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公開日 2008/08/01 11:54
【一条真人の体当たり実験室】“考えるだけ”でBD再生は可能か − 「脳波マウス」を試してみた
■PCを脳波で操作できる「脳波マウス」登場
現在のPCの操作環境はキーボード+マウスが主流になっている。文字を入力するためのキーボードに対して、マウスは位置を指し示すポインティングデバイスになる。ソフトウェアキーボード機能を使えばマウスだけで操作できないこともない。
DVD/ブルーレイビデオの再生や、音楽の再生などではマウスだけで操作することができる。これらのメディア再生だけであれば、操作はそう面倒なものでもない。しかし、もし、考えるだけで操作できれば、より便利だし、なによりSFみたいでカッコいい。この「考えるだけで操作」を実現するのが、脳波での操作を可能にするデバイスだ。
脳波の働きについては、ここ最近、急速に脳の働きの解明が進んでおり、ついにコンシューマー向けにも、脳波でPCを操作することができる、言わば「脳波マウス」が登場した。OCZテクノロジー社が販売する「nia - Neural Impulse Actuator」という製品だ。対応OSはWindows Vista/XP(32bit版のみ)。国内ではグロウアップジャパン社が代理店となっており、今年8月の半ばあたりから販売が開始されることになっている。販売価格はおおむね25,000円程度になる見込みだ。
今回は秋葉原のUSERS SIDEのショールームを訪れ、このniaを実際に試してみたので、そのレポートをお送りしたい。
■動作原理は?
一口に脳波で操作すると言っても、その動作原理はどのようになっているのだろう。niaでは、どこかのSFドラマのように人の考えを外部から見ることができるわけではない。それではどのようにするかというと、特定のイベントを思い浮かべた場合の脳の反応を登録し、そのパターンが現れたときに、それに対する操作(キー入力)を実行するというわけだ。
niaでは具体的には、左右、クリック、ニュートラルという4つの状態をイベントとして、そのイベントに対してキー入力を登録することで、目的のコマンドを実行することになる。ちなみに、このキー入力はデータベースとして登録し、ソフトによって切り替えることができる。ちなみに、このキー入力はF12とControlで本来の入力と切り替えることができる。
そして、さらに4つのそれぞれのイベントに対して4つのレベルを割り当てることによって、最大で16個のキーを入力することができる。
ユーザーごとに脳波の反応の特性が異なるため、初期設定ではその特性を探るキャリブレーションを行う必要があり、それぞれのイベントに対して、適切な反応を行うよう調整する機能も搭載している。
■いよいよ製品を使ってみる
原理の話はこれぐらいにして、実際に製品を試してみよう。まずは利用者はセンサー付きのヘッドバンドを装着する必要がある。このヘッドバンドには3つのセンサーが搭載されており、脳波の動きを検知するようになっている。
このセンサーは前頭葉に密着する必要があるとのことで、髪の毛などが挟まると検知に影響してしまうなど、やや神経質なところがある。
ヘッドバンドを装着したら、niaのコントロールソフトを起動する。このコントロールソフトからは、チュートリアル、キャリブレーション、ブレインフィンガー、プラクティス、ゲームプレイを実行できる。
最初に使う場合は、脳波の特性を登録するためにキャリブレーションを実行する必要がある。このキャリブレーションは30秒程度であり、ユーザーは画面中央部のアニメーションを見ていることになる。そのアニメーションに対する脳の反応をデータとして取り込み、基準値として登録する。
■脳波を確認したあとプラクティスを行う
キャリブレーションの後はブレインフィンガーズを実行し、脳波や検知データが出ているかを確認する。これはバーグラフで、レベルによって検知レベルを表示してくれる。一番左から、Glance、3つのアルファ波、3つのベータ波、Muscleになる。Glance(グランス)は、目の動き自体ではなく、目を動かすための脳の信号を示す。そして、Muscleは筋肉の緊張度を示す。
これらが適正なレベルで表示されれば、センサーがデータを検知できているというわけだ。
検知できていることを確認した後は、プラクティスで実際に脳波のコントロールを試す。このプラクティスには反応速度を試すもの(Muscleのレベル変化)、上下のコントロールを試すもの、目の動き(Glanceで左右を示す)を試すものなどがある。
これらの練習を積んで、明確に信号を出せるようにならないと、実際のソフトのコントロールは難しい。
■利用には個人の適性があるnia
実を言うとniaは誰にでも気軽にコントロールできるというものではない。人によってはプラクティスでほとんどコントロールすることができない場合もある。正直に言えば、僕はまったくコントロールすることができなかった。
プラクティスでは、信号が高いレベルで常時出っぱなしになってしまい、レベルを下げることができなかった。これは筋肉(Muscleレベル)に力が入りっぱなしであることが原因で、これでは常時クリックしっぱなしという状態になってしまう。このような場合でも、しきい値(オンオフの判断基準となる値)を変えることで、ある程度、使えるようになるはずだが、短時間の取材では適正な調整はできなかった。
【動画:一条氏がプラクティスにトライ】
さらにGlanceのプラクティスでも、本来なら「右」「左」と意識すると、スライダーが左右に動くはずなのだが、いくら念じても、ピクリとも動かない。そして、ゲームの「クライシス」をプレイしてみても、銃を撃つことはおろか、移動することすらまったくできなかった。
【動画:ゲーム「クライシス」に挑戦する一条氏】
これはnia自体の問題というよりも、僕の適性の問題であるようだ。なぜなら、同行した二名の編集部員はプラクティスでもしっかり反応し、さらにゲーム「クライシス」でも移動したり、銃を撃ったりすることができたからだ。なんとも時代に取り残されたような気分だ。僕はオールドタイプなのだろうか。それとも、仕事のし過ぎで脳の緊張がとれないのだろうか?
