HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2008/12/19 17:09
【詳報】パナソニックによる三洋電機の買収が正式決定 − 国内最大級の電機メーカーが誕生へ
2012年度に増益効果800億円めざす
パナソニック(株)と三洋電機(株)は、本年11月7日に協議を開始(関連ニュース)した両社の資本・業務提携について、19日開催の両社取締役会で正式に契約を締結し、同日記者会見を行った。
会見は両社が本社を置く大阪を会場に行われ、パナソニック(株)大坪文雄社長と、三洋電機(株)佐野精一郎社長が出席。記者会見の内容は東京の会場にも同時中継された。
パナソニックは「可能な限り速やかに」、三洋電機株式の公開買付(TOB)を行うと表明。ただし、国内外の競争法当局での手続きに時間がかかるため、進捗状況については2009年2月下旬を目途に公表するとしている。
公開買付は、三洋電機の全株式を対象に行う。買付価格は普通株式1株あたり131円、A種・B種優先株式は1株1,310円を予定している。三洋電機の大株主である米ゴールドマン・サックスグループ、大和証券SMBC、三井住友銀行の3社はTOBへの「応募を前提に検討」しており、3社が議決権ベースで約70.5%程度の株式を保有しているため、3社が買付に応じればTOBは成立する。
TOBが成立した場合、買収額は3社より譲り受ける株式の総額のみで約5,600億円に上るという試算もある。成功すれば両社の売上高は合わせて約11兆円に上り、国内最大規模のエレクトロニクスメーカーが誕生する。現時点では、TOB成立後も三洋電機のブランド、および普通株式の上場は維持する方針が発表されている。
今回の資本・業務提携について、パナソニックの大坪社長、三洋電機の佐野社長がそれぞれ記者会見の会場でコメントした。
パナソニックの大坪社長は「エレクトロニクス業界を取り巻く環境は、グローバル競争の激化に加え、昨今の金融危機に発端する世界的な景気後退の中で、その厳しさが加速の一途をたどっている。またエレクトロニクス産業の構造的な変化が起こりつつある中で、企業の経営体質を徹底強化するとともに、成長への果敢なアクションを提示することが今こそ大事と考えた。今後、両社の“強み”となる部分を融合し、グローバルな競争力を強化、企業価値を最大化するためにも、いま両社の融合が必要であると考えている」と語った。
三洋電機の佐野社長は「今回の契約締結は、100年に一度あるかないかと言われている足下の極めて不透明で厳しい経営環境の中、当社の中期経営計画の達成、並びに事業のさらなる発展にとって非常に大きな道が開けたと感じている。上場の維持、三洋ブランドの維持が方針として合意されている点も含めて、本件協業の効果についてあらゆる角度から総合的に判断した結果、パナソニックが当社の企業価値向上にとっての最善のパートナーであり、今回の提携が“環境エナジー先進メーカーへの変革”という、当社の目指す将来像実現につながっていくと考えている。また当初の提案の段階で、パナソニックから表明のあった物心両面での支援が具体化されたことで、当社は今後の厳しいグローバル競争を勝ち残って行くためにも大きなアドバンテージを得ることができたと思う」と述べた。
両社は、パナソニックによる三洋電機の買収により生まれるいくつかのシナジー効果を例示。一つは太陽電池で、高効率の結晶系太陽電池や次世代太陽電池の開発・実用化を加速させ、パナソニックの持つ販売チャネルを活用することで増販をねらう。
二つめは二次電池事業で、三洋電機のリチウムイオン充電池の技術をパナソニックに導入、さらにパナソニックからは高容量技術などを提供し、両社の商品力を強化する。ハイブリッドカーや電気自動車用の充電池分野でも積極的に投資を行っていく。
三つ目は経営体質の強化。三洋電機がパナソニックグループの一員となる事で、三洋は資材調達コストやロジスティクス関連コストを削減できる、と見込む。
