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公開日 2007/04/03 13:34
林正儀の「DLA-HD1」導入記<後編> - オリジナルの取り付け器具で天吊り実行
Phile-webでもお馴染みのオーディオ・ビジュアル評論家 林正儀氏がビクターのD-ILAプロジェクター「DLA-HD1」を自宅視聴室に導入した。これまで3管式のプロジェクターを天吊りし、ハイエンドなシアターライフを楽しんできた同氏だが、今回なぜHD1を導入することにしたのか、またHD1をどのようにして設置したのかをレポートしてもらった。
【→前編はこちら】
新旧のマシンをともに天吊りする秘策が浮かんだ
私のイメージでは、三菱LVP-2001の前にうまくセットできたビクターHD1の姿が浮かんでいた。2メートルの長いレール上に、2両連結よろしく、新旧のマシンが天吊りされるのである。こんな構図は見たこともないが、完成すればおもしろい。
さて前編で予告した“秘策”を披露しよう。「板状のものをレールに乗せ、そこに専用の取り付け金具を」というアイデアが固まってきたのは、あるモノを見つけたからだ。オーディオラック用のボードである。サイズは38×45センチほどだが、うまい具合にコの字型なのでレールから外れることもない。
天吊りの準備はちょっとした日曜大工
庭先での日曜大工はわくわくする。ボードは白く塗ろう。下から見たときの色あわせだが、HD1本体は精悍なブラックバージョンだ。プロジェクター取りつけ時の総重量は15.6キロ(金具が4キロ)。さほどの重さじゃないが、安全性を考慮してアルミ板2枚(これもコの字型)で補強することにした。専用の天吊り金具「EF-HT11」はよくできている。±15度のチルトや、ぐるっと一周まわせる水平パン機構が付いたスグレモノだ。でもそんな融通性も、土台をしっかり固定したうえでの話である。
こうした作業には型紙をつくるのが一番だ。前半のハイライトは、天井プレートの4つの穴に、ボードとアルミ板をボルトどめすることだが、紙に書いた図面をそのままあてがい、現物に合わせで進めていく。一方プロジェクター側は底面の足を外して、そこに本体プレートをセット。これで準備作業完である。
ついにHD1が天井に
吊り下げは二人がかりだ。まずは天井プレート側をレールにまたがせ、安定を確保しよう。天井とのクリアランスがないので作業は窮屈。そこをクリアできれば半分成功したようなものである。連結アームは360度のフレキシブルになっており、さらに上下で分離できる。HD1本体ごともちあげ、エイヤっとフックを引っかけるようにセットすればOKだ。この位置だとほぼ110インチ投射だが、クロスハッチを出しながら台形歪みが出ないようにチルトを決める。上下80%、左右34%のレンズシフトとズーム&フォーカス調整で入念に追い込んで、いい感じに仕上がった。
DLA-HD1をさっそく視聴
写真ではHD1が三菱3管のレンズを塞いでしまっているように見えるが、実際はケラれることなくナイスコンディションにて両方のマシンを堪能できる。まずは満足、といえる投射状態だ。HD1の魅力はライバルを沈黙させる圧倒的な画力。それもコントラストの強靱さと新鋭のHDマシンらしいキレ味で追随を許さない。一瞬、3管の画が眠く感じられるようなシャキっとしたトーンだが、それが決して硬質にならずしなやかさのあるキレ味なのだ。
BSデジタルは色純度が高くみずみずしい。すみずみまでディテール感がみなぎっており、どっと情報が溢れ出るようだ。ノイズ感も極小。放送映像は文句なしのレベルにあることを確認。良質な専用チューナーが欲しくなったくらいである。
だが驚くのは早い。『里山』『夜桜』といったHD DVDの超ハイクオリティ映像(1080p)に接すると、あまりの繊細さ、ナチュラルかつ高度な遠近の描写に目を奪われる。さらに本命のシネマ作品で、所有の喜びが最高潮に達したのだ。イチ押しの黒再現ついては、標準の2.2乗カーブ(ノーマル)から少し暗部をもちあげた「ガンマA」に変えると、3管風の滑らかなグラデーションが味わえる。見慣れたBDの『キングダム・オブ・ヘブン(ディレクターズカット)』や『キングコング』はじっくりと粘りのあるダーク再現も趣があり、微妙な陰影のトーンが秀逸だ。アニメファンにおすすめなのは『ブレイブストーリー』などのツヤのある色彩表現だ。
『M:I-3』や『トリプルX』などのド派手なハリウッド映画なら、「ガンマB」(コントラストを強調ぎみ)がマッチするだろうし、DVDソフトを解像度アップして見るのもまた一興。
この手で天吊りをしただけに、HD1への愛着もひとしおだ。少々心配であったファン音も、私の視聴位置だとまったく気にならず快適なシアター三昧の日々である。
(林正儀)
【林 正儀 プロフィール】