【動画:編集部小澤が「クライシス」を脳波でプレイ】
【動画:編集部風間が「PONG」をプレイ】
■リベンジのチャンスはあるか?
脳波を利用するという斬新な入力デバイスであるniaだが、さすがにこの分野のコンシューマ向け製品としては世界初なだけあって、誰にでも使えるというものではないようだ。また、現時点ではゲーム操作専用とも言えるものであり、当初の目的だったブルーレイの再生は、キーの割り当てを変えれば不可能ではないだろうが、何せ僕自身の操作能力がまったく足りなかったので、今回はトライすることさえできなかった。
とはいえ、現在、この脳波制御の分野の進化は速い。ブルーレイ再生ソフトの制御が可能になる日も近いだろう。具体的には、今年末には無接点型で8つのセンサーを持つ新製品が登場する予定だという。無接点型で多チャンネルということで、niaより安定して適確に脳の信号を読み取れるものになることが予想される。
これが登場したら、速攻でトライするつもりだが、何にせよ僕が脳波マウスを適確にコントロールするためには、まずは脳の筋肉の緊張をほぐすことが必要かも知れない。そのために、ヨガか禅でも始めようかと思う今日この頃だ。
(一条真人)
執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。
現在のPCの操作環境はキーボード+マウスが主流になっている。文字を入力するためのキーボードに対して、マウスは位置を指し示すポインティングデバイスになる。ソフトウェアキーボード機能を使えばマウスだけで操作できないこともない。
DVD/ブルーレイビデオの再生や、音楽の再生などではマウスだけで操作することができる。これらのメディア再生だけであれば、操作はそう面倒なものでもない。しかし、もし、考えるだけで操作できれば、より便利だし、なによりSFみたいでカッコいい。この「考えるだけで操作」を実現するのが、脳波での操作を可能にするデバイスだ。
脳波の働きについては、ここ最近、急速に脳の働きの解明が進んでおり、ついにコンシューマー向けにも、脳波でPCを操作することができる、言わば「脳波マウス」が登場した。OCZテクノロジー社が販売する「nia - Neural Impulse Actuator」という製品だ。対応OSはWindows Vista/XP(32bit版のみ)。国内ではグロウアップジャパン社が代理店となっており、今年8月の半ばあたりから販売が開始されることになっている。販売価格はおおむね25,000円程度になる見込みだ。
今回は秋葉原のUSERS SIDEのショールームを訪れ、このniaを実際に試してみたので、そのレポートをお送りしたい。
■動作原理は?
