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公開日 2008/01/10 11:34
<CES2008>「終戦」は間近か? 混迷を深めるHD DVD陣営の転向報道
ワーナーがBDでの独占供給を発表してからというもの、HD DVD陣営の一挙手一投足が世界中のメディアから注目を集めている。すでに当サイトのニュースや「Phile-web コミュニティ」において、多数の記事が書かれているが、改めてここまでの流れをまとめてみたい。
ワーナーが2008年6月からBDでのみハイビジョンディスクを販売することを決めた(関連記事)ことにより、BD陣営はSPE、MGM、ディズニー、20世紀FOX、ワーナー、ライオンズゲートといった大手メジャースタジオが顔を並べることになった。対するHD DVDは、メジャースタジオはユニバーサルとパラマウントの2社のみで、劣勢の感は否めない。
この発表を受け、北米HD DVDプロモーショングループは、急遽International CESで予定されていたプレスカンファレンスを中止(関連記事)。同グループはワーナーの決定の「潜在的な衝撃について議論」しているとし、動揺の大きさを伺わせた。
HD DVD規格を牽引する東芝は、すぐさま「ワーナーがこのような決断を下したことは極めて残念」と言う声明を発表(関連記事)。また、同社のプレスカンファレンスでは、HD DVDに関する説明の時間は短かったものの、「HD DVDが死んだ、という論調は心外」とし、HD DVDがDVDフォーラムに承認された唯一の規格であること、またすべてのプレーヤーにイーサネット端子を搭載し、インタラクティビティーに優れていることなどを改めて主張した(関連記事)。また、同社ブースではHD DVDのウェブ機能をアピールし、意気軒昂なところを示した(関連記事)。
2007年の北米のソフト販売は、BDとHD DVDがおよそ2対1の割合で推移していたが、PS3が年末商戦で好調な売り上げを記録したこと、そしてHD DVDに対抗してソニーやパナソニックといった一流メーカーが低価格なBDプレーヤーを投入したこともあり、その差は拡大傾向にある。BDAのプレスカンファレンスでは、ワーナーがBD独占に移行したことにより、現状のハリウッドスタジオのシェアはBDが68.4%、HD DVDが22.8%となり、その他を加えるとほぼ7割を超える映画会社がBDのみを発売する状況だという。
CESのプレスカンファレンスでは、ソニーCEOのストリンガー氏がワーナーの決定に対し、満面の笑みを浮かべて歓迎の意を表明(関連記事)。さらに、BDAのカンファレンスでも、BD陣営のメジャースタジオ各社がBDの優位を強調。事実上、フォーマット戦争は終結したとの見解を表明した(関連記事)。
既に日本でも報道されているが、このような状況を受け、パラマウントがHD DVDへの独占供給を撤回するのではないかという観測が浮上。もともと英誌フィナンシャル・タイムズが報道したもので、パラマウントのHD DVD独占供給の契約に、ワーナーがBDへ移行した場合、契約を破棄できる条項が存在するのだという。
これも既に伝えられているように、すぐにパラマウントはこの報道を否定した。ブルームバーグの報道によれば、同社の幹部が、引き続きHD DVDを支持すると述べたという。
だが、HD DVD陣営、特に巨額のインセンティブを支払ったと噂されている東芝との交渉がまとまるまでは、これまでの方向性に沿ったコメントを行うのは当然の話。1月10日朝の段階で、パラマウントの親会社であるVIACOMはこの問題に関して一切の公式発表を行っていないが、HD DVDへの支持が本当に強固なものならば、報道を否定する公式声明や、支持を継続する旨のニュースリリースを発表していてもおかしくない。いずれ真偽のほどが判明するだろうが、しばらくパラマウントの動向に注意を払う必要がある。
ただし一部メディアは、パラマウントのBDへの転向を既知の事実として報道を展開。それどころか、英TIMESのウェブサイトでは、パラマウントを含む20社がHD DVD陣営を離脱する可能性があると報じた。これがもし本当ならば、HD DVD陣営が抱えるメジャースタジオはユニバーサルだけになり、HD DVD陣営は事実上瓦解することになる。
HD DVD陣営にとって、頼みの綱とも言えるマイクロソフトは、これまで東芝と協調してHD DVD規格をアピールしてきた。HD DVDのインタラクティブ機能「HDi」はマイクロソフトが開発したものであり、さらにXbox 360に外付けHD DVDプレーヤーを用意するなど、同社がHD DVDの普及促進に果たしてきた役割は大きい。そのマイクロソフトも、ワーナーの発表を受けて態度を微妙に変化させているようで、将来的にBDを支持する可能性が出てきた。