両社の強みを融合することにより、殊に「エナジー・エコロジー分野」でのグローバル・リーディングカンパニーへの変革を推進していく戦略が大坪氏より打ち出された。今後、両社の提携確立後は現在パナソニック・グループとして推進している「ABCDカルテット」に含まれる「デジタルAV」「カーエレクトロニクス」「半導体・デバイス」「ホームアプライアンス」の4事業に加え、「エナジー事業」が5つめの戦略事業として位置付けていく。「ABCD+E Quintet」として拡張した事業戦略をベースに、“家まるごと・ビルまるごと”のサービスとしてパナソニック・グループが提案していくことで、世界中のカスタマーニーズに応えるトータルエナジーソリューションを揃え、比類なき企業価値を実現していくと大坪氏は説明した。
なお、記者会見の場では、本提携による両社のシナジー目標もパナソニックの大坪社長より発表され、「2012年度に営業利益ベースで増益効果800億円」を目指すことが宣言された。エナジー事業で400億円、その他事業、および経営体質強化による400億円がその内訳とされた。
子会社化を実現後はこれらのシナジー効果発揮のため、両社で「コラボレーション委員会」を立ち上げるとともに、内部に「マネジメントWG」「事業戦略WG」「経営体質強化WG」それぞれのワーキンググループを設け、様々な分野での協業を加速させる。パナソニックでは「シナジーを最大限に発揮するため」として、今後1,000億円規模の投資も計画しているという。
記者会見の最後、大坪氏は「足もとの経営環境は大変厳しい状況だが、だからこそ両社力を合わせて立ち向かい、グローバルエクセレンスを実現していきたい。両社はエナジー・エコロジー分野を核とした“家まるごと・ビルまるごと”のソリューションを進化させ、お客様価値の最大化を目指せる唯一のタッグだと考えている」と述べ、意気込みをあらわにした。
以下に本日の会場で執り行われた質疑応答の模様を紹介する。
【質疑応答】
Q:今回発表された三洋電機株の買い付け予定価格はなぜこの金額になったのか。
A:本提携は事業会社どうしによるものなので、金額の設定にあたっては三洋電機の事業内容を事前に詳細に渡って検討した。その結果、三洋電機の単独価値と、提携後にシナジーをどれだけ生めるかの2点を合算して決定した金額だ。(大坪社長)
Q:三洋電機の上場維持とブランド維持は決定されたということだが、三洋電機の社員雇用についてはどのように話し合われているのか。
A:当社の中間決算発表でも申し上げたように、各事業構造改革については今後も三洋電機としてやりきって行きたい。これに関連する雇用も含めた様々な問題については最大限対処するつもりだが、来季の経営計画と状況を見ながら判断したい。あくまで事業あっての雇用だと認識しているが、今のところ本件については、大坪社長との間でこうあるべきという話はしていない。(佐野社長)
Q:シナジー効果による増益効果800億円という目標を発表しているが、具体的な内容について触れてもらいたい。また提携によるディスシナジーの部分は検討しているのか。
A:シナジー効果発揮のための詳細な施策については、今後「コラボレーション委員会」で詰めていきたい。エナジー事業で400億円を目標としているが、三洋電機単独で難しい部分はパナソニックでサポートしていく。互いの販売プラットフォームで、それぞれの強い商品を扱っていくこともあり得るだろう。残りの400億をその他の部分で想定している。例えば車載用の電池開発についても含まれている。ディスシナジーについても色々あると思うし、詳細にピックアップもしている。重要な点は、ディスシナジーを明確に意識して、これを削除して行くための対策を講じていくことだ。知恵を出して行けば、これらをシナジーとして変えて行けるものがあるだろうし、機会は積極的に活かしていくことが大事と考えている。(大坪社長)
Q:世界的な経済不況の影響も受け、両社ともに業績の下方修正も考えられると思うが、これに対する処方箋がない今、なぜ提携が必要だったのか。
