公開日 2018/07/16 08:00
VIVID audio、新スピーカー「Kayaシリーズ」発表 − 開発者ローレンス・ディッキー氏が詳細を解説
ステラが発表会を開催
(株)ステラは、同社が取り扱う南アフリカのスピーカーブランド、VIVID audioの新製品となるKayaシリーズを発表した。ラインアップは下記の通り。
「Kaya 90」(3ウェイ・6スピーカー)¥3,200,000/ペア・税別 ※オーダーカラーは¥3,400,000/ペア・税別
「Kaya 45」(3ウェイ・3スピーカー)¥2,100,000/ペア・税別 オーダーカラーは¥2,300,000/ペア・税別
「Kaya 25」(2ウェイ・2スピーカー)(¥1,100,000/ペア・税別)※オーダーカラーは¥1,300,000/ペア・税別
昨日15日、ステラは東京・有楽町の東京国際フォーラムにて本製品の発表会を実施。VIVID audio本社よりCEOのフィリップ・グーテンターグ氏、開発者であり日本でもカリスマ的な人気を誇るローレンス・ディッキー氏、そして新しくインターナショナルセールスとしてVIVID audioに加わったジェローム・ハンナ氏が来日し、その詳細を紹介した。
発表会の開始に先立って、(株)ステラの社長である橋隅和彦氏は、「VIVID audioは昨年GIYAをバージョンアップしたことが話題になりましたが、全く新しいラインアップというのは久しぶり。今回のKayaシリーズは今年のMunich HIGH ENDで発表され世界的にも注目を集めた製品で、それをいち早く日本で発表できることになりました。VIVID audioも全くの新しい新製品として気合が入っております」とその概要を解説した。
また会長の西川英彰氏は、「毎年、世界のショウというのはミュンヘン、アメリカ、中国など色々ありますが、今回のKayaは中でも特に規模の大きいミュンヘンのHIGH ENDで発表されました。そして、おそらく今回の日本が最初のプレゼンテーションの場になると思います。前のシリーズから大きくデザインが変わり、音も変わったと思います」とKayaが全く新しいエッセンスを吹き込んだスピーカーであることを明らかとした。
VIVID audio本社からは、まず最初にハンナ氏が登壇。ハンナ氏自身が、およそ40年間以上にわたりディーラーからマーケティング、セールスなどさまざまな角度からハイエンドオーディオに携わってきた自身のキャリアに触れ、その過程で得た「見識眼」を持ってしてもVIVID Audioが非常にユニークなブランドであることをアピールする。
「今日のハイエンドオーディオの世界を見てみても非常に沢山の会社がひしめき合っていますが、その中でもVIVID audioというのは非常に稀有な存在です。その設計や製品に現れている哲学。これらが世界のどの会社と比べても非常にクリエイティブであり、また革新的だと思っております」(ハンナ氏)
ハンナ氏がこのように語るVIVID audioの「クリエイティブ」な面で欠かすことができないのが、開発者であるディッキー氏だ。「この新シリーズを説明するのに最適な人物」(ハンナ氏)であるディッキー氏本人によって、Kayaシリーズの全貌が解説された。
今回のKayaシリーズは、これまでVIVID audioが提案してきたさまざまな技術を存分に投入した3ウェイ機となる。特徴的なのはそのデザインで、バスレフポートの出力には影響を与えずに共振/共鳴を吸収することを可能とした「テーパードチューブ・ローテッド・リフレックス」を投入。その上で、これまでとは違う「馴染みやすいデザイン」を採用した。まずディッキー氏は、Kayaシリーズに至るまでの流れを次のように解説した。
「14年以上前になりますが、Ovalシリーズのスピーカーシステム『B1』を発表した際には、たくさんの革新的な技術を皆様にご紹介しました。その革新的な技術の例をあげますと、カテナリー・ドーム、表面のスムースなデザイン、そしてリアクション・キャンセリング・ドライバー。こういったものを全てひとつのスピーカーに集約させることができたのです。
ただ、音響面においてB1およびK1では、キャビネットは単なるバスレフ方式でした。そこで我々が必要としていたのはテーパード・チューブ・アブソーバーとポートのあるキャビネット、この双方のパフォーマンスを損なうことなく融合させることでした。
私達はさまざまな試行錯誤と実験、そしてCADを駆使した設計を通して、その答えを見つけることができました。それこそが、テーパードチューブ・ローテッド・バズジャック・キャビネットだったのです。これらはテーパード・チューブの利点を活かしながら、バスレフで得られる音響を損なわず融合させた結果となります。
