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公開日 2017/08/24 21:02
「Auro-3D」の詳細をキーマンが解説。 全chハイレゾ収録可能な「真のイマーシブオーディオ」
デノン「AVR-X6400H」発表会にて
本日、ディーアンドエムホールディングスは、Auro-3D対応のAVアンプ「AVR-X6400H」「AVR-X4400H」発表会をベルギー王国大使館にて開催(関連ニュース)。ゲストにはAuro-3Dを手がけるベルギー Auro Technologies N.V.社のCEOであり、Auro-3Dを開発した当人でもあるWilfried Van Baelen氏が登場した。本記事では、同氏によるAuro 3Dについてのプレゼンテーションについて紹介する。
■Auro 3Dとは何か? アトモス/DTS:Xとはどう違うのか
Auro-3Dとは、チャンネルベースの3Dオーディオ(立体音響)規格だ。3Dオーディオというと、トップ/ハイトスピーカーによって高さ方向のサウンドを再現するドルビーアトモスやDTS:Xが日本では先行してローンチされているが、これらはオブジェクトオーディオである。
個々の音の要素(オブジェクト)をレンダリングして3次元空間に立体的に配置していくオブジェクト・オーディオ=アトモス/DTS:Xに対して、Auro-3Dはあらかじめ定められた3次元のスピーカー配置(チャンネル)に合わせて作り込まれた音声を再生する、チャンネル・ベースオーディオなのである。
オブジェクトオーディオの利点は、異なるスピーカー配置に対してもレンダリングを行うことで最適な音響空間を想像できること。一方でチャンネルベース・オーディオの利点は、定められたスピーカー配置を意図して製作者が音響を作り込めることだ。さらにAuro-3Dはチャンネルベースなので、レンダリングという高負荷処理がなく、そのリソースを音源の情報量に割り当てることができる。つまりは192kHz/24bitなどのハイレゾによる3Dオーディオに対応している。
ちなみに、ドルビーアトモスやDTS:Xなどトップ/ハイトスピーカーを用いた3Dサウンドを「イマーシブオーディオ」と呼ぶことが多いが、これはそもそも同社がAuro-3Dをローンチするにあたって提唱した用語なのだという。
■ホーム向け「Auro-3D」は最大13.1ch対応
Auro-3Dには劇場用規格と、家庭用規格があり、劇場用はオブジェクトオーディオを併用するなど、それぞれ違いがある。ここではWilfried Van Baelen氏のプレゼンの中から、家庭用Auro-3Dについて紹介した部分をまとめたい。
まずはチャンネル数とスピーカー配置について。Auro-3Dは最大13.1chに対応する。各スピーカーを3層のレイヤーに分けて配置することがAuro-3Dの基本コンセプトだ。下の図を見て欲しい。
レイヤー1=「SURROUND」は、聴覚のもっとも大きな範囲を占める耳の高さの音を担う。レイヤー2=「HEIGHT」は、レイヤー1を中心とする“普段聞く音”に没入するための反射音を担っている。レイヤー3=「TOP」は、特殊効果や頭上を通過する音を担っている。
レイヤー1はいわゆる通常のサラウンドの7.1ch/5.1ch、レイヤー2はフロントハイト+サラウンド(リア)ハイトの4ch、レイヤー3は天井(リスナーの真上)1chのスピーカーで構成される。これで合計13.1ch(10.1ch)となる。
ちなみにAuro 3Dは、基本として1組のハイトスピーカーでの再生を想定していない(AVR-X6400H/X4400Hは1組でも再生できるようになっているが、理想は2組とBaelen氏)。ベースとなるのは「リスナーを取り囲む垂直ステレオ音場」なのだという。
だからハイトスピーカーは、フロントL/RスピーカーおよびサラウンドL/Rスピーカーの上方に配置されるものであり、リスナーの真上(天井)に配置されるトップスピーカーとは明確に区別されている。AVR-X6400H/X4400Hの場合は、トップスピーカーがアサインされているとAuro-3Dは再生できない。天井スピーカーをハイトスピーカーとしてAuro-3Dを再生したい場合は、これらを設定からハイトスピーカーとして認識させる必要がある。
