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公開日 2009/05/29 17:42
デノン究極のフラグシップ・プレーヤー「DVD-A1UD」登場 − 画質・音質の実力を徹底検証
大橋伸太郎氏が迫る
デノンがデジタルプレーヤーのフラグシップモデルに代々冠してきた“A1シリーズ”の名を受け継ぐBDプレーヤー「DVD-A1UD」が5月中旬に発売された。デノンの最先端技術を全て注ぎ込んだ究極のモデルの実力を、評論家の大橋伸太郎氏が徹底検証した。
「DENON LINK 4th」をはじめ、進化を続けるデノンの先進技術をフル搭載したフラグシップモデル
デノンのユニバーサルプレーヤー「DVD-A1UD」がついに発売された。第1ロットはすべて予約注文のユーザーの元に渡ったが、遠からず第2ロットが流通、店頭で実機を体験することが出来よう。オーディオビジュアルの世界で今期最大の話題作である本機は、ブルーレイディスクからSACDまでを再生できる完全なユニバーサルプレーヤーである。昨年来、デノンに伺う度に「こっち(のディスク)がよくなれば、あっち(のメディア)に不満が出る、モグラ叩きのような状態です。」という担当者の苦心談を聞いた。しかし、言葉の裏に今、自分たちは画期的な製品の誕生に携わっているのだ、という気概と自信を常に感じとっていた。
最終テスト機まで数回に及ぶ中間視聴の過程で、DVD-A1UDは大器ぶりを次第に現してきた。当初は回転数も盤の構造も違うディスク間で再生互換性を持たせるデメリットを指摘、本機のユニバーサリティに懐疑的な声もないではなかった。しかし、デノンの着想の新しさは、まさにそこにあった。SACD/CDとブルーレイディスクのコンパチビリティを実現するにあたり、両方の技術バックグラウンドを合流させ応用し、互いを強化することがDVD-A1UDの着想なのだ。つまり両方を手掛けることで何かを妥協するのでなく、シナジー効果を生み出すこと、そう、引き算でなく足し算にする「逆転の発想」にDVD-A1UDの新しさを見る。
例を挙げていこう。同社独自のリアルタイムバランス伝送によるデジタル音声システム「DENON LINK」は、3rdでSACDのDSD伝送を実現したが、本機では「DENON LINK 4th」を初搭載した。サラウンドアンプのD/Aコンバーターを動作させるマスタークロックをプレーヤーに伝送し共有化、HDMIのデジタル音声のジッターフリー化を実現した。つまり、ピュアオーディオ技術の進化形がブルーレイディスクのHDオーディオの音質を革新したのである。ただし、この場合の音声信号伝送形式は、リアルタイムでなくマスタークロックのみ同期のパケット伝送となる。
また、音楽データのハイビット、ハイサンプリング化を行うαプロセッシングはもう一つの同社の代表的オーディオ技術だが、今回「アドバンスドAL32プロセッシング・マルチチャンネル」が初搭載された。AL32は、16ビット、24ビットのデジタル音声信号を32ビットに拡張し原音に近いなめらかな波形を得る技術で、ブルーレイディスクのマルチチャンネルアナログ出力にこれを適用させたのである。BDの発売点数増加の中、高音質音楽ディスクの登場で、アナログ出力の音質の良さが見直されている今、まことに時宜を得た機能である。しかも、リニアPCMだけでなくドルビーTrueHD やDTS-HD Master Audio/High Resolution Audioにも適用されるのだ。
以上の二つは、オーディオ技術の進化と適用がブルーレイディスクの音質を革新した例だが、その逆はどうか。DVD時代のDVD-A1XVで既に先例があるが、ブルーレイディスクの映像と音声の情報量は桁違いで、ハイエンドの再生機には高次のスピードの処理能力が必要とされる。ハイエンド領域のDVD-A1UDでは、デジタル回路設計から電源部まで、スタートに戻って従来のAV機器のレベルを大きく超える基本の見直しが徹底的に図られた。それがSACDなどデジタルオーディオの音質のレベルアップにつながったとデノン開発陣は語る。DVD-A1UDのユニバーサリティとは、単にすべてのディスクが演奏できるという意味ではない。異種メディアを一機種が結び合わせることで個々に存在していた技術資産を共有化し、大きな表現上のパワーに変える広がりを指しているのである。
「DENON LINK」&アナログのサウンド比較〜映像再生までをトータル・チェック
