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公開日 2016/01/07 15:30
<CES> ソニー平井CEOに聞く。「エレキでやるべき事は多数、革新技術で差異化できる」
UHD BDは「配信VSパッケージ」動向見て判断
2016 International CESの会場にて、ソニーの平井一夫社長が日本人記者の合同インタビューに答え、今回のCESで紹介された製品やサービス、これからの事業戦略に関する詳細を語った。
冒頭、今年のCESにおけるソニーの出展内容について、大きな目玉と呼べるものがない、コンシューマーにとって「WOW」と声に出して叫んでしまうような商品のイノベーションが打ち出せていないという率直な声が平井氏にぶつけられた。これに対して平井氏は自己採点を加えながら次のように答えている。
平井氏:ソニーはエレクトロニクスに関連する様々な商品カテゴリーを展開するブランド。それぞれのカテゴリーで、ソニーとして最も効果的にイノベーションをアピールする方法を考えながらイベントに出展している。
CESは年初の大きなイベントなので、その全部を盛り込むという考え方もあるが、今回は控えめに受け止められてしまったカテゴリーについては、最適なタイミングを見計らったからということもできる。
だが一方で、今年のCESでは大切なメッセージを発信したつもりだ。それは、ソニーがこれからもコンシューマーに向けて商品や技術の革新を徹底追求していくという姿勢を伝えることだ。
国内ブランドの中ではBtoBに事業のコアをシフトしはじめている企業もある。もちろんソニーの中にも成長ドライブと呼ぶべきBtoBのカテゴリーはある。
だが、“コモディティ化している”と言われるコンシューマーエレクトロニクスにも、まだやるべきことはたくさんある。そこに対して逃げずに、コモディティにもソニーが革新的な技術を投入して差異化ができるということを示していきたい。
例えば今回のCESで出展したものの中では、テレビ向けの技術『Backlight Master Drive』や、小粒だがSAP(Seed Acceleration Program:ソニー社内での新規事業創出プロジェクト)の取り組みが実を結んだ製品も出てきた。会社としてのスタンスを強くアピールすることも大切と考えた。
以下ではインタビューの中で、ソニーの「ハイレゾ」や「4K」の戦略に関わる質疑応答を中心にまとめて紹介する。
北米や欧州市場でのハイレゾの取り組みについてはこう語る。
平井氏:アメリカが一番ハイレゾが難しい地域であることは認識していたが、ベスト・バイのハイエンド店舗であるマグノリアの展開が好調。少しずつ“いい音”への関心が高まっている。欧州ではハイレゾのストリーミングサービスに注目が集まっている。日本のような成功はすぐに得られないだろうが、盛り上がりを見せる入口まできている。
4Kの動画ストリーミングサービス「ULTRA」の日本上陸はあるのだろうか。あるいは日本国内でソニーとしてコンテンツサイドから4Kをどのように盛り上げていくのか、平井氏はこう説明する。
平井氏:ULTRAはソニー・ピクチャーズホームエンタテインメントがアメリカを中心に提供するサービス。ほかにもソニーのサービスでは『Video Unlimited』で4K動画配信を展開しているが、これもアメリカに限られたもの。
一方日本では4K放送やNetflixやAmazonなどによる4K VODも立ち上がりつつある。“ノン・ソニー”の4K配信が賑わいはじめているので、ソニーグループとしてはこれらのプラットフォームにコンテンツを供給する側に回るつもり。自社でプラットフォームを立ち上げることは今のところ考えていない。Ultra HD Blu-rayプレーヤーもこれから市場があると判断できれば商品を出すことも有り得なくはないが、“配信 VS パッケージ”の動向を見ながら検討していく。
ストリーミングサービスについては、その国や地域のインフラのキャパシティやローカルコンテンツの充実度に関わることなので、慎重な議論が必要だ。
5年前を振り返れば、コンテンツ配信はテレビやゲーム機などハードを売るためのサポート的なサービスに位置づけられていた部分もあるが、今やハードの購買を促進するため、赤字覚悟で自社のコンテンツサービスを立ち上げる時代ではない。あくまで採算ベースの議論を進める。
デジタルイメージングのCMOSセンサーについては16年度の需要をどのように見込んでいるのだろうか。平井氏は「今年度がまだ仕上がっていないので、詳細なコメントはできない」としながら、これからはスマホ向け需要の規模感を注視しながら、成長のスケールを見立てていくことの重要性を説いた。