この新しいマウント方法を取り入れた最初のスピーカーが『G1 GIYA』です。キャビネット上部はそのままテーパード・チューブ・アブソーバーの形状が現れていたので、見た目としてもすぐ分かるデザインでした。ただし、このチューブは”見せなければならないのか”というとそういうわけではありません。事実、私達はこの特許を取得する際に、今後キャビネット内にテーパード・チューブ・アブソーバーを収めることを想定して出願していました。
そして時が経つと共に、私達VIVID audioの技術の恩恵を受けながらもより控えめな外観を持つスピーカーが必要だ、ということが明らかになり、今回のKayaシリーズの開発に繋がっています」(ローレンス氏)。
Kayaシリーズは、VIVID audioとして初めて外部のデザイナーを採用したスピーカーだそうで、ディッキー氏と同じロンドンに拠点を置くクリストフ・ハーマン氏ら2名のデザイナーを起用している。
「私達から彼らへ依頼したのは、3台のスピーカーをデザインすること。私達がこれまで培ってきた技術を妥協することなく取り入れ、音を聴いて間違いなくVIVID Audioのスピーカーだと分かるもの。それでありながら、リスナーの皆様に馴染みやすいデザインであることを要望したのです」(ディッキー氏)。
その結果生まれたのが今回のKayaシリーズだ。そのデザインはこれまでのVIVID Audioのスピーカーの特徴だった流麗なデザインを見事に踏襲しながら、Kayaが全く新しいシリーズであることを感じさせる「これまでとは少々異なるデザインテイスト」を持つスピーカーとなった。
Kayaでは、GIYAシリーズで採用された上部がループ状となったデザインではなく、今回はテーパード・チューブ・アブソーバーをキャビネット内部で折り返す構造を採用。一方で音響特性についても、見事なまでにVIVID audioらしさを兼ね備えた製品となっている。
シリーズの上位モデルとなる「Kaya90」「Kaya45」については3ウェイ・システム、「Kaya25」については2ウェイ・システムとなっている。発表会では、Kayaの特徴を説明するために3ウェイ・システムを例に挙げ、問題点とその解決法が解説された。
ディッキー氏によると、3ウェイにおいてミッドレンジは3kHz − 300Hzを担わなければならないとのこと。「音響工学の教則本によると、φ100mmの振動板は3kHzまでいくと指向性が非常に狭くなってきます。これ自体は問題ではないのですが、重要なのはクロスオーバーを考えた時です。ミッドレンジの指向性が狭くなった帯域がトゥイーターに移行した時、いきなり指向性が開くのが問題で、そこに差異が発生してしまうのです」と説明。この問題点に対して、Kayaシリーズでは浅いウェーブガイドをキャビネット上に持たせることで、トゥイーターの指向性をミッドレンジに揃えるというアプローチを採用したのだという。
「広い音場を持つGIYAに対して、Kayaは“集中的な音場”を形成するスピーカーといえます。だからこそ、聴く音楽によってはKayaシリーズは理想的な再生を行えると言えます。具体的には、まずスピーカーから放射される音を壁の反射から遠ざけることができるということ。もうひとつは、スピーカーの前方、つまりリスニングポジションにおいてより音の世界に引き込まれやすくなるということです」(ディッキー氏)
こうしたディッキー氏のアイデアを盛り込みながらデザインされたKayaシリーズだが、本体両サイドにマウントされるウーファーに採用されたリフレクション・キャンセリングドライバーなど、GIYAで高く評価された技術を一通り投入している点も見逃せない。また注目は新デザインを採用したキャビネットだけではなく、搭載されるユニットにもある。
Kayaシリーズで搭載された「C125L」は、これまでのモデルで搭載された「C125S」からマグネットの配置を変更。今回のC125Lではレアアース・マグネットをボイスコイルと隣り合わる形で配置している。
「従来のG1やB1に使用していたユニット構造では、マグネットをボイスコイルの後方に配置していて、スチールの間に背圧の空気が流れる構造でした。今回はマグネットをボイスコイルと隣り合わせにすることで、よりリニアな特性を得ることができました。ミッドレンジ『C100SE』も同様で、ここちらもボイスコイルに隣り合わせる形でマグネットを配置しています。
こうした改善によって、さらにリニアなパフォーマンスを得ることができ、ディストーションに対する特性も改善されました。さらには高音域へより広がった周波数特性を得るなど、確実な性能の向上を実現しました」(ディッキー氏)。
このようにエンクロージャーやユニットに新たなアプローチを投入して開発されたKayaだが、クロスオーバーには全てに空芯コイルやポリプロピレン・フィルムコンデンサーを採用するというVIVID audio製品に共通する仕様を今回も採用する。エンクロージャーの素材はサンドイッチ構造のコンポジットとなるが、大きく変わったのはその素材だ。
