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ガジェット 公開日 2024/08/08 14:36
NTTドコモの新プラン「eximoポイ活」、なぜ「dカード」支払いを重視するのか
【連載】佐野正弘のITインサイト 第120回
KDDIの「au」ブランドの「auマネ活プラン」やソフトバンクの「ペイトク」など、系列の金融・決済サービスと連携した料金プランが急増している。いずれも携帯各社系列の金融・決済サービスの利用が求められることから、利用のハードルが高いプランではあるものの、お得度合いが大きいことから人気を獲得しているようだ。
こうした料金プランの導入が遅れていたNTTドコモも、2024年に「ドコモポイ活プラン」を打ち出し、4月にはその第1弾としてオンライン専用プラン「ahamo」に向けた「ahamoポイ活」の提供を開始している。ahamoの本料金が月額2,970円であるのに対し、ahamoポイ活を実現するにはオプションを2つ追加して月額7,150円支払う必要があることから、利用ハードルの高さが懸念されていた。
だが、同社の決済サービス「d払い」の利用で「dポイント」の進呈率が高まるお得さが受けたようで、契約は好調なようだ。実際同社によると、ahamoポイ活利用者のdポイント還元額実績は、ahamoポイ活を利用しない「ahamo大盛り」の利用者と比べ約6倍とのことで、契約者が “ポイ活” で積極的にd払いを利用するようになった様子がうかがえる。
そのahamoポイ活の好調を受け、同社がドコモポイ活プランの第2弾として新たに打ち出したのが、8月1日より提供開始した「eximoポイ活」である。こちらもahamoポイ活と同様、データ通信使い放題が特徴の料金プラン「eximo」と、NTTドコモの金融・決済サービスを組み合わせてお得になるサービスなのだが、その内容はahamoポイ活と大きく異なる部分が多い。
実際eximoポイ活は、ahamoポイ活のようにオプションサービスとしてではなく、「eximoポイ活」という新たな料金プランとして提供される。eximoポイ活はデータ通信が使い放題で、「みんなドコモ割」「ドコモ光セット割」などの割引を適用することで料金が安くなるといった点は、従来のeximoと大きく変わらないのだが、異なる点もいくつかある。
大きな違いの1つは、 “ポイ活” の原資が含まれることから月額料金が1万615円と高く設定されていること。2つ目はeximoに存在していた、月当たりの通信量が3GB以下の時に適用される割引がカットされていること。そして3つ目の違いとなるのが、このプランの最大の特徴となっている、決済サービスの利用で進呈されるdポイントの割合が増えることだ。
だがahamoポイ活と比べた場合、対象となる決済サービスにも大きな違いが設けられている。先にも触れたように、ahamoポイ活はd払いを利用した際のポイント進呈率が高くなる仕組みだったが、eximoポイ活は単にd払いを利用してもポイント進呈率は上がらない。
では何を使えばいいのかというと、クレジットカードの「dカード」である。eximoポイ活ではdカードで決済した時のポイント進呈率がアップする仕組みで、通常のdカード利用で付与される1%に加え、「dカード」では3%、「dカードGOLD」では5%のdポイントが付与されるという。
他にもd払いや「iD」を利用した際にもポイント進呈率は高まるというが、いずれも進呈率が高まるのは支払い元がdカードである場合に限られる。それゆえ、例えばd払いに料金をチャージして決済した場合、ahamoポイ活ではポイントアップの対象となるが、eximoポイ活では対象外となってしまう点に注意が必要だろう。
またeximoポイ活では新たに、NTTドコモが子会社化したマネックス証券の積み立てをdカードGOLDでした場合、積立額に応じて1%を加算したdポイントを進呈する仕組みも提供されている。こちらは、金融サービスとの連携を強めたauマネ活プランを意識したものといえるが、ポイントの追加はdカードGOLDによる積み立てが前提とされており、dカードに軸を置いた仕組みであることは間違いない。
なぜ、ahamoポイ活とeximoポイ活で対象となる決済サービスに違いが生じているのだろうか。NTTドコモ側の説明によると、ahamoポイ活の提供以降、dカードによる決済をポイントアップの対象にして欲しいという声が挙がったためだとしている。それゆえeximoポイ活を機として、他のカードに分散している支払いをdカードにまとめてもらうことにより、クレジットカードの決済需要を “総取り” する狙いがあるようだ。
なのであれば、ahamoポイ活もdカードを対象にすべきでは?という声も出てくるだろう。ただ同社によると、ahamoは若い世代の利用が多く、キャッシュレス決済が定着していることから、ニーズが大きければ検討はするとしながらも、当面はd払いのみを対象にする方針を変えないとのことだ。
ただNTTドコモを取り巻く環境を見ると、eximoポイ活の軸をdカードに変えたのは、むしろdカードの顧客基盤を生かして料金が高いeximoに顧客を取り込みたい狙いが大きいためではないかと筆者は見る。なぜならNTTドコモの携帯話契約者は、以前よりdカードの利用者が非常に多いとされているからだ。
