公開日 2018/06/13 14:43
ヨーロピアンカーオーディオコンテストをレポート。進むハイレゾ化、ホーム領域とのコラボも
カーオーディオにも広がるハイレゾ
6月10日(日)に石川県 こまつドームにて、ヨーロピアンサウンド カーオーディオコンテスト2018(通称:ユーロコン)が開催された。その模様をレポートしたい。
ヨーロピアンカーオーディオコンテストの開催は今年で6回目。DYNAUDIO、Morelといったヨーロッパのブランドのスピーカーまたはアンプ製品を搭載したカーオーディオが審査の対象となる。全国からカーオーディオに情熱を傾けるオーナーとカーオーディオ・ショップが集結し、そのサウンドクオリティを競う一年に一度のイベントである。
コンテストの審査は、山之内 正氏をはじめとした7人の審査員が、価格やスピーカーブランドごとに分かれた各コースごとに審査を行い、「SN感」や「ステレオイメージ」を点数化。その合計点を元に上位入賞者を表彰するという形式が取られている。毎回課題曲が設定され、その課題曲を聴き込んで、音を作り込んでいく。
今回の課題曲は、柴田淳のヴォーカル表現力が問われる「手のひらサイズ」(アルバム『私は幸せ』から)、美空ひばりをジャズアレンジした伊藤君子「恋人よ我に帰れ」(アルバム『Kimiko Sings HIBARI』より)、クラシックからは山田和樹指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の「ルーセル:バッカスとアリアーヌ」が選出されていた。
各メーカーごとのデモカーも用意され、それに対する各審査員のコメントは公開されている。そのコメントをもとに、ディーラーと車のオーナーの二人三脚でサウンドをチューニング。コンテストに挑む形となっている。
審査会は午前9時からスタート。審査員はエントリーしたクルマに順番にひとつずつ入りそのサウンドをチェック、評価をつけてゆく。5分程度の試聴時間のあと、エントラントに対し簡単な評価コメントや改善点などをアドバイスしてゆく。
カーオーディオはホームオーディオと異なり、スイートスポットをL/Rのスピーカーの中央ではなく、運転席に設定することになる。そのため、各スピーカー間の距離を測定し、出力される音楽信号の位相を最適化することが重要になる。搭載するスピーカーの位置関係やサイズを考慮した上で、車載のDSPを活用してチューニングを行う必要があるところにカーオーディオの難しさがある。
また、車のサイズや内装の素材によってもサウンドは変化する。もちろん容量が大きく、ボディの素材が強固であればサウンド上は有利であることは間違いないが、例えば軽自動車などでもチューニング次第で大きなサウンドステージを構築することができる。特にクラシックなどでは、車のダッシュボードのサイズを超えるような、さらに大きな広がりを持ったサウンドステージを構築することも可能だ。このように、チューニングをいかに追い込んでいくかが、カーオーディオショップの腕の見せどころとなる。
参加者はエントリーにあたり「コンセプトシート」を提出。どのようなコンセプトを元にサウンドを組み立てて行っているか、そのコンセプトにマッチした音作りになっているかも大きな評価軸となる。
試聴ソースとしては、SONYのウォークマンを利用するユーザーが非常に多く見かけられた。30万円近くするにも関わらず、最上位モデル「NW-WM1Z」は参加者の間でも人気で、上位入賞者の試聴システムにかなりの割合で採用されていた。
ここ数年、カーオーディオにも「ハイレゾ」ブームが来ていると審査員の土方久明氏は語る。コンテストという非常にシビアに要請される環境においては、ハイレゾは、そのサウンドステージの立体感や情報量の多さは大きな優位性を持つ(課題曲は決められているが、そのフォーマットについては指定はない)。
いまや純正のカーオーディオシステムには、CDドライブすら搭載していなものも多い。カーオーディオにはUSBメモリやSDカードといったデジタルソースを活用した音楽再生と親和性が高く、急激にハイレゾ音源が普及したという背景もある。
SONYのウォークマン以外にも、ASTELL & KERNの「A&ultima SP1000」や、FiiOのDAPを利用しているユーザーも見かけられた。また、canarino 12Vという車載PCを設置し、foobar2000をインストールしてiPadのアプリ上から操作する、という「ネットオーディオ」的な活用をしているオーナーもおり、ハイレゾソースをどのように再生するのか様々な試みがなされていた。また、DSPはHELIXというブランドの製品を使っているクルマが多かったが、それはハイレゾ音源をそのクオリティを保ったまま処理できるということに理由があるようだ。