平井氏:国内のスマホ市場はここ10年の間に市場が飽和しつつあり、買い換えのサイクルも鈍化している。“スマホの次”も視野に入れつつ、今後のセンサーの需要を見ていかなければならない。
プレスカンファレンスの壇上で、「UHD Alliance」のメンバーであるソニーが、「ULTRA HDプレミアム」のものではない、独自の「4K/HDRロゴ」を発表した意図について、平井氏は次のように説明している。
平井氏:4K/HDRについては、今後店頭でクリアなメッセージを発信しないことには混乱が起きる懸念がある。また一方で、ロゴの展開は早めに提案をしていくことが大事だ。
ハイレゾのロゴも当初は様々な会社がバラバラに発表していたものを、最終的には当社のロゴに統一していただいたことで強くメッセージとして打ち出せるようになった。
平井氏は、ソニーが旗振り役となって4K/HDRの品質基準をコンシューマーに示していくことに意欲を示した。
平井氏:4K/HDRの魅力をどう伝えるかという点では、ハイレゾも然り、今回発表した『Backlight Master Drive』の技術も含めて、私が常々“感性価値”と呼んでいるものをコンシューマーに伝えるためには店頭での体験機会を充実させることが最も効果的だと思っている。
売り場の最前線にも、ソニー製品の魅力を正しくお客様に伝えるための教材ツールを用意して、正しく紹介してもらうことが大事。ディーラーとのパートナーシップにより、感性価値を店頭でアピールすることに力を入れたい。
今年のCESでは「ウェアラブル関連の展示についても目立った内容がなかった。やはりBtoCでは厳しいカテゴリーなのか」という記者からの質問に対して、平井氏は以下のように答えて反論した。
平井氏:当社がこれまでに送り出してきたウェアラブル商品は着実に進化している。
確かに飛躍的に違う体験を紹介するというかたちに今回のCESの展示はなっていないから、やや華やかさに欠けて見えるかもしれないが、ソニーモバイルでは今後もXperiaの、あるいはスマホの一部として大事なカテゴリーにウェアラブルを位置づけている。これからIoT的な展開も伸びしろがあるとみている。BtoBについて取り組みを進めていることもあるが、本日時点で発表することはない。
IoTについては、今年のCESに出展する各企業が力を入れるテーマだが、今後ソニーとしてはどのように取り組んでいくのだろうか。
平井氏:IoTはお客様にとって感動していただける商品に仕上げられる可能性が大きいカテゴリーとみている。積極的に取り組む手段を各事業分野で考えるべきだし、実際にもうスタートしている。プラットフォーム的な観点で、まずは商品というよりデバイスで力を入れていくことになるだろう。
例えばイメージセンサーなどの技術を他社にも供給していくこともその一つだ。“商品+デバイス”のアプローチでIoTに取り組んでいく。他企業とのコラボレーションについては、色々な業種といま話をしている。声をかけるのはソニーからの場合もあるし、他社からソニーのデバイスを使いたいという声をいただくこともある。双方向で色々な会社と議論している最中だ。
また先述の「SAP」の事業については順調に伸びているのかという問いに対して、平井氏は「社内での注目度や参加率は着実に高まっている」と胸を張る。
平井氏:オーディション案件は増えてきているし、第1回、第2回の審査で選ばれなかった社員が再度チャレンジしてくれるほど。当社のように大きな企業でこういった取り組みをはじめると、『またマネージメント側がお祭り騒ぎしているだけか』と後ろ指をさされるかもしれないが、私は頑固な性格なので、一度やると決めたら最後までやり抜く質だ。
例えば、『wena』は日本国内のクラウドファウンディング案件では過去最高の1億円を集金できた成功例。社内の事業としてもかなり定着してきた。現在も良いところまで仕上がってきている製品があるので、時期を見て公開できると思う。社外にも間口を広げているので、これからもっと面白い展開になると期待している。
またXperiaをはじめとするモバイル事業について、構造改革の進捗、あるいは北米市場における今後の展開を訊ねる声もあった。
平井氏:構造改革については今年度に大所は手を付けて、予定通りに着々と進んでいる。日本市場でXperiaを高く評価していただいているが、今後もコモディティ化の波に飲み込まれないよう、ソニーらしさを打ち出せるハイエンド商品を開発・提供していく。
またモバイル事業の北米市場については「いまお休みをいただいている」としながら、「今後二度と北米市場にカムバックしないというわけではない」と強調。改めて柔軟な姿勢で取り組くむ必要性を説いた。
