキ「W-1200」は売れ行きも非常に好調とのこと。海外でカセット人気が再燃するなか、日本国内においても開発を待ち望む声が多かったという。
JVCやソニーの4Kプロジェクター、パイオニアのサラウンドシステムやマランツのAVアンプなどによるホームシアターブースも人が絶えない。これは視聴の機会が限られていることもあるが、富山県および北陸地方の、持ち家率の高さも関係しているだろう。家を新築するにあたって、ホームシアターの導入を検討するケースが多いそうだ。
クリアーサウンドイマイの代表である今井芳範氏は、北陸オーディオショウについて「第1回から、お客様とのコミュニケーションを大事にすることを出展される方々にもお願いしています。そのおかげもあって『また来たい』という声をいただけています」と語る。
そして来場者の幅広さについて「“オーディオ分母” を増やすことを目標に取り組んできたことが良い結果につながっていると思います」という。今井氏は第2回が終了した段階から一年をかけて、地元のラジオやフリーペーパー、新聞などでもオーディオや北陸オーディオショウについてアピールを続けてきた。
さらに今回からは、新しい目標も掲げているという。「裾野を広げることは継続しながら、次は “顧客分子” を増やしたい。つまり、オーディオに興味を持ってくれた方を、今度は実際にオーディオを楽しんでくれるようにしていきたいのです」と今井氏。手の届く価格帯、気軽に音楽再生ができるオーディオ製品が多く展示される理由もここにあるのだろう。
「音楽の素晴らしさを多くの人に知っていただくことも、オーディオの楽しさにつながります。生演奏の企画も、そうした考えからスタートしています。生演奏とオーディオで再生されるものは同じとは言えません。しかしオーディオを推進する身として、好きなアーティストが演奏に込めた心を、オーディオ再生から少しでも感じ取っていただけるようにと考えています。それが、いつでも何度でも楽しめるのがオーディオの魅力でもあります。ぜひ会場を一周して、一度でも体験いただけたら嬉しいです」(今井氏)。
富山の桜は、この土日が見頃だろう。会場の富山国際会議場の目の前には富山城址公園、ほんの少し歩けば花見のスポットとなる松川が流れており、遊覧船で桜を下から眺めながらゆったり川を下ることもできる。イベント開催中の天気は晴れの予報。花見に出かけるという方も、ここで音楽に触れてみてはいかがだろうか。
以下、フォトレポートにて現地の様子をお伝えする。