また、ハイトスピーカーの設置位置については、リスナーに対して水平の位置から30度の高さ(レイヤー1と2の仰角)を理想としている。高さは最低でも20度は必要で、逆に40度を超えると垂直方向の自然な繋がりが失われてしまうのだという。
Auro-3Dを非対応AVアンプでAuro-3Dを再生すると、DTS-HDマスターオーディオ 5.1chとして再生される。この点については、Auro 3Dが優れた互換性を備えているとしてアピールされている。
ハイレゾ対応もAuro-3Dの特徴だ。規格上では、最大384kHz/32bit/9.1chにも対応するとのこと。ただ現状では、2Lなどの音楽ソフトでは192kHz/24bit/10.1ch、映画ソフトでは96kHz/24bit/10.1chの収録が一般的とのことで、いずれもAVR-X6400Hではフルデコードして再生することができる。
デノンのAVアンプをはじめとする対応機器では、非Auro-3Dコンテンツを3Dサウンドへアップミックスして再生すること「AuroMatic」機能も用意されている。本機能を使えば5.1ch/7.1chのコンテンツはもちろん、ステレオ、さらにはモノラル音源までアップミックスできる。この技術を確立するためには10年を超える歳月を費やしたということで、Baelen氏は「AuroMaticがあればコンテンツ不足で困ることはない」と自信を見せていた。
■Auro-3Dの成り立ち
Auro 3Dの成り立ちについても、Baelen氏は説明してくれた。Auro-3Dは2011年に開催されたイベントにて、Auro社と、やはりベルギーの企業でありプロジェクターなどでも知られるBARCO(バルコ社)が発表した。そのとき「イマーシブサウンド」という言葉も提唱された。
なお2006年には、AES(オーディオ技術者協会)にて、Auro-3Dのスピーカーレイアウトが発表されていた。これは既存の7.1ch/5.1chをベースとしたもので導入や設置が比較的容易なこともあり、競合企業を触発したとBaelen氏は語る。
2011年には先行して劇場向けの「Auro-3D CINEMA」が誕生。ハリウッドのメジャースタジオにも導入され、ジョージ・ルーカスがAuro-3Dフォーマットによるイマーシブサウンド映画の制作を行った。
そして2014年には、家庭向けの「Auro-3D HOME ENTERTAINMENT」が登場。欧米のコンテンツホルダーから対応ソフトが登場し、デノンをはじめとするAV機器メーカーが対応を果たした。
以降はモバイル向けや車載向けにも技術を提供。2016年には、Auro-3D音声を収録した初のゲーム『Get Even』が、バンダイナムコからPS4やXBox向けに発売された。VR向けのプロジェクトやストリーミングでのデモも行われている。
■旗艦スタジオ「Galaxy Studio」とコンテンツ/劇場への展開
プレゼンテーションでは、Auro社がベルギーに保有しているGalaxy Studioについても詳しく触れられた。本スタジオはAuro社、ひいてはAuro-3Dの本拠地であり、イマーシブオーディオの録音・作成を念頭にして用意された、Baelen氏の言葉を借りれば「世界初の真にインタラクティブなスタジオ設備」である。
このGalaxy Studioは「世界で最も静か」(>100dB,3kHz以下)とアピールされる録音スタジオ、音楽用の大型ミキシングコンソールを備えた7.1ch対応コントロールルーム、初というイマーシブサウンド(映画/音楽)をミキシングできる商用スタジオなどを備えている。
Auro-3D対応ソフトについても言及された。現在200を超える国際的な映画が、Auro-3D収録でリリースされているという。また、ハリウッドで最もメジャーなスタジオを含む世界で40超のスタジオが、ポストプロダクション設備にAuro-3Dスタジオシステムを導入しているとのことだ。
Auro-3Dに対応した劇場は世界で650あり、現在でも増えているという。なおデジタルシネマ向けのAuro-3Dは、最大チャンネル数が26.1chで、レイヤー3の音声については、オブジェクトオーディオが併用されるという。オブジェクトオーディオを活かして立体的な反射音を想像するとBaelen氏は説明していた。
