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公開日 2016/07/04 09:42

VRで音楽体験はどう変わる?「Bjork Digital − 音楽のVR・18日間の実験」体験レポート

6/29〜7/18まで開催中
編集部:小澤 麻実
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アーティスト・ビョークの音楽とVR技術がコラボした展示プロジェクト「Bjork Digital − 音楽のVR・18日間の実験」が、6月29日から7月18日まで日本科学未来館にて開催中だ。

本展示は3つのゾーンで構成されている。まず、今年リリースされた最新アルバム「Vulnicura(ヴァルニキュラ)」のなかから3作のPVをVRで体験できるというもの。次に、前作「Biophilia」アプリ版を体験できるゾーン。そして、歴代のPVのなかからセレクトされた29本を、大画面と7.1chサラウンドで視聴できるシアターだ。今回、編集部がそちらを体験してきたのでレポートしたい。



最新アルバム「Vulnicura(ヴァルニキュラ)」は、ビョークの長年のパートナーだった現代アーティスト マシュー・バーニーとの別離を時系列順に描いた作品。彼女自身の、極めてパーソナルな感情をかたちにしたもので、人の声のみで音楽を構成した「Medulla」(2004)、政治的示唆が込められた「Volta」(2007)、音楽と自然とテクノロジーの融合を目指した「Biophilia」(2011)など、どちらかというとコンセプトメインだった直近の作品群とは少し色が異なるものだ。

VR体験は、そんな最新作の第1曲目「Stonemilker」からスタートする。

入場チケットは日時が細かく指定され整理番号も付いており、指定日時に会場に向かうと、普段は入ることのできない奥まった薄暗い部屋に通される。VRを一度に体験できる人数は最大25名。使用されるのは、サムスンのVRヘッドセット「Gear VR」と、B&Wのヘッドホン「P5S2」だ。

VR体験ブースのようす (c)Santiago Felipe

「Stonemilker」のMVはAndrew Thomas Huang監督によりアイスランドの海岸で撮影されたもので、すでにYouTubeで360度パノラマ動画としてアップされている。制作はアメリカのVR動画専門プロダクション・VRSE。

「Stonemilker」(c)Andrew Thomas Huang

VRヘッドセットとヘッドホンを身につけると、周囲の環境からは完全に遮断され、寒々とした海岸の風景のなかにいることに気づく。黄色いワンピースと髪の毛をなびかせながら視界の端から端へ自由に舞うビョークの姿をひたすら追いかけることもできれば、視点を一点に定めてぼんやりと海岸を眺めることもできる。そしてサビではビョークが「Who is open?...」と真っ正面から歌いかけてきて、目の前で彼女の独白を聞くような心地になった。

「Stonemilker」(c)Andrew Thomas Huang

2つめの「Mouth Mantra」は、Jesse Kanda監督作品。ビョーク自らの口内とその模型を使って撮影したもので、こちらは視点を移動して体験するというよりも、口の中という普段入ることがまずありえない空間の“中にいる”という強烈な体験を味わうための映像だと感じた。

「Mouth Mantra」(c)Jesse Kanda

そして最後の「Not get」VR版は、シドニーに続き本展が世界で2回目の公開となる。こちらのみ、VRヘッドセットに「HTC VIVE」を採用。空中から吊られたヘッドセットを装着して、限られた空間内ではあるが歩き回りながら体験することができる。

(c)Santiago Felipe

ヘッドセットをつけた瞬間、暗闇のなかに蛾の女(=ビョーク)のかたちをした光の粒の集合体がすぐ隣にいることに気づいて驚く。歌いながら歩みを進めようとする蛾の女を、少し後ずさって遠くから眺めたり、近づいて後ろに回ったりして観察していると、それは色とりどりの光の粒をまき散らしながらだんだんと大きくなっていく。そして最後は見上げるまでに巨大で、まばゆい鮮やかな光を放つ仮面に変容し、消えていく。

「Not get」(c)JREWIND VR

日本科学未来館 展示企画開発課長の内田まほろ氏は「ビョークは常に最先端のテクノロジーを取り入れて作品を作るアーティスト。ビョークいわく『VRはライブでもCDでも実現できなかった、自分とリスナーを親密につなげてくれるツール。どんな環境でも作り上げることができる。VRを音楽に取り入れることは、人類の感覚を変えるかも知れない』とコメント。そして本展のプロデューサーであるポール・クレイ氏は「VRは、非常にパーソナルな作品である『Vulnicura』を、パーソナルなまま楽しめる」と語っていた。

内田まほろ氏

ポール・クレイ氏

今回本展のVR展示を体験してみて、音楽は「聴く」「見る」だけでなく、「アーティストが描く世界をそのまま共有体験する」ものになれるのではという可能性を感じた。

「まだまだ現在進行形のプロジェクト」であるという本展。今後の技術進化にともない、更に表現の幅が広がっていくのではと期待が高まった。音楽の新たな世界の幕開けを、ぜひ体験してみてはいかがだろうか。

大画面と7.1ch音声で、本展のために特別にキュレーションされた歴代MVを楽しめるシアターゾーンも (c)Santiago Felipe


「Biophilia」アプリ版を体験できるゾーン。こちらでもヘッドホンにはB&Wを使用 (c)Santiago Felipe



Bjork Digital − 音楽のVR・18日間の実験
開催日時:2016年6月29日(水)〜7月18日(月・祝)午前10時〜午後5時
※ただし金土日祝(7月1日(金)〜3日(日)、8日(金)〜10日(日)、15日(金)〜18日(月・祝))は午後10時まで開催

休館日:2016年7月5日(火)、12日(火)
会場:日本科学未来館 7階 イノベーションホールほか
※入場日時指定制、整理番号付(VRコンテンツ以外は当日に限り終日鑑賞可)2,500円(税込)
※入場券はチケットぴあ(http://w.pia.jp/t/bjork/)にて販売
※展示の中心となるVRコンテンツは13歳以上が対象です
※未就学児の入場はできません
※小学生以上は入場券が必要となります
※企画展、常設展、ドームシアター(いずれも午後5時まで)の鑑賞には別途料金がかかります
※アーティストの出演はありません

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