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公開日 2008/09/08 16:44

<CEDIA2008>プロジェクター2008年秋冬モデルをまとめてチェック!

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CEDIA 2008の会場では、各社がこの秋冬に発売する最新プロジェクターを展示している。先日ベルリンで行われたIFA2008で発表されたものが中心だが、パナソニックの「PT-AE3000」など、CEDIAで初めて実機が展示されたものもある。

CEDIAで発表されたパナソニック「PT-AE3000」(北米型番)

AE3000は高画質処理技術「Detail Clarity Processor 2」を搭載

日本ではこの数年、ホームシアター向けプロジェクターの売り上げが今ひとつ振るわない。大型の薄型テレビが人気を集めていることも背景にあるだろうが、それならば北米や欧州も事情は同じはず。フランスやドイツなどでは、着実にプロジェクターの市場規模が拡大しているというから、国内市場の元気の無さを、薄型テレビや住宅事情のせいだけにはできない。何といっても、100インチ超の大画面を手軽な価格で実現できるのはプロジェクターだけ。この薄型テレビにはない魅力が国内でも深く浸透し、市場が再び活性化することを期待したい。

昨年はフルHDプロジェクターが一般化した年と位置づけられるが、今年はさらなる技術改善によってスペックや機能がさらに向上し、製品の完成度が高まった。3LCD方式の液晶プロジェクターは、ダイナミックコントラスト比が70,000対1を超えるモデルが現れ、低価格でフルHDの魅力を存分に味わえるラインナップが揃った。D-ILA/SXRDの反射型液晶デバイスを搭載したモデルでは、ソニーの「VPL-HW10」に代表されるように、これまで3LCD方式に比べ高価だったものをより低価格化し、エントリークラスを取り込もうという動きが見られる。

それではデバイス別に、各社の最新プロジェクターをチェックしてみよう。なお、仕様や機能はあくまで海外モデルのものであり、国内モデルでは変更される可能性があることをあらかじめご了承いただきたい。

■さらにコントラスト比を高めた液晶プロジェクター

液晶プロジェクターでは、パナソニックの「PT-AE3000」(北米型番)、三菱電機の「HC7000」(北米型番)「LVP-HC5500」、エプソン“PowerLite Home Cinema”「6500 UB」「6100」(ともに北米型番)、そしてサンヨーの「PLV-Z700」(欧州型番)などが、日本での発売が予想・予定されるメインプレーヤーとなる。当然のことながら、これらのモデルはすべて1,920×1,080のフルHDパネルを搭載している。

今年のモデルの特徴は、さらなるコントラスト比改善と倍速駆動対応である。倍速駆動については、エプソンが開発した新世代の液晶パネルを搭載しているか否かによって、対応できるかどうかが決まる。新パネルは、名称こそ昨年と同じD7 C2FINEで、開口率等も同じだが、今年の新デバイスは駆動速度を高め、倍速表示を可能とした。現時点の情報では、この新デバイスを搭載しているモデルは、パナソニックの「PT-AE3000」とエプソン「6500 UB」の2機種だ。

エプソン“PowerLite Home Cinema”「6500 UB」

液晶テレビにおける倍速駆動は、すっかりおなじみとなった感がある。最近では対応していないモデルを探す方が難しく、さらにソニー“BRAVIA”W1シリーズは、世界初の4倍速駆動を果たして話題となった。液晶プロジェクターでも基本的な原理は同じで、フレームとフレームの間に、新たに生成した補間フレームを置くことで、動きボケを抑えることができる。

コントラスト比の向上は、主に光学エンジンの改良による光漏れの抑制や、オートアイリスの改善などによって実現している。パネル自体のネイティブコントラスト比は数千対1レベルなので、これらの付加技術によって、いかに自然にコントラスト比を上げられるかが鍵になる。

光学エンジンの改良については、エプソンの2007年モデル「EMP-TW2000」が搭載した「DEEPBLACKテクノロジー」の考え方を各社が踏襲したものと予想される。DEEPBLACKテクノロジーは、従来のエンジンでは、フィルターで縦偏光した光を液晶パネルに通すと楕円偏光となって光漏れが発生していたものを、光の位相補償技術を用いることで、光漏れを大幅に抑えるというもの。今年のモデルではこの技術にさらに改良を加え、北米モデルの6500 UBは75,000対1というコントラスト比を実現。昨年のTW2000の50,000対1からさらに数値を上げた。輝度は1,600ルーメンとTW2000と変わらないので、そのぶん黒方向の輝度が落ちたことになる。なお、騒音レベルについても、これまでの24dBから22dBに改善が図られている。

同じエプソンの「6100」は、新たにパネルをD6からD7に変更。ただしC2FINEではなく、ノーマリーホワイトのパネルとなる。輝度は1,800ルーメンを予定し、パネルの変更やオートアイリスの改善などにより、コントラスト比は18,000対1程度に高まる予定だ。

エプソン“PowerLite Home Cinema”「6100」

三菱の「HC7000」のコントラスト比は72,000対1。このモデルについては、日本でも9月末から10月初旬にかけて発売することが決定している。エプソン「6500 UB」とほぼ同程度の高コントラスト比を実現した。ただしパネルは倍速対応ではなく、昨年と同じD7 C2FINE。輝度は1,000ANSIルーメンとTW4000に比べかなり低く、明るい部屋での視聴には不向きだが、遮光がしっかりできている部屋ならば十分な明るさと言える。北米でオプションとして用意されるアナモフィックレンズの装着にも対応しており、さらにランプモード「Low」の場合、騒音レベルを17dBというクラストップレベルの数値に抑えるなど、生粋のホームシアターファンを対象にしたモデルとして受け入れられそうだ。