一口に脳波で操作すると言っても、その動作原理はどのようになっているのだろう。niaでは、どこかのSFドラマのように人の考えを外部から見ることができるわけではない。それではどのようにするかというと、特定のイベントを思い浮かべた場合の脳の反応を登録し、そのパターンが現れたときに、それに対する操作(キー入力)を実行するというわけだ。
niaでは具体的には、左右、クリック、ニュートラルという4つの状態をイベントとして、そのイベントに対してキー入力を登録することで、目的のコマンドを実行することになる。ちなみに、このキー入力はデータベースとして登録し、ソフトによって切り替えることができる。ちなみに、このキー入力はF12とControlで本来の入力と切り替えることができる。
そして、さらに4つのそれぞれのイベントに対して4つのレベルを割り当てることによって、最大で16個のキーを入力することができる。
ユーザーごとに脳波の反応の特性が異なるため、初期設定ではその特性を探るキャリブレーションを行う必要があり、それぞれのイベントに対して、適切な反応を行うよう調整する機能も搭載している。
■いよいよ製品を使ってみる
原理の話はこれぐらいにして、実際に製品を試してみよう。まずは利用者はセンサー付きのヘッドバンドを装着する必要がある。このヘッドバンドには3つのセンサーが搭載されており、脳波の動きを検知するようになっている。
このセンサーは前頭葉に密着する必要があるとのことで、髪の毛などが挟まると検知に影響してしまうなど、やや神経質なところがある。
ヘッドバンドを装着したら、niaのコントロールソフトを起動する。このコントロールソフトからは、チュートリアル、キャリブレーション、ブレインフィンガー、プラクティス、ゲームプレイを実行できる。
最初に使う場合は、脳波の特性を登録するためにキャリブレーションを実行する必要がある。このキャリブレーションは30秒程度であり、ユーザーは画面中央部のアニメーションを見ていることになる。そのアニメーションに対する脳の反応をデータとして取り込み、基準値として登録する。
■脳波を確認したあとプラクティスを行う
キャリブレーションの後はブレインフィンガーズを実行し、脳波や検知データが出ているかを確認する。これはバーグラフで、レベルによって検知レベルを表示してくれる。一番左から、Glance、3つのアルファ波、3つのベータ波、Muscleになる。Glance(グランス)は、目の動き自体ではなく、目を動かすための脳の信号を示す。そして、Muscleは筋肉の緊張度を示す。
これらが適正なレベルで表示されれば、センサーがデータを検知できているというわけだ。
検知できていることを確認した後は、プラクティスで実際に脳波のコントロールを試す。このプラクティスには反応速度を試すもの(Muscleのレベル変化)、上下のコントロールを試すもの、目の動き(Glanceで左右を示す)を試すものなどがある。
これらの練習を積んで、明確に信号を出せるようにならないと、実際のソフトのコントロールは難しい。
■利用には個人の適性があるnia
実を言うとniaは誰にでも気軽にコントロールできるというものではない。人によってはプラクティスでほとんどコントロールすることができない場合もある。正直に言えば、僕はまったくコントロールすることができなかった。
プラクティスでは、信号が高いレベルで常時出っぱなしになってしまい、レベルを下げることができなかった。これは筋肉(Muscleレベル)に力が入りっぱなしであることが原因で、これでは常時クリックしっぱなしという状態になってしまう。このような場合でも、しきい値(オンオフの判断基準となる値)を変えることで、ある程度、使えるようになるはずだが、短時間の取材では適正な調整はできなかった。
【動画:一条氏がプラクティスにトライ】
さらにGlanceのプラクティスでも、本来なら「右」「左」と意識すると、スライダーが左右に動くはずなのだが、いくら念じても、ピクリとも動かない。そして、ゲームの「クライシス」をプレイしてみても、銃を撃つことはおろか、移動することすらまったくできなかった。
【動画:ゲーム「クライシス」に挑戦する一条氏】
これはnia自体の問題というよりも、僕の適性の問題であるようだ。なぜなら、同行した二名の編集部員はプラクティスでもしっかり反応し、さらにゲーム「クライシス」でも移動したり、銃を撃ったりすることができたからだ。なんとも時代に取り残されたような気分だ。僕はオールドタイプなのだろうか。それとも、仕事のし過ぎで脳の緊張がとれないのだろうか?
【動画:編集部小澤が「クライシス」を脳波でプレイ】
【動画:編集部風間が「PONG」をプレイ】
■リベンジのチャンスはあるか?
脳波を利用するという斬新な入力デバイスであるniaだが、さすがにこの分野のコンシューマ向け製品としては世界初なだけあって、誰にでも使えるというものではないようだ。また、現時点ではゲーム操作専用とも言えるものであり、当初の目的だったブルーレイの再生は、キーの割り当てを変えれば不可能ではないだろうが、何せ僕自身の操作能力がまったく足りなかったので、今回はトライすることさえできなかった。
とはいえ、現在、この脳波制御の分野の進化は速い。ブルーレイ再生ソフトの制御が可能になる日も近いだろう。具体的には、今年末には無接点型で8つのセンサーを持つ新製品が登場する予定だという。無接点型で多チャンネルということで、niaより安定して適確に脳の信号を読み取れるものになることが予想される。
これが登場したら、速攻でトライするつもりだが、何にせよ僕が脳波マウスを適確にコントロールするためには、まずは脳の筋肉の緊張をほぐすことが必要かも知れない。そのために、ヨガか禅でも始めようかと思う今日この頃だ。
(一条真人)
執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。