平井氏:“スマホの次”を見据えると、今の世代で色々なノウハウを蓄積して次につなげていくことが、特に北米市場は大事。だからといっていま、無闇に赤字覚悟で押し進めるべきではない。現時点では一度お休みして、強みとなる所で力を蓄える。
Xperiaとしても、今後日本以外の地域でも状況に応じて高付加価値機種を展開する可能性がないわけではない。
冒頭、今年のCESにおけるソニーの出展内容について、大きな目玉と呼べるものがない、コンシューマーにとって「WOW」と声に出して叫んでしまうような商品のイノベーションが打ち出せていないという率直な声が平井氏にぶつけられた。これに対して平井氏は自己採点を加えながら次のように答えている。
平井氏:ソニーはエレクトロニクスに関連する様々な商品カテゴリーを展開するブランド。それぞれのカテゴリーで、ソニーとして最も効果的にイノベーションをアピールする方法を考えながらイベントに出展している。
CESは年初の大きなイベントなので、その全部を盛り込むという考え方もあるが、今回は控えめに受け止められてしまったカテゴリーについては、最適なタイミングを見計らったからということもできる。
だが一方で、今年のCESでは大切なメッセージを発信したつもりだ。それは、ソニーがこれからもコンシューマーに向けて商品や技術の革新を徹底追求していくという姿勢を伝えることだ。
国内ブランドの中ではBtoBに事業のコアをシフトしはじめている企業もある。もちろんソニーの中にも成長ドライブと呼ぶべきBtoBのカテゴリーはある。
だが、“コモディティ化している”と言われるコンシューマーエレクトロニクスにも、まだやるべきことはたくさんある。そこに対して逃げずに、コモディティにもソニーが革新的な技術を投入して差異化ができるということを示していきたい。
例えば今回のCESで出展したものの中では、テレビ向けの技術『Backlight Master Drive』や、小粒だがSAP(Seed Acceleration Program:ソニー社内での新規事業創出プロジェクト)の取り組みが実を結んだ製品も出てきた。会社としてのスタンスを強くアピールすることも大切と考えた。
以下ではインタビューの中で、ソニーの「ハイレゾ」や「4K」の戦略に関わる質疑応答を中心にまとめて紹介する。
北米や欧州市場でのハイレゾの取り組みについてはこう語る。
平井氏:アメリカが一番ハイレゾが難しい地域であることは認識していたが、ベスト・バイのハイエンド店舗であるマグノリアの展開が好調。少しずつ“いい音”への関心が高まっている。欧州ではハイレゾのストリーミングサービスに注目が集まっている。日本のような成功はすぐに得られないだろうが、盛り上がりを見せる入口まできている。
4Kの動画ストリーミングサービス「ULTRA」の日本上陸はあるのだろうか。あるいは日本国内でソニーとしてコンテンツサイドから4Kをどのように盛り上げていくのか、平井氏はこう説明する。
平井氏:ULTRAはソニー・ピクチャーズホームエンタテインメントがアメリカを中心に提供するサービス。ほかにもソニーのサービスでは『Video Unlimited』で4K動画配信を展開しているが、これもアメリカに限られたもの。
一方日本では4K放送やNetflixやAmazonなどによる4K VODも立ち上がりつつある。“ノン・ソニー”の4K配信が賑わいはじめているので、ソニーグループとしてはこれらのプラットフォームにコンテンツを供給する側に回るつもり。自社でプラットフォームを立ち上げることは今のところ考えていない。Ultra HD Blu-rayプレーヤーもこれから市場があると判断できれば商品を出すことも有り得なくはないが、“配信 VS パッケージ”の動向を見ながら検討していく。
ストリーミングサービスについては、その国や地域のインフラのキャパシティやローカルコンテンツの充実度に関わることなので、慎重な議論が必要だ。
5年前を振り返れば、コンテンツ配信はテレビやゲーム機などハードを売るためのサポート的なサービスに位置づけられていた部分もあるが、今やハードの購買を促進するため、赤字覚悟で自社のコンテンツサービスを立ち上げる時代ではない。あくまで採算ベースの議論を進める。
デジタルイメージングのCMOSセンサーについては16年度の需要をどのように見込んでいるのだろうか。平井氏は「今年度がまだ仕上がっていないので、詳細なコメントはできない」としながら、これからはスマホ向け需要の規模感を注視しながら、成長のスケールを見立てていくことの重要性を説いた。
平井氏:国内のスマホ市場はここ10年の間に市場が飽和しつつあり、買い換えのサイクルも鈍化している。“スマホの次”も視野に入れつつ、今後のセンサーの需要を見ていかなければならない。