DVD-A1UDには非常に多くの技術的見所とファンクションがある。HDMI出力を2系統搭載し、A/Vダイレクトモード使用時に映像信号の身をディスプレイに、音声信号(ステレオ/サラウンド)のみをサラウンドアンプへ独立して送り出し、相互干渉を排する設計もその一例だ。
視聴は川崎に拠点を置くD&M本社のデノン試聴室で行った。まずはSACDのDENON LINK 3rdとアナログの比較試聴から。デノンリンクで聴く「ゴルトベルク変奏曲/曽根麻矢子」は、右手旋律の建築的な立体感が凄い。チェンバロの両手による対位法音型が空気を突きぬけていくシャープな解像感である。アナログではどうだろう。SACDのDSDの場合AL32は無効である。左手が厚味を増し優勢に変わる。奥行き重視の深い音場で、こちらの方が曽根麻矢子らしい優雅なバランス。エレーヌ・グリモーのバッハはアナログから。AL32がオン。量感と透明感を兼ね備えた清澄な水平方向に厚く広がる音場。鍵盤上を滑走していくグリモーの長く白い指先が鮮明に見える。一方のDENON LINKはSACD同様、引き締まったシャープな音像描写と前方への立体的な描写が対照的。
アンドラーシュ・シフのベートーベン・ピアノソナタ全集から作品101の第二楽章を聴いた。DENON LINKは精密でシャープ、ニュートラルで色付きのない客観的な再現。ワイドレンジで演奏の背後に広大な空間を現出させる。一方のアナログは強弱や緩急といった演奏のニュアンスを積極的に引き出す。厚味のある華麗で生き生きとした豊かな表現に特徴。
ジャズはどうだろう。クレア・マーティンのSACD「ヒー・ネヴァー・メンションド・ラブ」は、ハスキーなボーカルをオンマイクで鮮鋭感豊かに捉えた優秀録音だが、DENON LINKのデジタル再生では、録音現場に立ち会っているかのように色付きなく辛口に再現、DENON LINKの特徴が遺憾なく発揮された。バックの演奏の楽器の描写もシャープな解像力で聴き手を圧倒する。試しに小音量に絞っていくとベースが他の楽器に重なっても音階が鮮明に聴き取れる。アナログはボーカルの音像定位がやや下がる。生々しさより艶が歌唱の芸に滲ませた色香を楽しませてくれる。ジャズに浸りたいならこっちかもしれない。
DVD-A1UDのもう一つの聴き所、ブルーレイディスクの音楽ソフトはどうだろう。「小澤征爾+ベルリンフィル/悲愴」で、アナログ5.0chとDENON LINK 4thのHDMI接続による比較を行った。アナログはアドバンスドAL32マルチチャンネルが適用される。オケの全体のバランスがよく、その中で主題旋律を担って前面に出る楽器を生き生きとニュアンス、生彩感豊かに表現する。グランカッサの打撃の響きが膨張・変形せず収束が早い。鼓面の質感までを解像して伝えるのが凄い。奥行きがあって澄明な音場である。
一方のHDMIはバランスがやや変わり弦の解像感の冴えるアナログの描写力に対して、むしろ、アグレッシブで立体感の印象的な推進力に富んだ力強い音楽になる。総体的に言って、HDMIではこれまで聴けなかった音色の幅と豊かさが備わっている。音楽(演奏)の生命をHDMIで伝える初の製品といっていい。
画質については、今回のA1UDは従来のデノン映像プレーヤーの色乗りのいい華麗な絵画的画質からやや軌道修正し、ニュートラルなリファレンス志向へとバランスを取り直している。しかし、決してストイックなモニター調にシフトするのでなく、クロマレベルもしっかり確保した鮮鋭な力強い映像である。情報量、解像感も十分。入り口のソース機器の性格が終始システム全体の傾向を支配するので、家庭での幅広い映像再生の担い手として正しいバランス感覚であると思う。
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。
DVD-A1UDのスペック
●再生可能メディア:BD-ROM、BD-R/RE、DVD Video/Audio、DVD±R/RW、SACD、CD、CD-R/RW ●再生可能なPCファイル:WMA、MP3、JPEG、DivX6 ●対応カード:SD/SDHCメモリーカード ●接続端子:HDMI×2、コンポーネント映像×1、コンポジット映像×1、S映像×1、DENON LINK×1、デジタル音声(光1、同軸1)、アナログ2chバランス×1、アナログマルチch音声×1、コントロール端子(IN/OUT)、RS-232C端子、LAN×1 ●SN比:125dB ●全高調波歪率:0.0008% ●ダイナミックレンジ:110dB ●消費電力:80W ●外形寸法:434W×151H×410Dmm ●質量:18.9kg
