公開日 2019/03/23 16:33
最新モデルで“良い音の音楽”を楽しめるイベント、第4回「北陸オーディオショウ」レポート
家族連れで賑わう
北陸地方最大のオーディオイベントである「北陸オーディオショウ」の第4回が、本日3月23日と24日の2日間に渡って開催中だ。本イベントの模様をレポートしたい。
北陸オーディオショウは2016年のスタートから早4回目を迎え、今年は国内外メーカー42社が協賛、96ブランドが顔を揃えた。来場者数とともに年々規模を大きくしている。
イベント全体として各ブースの音楽再生時間にタイムテーブルが組まれており、再生音が再生音を邪魔することなく、また自分が聴きたいブースが被ってしまい聴けないということがないように配慮されている。
またそれぞれのブランドから用意されるシステムは、すべてをフラグシップで統一するというものではない。手頃な価格帯のものや、 “家に置ける” サイズ感をイメージして構成されるコンポシステム、インテリア性の高いBluetoothスピーカーなども展示されており、品揃えの良いショップを覗いているような感覚がある。
もちろん、最新モデルを多数体験できるのも本イベントの特色だ。ラックスマンは真空管プリアンプの新フラグシップ「CL-1000」を披露。同じく真空管方式のパワーアンプ「MQ-300」とのマッチングを考慮して開発された製品で、本機のために専用の金型を用意するなど細部にまでこだわり開発が進められており、今回出展されたのがほぼ最終型だという。発売は4月末ごろ、価格は160万円前後が予定される。
富山県の有名家具店である米三と、真空・電子・福祉機器製造会社カナヤママシナリーにより立ち上げられたブランド「ALVENTO」が初出展。同じく富山県に居を構える輸入オーディオ専門商社シーエスフィールドとブースを展開した。
その卓越した技術力を活かしたアルミ合金製ラック「ALVENTO AR」がブランド第一弾製品で、裏面に彫り込みを行うことで表面積を拡大、熱吸収・拡散の効率化を実現した棚板「AR-Borad」が特徴となる。両社のコラボレーションについて担当者は「富山はものづくりが盛んな地域で、そうした技術を活かしたひとつの事例がオーディオラック。いまは大量生産・大量消費の時代だが、これからは自分たちの価値に基づいてものを選ぶという時期がくる。そのなかで “音楽を楽しむ” ことはとても大切であり、インテリア屋として提案できることとして取り組んでいる」と述べた。
タオックは新オーディオラック「XLシリーズ」を出展。脚部を新設計したことが特徴で、支柱と棚板の接点にハイカーボン鋳鉄ピラースタビライザーを追加。また棚板そのものも中央に振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振シートを埋め込むなどして改良を行っている。4月下旬ごろの発売を予定し、価格はまだ未定とのこと。
アイ・オー・データ機器は、SFORZATOのネットワークプレーヤーが対応したLAN DAC機能との “Diretta” による接続をPCレスで行うデモを参考展示として実施。操作は4月上旬にリリースとなるコントロールアプリ「fidata Music App」のAndroid版を用いて行われた。
LUMINとDYNAUDIOのブースでは講師に逆木 一氏を迎えた分かりやすい解説も実施。イベント以外の時間でも、スマホやタブレットを用いたネットオーディオの操作性を体験した来場者が、その便利さに感心する様子が見られた。
スペックは “響一” コンデンサー搭載のプリメインアンプ「RSA-M88」を北陸初お披露目。さらにスピーカーとつなぐことで音質改善を図るオーディオアクセサリー「リアルサウンド・プロセッサー」も用意され、その効果を体験できるようになっていた。
ヤマハはターンテーブル「GT-5000」にプリアンプ「C-5000」、パワーアンプ「M-5000」といった最新の旗艦「5000シリーズ」で揃えたシステムを用意。発売が待望されるGT-5000と、昨年末に発売されたばかりのC-5000/M-5000の組み合わせは北陸初上陸。試聴ブースは常に席が埋まり、立ち見の方も多かった。
またブースではピアニスト国府弘子さんのトーク&ライブも開催。用意された座席に加えて急遽用意された立ち見席も完売となったイベントでは、ヤマハのスピーカーなどオーディオ機器もさることながら、設置された調音パネルによってピアノの音が弾きながらでも聴こえやすいと意外な視点からのトーク、そして生演奏で大変盛り上がった。