◇
「普段聞いている音への近似が、よりイマーシブな音体験の源」と語るWilfried Van Baelen氏。AESでの活動などを引き合いに出しつつ、日本における3Dサウンド/立体音響への関心の高さを賞賛。デノンのAVアンプへの搭載によって、真のイマーシブオーディオの魅力が認知され、日本国内でのAuro-3Dの普及に弾みがつくことに期待を寄せていた。
■Auro 3Dとは何か? アトモス/DTS:Xとはどう違うのか
Auro-3Dとは、チャンネルベースの3Dオーディオ(立体音響)規格だ。3Dオーディオというと、トップ/ハイトスピーカーによって高さ方向のサウンドを再現するドルビーアトモスやDTS:Xが日本では先行してローンチされているが、これらはオブジェクトオーディオである。
個々の音の要素(オブジェクト)をレンダリングして3次元空間に立体的に配置していくオブジェクト・オーディオ=アトモス/DTS:Xに対して、Auro-3Dはあらかじめ定められた3次元のスピーカー配置(チャンネル)に合わせて作り込まれた音声を再生する、チャンネル・ベースオーディオなのである。
オブジェクトオーディオの利点は、異なるスピーカー配置に対してもレンダリングを行うことで最適な音響空間を想像できること。一方でチャンネルベース・オーディオの利点は、定められたスピーカー配置を意図して製作者が音響を作り込めることだ。さらにAuro-3Dはチャンネルベースなので、レンダリングという高負荷処理がなく、そのリソースを音源の情報量に割り当てることができる。つまりは192kHz/24bitなどのハイレゾによる3Dオーディオに対応している。
ちなみに、ドルビーアトモスやDTS:Xなどトップ/ハイトスピーカーを用いた3Dサウンドを「イマーシブオーディオ」と呼ぶことが多いが、これはそもそも同社がAuro-3Dをローンチするにあたって提唱した用語なのだという。
■ホーム向け「Auro-3D」は最大13.1ch対応
Auro-3Dには劇場用規格と、家庭用規格があり、劇場用はオブジェクトオーディオを併用するなど、それぞれ違いがある。ここではWilfried Van Baelen氏のプレゼンの中から、家庭用Auro-3Dについて紹介した部分をまとめたい。
まずはチャンネル数とスピーカー配置について。Auro-3Dは最大13.1chに対応する。各スピーカーを3層のレイヤーに分けて配置することがAuro-3Dの基本コンセプトだ。下の図を見て欲しい。
レイヤー1=「SURROUND」は、聴覚のもっとも大きな範囲を占める耳の高さの音を担う。レイヤー2=「HEIGHT」は、レイヤー1を中心とする“普段聞く音”に没入するための反射音を担っている。レイヤー3=「TOP」は、特殊効果や頭上を通過する音を担っている。
レイヤー1はいわゆる通常のサラウンドの7.1ch/5.1ch、レイヤー2はフロントハイト+サラウンド(リア)ハイトの4ch、レイヤー3は天井(リスナーの真上)1chのスピーカーで構成される。これで合計13.1ch(10.1ch)となる。
ちなみにAuro 3Dは、基本として1組のハイトスピーカーでの再生を想定していない(AVR-X6400H/X4400Hは1組でも再生できるようになっているが、理想は2組とBaelen氏)。ベースとなるのは「リスナーを取り囲む垂直ステレオ音場」なのだという。
だからハイトスピーカーは、フロントL/RスピーカーおよびサラウンドL/Rスピーカーの上方に配置されるものであり、リスナーの真上(天井)に配置されるトップスピーカーとは明確に区別されている。AVR-X6400H/X4400Hの場合は、トップスピーカーがアサインされているとAuro-3Dは再生できない。天井スピーカーをハイトスピーカーとしてAuro-3Dを再生したい場合は、これらを設定からハイトスピーカーとして認識させる必要がある。
また、ハイトスピーカーの設置位置については、リスナーに対して水平の位置から30度の高さ(レイヤー1と2の仰角)を理想としている。高さは最低でも20度は必要で、逆に40度を超えると垂直方向の自然な繋がりが失われてしまうのだという。
Auro-3Dを非対応AVアンプでAuro-3Dを再生すると、DTS-HDマスターオーディオ 5.1chとして再生される。この点については、Auro 3Dが優れた互換性を備えているとしてアピールされている。