今回審査員として5回目の参加となる炭山アキラ氏は、「過去数年はあまりに我が道を行くようなサウンドもあったが、徐々に淘汰されてきた」と全体的なクオリティアップが図られて来ていることを指摘する。
実は過去のユーロコンでは、AV Kansaiという関西に拠点を持つカーオーディオショップが、「ディーラープロ部門」において5連覇を達成している。今回はエントリーしていなかったが、同社の手がけたクルマは参考出品として展示されていた。実際にその音を聴かせてもらったが、サウンドステージの3次元的な奥行き、柴田淳のヴォーカルの定位など、ここまでのクオリティが実現できるのか!と感動するほどの音楽を奏でていた。これらのサウンドも参加者は自由に試聴することができるため、コンテスト上位のサウンドを参考に、さらなる研鑽を積み重ねて行くことになる。
また、今回は初の試みとして、審査の待ち時間の間に「ホームオーディオ」の試聴会が別会場で開催された。DYNAUDIOやMorelといったカーオーディオ業界でも知られたスピーカーや、canarino 12Vを開発しているオリオスペック、カーオーディオでも使われるWIREWORLDなどが出展。ホーム向けの試聴会が行われていた。
今回の試聴イベントでも、「DYNAUDIOのホーム向けスピーカーの音を聴いて、そのサウンドを忠実に再現することを目標にしてチューニングを行なった」と語る参加者もいるなど、ホームオーディオとカーオーディオを繋ぐ試みは様々な角度から始まっている。小原由夫氏も、ホームとカーをつなぐオーディオのレクチャーを行ない、参加者の関心を集めていた。
すべての審査は16時までに終了。その後、点数集計が行われ、表彰式が行われる。1位から3位までの上位入賞者にはトロフィーが、4位から6位までは賞状が送られる。表彰式はまさに悲喜交々。入賞して「よっしゃ!」という声をあげ、周囲の仲間と喜びを分かち合う参加者も見られるなど、このコンテストにかける意気込みを改めて感じられた。審査員からは審査のポイントと全体の講評が語られ、この結果を元に、参加者は来年のコンテストに向けたサウンド強化のプランニングを考えてゆくのだろう。
ヨーロピアンカーオーディオコンテストの開催は今年で6回目。DYNAUDIO、Morelといったヨーロッパのブランドのスピーカーまたはアンプ製品を搭載したカーオーディオが審査の対象となる。全国からカーオーディオに情熱を傾けるオーナーとカーオーディオ・ショップが集結し、そのサウンドクオリティを競う一年に一度のイベントである。
コンテストの審査は、山之内 正氏をはじめとした7人の審査員が、価格やスピーカーブランドごとに分かれた各コースごとに審査を行い、「SN感」や「ステレオイメージ」を点数化。その合計点を元に上位入賞者を表彰するという形式が取られている。毎回課題曲が設定され、その課題曲を聴き込んで、音を作り込んでいく。
今回の課題曲は、柴田淳のヴォーカル表現力が問われる「手のひらサイズ」(アルバム『私は幸せ』から)、美空ひばりをジャズアレンジした伊藤君子「恋人よ我に帰れ」(アルバム『Kimiko Sings HIBARI』より)、クラシックからは山田和樹指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の「ルーセル:バッカスとアリアーヌ」が選出されていた。
各メーカーごとのデモカーも用意され、それに対する各審査員のコメントは公開されている。そのコメントをもとに、ディーラーと車のオーナーの二人三脚でサウンドをチューニング。コンテストに挑む形となっている。
審査会は午前9時からスタート。審査員はエントリーしたクルマに順番にひとつずつ入りそのサウンドをチェック、評価をつけてゆく。5分程度の試聴時間のあと、エントラントに対し簡単な評価コメントや改善点などをアドバイスしてゆく。
カーオーディオはホームオーディオと異なり、スイートスポットをL/Rのスピーカーの中央ではなく、運転席に設定することになる。そのため、各スピーカー間の距離を測定し、出力される音楽信号の位相を最適化することが重要になる。搭載するスピーカーの位置関係やサイズを考慮した上で、車載のDSPを活用してチューニングを行う必要があるところにカーオーディオの難しさがある。
