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ガジェット 公開日 2024/07/02 09:23
“AI PC”を支える「Snapdragon X」シリーズ。クアルコムジャパン副社長が語る日本の展望
クアルコム独自の強みとは
米クアルコムが、 “AI PC” を想定したコンピューティング向けプラットフォーム「Snapdragon Xシリーズ」のラインナップを強化している。日本でも今夏から発売されるコンシューマ向けの “AI PC” に、クアルコムのチップを載せた製品が出揃うことになりそうだ。
クアルコムジャパンの副社長である中山泰方氏が、7月1日に実施した記者会見において、今後を見据えたSnapdragon Xシリーズの展望を語った。
クアルコムは、2023年秋に開催したSnapdragon新製品のイベントで、ARM版Windows向けのSoCであるSnapdragon X Eliteを発表した。
さらに今年の4月には、弟妹グレードのSnapdragon X Plusをラインナップに加えて層を厚くしている。こちらはEliteと同じ45TOPSのNPU性能をもちながら、CPUのコアの構成とGPUの最大スペックが異なっている。
マイクロソフトは新世代のAI PCとして、クラウドのみに頼らず、デバイス単体でも快適なAI体験を提供できる「Copilot+ PC」を提唱。その要件には、40TOPS以上の処理性能をもつNPU(Neural Processing Units)の搭載が含まれる。クアルコムのSnapdragon Xシリーズは、EliteとPlusともに45TOPSのNPU性能だ。
2024年6月に台湾で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2024」の基調講演では、米クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOが登壇。「Snapdragon Xシリーズがマイクロソフトの要件をクリアできる現在唯一のSoC」であることを強調した。
クアルコムでは、スマホやタブレットなどモバイル通信機器に始まったSnapdragonのプラットフォームを、現在はIoTやコンピューティング、ウェアラブルにモビリティなど様々なエッジデバイスにも広く展開している。その中でもコンピューティングは、同社が最も注力するカテゴリーのひとつだ。
中山氏は、スマホなどモバイル機器向けのSnapdragonシリーズを手がけてきた知見を活かすことで、同社のコンピューティング向けチップは「丸1日稼働するバッテリー、LTE/5Gによるネットワークへの常時接続、強力なAI向けプロセッサなどの独自性が発揮できる」と主張する。中山氏はそれぞれの特徴が、従来のx86アーキテクチャをベースとしたPCに対する強み、と位置付けている。
日本国内でも、クアルコムのSnapdragons Xシリーズを乗せたWindows系のCopilot+ PCが夏商戦に出揃う。6月にはAcer、ASUS、Dell、レノボ、HP、そしてMicrosoftブランドから8つのラインナップの新モデルが発売された。
今後は順次、法人向けPCにもCopilot+ PCが拡充される。充実ぶりの背景には「EliteとPlus、2種類のSoCが揃ったことで、PCメーカーがユーザーの期待に添うラインナップを幅広く企画・開発しやすくなったこと」があると中山氏は説いている。
AI PCをビジネスシーンで活用することのメリットについて、中山氏は記者会見の中で時間を割いて説明した。
同社が実施したアンケートによると、国内でも多くの企業が生成AIを様々な業務に活用している実態が浮かび上がっているという。生成AIを「何らかの業務に使っている」または「向こう半年以内に使う予定がある」という回答は60%を超えた。業務にAIを導入している企業のリーダーは「約94%が社員の生産性が向上しているという実感」を口にしているそうだ。
Arm版Windowsでは、インテルのアーキテクチャ(x86/x64)上での動作を前提としたアプリケーションとの互換性確保が、長く課題として指摘されてきた。
クアルコムジャパンの中山氏は、Snapdragon Xシリーズでこの課題を払拭するために「様々なパートナーとともに、新しいものから既存のアプリケーションまで幅広く動作互換の検証を行ってきた」と述べている。
記者会見の会場で、Snapdragon Xシリーズを搭載する「ThinkPad T14s Gen 6 Qualcomm」を発売したばかりのレノボの担当者に、アプリケーションの互換性に関する現状を聞いた。
担当者からは、個人の開発者によるマイナーなアプリケーションを除き、Microsoft Officeのように普及するメジャーなアプリケーションについては、互換性をほぼ気にすることなく使えるという返答を得た。
さらに担当者は、法人向けにAI PCを一斉導入する場合も、レノボやシステムサービスのインテグレーションを提供する企業がサポートに入ることもできるので、「安心して最新のCopilot+ PCを導入してほしい」と呼びかけていた。
クアルコムも、Arm版Windowsにネイティブ対応するCopilot+ PC向けアプリの開発環境として、Windows向け開発キット「Snapdragon Dev Kit for Windows」を商品化している。6月18日から899ドル(約14万円)で販売中だ。
一般のコンシューマーにもCopilot+ PCを周知するため、クアルコムはSnapdragon JapanのインスタグラムやX(エックス)をはじめとするSNSアカウントで情報を発信している。今後は様々なオンラインキャンペーンなどの情報も公開されるという。
ほか記者会見では、Snapdragon Xシリーズを搭載するCopilot+ PCが、日本のPCメーカーからまだ発表されていない現状について、中山氏に質問が投げかけられた。
中山氏は、現状では日本ローカルでしか使われていないPC、サービスプラットフォームやアプリケーションなどを「今後、Copilot+ PCの要件に合致させることが課題」であるという認識を示した。