製品に関する問い合わせ先
(株)デノン コンシューマー マーケティング
TEL/03-6731-5540
「DENON LINK 4th」をはじめ、進化を続けるデノンの先進技術をフル搭載したフラグシップモデル
デノンのユニバーサルプレーヤー「DVD-A1UD」がついに発売された。第1ロットはすべて予約注文のユーザーの元に渡ったが、遠からず第2ロットが流通、店頭で実機を体験することが出来よう。オーディオビジュアルの世界で今期最大の話題作である本機は、ブルーレイディスクからSACDまでを再生できる完全なユニバーサルプレーヤーである。昨年来、デノンに伺う度に「こっち(のディスク)がよくなれば、あっち(のメディア)に不満が出る、モグラ叩きのような状態です。」という担当者の苦心談を聞いた。しかし、言葉の裏に今、自分たちは画期的な製品の誕生に携わっているのだ、という気概と自信を常に感じとっていた。
最終テスト機まで数回に及ぶ中間視聴の過程で、DVD-A1UDは大器ぶりを次第に現してきた。当初は回転数も盤の構造も違うディスク間で再生互換性を持たせるデメリットを指摘、本機のユニバーサリティに懐疑的な声もないではなかった。しかし、デノンの着想の新しさは、まさにそこにあった。SACD/CDとブルーレイディスクのコンパチビリティを実現するにあたり、両方の技術バックグラウンドを合流させ応用し、互いを強化することがDVD-A1UDの着想なのだ。つまり両方を手掛けることで何かを妥協するのでなく、シナジー効果を生み出すこと、そう、引き算でなく足し算にする「逆転の発想」にDVD-A1UDの新しさを見る。
例を挙げていこう。同社独自のリアルタイムバランス伝送によるデジタル音声システム「DENON LINK」は、3rdでSACDのDSD伝送を実現したが、本機では「DENON LINK 4th」を初搭載した。サラウンドアンプのD/Aコンバーターを動作させるマスタークロックをプレーヤーに伝送し共有化、HDMIのデジタル音声のジッターフリー化を実現した。つまり、ピュアオーディオ技術の進化形がブルーレイディスクのHDオーディオの音質を革新したのである。ただし、この場合の音声信号伝送形式は、リアルタイムでなくマスタークロックのみ同期のパケット伝送となる。
また、音楽データのハイビット、ハイサンプリング化を行うαプロセッシングはもう一つの同社の代表的オーディオ技術だが、今回「アドバンスドAL32プロセッシング・マルチチャンネル」が初搭載された。AL32は、16ビット、24ビットのデジタル音声信号を32ビットに拡張し原音に近いなめらかな波形を得る技術で、ブルーレイディスクのマルチチャンネルアナログ出力にこれを適用させたのである。BDの発売点数増加の中、高音質音楽ディスクの登場で、アナログ出力の音質の良さが見直されている今、まことに時宜を得た機能である。しかも、リニアPCMだけでなくドルビーTrueHD やDTS-HD Master Audio/High Resolution Audioにも適用されるのだ。
以上の二つは、オーディオ技術の進化と適用がブルーレイディスクの音質を革新した例だが、その逆はどうか。DVD時代のDVD-A1XVで既に先例があるが、ブルーレイディスクの映像と音声の情報量は桁違いで、ハイエンドの再生機には高次のスピードの処理能力が必要とされる。ハイエンド領域のDVD-A1UDでは、デジタル回路設計から電源部まで、スタートに戻って従来のAV機器のレベルを大きく超える基本の見直しが徹底的に図られた。それがSACDなどデジタルオーディオの音質のレベルアップにつながったとデノン開発陣は語る。DVD-A1UDのユニバーサリティとは、単にすべてのディスクが演奏できるという意味ではない。異種メディアを一機種が結び合わせることで個々に存在していた技術資産を共有化し、大きな表現上のパワーに変える広がりを指しているのである。
「DENON LINK」&アナログのサウンド比較〜映像再生までをトータル・チェック
DVD-A1UDには非常に多くの技術的見所とファンクションがある。HDMI出力を2系統搭載し、A/Vダイレクトモード使用時に映像信号の身をディスプレイに、音声信号(ステレオ/サラウンド)のみをサラウンドアンプへ独立して送り出し、相互干渉を排する設計もその一例だ。