三菱「HC7000」(北米型番)。国内での型番は「LVP-HC7000」か

一方、三菱のエントリーモデル「LVP-HC5500」は、昨年の「LVP-HC6000」の主な仕様を踏襲しながら、コストのかかるレンズを変更することなどにより低価格化を果たしたモデル。最新の高速オートアイリス機構を搭載し、10,000対1のダイナミックコントラスト比を実現している。レンズを変えたことで、上下レンズシフトの幅は75%を実現していたHC6000から50%へと若干狭くなり、左右レンズシフトは非対応となったが、ズームやフォーカス、レンズシフトを電動で行えるなど、従来モデルで好評だった特徴はそのまま継承している。

三菱「LVP-HC5500」。国内でも発売される

なお、上記のエプソンと三菱は、筐体を新たに起こし、新デザインを採用したことでも注目される。これまで、どちらかといえばエプソンは曲線主体、三菱は直線的なデザインだったが、今年はそれがちょうど逆になり、三菱がなめらかで有機的なラインを身にまとう一方、エプソンはシャープな印象のデザインに変更された。このデザイン変更がユーザーにどう受け入れられるかも興味深い。

パナソニックの「PT-AE3000」も、エプソンの6500 UBと同じ、倍速駆動対応のD7 C2パネルを搭載。両機とも、120Hz表示や24p映像の96Hz表示に対応する。

AE3000も光学エンジンを改良し、内部の光漏れを抑える「Pure Contrast Plate」技術を採用。これにより、コントラスト比は60,000対1を達成している。また、新たに搭載された高画質処理技術「Detail Clarity Processor 2」にも注目したい。フレーム内の画像の周波数をエリアごとに解析し、それぞれの特徴にあわせてシャープネスをかける技術。従来の技術では映像全体に対して均一にシャープネスがかかってしまってたが、この技術ではより自然で鮮明な映像が可能になるという。

サンヨーはCEDIAでブースを構えていなかったが、IFA2008で「PLV-Z700」というモデルが発表された。コストダウンが眼目の製品と言えそうで、コントラスト比は10,000対1、輝度は1,200ANSIルーメンと、他メーカーの製品に比べ若干見劣りする感は否めない。外観もLP-Z2000とほぼ同じ。ただし、さらに画質を高めた上位機を用意している可能性も否定できず、今後の発表を注視したい。

■D-ILAプロジェクター

D-ILAプロジェクターは、ビクターが「DLA-HD750」「DLA-HD350」の2機種を新たに投入する。国内でも年内をメドに導入する予定であるという。コントラスト比はHD750が30,000対1で、HD350が15,000対1。この数値はちょうどHD100とHD1のそれと同じであり、それぞれ同じパネルを搭載しているものと考えられる。

ビクター「DLA-HD750」

ビクター「DLA-HD350」

セット単位で計測したコントラスト比の単純な比較では液晶プロジェクターに抜かれてしまったが、オートアイリス機構によってかなり数字を稼いでいる液プロに対し、D-ILAプロジェクターは同機構をあえて設けず、パネルのネイティブ値で勝負する。これだけ優秀なパネルならばアイリスは不要、という矜恃さえ感じられる。

HQV Reon-VXの採用やレンズの改良などを行っているものの、パネルが同じものだけに画質の劇的な進化は期待しづらい。そのため、新製品は使い勝手や機能面の充実が図られている。設置性能を高める工夫では、ズームやフォーカスに加え、レンズシフトも電動対応としたほか、電源投入時に自動開閉するオートレンズカバーも搭載。また、AVファン向けに画質の調整項目を増やしたり、簡便な調整を可能にする工夫も施されている。

北米での販売価格はそれぞれ8,000ドル以下、6,000ドル以下。国内の販売価格は未定だが、日本ではD-ILAプロジェクターに対する信頼感は抜群。手頃な価格を実現すれば、HD1、HD100に続くヒットモデルとなることは間違いなさそうだ。

■SXRDプロジェクター

同じく反射型液晶デバイス“SXRD”を自社開発しているソニーも負けてはいない。SXRDプロジェクターの入門機と呼ぶべき「VPL-HW10」を、欧州と北米でそれぞれ発表した。国内でも発売を予定する。北米での販売価格は3,500ドルと、フルHD液晶プロジェクターと同程度に抑えられており、日本での販売価格がどの程度になるのか、大変興味深い。

SXRDプロジェクターのエントリーモデル「VPL-HW10」

VPL-HW10の端子部

コントラスト比は30,000対1だが、これはオートアイリス機構によって実現したもの。D-ILAプロジェクターだけでなく、同価格帯の液晶プロジェクターとの画質比較も楽しみな注目モデルだ。

■2008年秋冬プロジェクターは大豊作

こうして見てみると、今年も充実したモデルが数多く揃ったことに改めて驚かされる。繰り返しになってしまうが、フロントプロジェクターには薄型テレビにはない魅力がある。100インチ超の大画面を薄型テレビで実現するには600万円程度が必要で、しかも巨大なディスプレイを搬入できる環境が必要になるが、プロジェクターならば2〜30万円でかなりの性能のものが購入できる。ホームシアターに関心のある方は、ぜひ今年の新製品を、良い環境の整ったショップでじっくりチェックしてみて欲しい。

(Phile-web編集部・風間)

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