そのうえで「エンドユーザーにとってもメリットを実感できる提案を見つけたい。あまり知られていないかもしれないが、クアルコムはこれまでにも10年以上に渡ってPC向けのチップセットを展開してきた。知見が今後に活きるはず」と前を向いた。
クアルコムジャパンの副社長である中山泰方氏が、7月1日に実施した記者会見において、今後を見据えたSnapdragon Xシリーズの展望を語った。
■Snapdragon Xシリーズは「Copilot+ PC」の要件を満たす唯一のSoC
クアルコムは、2023年秋に開催したSnapdragon新製品のイベントで、ARM版Windows向けのSoCであるSnapdragon X Eliteを発表した。
さらに今年の4月には、弟妹グレードのSnapdragon X Plusをラインナップに加えて層を厚くしている。こちらはEliteと同じ45TOPSのNPU性能をもちながら、CPUのコアの構成とGPUの最大スペックが異なっている。
マイクロソフトは新世代のAI PCとして、クラウドのみに頼らず、デバイス単体でも快適なAI体験を提供できる「Copilot+ PC」を提唱。その要件には、40TOPS以上の処理性能をもつNPU(Neural Processing Units)の搭載が含まれる。クアルコムのSnapdragon Xシリーズは、EliteとPlusともに45TOPSのNPU性能だ。
2024年6月に台湾で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2024」の基調講演では、米クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOが登壇。「Snapdragon Xシリーズがマイクロソフトの要件をクリアできる現在唯一のSoC」であることを強調した。
■5G対応などクアルコム独自の強みも活かせる
クアルコムでは、スマホやタブレットなどモバイル通信機器に始まったSnapdragonのプラットフォームを、現在はIoTやコンピューティング、ウェアラブルにモビリティなど様々なエッジデバイスにも広く展開している。その中でもコンピューティングは、同社が最も注力するカテゴリーのひとつだ。
中山氏は、スマホなどモバイル機器向けのSnapdragonシリーズを手がけてきた知見を活かすことで、同社のコンピューティング向けチップは「丸1日稼働するバッテリー、LTE/5Gによるネットワークへの常時接続、強力なAI向けプロセッサなどの独自性が発揮できる」と主張する。中山氏はそれぞれの特徴が、従来のx86アーキテクチャをベースとしたPCに対する強み、と位置付けている。
日本国内でも、クアルコムのSnapdragons Xシリーズを乗せたWindows系のCopilot+ PCが夏商戦に出揃う。6月にはAcer、ASUS、Dell、レノボ、HP、そしてMicrosoftブランドから8つのラインナップの新モデルが発売された。
今後は順次、法人向けPCにもCopilot+ PCが拡充される。充実ぶりの背景には「EliteとPlus、2種類のSoCが揃ったことで、PCメーカーがユーザーの期待に添うラインナップを幅広く企画・開発しやすくなったこと」があると中山氏は説いている。
■AI PCがビジネスの生産性を高めている
AI PCをビジネスシーンで活用することのメリットについて、中山氏は記者会見の中で時間を割いて説明した。
同社が実施したアンケートによると、国内でも多くの企業が生成AIを様々な業務に活用している実態が浮かび上がっているという。生成AIを「何らかの業務に使っている」または「向こう半年以内に使う予定がある」という回答は60%を超えた。業務にAIを導入している企業のリーダーは「約94%が社員の生産性が向上しているという実感」を口にしているそうだ。
Arm版Windowsでは、インテルのアーキテクチャ(x86/x64)上での動作を前提としたアプリケーションとの互換性確保が、長く課題として指摘されてきた。
クアルコムジャパンの中山氏は、Snapdragon Xシリーズでこの課題を払拭するために「様々なパートナーとともに、新しいものから既存のアプリケーションまで幅広く動作互換の検証を行ってきた」と述べている。
記者会見の会場で、Snapdragon Xシリーズを搭載する「ThinkPad T14s Gen 6 Qualcomm」を発売したばかりのレノボの担当者に、アプリケーションの互換性に関する現状を聞いた。
担当者からは、個人の開発者によるマイナーなアプリケーションを除き、Microsoft Officeのように普及するメジャーなアプリケーションについては、互換性をほぼ気にすることなく使えるという返答を得た。
さらに担当者は、法人向けにAI PCを一斉導入する場合も、レノボやシステムサービスのインテグレーションを提供する企業がサポートに入ることもできるので、「安心して最新のCopilot+ PCを導入してほしい」と呼びかけていた。
■開発者支援やコンシューマー周知の取り組みも
クアルコムも、Arm版Windowsにネイティブ対応するCopilot+ PC向けアプリの開発環境として、Windows向け開発キット「Snapdragon Dev Kit for Windows」を商品化している。6月18日から899ドル(約14万円)で販売中だ。
一般のコンシューマーにもCopilot+ PCを周知するため、クアルコムはSnapdragon JapanのインスタグラムやX(エックス)をはじめとするSNSアカウントで情報を発信している。今後は様々なオンラインキャンペーンなどの情報も公開されるという。
ほか記者会見では、Snapdragon Xシリーズを搭載するCopilot+ PCが、日本のPCメーカーからまだ発表されていない現状について、中山氏に質問が投げかけられた。
中山氏は、現状では日本ローカルでしか使われていないPC、サービスプラットフォームやアプリケーションなどを「今後、Copilot+ PCの要件に合致させることが課題」であるという認識を示した。
そのうえで「エンドユーザーにとってもメリットを実感できる提案を見つけたい。あまり知られていないかもしれないが、クアルコムはこれまでにも10年以上に渡ってPC向けのチップセットを展開してきた。知見が今後に活きるはず」と前を向いた。