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公開日 2001/01/03 12:33
業界のキーパーソンによる21世紀特別対談「夢を語る」その3
●21世紀にオーディオ・ビジュアル、デジタルの世界はどうなるのか。業界のキーパーソンである、日本オーディオ協会副会長 ・ソニー相談役 鹿井信雄氏 と デジタルハリウッド学校長 杉山知之氏 が語る今世紀の未来像、その第三回目をお送りする。
●世界的に展開する企業が国よりも大きな影響力をもつ
杉山 20世紀は社会システムを構築していく上で国が大きな影響力をもっていました。21世紀は、世界的にグローバルに展開する企業の影響力の方が強くなっていくに違いありません。ソニーがロボットを開発・販売し始め、ネット販売を積極的に展開する姿勢は世界中の社会生活に大きく影響を与えているはずです。
鹿井 ソニーは早くから世界企業としてどうあるべきかを常に考えて動いてきました。会社がスタートして非常に早い時期にニューヨークの証券市場に株を上場して、世界の企業に近づくにはどうあるべきか、努力してきたわけです。従ってアメリカでもADRを発行し資金を集めるなど、世界企業になるための展開を積極的に行ってきました。しかし、日本とアメリカとではいろんな価値感が違う。証券市場にしても、株主に対するサービスの考え方も、同時・公平にという情報公開の仕方も、日本とはずいぶん違うわけです。インターネットへのアプローチの違いはこういうところからきていると思います。
海外はどんどんインターネット化が進んで、アメリカではすでに、インターネットユーザーが国民の約60%に達しているのではないでしょうか。それからシンガポールや韓国でもでも45%程度は普及していると思われます。日本はまだ30%前後の普及率。つまり、インターネット後進国になっているわけです。後進国になってしまった理由はいろいろあります。例えば英語と漢字の問題や、日本人のキーボードに対する抵抗感などがあげられるでしょう。
しかし、ここにきて日本もがんばっています。他国に随分離されたという感じも残りますが、21世紀に向けては日本の技術を使って取り戻す期待の方が大きくなってきています。
杉山 そういう意味では、それがパソコンという形から開放されて、もっと皆が広く使うという方向のベクトルが見えた瞬間に、日本が家電で培ってきた能力がどっと出て、すごく面白い商品がどんどん出てきたような気がするんです。やっとインフラのほうも少し早くなってきそうなので、そうなると21世紀の初頭を考えると、音楽配信や動画配信というのも現実味を帯びてきます。最高峰のものがネットで送られてくる状態が、もうこの1、2年で見えてきそうです。そうなると、何か日本から提案する面白い商品というのは、もっともっと出てくる気がします。
●幹線の光ファイバー化はほぼ80%完成しています
鹿井 NTTの光ファイバー事業が遅れたことが騒がれていますが、実際には基本的な幹線の光ファイバー化のベースはほぼ80%完成しています。もう一方で、交換器を通った後のラスト・ワン・マイルの電話回線についても、米国ですでに実用化されているが規制のため日本では実用化できていない。音声帯域の上に、特別な変調をかけた信号を入れ帯域を広げた、ADSLというものを設置しようとしています。帯域を広げた電話回線よりも約150倍のデータ量をやり取りできるようになります。ですから、光ファイバーや、ADSLを最大限にフル活用して早く高速のインフラを作れば、これまでの遅れを取り返せるはずです。
杉山 オーディオ・ビジュアルの関連で見ていくと、日本の製品は非常に完成度が高く、世界中から好まれ、日本以外の国々はそれらをうまく生活に取り入れて楽しんでいます。ところが、日本人は自分たちの製品を生活の中で生かしきっていないと思うんです。唯一、携帯電話だけは軽くて小さくて、良くなっていますけれど。
鹿井 日本の携帯電話における成長は目を見張るものがあります。NTTドコモのiモードは市場を大いに盛り上げています。コミュニケーションツールとして今や、なくてはならい必需品です。コンピューターをいちいち起動しなくてもインターネットに接続し、好きな時に好きなだけ好みの情報取得することができます。しかし、これだけ普及したわけですから、次の段階が大切です。利用しやすさとコンテンツの提案をどのように次々に展開していけるかが課題です。
杉山 日本は楽しみ方の提案が少ない。技術的なインフラは十分なのに、サービスとかコンテンツがなかなか出てこない印象があります。ほかの国を見ると、技術インフラはわりと不十分だったりするのに、サービスはどんどん面白いのが出てくるので、人々がそういうものを欲しい、見たいということで、それで逆に技術が引っ張られていく傾向です。けれど、日本は最初から技術ありきで、後から使い方を考えるケースが多いですね。
鹿井 まさにそうですね。インテルのムーア会長が唱えたムーアの法則では、半導体の集積度は1年半で2倍になるといわれていますが、次世代の加工技術でもこれが実現できたという発表がありました。そうなりますと、今までのLSIの大きさの中に入れられるトランジスタの数が5年で10億になるんです。現在のコンピューターによく使われているインテルのペンティアムIVは、大体4,000万個の集積度ですが、2005年の新製品になれば、10億個までいくのはもう見えているというわけです。今年のうちに1億を超すでしょう。また処理スピードが、今までは200MIPS、400MIPSと言っていたのが、それが出来てくると1G(ギガ)IPSになるんですよ。
