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公開日 2006/07/07 19:46
モノづくりの基本・本質を追求したい − 松下電器産業・新社長大坪氏が就任記者会見を開催
松下電器産業(株)は、同社の新たな代表取締役社長に選任された大坪文雄氏の社長就任記者会見を、東京パナソニックビル1号館において開催した。大坪氏は同社のグローバルエクセレンス実現へ向けた具体的な取り組みについて説明した。
はじめに大坪氏は、同社がこれまでに行ってきた経営改革の取り組みについて「2005年までの当社のチャレンジは、グループの骨格を大きく変革し、“速く・軽く・強い松下”を創造する大きな原動力となった」と評価した。これまでの改革の成果が具体的に「V字回復の実現」へとつながったことを強調しながら、「この勢いを踏襲し、いよいよ2006年度はグローバルエクセレンスへの通過点である5%の営業利益率を目指して進みたい」とした。
つぎに大坪氏は新社長として掲げる3つの経営戦略の柱について説明した。
1つ目には「成長に向けたフェーズ・チェンジ」を実行し、これまでの取り組みの成果を着実に刈り取りながら新商品・新事業で売上げを伸ばす体制を確立したいとした。21世紀に世界で闘うための基本的な枠組みづくりは終わったと大坪氏は述べ、「私の役割は、現在の取り組みを最後まで丁寧にやり遂げ、それぞれに成果と高収益を実現させることだ」と語った。
2つ目には、常に「基本に徹し、本質を追求」が大切であるとした。大坪氏は「当社の経営の進め方に奇手・奇策はない。製造業者の本文を貫き、着実に成果を積み上げたい」と語った。また大坪氏は、「モノづくり立社」を理想に掲げる同社の経営理念に乗っ取り、現場の衆知を集め、その上に開発・製造・販売を中心に「社員全員で知恵の石垣」を築くことを出発点に、強い商品をつくり上げて行く体制を確立したいとした。
大坪氏は、「私にとってのモノづくり立社とは、基本的なことをどこよりもしっかりと実行できる会社であり、モノづくりそのものも商品を生み出すプロセス全体のことである」と語り、ユーザーから見えない現場の実力である「裏の競争力」こそが価値創造の源泉であると強調した。また、モノづくりの競争力を高めるため「設計コストダウン」実現し、「垂直統合モデル」による商品力を強化しながら、活動の最終成果に「原価」を位置づける姿勢を打ち出したいとした。さらに製造現場では全社員が「現場主義」を徹底しコミュニケーション力を高めつつ、衆知を集めた全員経営を実行する姿勢が何よりも大切であるとした。
成長戦略の具体的なキーポイントについては「海外増販」と「コスト力の徹底強化」であるとした大坪氏は、実現のためのアプローチとして業界・事業ごとに「勝つシナリオ」をつくり、個々の商品戦略へ落とし込みたいと語った。また中期的な成長を担う重点事業として、「薄型テレビで1兆円」「カーエレクトロニクスで1兆円」「半導体で6,500億円」など、それぞれの売上げ規模を目指して成長へ導きたいとした。
そして3つ目の戦略の基軸として、大坪氏は「お客様第一を大原則にグローバルエクセレンスへ挑戦し続ける“闘う松下”のスタイルを継承して行きたい」と語った。また強い商品で成長力を高め、収益を確保するためには“闘う松下”を基本に、先手を打つ積極投資など成長サイクルを形成することが必要であるとした。
今後同社は大坪氏を中心とした新体制の元、グローバルエクセレンスの実現に向けた07年から09年までの3カ年の中期計画を具体的に決定し、これを来年1月の経営方針発表の場で公開していく。会見の最後に大坪氏は「これから全ての仕事が商品に結実するモノづくり立社を実現し、グローバルエクセレンスへの飛躍に向け、収益をともなった着実な成長を遂げて行きたい」と抱負を語った。
以下、記者会見で行われた質疑応答の模様を紹介する。
Q:2010年に「営業利益率10%」の目標を達成するため、具体的にはどのようなロードマップを描いているのか?
A:この目標を私は一時も忘れたことはないし、これからも守り続けたい。営業利益率10%という数字は並大抵の努力では達成できない高い目標だ。この達成の目処がつけられるよう、新しい中期計画をつくりたい。そのためには、何よりも各ドメインの製品が強くなることが極めて重要だ。
Q:現在赤字を抱える事業分野である、JVCの経営と携帯電話事業はどうなる?