A:我々の経営は今だけを見て対応しているわけではない。今の苦しさを克服しながら、将来を見据えていくことが大事だと考えている。また、今日現在の環境に対する処方箋を持っていないことはない。体質強化のための政策を打ち、設備投資を抑えるべきところは決断をしてきた。今あらゆる政策のアウトラインを検討しているところなので、今後しかるべきタイミングで報告したいと思う。経営陣で足元を固めつつ、成長のエンジンとして三洋電機との提携を決定したということだ。(大坪社長)
会見は両社が本社を置く大阪を会場に行われ、パナソニック(株)大坪文雄社長と、三洋電機(株)佐野精一郎社長が出席。記者会見の内容は東京の会場にも同時中継された。
パナソニックは「可能な限り速やかに」、三洋電機株式の公開買付(TOB)を行うと表明。ただし、国内外の競争法当局での手続きに時間がかかるため、進捗状況については2009年2月下旬を目途に公表するとしている。
公開買付は、三洋電機の全株式を対象に行う。買付価格は普通株式1株あたり131円、A種・B種優先株式は1株1,310円を予定している。三洋電機の大株主である米ゴールドマン・サックスグループ、大和証券SMBC、三井住友銀行の3社はTOBへの「応募を前提に検討」しており、3社が議決権ベースで約70.5%程度の株式を保有しているため、3社が買付に応じればTOBは成立する。
TOBが成立した場合、買収額は3社より譲り受ける株式の総額のみで約5,600億円に上るという試算もある。成功すれば両社の売上高は合わせて約11兆円に上り、国内最大規模のエレクトロニクスメーカーが誕生する。現時点では、TOB成立後も三洋電機のブランド、および普通株式の上場は維持する方針が発表されている。
今回の資本・業務提携について、パナソニックの大坪社長、三洋電機の佐野社長がそれぞれ記者会見の会場でコメントした。
三洋電機の佐野社長は「今回の契約締結は、100年に一度あるかないかと言われている足下の極めて不透明で厳しい経営環境の中、当社の中期経営計画の達成、並びに事業のさらなる発展にとって非常に大きな道が開けたと感じている。上場の維持、三洋ブランドの維持が方針として合意されている点も含めて、本件協業の効果についてあらゆる角度から総合的に判断した結果、パナソニックが当社の企業価値向上にとっての最善のパートナーであり、今回の提携が“環境エナジー先進メーカーへの変革”という、当社の目指す将来像実現につながっていくと考えている。また当初の提案の段階で、パナソニックから表明のあった物心両面での支援が具体化されたことで、当社は今後の厳しいグローバル競争を勝ち残って行くためにも大きなアドバンテージを得ることができたと思う」と述べた。
両社は、パナソニックによる三洋電機の買収により生まれるいくつかのシナジー効果を例示。一つは太陽電池で、高効率の結晶系太陽電池や次世代太陽電池の開発・実用化を加速させ、パナソニックの持つ販売チャネルを活用することで増販をねらう。
二つめは二次電池事業で、三洋電機のリチウムイオン充電池の技術をパナソニックに導入、さらにパナソニックからは高容量技術などを提供し、両社の商品力を強化する。ハイブリッドカーや電気自動車用の充電池分野でも積極的に投資を行っていく。
三つ目は経営体質の強化。三洋電機がパナソニックグループの一員となる事で、三洋は資材調達コストやロジスティクス関連コストを削減できる、と見込む。
両社の強みを融合することにより、殊に「エナジー・エコロジー分野」でのグローバル・リーディングカンパニーへの変革を推進していく戦略が大坪氏より打ち出された。今後、両社の提携確立後は現在パナソニック・グループとして推進している「ABCDカルテット」に含まれる「デジタルAV」「カーエレクトロニクス」「半導体・デバイス」「ホームアプライアンス」の4事業に加え、「エナジー事業」が5つめの戦略事業として位置付けていく。「ABCD+E Quintet」として拡張した事業戦略をベースに、“家まるごと・ビルまるごと”のサービスとしてパナソニック・グループが提案していくことで、世界中のカスタマーニーズに応えるトータルエナジーソリューションを揃え、比類なき企業価値を実現していくと大坪氏は説明した。