また、車のサイズや内装の素材によってもサウンドは変化する。もちろん容量が大きく、ボディの素材が強固であればサウンド上は有利であることは間違いないが、例えば軽自動車などでもチューニング次第で大きなサウンドステージを構築することができる。特にクラシックなどでは、車のダッシュボードのサイズを超えるような、さらに大きな広がりを持ったサウンドステージを構築することも可能だ。このように、チューニングをいかに追い込んでいくかが、カーオーディオショップの腕の見せどころとなる。
参加者はエントリーにあたり「コンセプトシート」を提出。どのようなコンセプトを元にサウンドを組み立てて行っているか、そのコンセプトにマッチした音作りになっているかも大きな評価軸となる。
試聴ソースとしては、SONYのウォークマンを利用するユーザーが非常に多く見かけられた。30万円近くするにも関わらず、最上位モデル「NW-WM1Z」は参加者の間でも人気で、上位入賞者の試聴システムにかなりの割合で採用されていた。
ここ数年、カーオーディオにも「ハイレゾ」ブームが来ていると審査員の土方久明氏は語る。コンテストという非常にシビアに要請される環境においては、ハイレゾは、そのサウンドステージの立体感や情報量の多さは大きな優位性を持つ(課題曲は決められているが、そのフォーマットについては指定はない)。
いまや純正のカーオーディオシステムには、CDドライブすら搭載していなものも多い。カーオーディオにはUSBメモリやSDカードといったデジタルソースを活用した音楽再生と親和性が高く、急激にハイレゾ音源が普及したという背景もある。
SONYのウォークマン以外にも、ASTELL & KERNの「A&ultima SP1000」や、FiiOのDAPを利用しているユーザーも見かけられた。また、canarino 12Vという車載PCを設置し、foobar2000をインストールしてiPadのアプリ上から操作する、という「ネットオーディオ」的な活用をしているオーナーもおり、ハイレゾソースをどのように再生するのか様々な試みがなされていた。また、DSPはHELIXというブランドの製品を使っているクルマが多かったが、それはハイレゾ音源をそのクオリティを保ったまま処理できるということに理由があるようだ。
今回審査員として5回目の参加となる炭山アキラ氏は、「過去数年はあまりに我が道を行くようなサウンドもあったが、徐々に淘汰されてきた」と全体的なクオリティアップが図られて来ていることを指摘する。
実は過去のユーロコンでは、AV Kansaiという関西に拠点を持つカーオーディオショップが、「ディーラープロ部門」において5連覇を達成している。今回はエントリーしていなかったが、同社の手がけたクルマは参考出品として展示されていた。実際にその音を聴かせてもらったが、サウンドステージの3次元的な奥行き、柴田淳のヴォーカルの定位など、ここまでのクオリティが実現できるのか!と感動するほどの音楽を奏でていた。これらのサウンドも参加者は自由に試聴することができるため、コンテスト上位のサウンドを参考に、さらなる研鑽を積み重ねて行くことになる。
また、今回は初の試みとして、審査の待ち時間の間に「ホームオーディオ」の試聴会が別会場で開催された。DYNAUDIOやMorelといったカーオーディオ業界でも知られたスピーカーや、canarino 12Vを開発しているオリオスペック、カーオーディオでも使われるWIREWORLDなどが出展。ホーム向けの試聴会が行われていた。
今回の試聴イベントでも、「DYNAUDIOのホーム向けスピーカーの音を聴いて、そのサウンドを忠実に再現することを目標にしてチューニングを行なった」と語る参加者もいるなど、ホームオーディオとカーオーディオを繋ぐ試みは様々な角度から始まっている。小原由夫氏も、ホームとカーをつなぐオーディオのレクチャーを行ない、参加者の関心を集めていた。
すべての審査は16時までに終了。その後、点数集計が行われ、表彰式が行われる。1位から3位までの上位入賞者にはトロフィーが、4位から6位までは賞状が送られる。表彰式はまさに悲喜交々。入賞して「よっしゃ!」という声をあげ、周囲の仲間と喜びを分かち合う参加者も見られるなど、このコンテストにかける意気込みを改めて感じられた。審査員からは審査のポイントと全体の講評が語られ、この結果を元に、参加者は来年のコンテストに向けたサウンド強化のプランニングを考えてゆくのだろう。