繰り返すが、引用した各メディアの報道は公式の発表によるものではなく、各メディアの推測、また関係者の個人的な意見が多分に含まれている。どこまでが事実で、いま何が水面下で起きているか判然としないが、近いうちにフォーマット戦争の帰趨も含め、すべてが明らかになるだろう。
(Phile-web編集部・風間)
ワーナーが2008年6月からBDでのみハイビジョンディスクを販売することを決めた(関連記事)ことにより、BD陣営はSPE、MGM、ディズニー、20世紀FOX、ワーナー、ライオンズゲートといった大手メジャースタジオが顔を並べることになった。対するHD DVDは、メジャースタジオはユニバーサルとパラマウントの2社のみで、劣勢の感は否めない。
この発表を受け、北米HD DVDプロモーショングループは、急遽International CESで予定されていたプレスカンファレンスを中止(関連記事)。同グループはワーナーの決定の「潜在的な衝撃について議論」しているとし、動揺の大きさを伺わせた。
HD DVD規格を牽引する東芝は、すぐさま「ワーナーがこのような決断を下したことは極めて残念」と言う声明を発表(関連記事)。また、同社のプレスカンファレンスでは、HD DVDに関する説明の時間は短かったものの、「HD DVDが死んだ、という論調は心外」とし、HD DVDがDVDフォーラムに承認された唯一の規格であること、またすべてのプレーヤーにイーサネット端子を搭載し、インタラクティビティーに優れていることなどを改めて主張した(関連記事)。また、同社ブースではHD DVDのウェブ機能をアピールし、意気軒昂なところを示した(関連記事)。
2007年の北米のソフト販売は、BDとHD DVDがおよそ2対1の割合で推移していたが、PS3が年末商戦で好調な売り上げを記録したこと、そしてHD DVDに対抗してソニーやパナソニックといった一流メーカーが低価格なBDプレーヤーを投入したこともあり、その差は拡大傾向にある。BDAのプレスカンファレンスでは、ワーナーがBD独占に移行したことにより、現状のハリウッドスタジオのシェアはBDが68.4%、HD DVDが22.8%となり、その他を加えるとほぼ7割を超える映画会社がBDのみを発売する状況だという。
CESのプレスカンファレンスでは、ソニーCEOのストリンガー氏がワーナーの決定に対し、満面の笑みを浮かべて歓迎の意を表明(関連記事)。さらに、BDAのカンファレンスでも、BD陣営のメジャースタジオ各社がBDの優位を強調。事実上、フォーマット戦争は終結したとの見解を表明した(関連記事)。
既に日本でも報道されているが、このような状況を受け、パラマウントがHD DVDへの独占供給を撤回するのではないかという観測が浮上。もともと英誌フィナンシャル・タイムズが報道したもので、パラマウントのHD DVD独占供給の契約に、ワーナーがBDへ移行した場合、契約を破棄できる条項が存在するのだという。
これも既に伝えられているように、すぐにパラマウントはこの報道を否定した。ブルームバーグの報道によれば、同社の幹部が、引き続きHD DVDを支持すると述べたという。
だが、HD DVD陣営、特に巨額のインセンティブを支払ったと噂されている東芝との交渉がまとまるまでは、これまでの方向性に沿ったコメントを行うのは当然の話。1月10日朝の段階で、パラマウントの親会社であるVIACOMはこの問題に関して一切の公式発表を行っていないが、HD DVDへの支持が本当に強固なものならば、報道を否定する公式声明や、支持を継続する旨のニュースリリースを発表していてもおかしくない。いずれ真偽のほどが判明するだろうが、しばらくパラマウントの動向に注意を払う必要がある。
ただし一部メディアは、パラマウントのBDへの転向を既知の事実として報道を展開。それどころか、英TIMESのウェブサイトでは、パラマウントを含む20社がHD DVD陣営を離脱する可能性があると報じた。これがもし本当ならば、HD DVD陣営が抱えるメジャースタジオはユニバーサルだけになり、HD DVD陣営は事実上瓦解することになる。
HD DVD陣営にとって、頼みの綱とも言えるマイクロソフトは、これまで東芝と協調してHD DVD規格をアピールしてきた。HD DVDのインタラクティブ機能「HDi」はマイクロソフトが開発したものであり、さらにXbox 360に外付けHD DVDプレーヤーを用意するなど、同社がHD DVDの普及促進に果たしてきた役割は大きい。そのマイクロソフトも、ワーナーの発表を受けて態度を微妙に変化させているようで、将来的にBDを支持する可能性が出てきた。
繰り返すが、引用した各メディアの報道は公式の発表によるものではなく、各メディアの推測、また関係者の個人的な意見が多分に含まれている。どこまでが事実で、いま何が水面下で起きているか判然としないが、近いうちにフォーマット戦争の帰趨も含め、すべてが明らかになるだろう。
(Phile-web編集部・風間)