A:JVCはご存知のように、当社は当面大株主として、その自主努力による経営を見守る立場にある。一方でJVCも様々な特長豊かな技術や商品を持っている。そういった商品の展開について、先方より相談があれば、我々はノウハウや技術をご提供するべきだと考えている。携帯電話事業については、海外の事業を一端縮小し、国内を基本に事業を図り直すつもりだ。シナリオ通りに国内力の強化を進めているところだ。中期計画では、一層中身のある内容を検討していきたい。
Q:現時点でグローバルエクセレンスの実現に足りない点はあるか?
A:グローバルエクセレンスの言葉が意味することを、次の中期計画で深堀りしてみたい。営業利益率10%はグローバルエクセレンスにふさわしい目標だ。現在当社にとっては「何か足りないもの」というよりも、地域社会、環境への貢献や、全てのステークホルダーにご満足いただける条件などをさらに深く検討して行くことが、グローバルエクセレンスの実現にとって極めて重要だと考えている。
Q:営業利益率10%を達成するためには、ある程度M&Aなど奇をてらった戦略を打ち出していくことも必要になるのでは。
A:今後2010年までに営業利益率10%までの大きなギャップを埋めていくことは確かに並大抵のものではない。しかし一方で、これは例えばM&Aだけで達成できることとも考えられない。当社は製造業のプロフェッショナルとして、まずは「良い商品をコツコツとつくること」がベースにあるべきで、それに加えてM&Aなどの策があって、成果が達成できるものと思っている。いかに今のモノづくりを大事にしながら、10%につなげるのかがこそが課題と考えている。
Q:ビジネスの前線への女性登用についてはどう考えているのか。改善すべき点はあるか。
A:私はかつてシンガポールに赴任した経験がある。シンガポールは小さい国だが、経済のパフォーマンスや人材活用の社会構造が群を抜いて優秀な地域だ。様々な民族やジェンダーが互いを支え合って、経済パフォーマンスや国家の存立を成り立たせている。当社においても、男性・女性、或いは様々な国のスタッフが互いの個性を発揮し、磨きあっていくことが大切だと考えている。多様性ある職場、人材活用のレベルをもっと上げて行きたいし、なるべく早く実現する必要があると考えている。
Q:NECが御社と提携して携帯電話事業を立て直したいと宣言したが、御社は携帯事業の再編をどのように考察し、どう立て直そうと考えているのか。
A:携帯電話については、松下としては国内をテコにして、如何に事業そのものを立て直して行くかがが課題である。その大きなポイントとしてNECとの技術提携による効果を出していくことも重要だが、まずは自分達の事業を徹底して強くして行こうとする姿勢が大切ではないだろうか。
Q:先代の中村氏が行ってきた経営との違いはどこにある。変えてはいけない所、変えなければならない所はどこにあるか。
A:最も重要な点は「創業者の経営理念に乗っ取ること」であり、不変の経営姿勢であると考える。グローバルな経営環境を鑑みて、公明・公正・透明な経営を進めるて行きたい。あらゆるステークホルダーの満足、株主の利益増大を考える点を私も継承して行きたい。中村前社長はコストの無駄を省こうという考え方を徹底して示された。私も同じ発想を持っているが、製造業として基本力を活用しながら、如何にコストダウンを図るかということについて、もう一度大きなメスを入れたいと考えている。
Q:海外増販については、具体的にいつまでにどのくらい増やす計画なのか。個別商品での目標は、いつぐらいまでに達成するつもりか。
A:2007年からの中期計画で時間軸・金額の詳細を決定しお伝えしたい。
Q:薄型テレビの売上げ規模1兆円という目標についてはどのように実現していくのか?
A:既にPDPでは尼崎に2つ目の工場建設をスタートし、来年の1Q/2Qから生産が開始される。パネルについては日本で集中的に生産し、アッセンブリーを海外の拠点で行っていく体制を確立し、世界規模の商品力をベースに目標を達成したい。
Q:松下電工との協業はどのように発展させていくのか?
A:松下電工との協業により、生活空間に新しいコンセプトで提案できる体制が実現した。このコラボレーションを確実に、より多岐に渡って深めて行きたい。
Q:「モノづくり立社」については具体的にどんな政策を実行するのか?
A:製造業として当たり前のことが、どこよりもきっちりできるということが大事。我々が行っているすべてのプロセスがモノづくりだし、これを「裏の競争力」という見方で考えると、当社のビジネスに関わる全てのスタッフに「自分達が作り出した商品」という感覚を持てせていくことが極めて重要になる。これがモノづくり立社そのものである。具体的な活動については、全社員が毎日職場で行っていることを徹底して行うことを、全社に訴えかけていくことを進めていきたい。
Q:大型投資の計画はあるのか?