ハイレゾ対応もAuro-3Dの特徴だ。規格上では、最大384kHz/32bit/9.1chにも対応するとのこと。ただ現状では、2Lなどの音楽ソフトでは192kHz/24bit/10.1ch、映画ソフトでは96kHz/24bit/10.1chの収録が一般的とのことで、いずれもAVR-X6400Hではフルデコードして再生することができる。
デノンのAVアンプをはじめとする対応機器では、非Auro-3Dコンテンツを3Dサウンドへアップミックスして再生すること「AuroMatic」機能も用意されている。本機能を使えば5.1ch/7.1chのコンテンツはもちろん、ステレオ、さらにはモノラル音源までアップミックスできる。この技術を確立するためには10年を超える歳月を費やしたということで、Baelen氏は「AuroMaticがあればコンテンツ不足で困ることはない」と自信を見せていた。
■Auro-3Dの成り立ち
Auro 3Dの成り立ちについても、Baelen氏は説明してくれた。Auro-3Dは2011年に開催されたイベントにて、Auro社と、やはりベルギーの企業でありプロジェクターなどでも知られるBARCO(バルコ社)が発表した。そのとき「イマーシブサウンド」という言葉も提唱された。
なお2006年には、AES(オーディオ技術者協会)にて、Auro-3Dのスピーカーレイアウトが発表されていた。これは既存の7.1ch/5.1chをベースとしたもので導入や設置が比較的容易なこともあり、競合企業を触発したとBaelen氏は語る。
2011年には先行して劇場向けの「Auro-3D CINEMA」が誕生。ハリウッドのメジャースタジオにも導入され、ジョージ・ルーカスがAuro-3Dフォーマットによるイマーシブサウンド映画の制作を行った。
そして2014年には、家庭向けの「Auro-3D HOME ENTERTAINMENT」が登場。欧米のコンテンツホルダーから対応ソフトが登場し、デノンをはじめとするAV機器メーカーが対応を果たした。
以降はモバイル向けや車載向けにも技術を提供。2016年には、Auro-3D音声を収録した初のゲーム『Get Even』が、バンダイナムコからPS4やXBox向けに発売された。VR向けのプロジェクトやストリーミングでのデモも行われている。
■旗艦スタジオ「Galaxy Studio」とコンテンツ/劇場への展開
プレゼンテーションでは、Auro社がベルギーに保有しているGalaxy Studioについても詳しく触れられた。本スタジオはAuro社、ひいてはAuro-3Dの本拠地であり、イマーシブオーディオの録音・作成を念頭にして用意された、Baelen氏の言葉を借りれば「世界初の真にインタラクティブなスタジオ設備」である。
このGalaxy Studioは「世界で最も静か」(>100dB,3kHz以下)とアピールされる録音スタジオ、音楽用の大型ミキシングコンソールを備えた7.1ch対応コントロールルーム、初というイマーシブサウンド(映画/音楽)をミキシングできる商用スタジオなどを備えている。
Auro-3D対応ソフトについても言及された。現在200を超える国際的な映画が、Auro-3D収録でリリースされているという。また、ハリウッドで最もメジャーなスタジオを含む世界で40超のスタジオが、ポストプロダクション設備にAuro-3Dスタジオシステムを導入しているとのことだ。
Auro-3Dに対応した劇場は世界で650あり、現在でも増えているという。なおデジタルシネマ向けのAuro-3Dは、最大チャンネル数が26.1chで、レイヤー3の音声については、オブジェクトオーディオが併用されるという。オブジェクトオーディオを活かして立体的な反射音を想像するとBaelen氏は説明していた。
「普段聞いている音への近似が、よりイマーシブな音体験の源」と語るWilfried Van Baelen氏。AESでの活動などを引き合いに出しつつ、日本における3Dサウンド/立体音響への関心の高さを賞賛。デノンのAVアンプへの搭載によって、真のイマーシブオーディオの魅力が認知され、日本国内でのAuro-3Dの普及に弾みがつくことに期待を寄せていた。