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公開日 2008/04/01 16:12

【一条真人の体当たり実験室】カシオの超高速デジカメ「EX-F1」で衝撃映像を撮影!

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●新たな進化を求めるデジカメ

一時期、デジカメの新機種と言えば、前機種の画素数を増しただけというような状態が続いたことがあった。これも撮影可能な画素数がユーザーの要求レベルに届かないのであれば、必要な進化なのであるが、500万画素を超えてくれば、もはや一般的な用途では違いがあまり問題にならなくなってくる。そのためか、最近ではデジカメの人気の流れはコンパクトデジカメから一眼レフタイプのものに移っているように思う。

そんな状況のなかで、カシオの「EX-F1」(関連ニュース)は新しい用途を提案してきた。今までの常識を超えた超高速連写機能だ。F1の画素数は600万画素に過ぎず、搭載するズームレンズは光学12倍だが、その600万画素の静止画像を60枚/秒撮影することを可能にしている。これは現時点では世界最速となる。

光学12倍レンズはさすがに大きく見える

付属のレンズフードをつけた状態。レンズを保護する意味でも有効だ

この連写機能は、単に静止画像を高速撮影するだけでなく、ムービー撮影をも可能にしている。現在のビデオカメラではフルHD解像度(1,920×1,080ドット)のビデオカメラが主流になりつつあるが、EX-F1はこのフルHD解像度で60fpsの撮影が可能になる。さらに、ハイスピード撮影では300fps、600fps、1,200fpsという驚異的なフレームレートの動画撮影が可能だ。

1,200fpsでの撮影は、従来は高価な業務機材でしか撮影できなかった領域であり、これを一般的な価格のデジカメで可能にしたのは驚異的と言える。今回はこのEX-F1をお借りして、その実力を試してみた。

●超高速連射機能の使い分け

EX-F1の高速性を生かした機能には毎秒60枚連写の「超高速連写」、最大1,200fpsで撮影可能な「ハイスピードムービー」、フルHDビデオが撮影可能な「フルHDムービー」の3つがあり、それぞれの機能にもいくつかのモードがある。これだけ機能があると、その設定の操作性も気になるところだ。

超高速連射は、ボディ上面の2つのダイヤルの左の「連射ダイヤル」を回転させて設定することができる。通常はシャッターを押すと1枚撮影だが、連写モードに設定すれば、指定モードの連写を行う。

二つあるダイヤルの左側が連写ダイヤル

ムービー撮影は背面の右手で手が届くところにある「ムービーモードスイッチ」を回転させることで、モード設定を行うことができる。そして、このダイヤルの中心にあるムービーボタンを押すことで撮影の開始、停止ができる。このムービーボタンは親指で自然に押すことができる。撮影時は人差し指で、シャッターボタン、親指でムービーボタンと使い分けることができるわけだ。動画撮影中にシャッターを押して、静止画像を撮影することもできる。

ムービーボタンは背面右側上部にあり、グリップしたまま親指で操作できる

撮影できるムービーはスタンダード、HD、フルHD、ハイスピード(3種類)の6種類だが、ダイヤルはSD、HD、HS(ハイスピード)の3種類しかない。HDムービーでの解像度は液晶ディスプレイのメニュー機能でHDかフルHDかを設定できる。そして、ハイスピードムービー撮影に関しても、液晶ディスプレイのメニュー機能で3つのモードから選択することができる。

ハイスピードモードは3つのなかから選択できる

フレームレート
解像度
1200fps
336×96ピクセル
600fps
432×192ピクセル
300fps
512×384ピクセル


●目的に合わせて機能するファンクションリング

F1ではグリップ部のシャッターボタンの手前にズームレバーがあり、これを左右に動かすことで、ズームができる。これは静止画像を撮るときにはいいが、動画を撮るときにこの操作をすると、カメラのホールドが悪くなり、ブレやすくなってしまう。

グリップ部の上部先端にはズームレバーがある

普通の一眼レフであれば、レンズの周囲の回転リンクはフォーカスやズームなどに使われる。F1のレンズリングは「ファンクションリング」と呼ばれ、いくつかの機能に使うことができ、ユーザーはTPOで好きな機能を設定できる。設定する機能はメニューから選択でき、連写fps、ズーム、フォーカスとなる。

レンズ周囲のファンクションリングはズームにもフォーカスにも使える

ファンクションリングには目的に応じて機能を設定できる

●付属ソフトをチェック

付属ソフトとしてはYouTubeへのビデオのアップロードソフト「YouTube Uploader for Casio」に加えて、「ArcSoft TotalMedia・Extreme for CASIO」が付属する。このTotalMedia・Extremeは、動画の再生ソフトとフルHD解像度のままAVCHDビデオディスクを作成できるオーサリングソフトの2つのプログラムからなる。

YouTubeUploaderを使うと、EX-F1のフラッシュメモリ上のデータをダイレクトにYouTubeにアップロードできる

「ArcSoft TotalMedia・Extreme for CASIO」はメニュー画面から2つのソフトが起動できる

なお、ハイスピードムービーはQuickTIme Playerでも再生することができるが、フルHDムービーは「1920×1080/60i」となるため、QuickTImeでは再生することができない。

AVCHDディスクを作成できるオーサリングソフト「TotalMediaStudio」

F1で撮影したすべての形式の動画を再生できるTotalMediaTheatre

●ハイスピードムービー撮影を試す

撮影してみたところ、やはり、静止画像に関しては600万画素という解像度なりのコンパクトデジカメの映像という印象を受ける。あっさりした画像であり、実用的には十分以上だが、デジタル一眼と比較すると、解像感、色再現性、コントラストともに落ちるという印象だ。