そうなると、今、例えばBSデジタルでは、MPEG2方式で画像が送られるようになっていますが、1時間の番組を送るのに3分から5分で送信処理できて、後からそれを1時間に伸ばして見られるようになるわけです。通信スピートが上がり、CPUの処理スピードが上がるということは情報の世界に大きな革命をもたらすのですね。
(以下続きは1月4日へ)(SENKA21編集部)
●世界的に展開する企業が国よりも大きな影響力をもつ
杉山 20世紀は社会システムを構築していく上で国が大きな影響力をもっていました。21世紀は、世界的にグローバルに展開する企業の影響力の方が強くなっていくに違いありません。ソニーがロボットを開発・販売し始め、ネット販売を積極的に展開する姿勢は世界中の社会生活に大きく影響を与えているはずです。
鹿井 ソニーは早くから世界企業としてどうあるべきかを常に考えて動いてきました。会社がスタートして非常に早い時期にニューヨークの証券市場に株を上場して、世界の企業に近づくにはどうあるべきか、努力してきたわけです。従ってアメリカでもADRを発行し資金を集めるなど、世界企業になるための展開を積極的に行ってきました。しかし、日本とアメリカとではいろんな価値感が違う。証券市場にしても、株主に対するサービスの考え方も、同時・公平にという情報公開の仕方も、日本とはずいぶん違うわけです。インターネットへのアプローチの違いはこういうところからきていると思います。
海外はどんどんインターネット化が進んで、アメリカではすでに、インターネットユーザーが国民の約60%に達しているのではないでしょうか。それからシンガポールや韓国でもでも45%程度は普及していると思われます。日本はまだ30%前後の普及率。つまり、インターネット後進国になっているわけです。後進国になってしまった理由はいろいろあります。例えば英語と漢字の問題や、日本人のキーボードに対する抵抗感などがあげられるでしょう。
しかし、ここにきて日本もがんばっています。他国に随分離されたという感じも残りますが、21世紀に向けては日本の技術を使って取り戻す期待の方が大きくなってきています。
杉山 そういう意味では、それがパソコンという形から開放されて、もっと皆が広く使うという方向のベクトルが見えた瞬間に、日本が家電で培ってきた能力がどっと出て、すごく面白い商品がどんどん出てきたような気がするんです。やっとインフラのほうも少し早くなってきそうなので、そうなると21世紀の初頭を考えると、音楽配信や動画配信というのも現実味を帯びてきます。最高峰のものがネットで送られてくる状態が、もうこの1、2年で見えてきそうです。そうなると、何か日本から提案する面白い商品というのは、もっともっと出てくる気がします。
●幹線の光ファイバー化はほぼ80%完成しています
鹿井 NTTの光ファイバー事業が遅れたことが騒がれていますが、実際には基本的な幹線の光ファイバー化のベースはほぼ80%完成しています。もう一方で、交換器を通った後のラスト・ワン・マイルの電話回線についても、米国ですでに実用化されているが規制のため日本では実用化できていない。音声帯域の上に、特別な変調をかけた信号を入れ帯域を広げた、ADSLというものを設置しようとしています。帯域を広げた電話回線よりも約150倍のデータ量をやり取りできるようになります。ですから、光ファイバーや、ADSLを最大限にフル活用して早く高速のインフラを作れば、これまでの遅れを取り返せるはずです。
杉山 オーディオ・ビジュアルの関連で見ていくと、日本の製品は非常に完成度が高く、世界中から好まれ、日本以外の国々はそれらをうまく生活に取り入れて楽しんでいます。ところが、日本人は自分たちの製品を生活の中で生かしきっていないと思うんです。唯一、携帯電話だけは軽くて小さくて、良くなっていますけれど。
鹿井 日本の携帯電話における成長は目を見張るものがあります。NTTドコモのiモードは市場を大いに盛り上げています。コミュニケーションツールとして今や、なくてはならい必需品です。コンピューターをいちいち起動しなくてもインターネットに接続し、好きな時に好きなだけ好みの情報取得することができます。しかし、これだけ普及したわけですから、次の段階が大切です。利用しやすさとコンテンツの提案をどのように次々に展開していけるかが課題です。
杉山 日本は楽しみ方の提案が少ない。技術的なインフラは十分なのに、サービスとかコンテンツがなかなか出てこない印象があります。ほかの国を見ると、技術インフラはわりと不十分だったりするのに、サービスはどんどん面白いのが出てくるので、人々がそういうものを欲しい、見たいということで、それで逆に技術が引っ張られていく傾向です。けれど、日本は最初から技術ありきで、後から使い方を考えるケースが多いですね。
鹿井 まさにそうですね。インテルのムーア会長が唱えたムーアの法則では、半導体の集積度は1年半で2倍になるといわれていますが、次世代の加工技術でもこれが実現できたという発表がありました。そうなりますと、今までのLSIの大きさの中に入れられるトランジスタの数が5年で10億になるんです。現在のコンピューターによく使われているインテルのペンティアムIVは、大体4,000万個の集積度ですが、2005年の新製品になれば、10億個までいくのはもう見えているというわけです。今年のうちに1億を超すでしょう。また処理スピードが、今までは200MIPS、400MIPSと言っていたのが、それが出来てくると1G(ギガ)IPSになるんですよ。
そうなると、今、例えばBSデジタルでは、MPEG2方式で画像が送られるようになっていますが、1時間の番組を送るのに3分から5分で送信処理できて、後からそれを1時間に伸ばして見られるようになるわけです。通信スピートが上がり、CPUの処理スピードが上がるということは情報の世界に大きな革命をもたらすのですね。
(以下続きは1月4日へ)(SENKA21編集部)