A:まだ詳細な検討はしていない。PDPや半導体は今日まだ成長の段階に立ったばかり商品だ。ワールドワイドのマーケットで絶対に負けないためには、先手を打った投資が必要だ。必要な時が来たら大胆に、かつダイナミックに投資を実行したい。
(Phile-web編集部)
はじめに大坪氏は、同社がこれまでに行ってきた経営改革の取り組みについて「2005年までの当社のチャレンジは、グループの骨格を大きく変革し、“速く・軽く・強い松下”を創造する大きな原動力となった」と評価した。これまでの改革の成果が具体的に「V字回復の実現」へとつながったことを強調しながら、「この勢いを踏襲し、いよいよ2006年度はグローバルエクセレンスへの通過点である5%の営業利益率を目指して進みたい」とした。
つぎに大坪氏は新社長として掲げる3つの経営戦略の柱について説明した。
1つ目には「成長に向けたフェーズ・チェンジ」を実行し、これまでの取り組みの成果を着実に刈り取りながら新商品・新事業で売上げを伸ばす体制を確立したいとした。21世紀に世界で闘うための基本的な枠組みづくりは終わったと大坪氏は述べ、「私の役割は、現在の取り組みを最後まで丁寧にやり遂げ、それぞれに成果と高収益を実現させることだ」と語った。
2つ目には、常に「基本に徹し、本質を追求」が大切であるとした。大坪氏は「当社の経営の進め方に奇手・奇策はない。製造業者の本文を貫き、着実に成果を積み上げたい」と語った。また大坪氏は、「モノづくり立社」を理想に掲げる同社の経営理念に乗っ取り、現場の衆知を集め、その上に開発・製造・販売を中心に「社員全員で知恵の石垣」を築くことを出発点に、強い商品をつくり上げて行く体制を確立したいとした。
大坪氏は、「私にとってのモノづくり立社とは、基本的なことをどこよりもしっかりと実行できる会社であり、モノづくりそのものも商品を生み出すプロセス全体のことである」と語り、ユーザーから見えない現場の実力である「裏の競争力」こそが価値創造の源泉であると強調した。また、モノづくりの競争力を高めるため「設計コストダウン」実現し、「垂直統合モデル」による商品力を強化しながら、活動の最終成果に「原価」を位置づける姿勢を打ち出したいとした。さらに製造現場では全社員が「現場主義」を徹底しコミュニケーション力を高めつつ、衆知を集めた全員経営を実行する姿勢が何よりも大切であるとした。
成長戦略の具体的なキーポイントについては「海外増販」と「コスト力の徹底強化」であるとした大坪氏は、実現のためのアプローチとして業界・事業ごとに「勝つシナリオ」をつくり、個々の商品戦略へ落とし込みたいと語った。また中期的な成長を担う重点事業として、「薄型テレビで1兆円」「カーエレクトロニクスで1兆円」「半導体で6,500億円」など、それぞれの売上げ規模を目指して成長へ導きたいとした。
そして3つ目の戦略の基軸として、大坪氏は「お客様第一を大原則にグローバルエクセレンスへ挑戦し続ける“闘う松下”のスタイルを継承して行きたい」と語った。また強い商品で成長力を高め、収益を確保するためには“闘う松下”を基本に、先手を打つ積極投資など成長サイクルを形成することが必要であるとした。
今後同社は大坪氏を中心とした新体制の元、グローバルエクセレンスの実現に向けた07年から09年までの3カ年の中期計画を具体的に決定し、これを来年1月の経営方針発表の場で公開していく。会見の最後に大坪氏は「これから全ての仕事が商品に結実するモノづくり立社を実現し、グローバルエクセレンスへの飛躍に向け、収益をともなった着実な成長を遂げて行きたい」と抱負を語った。
以下、記者会見で行われた質疑応答の模様を紹介する。
Q:2010年に「営業利益率10%」の目標を達成するため、具体的にはどのようなロードマップを描いているのか?
A:この目標を私は一時も忘れたことはないし、これからも守り続けたい。営業利益率10%という数字は並大抵の努力では達成できない高い目標だ。この達成の目処がつけられるよう、新しい中期計画をつくりたい。そのためには、何よりも各ドメインの製品が強くなることが極めて重要だ。
Q:現在赤字を抱える事業分野である、JVCの経営と携帯電話事業はどうなる?
A:JVCはご存知のように、当社は当面大株主として、その自主努力による経営を見守る立場にある。一方でJVCも様々な特長豊かな技術や商品を持っている。そういった商品の展開について、先方より相談があれば、我々はノウハウや技術をご提供するべきだと考えている。携帯電話事業については、海外の事業を一端縮小し、国内を基本に事業を図り直すつもりだ。シナリオ通りに国内力の強化を進めているところだ。中期計画では、一層中身のある内容を検討していきたい。
Q:現時点でグローバルエクセレンスの実現に足りない点はあるか?