イベント後、インタビューに応えてくれた国府さんは「こうしたオーディオイベントで聴いてくださるお客様はピアノの響きが減衰して完全になくなるまで、絶対に拍手を被せるということはしないですね。通常のライブと私の取り組む姿勢は変わりませんが、会場での音が録音されるということだったので、自分が聴いてみたいこともあって、まだ録音されていないものを演奏しました。楽しかったです」と振り返った。
北陸オーディオショウを主催する富山のオーディオショップ「クリアーサウンドイマイ」代表の今井芳範氏は、これまで同様に地元紙などでの集客を行う活動とともに、イベントがオーディオ文化の定着、発展につながることを目指していると語る。
「1、2回目はメーカーの方が一方的に説明を行うのではなく、来場者の方とコミュニケーションが取れるイベントを目指すことをお願いしてきました。3回目は若い方や女性の方も含め潜在的なオーディオファン、音楽ファンが多いことが分かったので、オーディオ文化を根付かせて “オーディオ分母” を増やすことを目標にしました。そして4回目となる今回は、オーディオの目的と方法を明確にし、真の価値を知っていただくことが課題と考えています」(今井氏)
今井氏は、「現在のオーディオが良い “音” を出すことやスペックに重きを置きすぎて、音楽の感動を伝えるという根本が忘れられがち」であると危惧する。もちろん音が良いことは重要であり、そうした製品が次々と登場することを喜ぶ一方で、オーディオは音楽を楽しむツールであり、好きな音楽をより好きになれるといった訴求が必要であるとの考えを語った。それを “ネクスト・オーディオ・ビジネス” とし、そのために「地道であっても活動を続け、それが富山だけでなく全国に広がり、またオーディオが盛り上がれば嬉しい」とコメントした。
こうした思いが軸となり、各メーカーの賛同もあって、イベントの雰囲気は明るい。各ブースの担当者は「家族連れのお客さんが多いのは全国のイベントでも珍しい」と口を揃える。再生される楽曲もクラシックやジャズのなかでも耳馴染みのあるタイトルや、クイーン「We Will Rock You」といった初めてオーディオイベントに足を運んだ方でも聴いていて楽しめるような選曲が多いように感じた。
実際に、大学生が友だち同士で訪れたり、高校生くらいの子どもと会話しながら興味深げに製品を近くで見ている親子など、ふらりと足を運べる気安い雰囲気が流れている。会場となる富山国際会議場は、富山駅から市電の「環状線」ルートでおよそ7分、駐車場も備えているのでアクセスしやすい。明日も開催されているので、ぜひ “良い音の音楽” を体験してみて欲しい。
以下、フォトレポートにて現地の様子をお伝えする。
北陸オーディオショウは2016年のスタートから早4回目を迎え、今年は国内外メーカー42社が協賛、96ブランドが顔を揃えた。来場者数とともに年々規模を大きくしている。
イベント全体として各ブースの音楽再生時間にタイムテーブルが組まれており、再生音が再生音を邪魔することなく、また自分が聴きたいブースが被ってしまい聴けないということがないように配慮されている。
またそれぞれのブランドから用意されるシステムは、すべてをフラグシップで統一するというものではない。手頃な価格帯のものや、 “家に置ける” サイズ感をイメージして構成されるコンポシステム、インテリア性の高いBluetoothスピーカーなども展示されており、品揃えの良いショップを覗いているような感覚がある。
もちろん、最新モデルを多数体験できるのも本イベントの特色だ。ラックスマンは真空管プリアンプの新フラグシップ「CL-1000」を披露。同じく真空管方式のパワーアンプ「MQ-300」とのマッチングを考慮して開発された製品で、本機のために専用の金型を用意するなど細部にまでこだわり開発が進められており、今回出展されたのがほぼ最終型だという。発売は4月末ごろ、価格は160万円前後が予定される。
富山県の有名家具店である米三と、真空・電子・福祉機器製造会社カナヤママシナリーにより立ち上げられたブランド「ALVENTO」が初出展。同じく富山県に居を構える輸入オーディオ専門商社シーエスフィールドとブースを展開した。
その卓越した技術力を活かしたアルミ合金製ラック「ALVENTO AR」がブランド第一弾製品で、裏面に彫り込みを行うことで表面積を拡大、熱吸収・拡散の効率化を実現した棚板「AR-Borad」が特徴となる。両社のコラボレーションについて担当者は「富山はものづくりが盛んな地域で、そうした技術を活かしたひとつの事例がオーディオラック。いまは大量生産・大量消費の時代だが、これからは自分たちの価値に基づいてものを選ぶという時期がくる。そのなかで “音楽を楽しむ” ことはとても大切であり、インテリア屋として提案できることとして取り組んでいる」と述べた。