視聴は川崎に拠点を置くD&M本社のデノン試聴室で行った。まずはSACDのDENON LINK 3rdとアナログの比較試聴から。デノンリンクで聴く「ゴルトベルク変奏曲/曽根麻矢子」は、右手旋律の建築的な立体感が凄い。チェンバロの両手による対位法音型が空気を突きぬけていくシャープな解像感である。アナログではどうだろう。SACDのDSDの場合AL32は無効である。左手が厚味を増し優勢に変わる。奥行き重視の深い音場で、こちらの方が曽根麻矢子らしい優雅なバランス。エレーヌ・グリモーのバッハはアナログから。AL32がオン。量感と透明感を兼ね備えた清澄な水平方向に厚く広がる音場。鍵盤上を滑走していくグリモーの長く白い指先が鮮明に見える。一方のDENON LINKはSACD同様、引き締まったシャープな音像描写と前方への立体的な描写が対照的。
アンドラーシュ・シフのベートーベン・ピアノソナタ全集から作品101の第二楽章を聴いた。DENON LINKは精密でシャープ、ニュートラルで色付きのない客観的な再現。ワイドレンジで演奏の背後に広大な空間を現出させる。一方のアナログは強弱や緩急といった演奏のニュアンスを積極的に引き出す。厚味のある華麗で生き生きとした豊かな表現に特徴。
ジャズはどうだろう。クレア・マーティンのSACD「ヒー・ネヴァー・メンションド・ラブ」は、ハスキーなボーカルをオンマイクで鮮鋭感豊かに捉えた優秀録音だが、DENON LINKのデジタル再生では、録音現場に立ち会っているかのように色付きなく辛口に再現、DENON LINKの特徴が遺憾なく発揮された。バックの演奏の楽器の描写もシャープな解像力で聴き手を圧倒する。試しに小音量に絞っていくとベースが他の楽器に重なっても音階が鮮明に聴き取れる。アナログはボーカルの音像定位がやや下がる。生々しさより艶が歌唱の芸に滲ませた色香を楽しませてくれる。ジャズに浸りたいならこっちかもしれない。
DVD-A1UDのもう一つの聴き所、ブルーレイディスクの音楽ソフトはどうだろう。「小澤征爾+ベルリンフィル/悲愴」で、アナログ5.0chとDENON LINK 4thのHDMI接続による比較を行った。アナログはアドバンスドAL32マルチチャンネルが適用される。オケの全体のバランスがよく、その中で主題旋律を担って前面に出る楽器を生き生きとニュアンス、生彩感豊かに表現する。グランカッサの打撃の響きが膨張・変形せず収束が早い。鼓面の質感までを解像して伝えるのが凄い。奥行きがあって澄明な音場である。
一方のHDMIはバランスがやや変わり弦の解像感の冴えるアナログの描写力に対して、むしろ、アグレッシブで立体感の印象的な推進力に富んだ力強い音楽になる。総体的に言って、HDMIではこれまで聴けなかった音色の幅と豊かさが備わっている。音楽(演奏)の生命をHDMIで伝える初の製品といっていい。
画質については、今回のA1UDは従来のデノン映像プレーヤーの色乗りのいい華麗な絵画的画質からやや軌道修正し、ニュートラルなリファレンス志向へとバランスを取り直している。しかし、決してストイックなモニター調にシフトするのでなく、クロマレベルもしっかり確保した鮮鋭な力強い映像である。情報量、解像感も十分。入り口のソース機器の性格が終始システム全体の傾向を支配するので、家庭での幅広い映像再生の担い手として正しいバランス感覚であると思う。
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。
DVD-A1UDのスペック
●再生可能メディア:BD-ROM、BD-R/RE、DVD Video/Audio、DVD±R/RW、SACD、CD、CD-R/RW ●再生可能なPCファイル:WMA、MP3、JPEG、DivX6 ●対応カード:SD/SDHCメモリーカード ●接続端子:HDMI×2、コンポーネント映像×1、コンポジット映像×1、S映像×1、DENON LINK×1、デジタル音声(光1、同軸1)、アナログ2chバランス×1、アナログマルチch音声×1、コントロール端子(IN/OUT)、RS-232C端子、LAN×1 ●SN比:125dB ●全高調波歪率:0.0008% ●ダイナミックレンジ:110dB ●消費電力:80W ●外形寸法:434W×151H×410Dmm ●質量:18.9kg
製品に関する問い合わせ先
(株)デノン コンシューマー マーケティング
TEL/03-6731-5540