「一見すると非常にGIYAのキャビネットと似ているかもしれませんが、GIYAに採用していたのは、バルサ素材という非常に扱いが難しい素材でした。一方のKayaは、ポリマーフォームという非常に扱いやすい素材を採用しています」(ディッキー氏)
また、ディッキー氏は「これまでのVIVID audioのスピーカーと決定的に変わったポイント」として、スピーカーターミナルの位置を説明。Kayaからはエンクロージャーのリア下部にターミナルを設け、アクセス性を向上。これによってケーブルを交換して楽しみたいというユーザーのニーズにも答えられる形としたと説明する。
なお、カラーバリエーションはピアノブラック、パールホワイトといったカラーに加え、新しくマットフィニッシュの「マットオイスターグレイ」というカラーを標準色としてラインアップする。
VIVID audioにとっては久方ぶりとなる待望の新シリーズの登場とあって、ディッキー氏もそのサウンドには非常に大きな自身を持っているようだ。本発表会では実際にそのサウンドもデモンストレーションされたが、来場者からは余裕を感じさせる鳴り方や正確な定位表現などさまざまな面で高い評価を得ていた印象だ。
近日中にはブックシェルフとなるKaya15とセンタースピーカーのC15の登場を予定しているなど、サラウンドも想定したラインアップが予定されているというこのKayaシリーズは、VIVID audioの新しい方向性も感じさせるスピーカーシリーズということができるだろう。
各モデルの主な仕様は以下の通り。
「Kaya 90」(3ウェイ・6スピーカー)
●ドライバーユニット:【HF】D26:26mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・ドーム【MF】C100SE:100mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・コーン【LF】C125LE×4:125mmアロイコーン ●能率:90db(2.83VRMS/1M)●インピーダンス:6Ω(最小4Ω)●周波数特性:35Hz − 25kHz(−6dB)●クロスオーバー:300Hz/3kHz ●推奨アンプ出力:25 − 500W ●サイズ:1202H×370W×540Dmm ●質量:38kg
「Kaya 45」(3ウェイ・3スピーカー)
●ドライバーユニット:【HF】D26:26mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・ドーム【MF】C100SE:100mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・コーン【LF】C125LE×2:125mmアロイコーン ●能率:90db(2.83VRMS/1M)●インピーダンス:6Ω(最小4Ω)●周波数特性:37Hz − 25kHz(−6dB)●クロスオーバー:300Hz/3kHz ●推奨アンプ出力:25 − 250W ●サイズ:1153H×298W×385Dmm ●質量:25kg
「Kaya 25」(2ウェイ・2スピーカー)
●ドライバーユニット:【HF】D26:26mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・ドーム【LF】C125D×1:125mmアロイコーン ●能率:90db(2.83VRMS/1M)●インピーダンス:6Ω(最小4Ω)●周波数特性:35Hz − 25kHz(−6dB)●クロスオーバー:3kHz ●推奨アンプ出力:25 − 125W ●サイズ:1160H×263W×340Dmm ●質量:24kg
■「Air Force Zero」は今年のTIASで発表へ。筐体サイズが初公表
本発表会の後半は、ステラが手がけるTechDASブランドのターンテーブル「Air Force III Premium」を用いてのアナログ・レコードによるデモンストレーションが行われた。
この試聴タイムでは、兼ねてより開発が進められていたアナログターンテーブル“Air Force”シリーズの最上位機「Air Force Zero」の続報がアナウンスされた。
すでに世界各国のオーディオショウでそのコンセプトや技術が発表され大きな話題を呼んでいるAir Force Zeroだが、いよいよこの秋の東京インターナショナルオーディオショウにて国際的な発表会を行う予定とのこと。今回はそのサイズが発表され、横幅が980mm、奥行き680mmで「EMT927」と同様のサイズとなるという。プラッターは直径400mmとのことで、ベースをステンレスとして5層構造を採用。ターンテーブルはエアバキュームで強固にホールドされる。内部には5cm程度の厚みとなる砲金を採用し、レコード面と触れるトップはタングステンを採用する方向で進めているという。