タオックは新オーディオラック「XLシリーズ」を出展。脚部を新設計したことが特徴で、支柱と棚板の接点にハイカーボン鋳鉄ピラースタビライザーを追加。また棚板そのものも中央に振動エネルギーを熱エネルギーに変換する制振シートを埋め込むなどして改良を行っている。4月下旬ごろの発売を予定し、価格はまだ未定とのこと。
アイ・オー・データ機器は、SFORZATOのネットワークプレーヤーが対応したLAN DAC機能との “Diretta” による接続をPCレスで行うデモを参考展示として実施。操作は4月上旬にリリースとなるコントロールアプリ「fidata Music App」のAndroid版を用いて行われた。
LUMINとDYNAUDIOのブースでは講師に逆木 一氏を迎えた分かりやすい解説も実施。イベント以外の時間でも、スマホやタブレットを用いたネットオーディオの操作性を体験した来場者が、その便利さに感心する様子が見られた。
スペックは “響一” コンデンサー搭載のプリメインアンプ「RSA-M88」を北陸初お披露目。さらにスピーカーとつなぐことで音質改善を図るオーディオアクセサリー「リアルサウンド・プロセッサー」も用意され、その効果を体験できるようになっていた。
ヤマハはターンテーブル「GT-5000」にプリアンプ「C-5000」、パワーアンプ「M-5000」といった最新の旗艦「5000シリーズ」で揃えたシステムを用意。発売が待望されるGT-5000と、昨年末に発売されたばかりのC-5000/M-5000の組み合わせは北陸初上陸。試聴ブースは常に席が埋まり、立ち見の方も多かった。
またブースではピアニスト国府弘子さんのトーク&ライブも開催。用意された座席に加えて急遽用意された立ち見席も完売となったイベントでは、ヤマハのスピーカーなどオーディオ機器もさることながら、設置された調音パネルによってピアノの音が弾きながらでも聴こえやすいと意外な視点からのトーク、そして生演奏で大変盛り上がった。
イベント後、インタビューに応えてくれた国府さんは「こうしたオーディオイベントで聴いてくださるお客様はピアノの響きが減衰して完全になくなるまで、絶対に拍手を被せるということはしないですね。通常のライブと私の取り組む姿勢は変わりませんが、会場での音が録音されるということだったので、自分が聴いてみたいこともあって、まだ録音されていないものを演奏しました。楽しかったです」と振り返った。
北陸オーディオショウを主催する富山のオーディオショップ「クリアーサウンドイマイ」代表の今井芳範氏は、これまで同様に地元紙などでの集客を行う活動とともに、イベントがオーディオ文化の定着、発展につながることを目指していると語る。
「1、2回目はメーカーの方が一方的に説明を行うのではなく、来場者の方とコミュニケーションが取れるイベントを目指すことをお願いしてきました。3回目は若い方や女性の方も含め潜在的なオーディオファン、音楽ファンが多いことが分かったので、オーディオ文化を根付かせて “オーディオ分母” を増やすことを目標にしました。そして4回目となる今回は、オーディオの目的と方法を明確にし、真の価値を知っていただくことが課題と考えています」(今井氏)
今井氏は、「現在のオーディオが良い “音” を出すことやスペックに重きを置きすぎて、音楽の感動を伝えるという根本が忘れられがち」であると危惧する。もちろん音が良いことは重要であり、そうした製品が次々と登場することを喜ぶ一方で、オーディオは音楽を楽しむツールであり、好きな音楽をより好きになれるといった訴求が必要であるとの考えを語った。それを “ネクスト・オーディオ・ビジネス” とし、そのために「地道であっても活動を続け、それが富山だけでなく全国に広がり、またオーディオが盛り上がれば嬉しい」とコメントした。
こうした思いが軸となり、各メーカーの賛同もあって、イベントの雰囲気は明るい。各ブースの担当者は「家族連れのお客さんが多いのは全国のイベントでも珍しい」と口を揃える。再生される楽曲もクラシックやジャズのなかでも耳馴染みのあるタイトルや、クイーン「We Will Rock You」といった初めてオーディオイベントに足を運んだ方でも聴いていて楽しめるような選曲が多いように感じた。
実際に、大学生が友だち同士で訪れたり、高校生くらいの子どもと会話しながら興味深げに製品を近くで見ている親子など、ふらりと足を運べる気安い雰囲気が流れている。会場となる富山国際会議場は、富山駅から市電の「環状線」ルートでおよそ7分、駐車場も備えているのでアクセスしやすい。明日も開催されているので、ぜひ “良い音の音楽” を体験してみて欲しい。
以下、フォトレポートにて現地の様子をお伝えする。