静止画実写画像その1(標準画質モード)
静止画実写画像その2(標準画質モード)
静止画実写画像その3(標準画質モード)

もちろん、F1でもっとも注目なのはハイスピード撮影機能なわけで、さっそく、いくつかの動画を撮影してみた。実際にハイスピード撮影した映像を見ると、それはまさに今までに体験したことのない時間世界がそこにあった。激しく人が行き来する往来の人の歩みがスローモーションのように見え、肉眼では目にもとまらぬ鳥の羽ばたきさえもゆったりと見える。

【動画:歩行をハイスピードムービーで(1200fps)】




【動画:鳥が着地するところ(1200fps)】



【動画:鳥が飛行しているところ(600fps)】



再生モード、撮影モードは背面の独立したボタンで素早く切り替えることができ、撮影映像はハイスピードビデオ映像でも、すぐに再生して見ることができる。

再生モード。右の「HS300」の文字は300fpsで撮影された映像であることを示す

●F1のフルHD映像は一般的なビデオ編集ソフトで編集できない?

EX-F1は1,920×1,080というフルHD撮影ができるが、この映像は1920×1080/60i形式になる。そのため、現時点では前述のようにこの形式をサポートしないQuickTimeで再生できないのだが、VideoStudio12のような一般的なビデオ編集ソフトでの編集もできない。なお、ハイピードビデオ撮影の映像は1200fps撮影でも普通にVideoStudio12で編集することができる。

ハイスピードビデオはVideoStudio12で編集可能

●コーラ+メントスの続編をどうする?

EX-F1のハイスピードムービーは、同じ空間を撮影しても、通常とはまるで異なる異次元の映像になる。肉眼では通常、見ることができない世界は、まさに「神の目」で世界を見ている感じだ。

この映像を見たとき、それまで考えていたことに、まさにこのハイスピード撮影がうってつけだと確信した。それは、以前、「YouTubeでウケる動画を作ろう!」という記事のために作成し、YouTubeにアップロードしていた動画「メントスをなめながら、コーラ飲みにチャレンジ」が現時点で16万ヒットを超えているのだが、その続編とも言えるムービーを作るというものだ。

ご存じない方のために説明すると、コーラにメントスを入れると強烈に発泡する。この現象を利用し、メントスをなめながらコーラを飲むことにトライするという映像だ。結果に興味のある方は実際の動画で確認していただきたい。

【動画:メントスをなめながら、コーラ飲みにチャレンジ】



さて、この時はコーラ+メントスで撮影していたのだが、コーラよりもビールのほうが発泡するので、ビールでトライした映像をアップロードして欲しいというリクエストが多くの方から寄せられていた。しかし、単純にビール+メントスでトライしただけでは、あまり面白くないという気がして、さらにプラスαする要素はないかと考えていたのだ。このハイスピード撮影こそ、それにうってつけではないか。

●ビール+メントスのハイスピード撮影にトライ

というわけで、メントスをなめながらビールを飲んで、それをハイスピードムービー撮影してみることにした。※編集部より:危険ですので真似をしないで下さい

長い間温めてきた企画だけあって、実験前、はやる気持ちが抑えられない様子の一条氏。ビールとメントス、カメラを持って準備OK!

ところで、このF1のハイスピード撮影にはフレームレートの異なる3つのモードがあるが、それぞれのモードで撮影解像度が変わる。撮影時は、液晶ディスプレイ上に撮影されるフレームが表示されるのだが、1200fpsでのフレームはあまりに狭く、この範囲での撮影が困難であると感じられたので、もっとも広範囲に撮影できる300fpsモードで撮影してみた。

そして、この300fpsで撮影した映像は、通常のカメラで撮ったものとは次元の異なるものとなった。ビールの爆発力は、やはり、コーラを凌ぐ物だった。まあ、ビールは何も入れなくても発泡しているのだから、当然とも言えるが、その威力を余すところ無く伝えられたと思う。

【動画:ハイスピードカメラがとらえた「メントス+ビール」】



DVカメラで撮影した映像と比較すると、その違いがよくわかることだろう。なお、このビデオクリックでは通常映像の後にハイスピード映像が入っているので、比較して見ていただきたい。

【動画:「メントスビール」通常撮影+ハイスピードバージョン】



ちなみに前回の映像は一人で撮影したが、今回は編集の風間氏に撮影してもらったため、非常に楽だった。三脚を使って撮影すると、自分の動きがフレーム内に収まるように注意しなければならないため、神経を使わなければならないのだ。

撮影時、天候がやや悪いのが気がかりだったが、撮影が終わるまで、雨が降ることはなかった。撮影後、余ったビールをゴクゴクと飲んでいた我々は達成感でいっぱいになり、ヘラヘラと笑いを浮かべていた。そして、そんな我々を見て、複数の子供連れのママがきびすを返してどこかに去っていったのを僕は目の片隅に捉えていた。きっと、他の人の目には昼間からビールを飲んでヘラヘラしている不気味な二人組として映っていたことだろう。そして、我々がそろそろ帰ろうとした時、静かに雨が降ってきた。

●総論

カシオ「EX-F1」は600万画素のコンデジにして、低価格なデジタル一眼を超える10万円オーバーという価格設定からもわかるように、一般向けのコンデジとは一線を画するデジカメだ。そのアイデンティティは超高速ハイスピード撮影にあり、それを求めるある種ニッチなユーザー層に向けた製品だと言える。

しかし、そのハイスピードムービーは今まで、目の前に存在しながら、見ることができなかった世界を見せてくれる。見慣れているはずの日常的な景観のなかにさえ、まったく異なる世界があることを見せてくれるその映像は、まさに「神の目」とも言えるものだ。それを体験したい人は迷わず手にすることをお薦めしたい。

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

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