「Kaya 90」(3ウェイ・6スピーカー)¥3,200,000/ペア・税別 ※オーダーカラーは¥3,400,000/ペア・税別
「Kaya 45」(3ウェイ・3スピーカー)¥2,100,000/ペア・税別 オーダーカラーは¥2,300,000/ペア・税別
「Kaya 25」(2ウェイ・2スピーカー)(¥1,100,000/ペア・税別)※オーダーカラーは¥1,300,000/ペア・税別
昨日15日、ステラは東京・有楽町の東京国際フォーラムにて本製品の発表会を実施。VIVID audio本社よりCEOのフィリップ・グーテンターグ氏、開発者であり日本でもカリスマ的な人気を誇るローレンス・ディッキー氏、そして新しくインターナショナルセールスとしてVIVID audioに加わったジェローム・ハンナ氏が来日し、その詳細を紹介した。
発表会の開始に先立って、(株)ステラの社長である橋隅和彦氏は、「VIVID audioは昨年GIYAをバージョンアップしたことが話題になりましたが、全く新しいラインアップというのは久しぶり。今回のKayaシリーズは今年のMunich HIGH ENDで発表され世界的にも注目を集めた製品で、それをいち早く日本で発表できることになりました。VIVID audioも全くの新しい新製品として気合が入っております」とその概要を解説した。
また会長の西川英彰氏は、「毎年、世界のショウというのはミュンヘン、アメリカ、中国など色々ありますが、今回のKayaは中でも特に規模の大きいミュンヘンのHIGH ENDで発表されました。そして、おそらく今回の日本が最初のプレゼンテーションの場になると思います。前のシリーズから大きくデザインが変わり、音も変わったと思います」とKayaが全く新しいエッセンスを吹き込んだスピーカーであることを明らかとした。
VIVID audio本社からは、まず最初にハンナ氏が登壇。ハンナ氏自身が、およそ40年間以上にわたりディーラーからマーケティング、セールスなどさまざまな角度からハイエンドオーディオに携わってきた自身のキャリアに触れ、その過程で得た「見識眼」を持ってしてもVIVID Audioが非常にユニークなブランドであることをアピールする。
「今日のハイエンドオーディオの世界を見てみても非常に沢山の会社がひしめき合っていますが、その中でもVIVID audioというのは非常に稀有な存在です。その設計や製品に現れている哲学。これらが世界のどの会社と比べても非常にクリエイティブであり、また革新的だと思っております」(ハンナ氏)
ハンナ氏がこのように語るVIVID audioの「クリエイティブ」な面で欠かすことができないのが、開発者であるディッキー氏だ。「この新シリーズを説明するのに最適な人物」(ハンナ氏)であるディッキー氏本人によって、Kayaシリーズの全貌が解説された。
今回のKayaシリーズは、これまでVIVID audioが提案してきたさまざまな技術を存分に投入した3ウェイ機となる。特徴的なのはそのデザインで、バスレフポートの出力には影響を与えずに共振/共鳴を吸収することを可能とした「テーパードチューブ・ローテッド・リフレックス」を投入。その上で、これまでとは違う「馴染みやすいデザイン」を採用した。まずディッキー氏は、Kayaシリーズに至るまでの流れを次のように解説した。
「14年以上前になりますが、Ovalシリーズのスピーカーシステム『B1』を発表した際には、たくさんの革新的な技術を皆様にご紹介しました。その革新的な技術の例をあげますと、カテナリー・ドーム、表面のスムースなデザイン、そしてリアクション・キャンセリング・ドライバー。こういったものを全てひとつのスピーカーに集約させることができたのです。
ただ、音響面においてB1およびK1では、キャビネットは単なるバスレフ方式でした。そこで我々が必要としていたのはテーパード・チューブ・アブソーバーとポートのあるキャビネット、この双方のパフォーマンスを損なうことなく融合させることでした。
私達はさまざまな試行錯誤と実験、そしてCADを駆使した設計を通して、その答えを見つけることができました。それこそが、テーパードチューブ・ローテッド・バズジャック・キャビネットだったのです。これらはテーパード・チューブの利点を活かしながら、バスレフで得られる音響を損なわず融合させた結果となります。