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホームシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。主な著作に「レーザービジョン ディスク入門 AV新時代を拓く」(啓学出版刊)や「ビデオとビデオディスクプレー ヤーの選び方」(音楽之友社刊)がある(これはLDのハードウェアを国内で最初に紹介した本)。自宅視聴室に3管式プロジェクターとD-ILAプロジェクターを常設し、ホームシアター研究のための努力と投資は人一倍。フルート演奏が趣味という一面もある。
【→前編はこちら】
新旧のマシンをともに天吊りする秘策が浮かんだ
私のイメージでは、三菱LVP-2001の前にうまくセットできたビクターHD1の姿が浮かんでいた。2メートルの長いレール上に、2両連結よろしく、新旧のマシンが天吊りされるのである。こんな構図は見たこともないが、完成すればおもしろい。
さて前編で予告した“秘策”を披露しよう。「板状のものをレールに乗せ、そこに専用の取り付け金具を」というアイデアが固まってきたのは、あるモノを見つけたからだ。オーディオラック用のボードである。サイズは38×45センチほどだが、うまい具合にコの字型なのでレールから外れることもない。
天吊りの準備はちょっとした日曜大工
庭先での日曜大工はわくわくする。ボードは白く塗ろう。下から見たときの色あわせだが、HD1本体は精悍なブラックバージョンだ。プロジェクター取りつけ時の総重量は15.6キロ(金具が4キロ)。さほどの重さじゃないが、安全性を考慮してアルミ板2枚(これもコの字型)で補強することにした。専用の天吊り金具「EF-HT11」はよくできている。±15度のチルトや、ぐるっと一周まわせる水平パン機構が付いたスグレモノだ。でもそんな融通性も、土台をしっかり固定したうえでの話である。
こうした作業には型紙をつくるのが一番だ。前半のハイライトは、天井プレートの4つの穴に、ボードとアルミ板をボルトどめすることだが、紙に書いた図面をそのままあてがい、現物に合わせで進めていく。一方プロジェクター側は底面の足を外して、そこに本体プレートをセット。これで準備作業完である。
ついにHD1が天井に
吊り下げは二人がかりだ。まずは天井プレート側をレールにまたがせ、安定を確保しよう。天井とのクリアランスがないので作業は窮屈。そこをクリアできれば半分成功したようなものである。連結アームは360度のフレキシブルになっており、さらに上下で分離できる。HD1本体ごともちあげ、エイヤっとフックを引っかけるようにセットすればOKだ。この位置だとほぼ110インチ投射だが、クロスハッチを出しながら台形歪みが出ないようにチルトを決める。上下80%、左右34%のレンズシフトとズーム&フォーカス調整で入念に追い込んで、いい感じに仕上がった。
DLA-HD1をさっそく視聴
写真ではHD1が三菱3管のレンズを塞いでしまっているように見えるが、実際はケラれることなくナイスコンディションにて両方のマシンを堪能できる。まずは満足、といえる投射状態だ。HD1の魅力はライバルを沈黙させる圧倒的な画力。それもコントラストの強靱さと新鋭のHDマシンらしいキレ味で追随を許さない。一瞬、3管の画が眠く感じられるようなシャキっとしたトーンだが、それが決して硬質にならずしなやかさのあるキレ味なのだ。
BSデジタルは色純度が高くみずみずしい。すみずみまでディテール感がみなぎっており、どっと情報が溢れ出るようだ。ノイズ感も極小。放送映像は文句なしのレベルにあることを確認。良質な専用チューナーが欲しくなったくらいである。
だが驚くのは早い。『里山』『夜桜』といったHD DVDの超ハイクオリティ映像(1080p)に接すると、あまりの繊細さ、ナチュラルかつ高度な遠近の描写に目を奪われる。さらに本命のシネマ作品で、所有の喜びが最高潮に達したのだ。イチ押しの黒再現ついては、標準の2.2乗カーブ(ノーマル)から少し暗部をもちあげた「ガンマA」に変えると、3管風の滑らかなグラデーションが味わえる。見慣れたBDの『キングダム・オブ・ヘブン(ディレクターズカット)』や『キングコング』はじっくりと粘りのあるダーク再現も趣があり、微妙な陰影のトーンが秀逸だ。アニメファンにおすすめなのは『ブレイブストーリー』などのツヤのある色彩表現だ。
『M:I-3』や『トリプルX』などのド派手なハリウッド映画なら、「ガンマB」(コントラストを強調ぎみ)がマッチするだろうし、DVDソフトを解像度アップして見るのもまた一興。
この手で天吊りをしただけに、HD1への愛着もひとしおだ。少々心配であったファン音も、私の視聴位置だとまったく気にならず快適なシアター三昧の日々である。
(林正儀)
【林 正儀 プロフィール】
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホームシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。主な著作に「レーザービジョン ディスク入門 AV新時代を拓く」(啓学出版刊)や「ビデオとビデオディスクプレー ヤーの選び方」(音楽之友社刊)がある(これはLDのハードウェアを国内で最初に紹介した本)。自宅視聴室に3管式プロジェクターとD-ILAプロジェクターを常設し、ホームシアター研究のための努力と投資は人一倍。フルート演奏が趣味という一面もある。