プレスカンファレンスの壇上で、「UHD Alliance」のメンバーであるソニーが、「ULTRA HDプレミアム」のものではない、独自の「4K/HDRロゴ」を発表した意図について、平井氏は次のように説明している。
平井氏:4K/HDRについては、今後店頭でクリアなメッセージを発信しないことには混乱が起きる懸念がある。また一方で、ロゴの展開は早めに提案をしていくことが大事だ。
ハイレゾのロゴも当初は様々な会社がバラバラに発表していたものを、最終的には当社のロゴに統一していただいたことで強くメッセージとして打ち出せるようになった。
平井氏は、ソニーが旗振り役となって4K/HDRの品質基準をコンシューマーに示していくことに意欲を示した。
平井氏:4K/HDRの魅力をどう伝えるかという点では、ハイレゾも然り、今回発表した『Backlight Master Drive』の技術も含めて、私が常々“感性価値”と呼んでいるものをコンシューマーに伝えるためには店頭での体験機会を充実させることが最も効果的だと思っている。
売り場の最前線にも、ソニー製品の魅力を正しくお客様に伝えるための教材ツールを用意して、正しく紹介してもらうことが大事。ディーラーとのパートナーシップにより、感性価値を店頭でアピールすることに力を入れたい。
今年のCESでは「ウェアラブル関連の展示についても目立った内容がなかった。やはりBtoCでは厳しいカテゴリーなのか」という記者からの質問に対して、平井氏は以下のように答えて反論した。
平井氏:当社がこれまでに送り出してきたウェアラブル商品は着実に進化している。
確かに飛躍的に違う体験を紹介するというかたちに今回のCESの展示はなっていないから、やや華やかさに欠けて見えるかもしれないが、ソニーモバイルでは今後もXperiaの、あるいはスマホの一部として大事なカテゴリーにウェアラブルを位置づけている。これからIoT的な展開も伸びしろがあるとみている。BtoBについて取り組みを進めていることもあるが、本日時点で発表することはない。
IoTについては、今年のCESに出展する各企業が力を入れるテーマだが、今後ソニーとしてはどのように取り組んでいくのだろうか。
平井氏:IoTはお客様にとって感動していただける商品に仕上げられる可能性が大きいカテゴリーとみている。積極的に取り組む手段を各事業分野で考えるべきだし、実際にもうスタートしている。プラットフォーム的な観点で、まずは商品というよりデバイスで力を入れていくことになるだろう。
例えばイメージセンサーなどの技術を他社にも供給していくこともその一つだ。“商品+デバイス”のアプローチでIoTに取り組んでいく。他企業とのコラボレーションについては、色々な業種といま話をしている。声をかけるのはソニーからの場合もあるし、他社からソニーのデバイスを使いたいという声をいただくこともある。双方向で色々な会社と議論している最中だ。
また先述の「SAP」の事業については順調に伸びているのかという問いに対して、平井氏は「社内での注目度や参加率は着実に高まっている」と胸を張る。
平井氏:オーディション案件は増えてきているし、第1回、第2回の審査で選ばれなかった社員が再度チャレンジしてくれるほど。当社のように大きな企業でこういった取り組みをはじめると、『またマネージメント側がお祭り騒ぎしているだけか』と後ろ指をさされるかもしれないが、私は頑固な性格なので、一度やると決めたら最後までやり抜く質だ。
例えば、『wena』は日本国内のクラウドファウンディング案件では過去最高の1億円を集金できた成功例。社内の事業としてもかなり定着してきた。現在も良いところまで仕上がってきている製品があるので、時期を見て公開できると思う。社外にも間口を広げているので、これからもっと面白い展開になると期待している。
またXperiaをはじめとするモバイル事業について、構造改革の進捗、あるいは北米市場における今後の展開を訊ねる声もあった。
平井氏:構造改革については今年度に大所は手を付けて、予定通りに着々と進んでいる。日本市場でXperiaを高く評価していただいているが、今後もコモディティ化の波に飲み込まれないよう、ソニーらしさを打ち出せるハイエンド商品を開発・提供していく。
またモバイル事業の北米市場については「いまお休みをいただいている」としながら、「今後二度と北米市場にカムバックしないというわけではない」と強調。改めて柔軟な姿勢で取り組くむ必要性を説いた。
平井氏:“スマホの次”を見据えると、今の世代で色々なノウハウを蓄積して次につなげていくことが、特に北米市場は大事。だからといっていま、無闇に赤字覚悟で押し進めるべきではない。現時点では一度お休みして、強みとなる所で力を蓄える。
Xperiaとしても、今後日本以外の地域でも状況に応じて高付加価値機種を展開する可能性がないわけではない。