この新しいマウント方法を取り入れた最初のスピーカーが『G1 GIYA』です。キャビネット上部はそのままテーパード・チューブ・アブソーバーの形状が現れていたので、見た目としてもすぐ分かるデザインでした。ただし、このチューブは”見せなければならないのか”というとそういうわけではありません。事実、私達はこの特許を取得する際に、今後キャビネット内にテーパード・チューブ・アブソーバーを収めることを想定して出願していました。
そして時が経つと共に、私達VIVID audioの技術の恩恵を受けながらもより控えめな外観を持つスピーカーが必要だ、ということが明らかになり、今回のKayaシリーズの開発に繋がっています」(ローレンス氏)。
Kayaシリーズは、VIVID audioとして初めて外部のデザイナーを採用したスピーカーだそうで、ディッキー氏と同じロンドンに拠点を置くクリストフ・ハーマン氏ら2名のデザイナーを起用している。
「私達から彼らへ依頼したのは、3台のスピーカーをデザインすること。私達がこれまで培ってきた技術を妥協することなく取り入れ、音を聴いて間違いなくVIVID Audioのスピーカーだと分かるもの。それでありながら、リスナーの皆様に馴染みやすいデザインであることを要望したのです」(ディッキー氏)。
その結果生まれたのが今回のKayaシリーズだ。そのデザインはこれまでのVIVID Audioのスピーカーの特徴だった流麗なデザインを見事に踏襲しながら、Kayaが全く新しいシリーズであることを感じさせる「これまでとは少々異なるデザインテイスト」を持つスピーカーとなった。
Kayaでは、GIYAシリーズで採用された上部がループ状となったデザインではなく、今回はテーパード・チューブ・アブソーバーをキャビネット内部で折り返す構造を採用。一方で音響特性についても、見事なまでにVIVID audioらしさを兼ね備えた製品となっている。
シリーズの上位モデルとなる「Kaya90」「Kaya45」については3ウェイ・システム、「Kaya25」については2ウェイ・システムとなっている。発表会では、Kayaの特徴を説明するために3ウェイ・システムを例に挙げ、問題点とその解決法が解説された。
ディッキー氏によると、3ウェイにおいてミッドレンジは3kHz − 300Hzを担わなければならないとのこと。「音響工学の教則本によると、φ100mmの振動板は3kHzまでいくと指向性が非常に狭くなってきます。これ自体は問題ではないのですが、重要なのはクロスオーバーを考えた時です。ミッドレンジの指向性が狭くなった帯域がトゥイーターに移行した時、いきなり指向性が開くのが問題で、そこに差異が発生してしまうのです」と説明。この問題点に対して、Kayaシリーズでは浅いウェーブガイドをキャビネット上に持たせることで、トゥイーターの指向性をミッドレンジに揃えるというアプローチを採用したのだという。
「広い音場を持つGIYAに対して、Kayaは“集中的な音場”を形成するスピーカーといえます。だからこそ、聴く音楽によってはKayaシリーズは理想的な再生を行えると言えます。具体的には、まずスピーカーから放射される音を壁の反射から遠ざけることができるということ。もうひとつは、スピーカーの前方、つまりリスニングポジションにおいてより音の世界に引き込まれやすくなるということです」(ディッキー氏)
こうしたディッキー氏のアイデアを盛り込みながらデザインされたKayaシリーズだが、本体両サイドにマウントされるウーファーに採用されたリフレクション・キャンセリングドライバーなど、GIYAで高く評価された技術を一通り投入している点も見逃せない。また注目は新デザインを採用したキャビネットだけではなく、搭載されるユニットにもある。
Kayaシリーズで搭載された「C125L」は、これまでのモデルで搭載された「C125S」からマグネットの配置を変更。今回のC125Lではレアアース・マグネットをボイスコイルと隣り合わる形で配置している。
「従来のG1やB1に使用していたユニット構造では、マグネットをボイスコイルの後方に配置していて、スチールの間に背圧の空気が流れる構造でした。今回はマグネットをボイスコイルと隣り合わせにすることで、よりリニアな特性を得ることができました。ミッドレンジ『C100SE』も同様で、ここちらもボイスコイルに隣り合わせる形でマグネットを配置しています。
こうした改善によって、さらにリニアなパフォーマンスを得ることができ、ディストーションに対する特性も改善されました。さらには高音域へより広がった周波数特性を得るなど、確実な性能の向上を実現しました」(ディッキー氏)。
このようにエンクロージャーやユニットに新たなアプローチを投入して開発されたKayaだが、クロスオーバーには全てに空芯コイルやポリプロピレン・フィルムコンデンサーを採用するというVIVID audio製品に共通する仕様を今回も採用する。エンクロージャーの素材はサンドイッチ構造のコンポジットとなるが、大きく変わったのはその素材だ。