なお、記者会見の場では、本提携による両社のシナジー目標もパナソニックの大坪社長より発表され、「2012年度に営業利益ベースで増益効果800億円」を目指すことが宣言された。エナジー事業で400億円、その他事業、および経営体質強化による400億円がその内訳とされた。
子会社化を実現後はこれらのシナジー効果発揮のため、両社で「コラボレーション委員会」を立ち上げるとともに、内部に「マネジメントWG」「事業戦略WG」「経営体質強化WG」それぞれのワーキンググループを設け、様々な分野での協業を加速させる。パナソニックでは「シナジーを最大限に発揮するため」として、今後1,000億円規模の投資も計画しているという。
記者会見の最後、大坪氏は「足もとの経営環境は大変厳しい状況だが、だからこそ両社力を合わせて立ち向かい、グローバルエクセレンスを実現していきたい。両社はエナジー・エコロジー分野を核とした“家まるごと・ビルまるごと”のソリューションを進化させ、お客様価値の最大化を目指せる唯一のタッグだと考えている」と述べ、意気込みをあらわにした。
以下に本日の会場で執り行われた質疑応答の模様を紹介する。
【質疑応答】
Q:今回発表された三洋電機株の買い付け予定価格はなぜこの金額になったのか。
A:本提携は事業会社どうしによるものなので、金額の設定にあたっては三洋電機の事業内容を事前に詳細に渡って検討した。その結果、三洋電機の単独価値と、提携後にシナジーをどれだけ生めるかの2点を合算して決定した金額だ。(大坪社長)
Q:三洋電機の上場維持とブランド維持は決定されたということだが、三洋電機の社員雇用についてはどのように話し合われているのか。
A:当社の中間決算発表でも申し上げたように、各事業構造改革については今後も三洋電機としてやりきって行きたい。これに関連する雇用も含めた様々な問題については最大限対処するつもりだが、来季の経営計画と状況を見ながら判断したい。あくまで事業あっての雇用だと認識しているが、今のところ本件については、大坪社長との間でこうあるべきという話はしていない。(佐野社長)
Q:シナジー効果による増益効果800億円という目標を発表しているが、具体的な内容について触れてもらいたい。また提携によるディスシナジーの部分は検討しているのか。
A:シナジー効果発揮のための詳細な施策については、今後「コラボレーション委員会」で詰めていきたい。エナジー事業で400億円を目標としているが、三洋電機単独で難しい部分はパナソニックでサポートしていく。互いの販売プラットフォームで、それぞれの強い商品を扱っていくこともあり得るだろう。残りの400億をその他の部分で想定している。例えば車載用の電池開発についても含まれている。ディスシナジーについても色々あると思うし、詳細にピックアップもしている。重要な点は、ディスシナジーを明確に意識して、これを削除して行くための対策を講じていくことだ。知恵を出して行けば、これらをシナジーとして変えて行けるものがあるだろうし、機会は積極的に活かしていくことが大事と考えている。(大坪社長)
Q:世界的な経済不況の影響も受け、両社ともに業績の下方修正も考えられると思うが、これに対する処方箋がない今、なぜ提携が必要だったのか。
A:我々の経営は今だけを見て対応しているわけではない。今の苦しさを克服しながら、将来を見据えていくことが大事だと考えている。また、今日現在の環境に対する処方箋を持っていないことはない。体質強化のための政策を打ち、設備投資を抑えるべきところは決断をしてきた。今あらゆる政策のアウトラインを検討しているところなので、今後しかるべきタイミングで報告したいと思う。経営陣で足元を固めつつ、成長のエンジンとして三洋電機との提携を決定したということだ。(大坪社長)