A:グローバルエクセレンスの言葉が意味することを、次の中期計画で深堀りしてみたい。営業利益率10%はグローバルエクセレンスにふさわしい目標だ。現在当社にとっては「何か足りないもの」というよりも、地域社会、環境への貢献や、全てのステークホルダーにご満足いただける条件などをさらに深く検討して行くことが、グローバルエクセレンスの実現にとって極めて重要だと考えている。
Q:営業利益率10%を達成するためには、ある程度M&Aなど奇をてらった戦略を打ち出していくことも必要になるのでは。
A:今後2010年までに営業利益率10%までの大きなギャップを埋めていくことは確かに並大抵のものではない。しかし一方で、これは例えばM&Aだけで達成できることとも考えられない。当社は製造業のプロフェッショナルとして、まずは「良い商品をコツコツとつくること」がベースにあるべきで、それに加えてM&Aなどの策があって、成果が達成できるものと思っている。いかに今のモノづくりを大事にしながら、10%につなげるのかがこそが課題と考えている。
Q:ビジネスの前線への女性登用についてはどう考えているのか。改善すべき点はあるか。
A:私はかつてシンガポールに赴任した経験がある。シンガポールは小さい国だが、経済のパフォーマンスや人材活用の社会構造が群を抜いて優秀な地域だ。様々な民族やジェンダーが互いを支え合って、経済パフォーマンスや国家の存立を成り立たせている。当社においても、男性・女性、或いは様々な国のスタッフが互いの個性を発揮し、磨きあっていくことが大切だと考えている。多様性ある職場、人材活用のレベルをもっと上げて行きたいし、なるべく早く実現する必要があると考えている。
Q:NECが御社と提携して携帯電話事業を立て直したいと宣言したが、御社は携帯事業の再編をどのように考察し、どう立て直そうと考えているのか。
A:携帯電話については、松下としては国内をテコにして、如何に事業そのものを立て直して行くかがが課題である。その大きなポイントとしてNECとの技術提携による効果を出していくことも重要だが、まずは自分達の事業を徹底して強くして行こうとする姿勢が大切ではないだろうか。
Q:先代の中村氏が行ってきた経営との違いはどこにある。変えてはいけない所、変えなければならない所はどこにあるか。
A:最も重要な点は「創業者の経営理念に乗っ取ること」であり、不変の経営姿勢であると考える。グローバルな経営環境を鑑みて、公明・公正・透明な経営を進めるて行きたい。あらゆるステークホルダーの満足、株主の利益増大を考える点を私も継承して行きたい。中村前社長はコストの無駄を省こうという考え方を徹底して示された。私も同じ発想を持っているが、製造業として基本力を活用しながら、如何にコストダウンを図るかということについて、もう一度大きなメスを入れたいと考えている。
Q:海外増販については、具体的にいつまでにどのくらい増やす計画なのか。個別商品での目標は、いつぐらいまでに達成するつもりか。
A:2007年からの中期計画で時間軸・金額の詳細を決定しお伝えしたい。
Q:薄型テレビの売上げ規模1兆円という目標についてはどのように実現していくのか?
A:既にPDPでは尼崎に2つ目の工場建設をスタートし、来年の1Q/2Qから生産が開始される。パネルについては日本で集中的に生産し、アッセンブリーを海外の拠点で行っていく体制を確立し、世界規模の商品力をベースに目標を達成したい。
Q:松下電工との協業はどのように発展させていくのか?
A:松下電工との協業により、生活空間に新しいコンセプトで提案できる体制が実現した。このコラボレーションを確実に、より多岐に渡って深めて行きたい。
Q:「モノづくり立社」については具体的にどんな政策を実行するのか?
A:製造業として当たり前のことが、どこよりもきっちりできるということが大事。我々が行っているすべてのプロセスがモノづくりだし、これを「裏の競争力」という見方で考えると、当社のビジネスに関わる全てのスタッフに「自分達が作り出した商品」という感覚を持てせていくことが極めて重要になる。これがモノづくり立社そのものである。具体的な活動については、全社員が毎日職場で行っていることを徹底して行うことを、全社に訴えかけていくことを進めていきたい。
Q:大型投資の計画はあるのか?
A:まだ詳細な検討はしていない。PDPや半導体は今日まだ成長の段階に立ったばかり商品だ。ワールドワイドのマーケットで絶対に負けないためには、先手を打った投資が必要だ。必要な時が来たら大胆に、かつダイナミックに投資を実行したい。
(Phile-web編集部)