「一見すると非常にGIYAのキャビネットと似ているかもしれませんが、GIYAに採用していたのは、バルサ素材という非常に扱いが難しい素材でした。一方のKayaは、ポリマーフォームという非常に扱いやすい素材を採用しています」(ディッキー氏)
また、ディッキー氏は「これまでのVIVID audioのスピーカーと決定的に変わったポイント」として、スピーカーターミナルの位置を説明。Kayaからはエンクロージャーのリア下部にターミナルを設け、アクセス性を向上。これによってケーブルを交換して楽しみたいというユーザーのニーズにも答えられる形としたと説明する。
なお、カラーバリエーションはピアノブラック、パールホワイトといったカラーに加え、新しくマットフィニッシュの「マットオイスターグレイ」というカラーを標準色としてラインアップする。
VIVID audioにとっては久方ぶりとなる待望の新シリーズの登場とあって、ディッキー氏もそのサウンドには非常に大きな自身を持っているようだ。本発表会では実際にそのサウンドもデモンストレーションされたが、来場者からは余裕を感じさせる鳴り方や正確な定位表現などさまざまな面で高い評価を得ていた印象だ。
近日中にはブックシェルフとなるKaya15とセンタースピーカーのC15の登場を予定しているなど、サラウンドも想定したラインアップが予定されているというこのKayaシリーズは、VIVID audioの新しい方向性も感じさせるスピーカーシリーズということができるだろう。
各モデルの主な仕様は以下の通り。
「Kaya 90」(3ウェイ・6スピーカー)
●ドライバーユニット:【HF】D26:26mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・ドーム【MF】C100SE:100mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・コーン【LF】C125LE×4:125mmアロイコーン ●能率:90db(2.83VRMS/1M)●インピーダンス:6Ω(最小4Ω)●周波数特性:35Hz − 25kHz(−6dB)●クロスオーバー:300Hz/3kHz ●推奨アンプ出力:25 − 500W ●サイズ:1202H×370W×540Dmm ●質量:38kg
「Kaya 45」(3ウェイ・3スピーカー)
●ドライバーユニット:【HF】D26:26mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・ドーム【MF】C100SE:100mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・コーン【LF】C125LE×2:125mmアロイコーン ●能率:90db(2.83VRMS/1M)●インピーダンス:6Ω(最小4Ω)●周波数特性:37Hz − 25kHz(−6dB)●クロスオーバー:300Hz/3kHz ●推奨アンプ出力:25 − 250W ●サイズ:1153H×298W×385Dmm ●質量:25kg
「Kaya 25」(2ウェイ・2スピーカー)
●ドライバーユニット:【HF】D26:26mmテーパード・チューブ・ローテッド・アロイ・ドーム【LF】C125D×1:125mmアロイコーン ●能率:90db(2.83VRMS/1M)●インピーダンス:6Ω(最小4Ω)●周波数特性:35Hz − 25kHz(−6dB)●クロスオーバー:3kHz ●推奨アンプ出力:25 − 125W ●サイズ:1160H×263W×340Dmm ●質量:24kg
■「Air Force Zero」は今年のTIASで発表へ。筐体サイズが初公表
本発表会の後半は、ステラが手がけるTechDASブランドのターンテーブル「Air Force III Premium」を用いてのアナログ・レコードによるデモンストレーションが行われた。
この試聴タイムでは、兼ねてより開発が進められていたアナログターンテーブル“Air Force”シリーズの最上位機「Air Force Zero」の続報がアナウンスされた。
すでに世界各国のオーディオショウでそのコンセプトや技術が発表され大きな話題を呼んでいるAir Force Zeroだが、いよいよこの秋の東京インターナショナルオーディオショウにて国際的な発表会を行う予定とのこと。今回はそのサイズが発表され、横幅が980mm、奥行き680mmで「EMT927」と同様のサイズとなるという。プラッターは直径400mmとのことで、ベースをステンレスとして5層構造を採用。ターンテーブルはエアバキュームで強固にホールドされる。内部には5cm程度の厚みとなる砲金を採用し、レコード面と触れるトップはタングステンを採用する方向で進めているという。