実際、2023年度末時点でのdカード契約数は1,775万。全てのdカード契約者がNTTドコモの携帯電話サービスを契約しているわけではないだろうが、そうでなければdカードを契約する理由に乏しいだけに、その比率はかなり高いものと考えられる。
しかもそのうち、年間1万1,000円の年会費がかかるdカードGOLDの契約者は1,065万と過半数を超えていることから、優良顧客を非常に多く抱えている様子も見て取ることができる。
その一方でNTTドコモの携帯電話サービスは、低価格の「irumo」に顧客が流れたことでARPUが減少していることが大きな課題となっている。そこで忠誠心が高いdカード利用者に対し、eximoポイ活でお得感を打ち出すことによって、上位プランへの移行を促しARPUの向上につなげたいというのが、NTTドコモの大きな狙いといえるのではないだろうか。
ただその狙いがうまくいくかどうかは、正直なところキャンペーン施策に左右される部分が大きいようにも感じる。eximoポイ活はahamoポイ活と同様に、サービス開始当初からキャンペーン施策を展開し、当面はdカードとdカードGOLDの利用者ともにポイント進呈率が10%にアップするとしている。
eximoポイ活で進呈されるdポイントの上限は5,000ポイントなので、キャンペーン期間中は毎月5万円を支払えば、上限の5,000ポイントを得ることができる。しかもキャンペーンは終了日が未定とされていることから、eximoポイ活契約者は当面キャンペーンの恩恵を受けられるものの、当然ながらこの施策はあくまでキャンペーンなのでいずれは終了することになる。
終了した場合のポイント進呈率は、先にも触れた通りdカードGOLDで5%、dカードで3%と大幅に下がってしまい、ポイントを上限まで獲得するためのハードルも大きく上がってしまう。それゆえキャンペーン期間中はeximoポイ活の利用者が増える可能性が高い一方で、終了時にどれだけのユーザーが残るかという点には不安が残る。
キャンペーン終了後にeximoポイ活ユーザーがirumo、あるいは他社サービスへ流れてしまうとなれば、ARPUを上げるというNTTドコモの狙いは大きく外れてしまうだろう。
eximoポイ活の認知と利用を増やすためにも、キャンペーンの展開は不可欠なのだろう。だが、その終了後もユーザーを多く残すためにいかにソフトランディングを図ることができるかが、NTTドコモにとって大きな課題となりそうだ。
■“ドコモポイ活プラン”第2弾として打ち出した「eximoポイ活」
こうした料金プランの導入が遅れていたNTTドコモも、2024年に「ドコモポイ活プラン」を打ち出し、4月にはその第1弾としてオンライン専用プラン「ahamo」に向けた「ahamoポイ活」の提供を開始している。ahamoの本料金が月額2,970円であるのに対し、ahamoポイ活を実現するにはオプションを2つ追加して月額7,150円支払う必要があることから、利用ハードルの高さが懸念されていた。
だが、同社の決済サービス「d払い」の利用で「dポイント」の進呈率が高まるお得さが受けたようで、契約は好調なようだ。実際同社によると、ahamoポイ活利用者のdポイント還元額実績は、ahamoポイ活を利用しない「ahamo大盛り」の利用者と比べ約6倍とのことで、契約者が “ポイ活” で積極的にd払いを利用するようになった様子がうかがえる。
そのahamoポイ活の好調を受け、同社がドコモポイ活プランの第2弾として新たに打ち出したのが、8月1日より提供開始した「eximoポイ活」である。こちらもahamoポイ活と同様、データ通信使い放題が特徴の料金プラン「eximo」と、NTTドコモの金融・決済サービスを組み合わせてお得になるサービスなのだが、その内容はahamoポイ活と大きく異なる部分が多い。
実際eximoポイ活は、ahamoポイ活のようにオプションサービスとしてではなく、「eximoポイ活」という新たな料金プランとして提供される。eximoポイ活はデータ通信が使い放題で、「みんなドコモ割」「ドコモ光セット割」などの割引を適用することで料金が安くなるといった点は、従来のeximoと大きく変わらないのだが、異なる点もいくつかある。
大きな違いの1つは、 “ポイ活” の原資が含まれることから月額料金が1万615円と高く設定されていること。2つ目はeximoに存在していた、月当たりの通信量が3GB以下の時に適用される割引がカットされていること。そして3つ目の違いとなるのが、このプランの最大の特徴となっている、決済サービスの利用で進呈されるdポイントの割合が増えることだ。
だがahamoポイ活と比べた場合、対象となる決済サービスにも大きな違いが設けられている。先にも触れたように、ahamoポイ活はd払いを利用した際のポイント進呈率が高くなる仕組みだったが、eximoポイ活は単にd払いを利用してもポイント進呈率は上がらない。
では何を使えばいいのかというと、クレジットカードの「dカード」である。eximoポイ活ではdカードで決済した時のポイント進呈率がアップする仕組みで、通常のdカード利用で付与される1%に加え、「dカード」では3%、「dカードGOLD」では5%のdポイントが付与されるという。
他にもd払いや「iD」を利用した際にもポイント進呈率は高まるというが、いずれも進呈率が高まるのは支払い元がdカードである場合に限られる。それゆえ、例えばd払いに料金をチャージして決済した場合、ahamoポイ活ではポイントアップの対象となるが、eximoポイ活では対象外となってしまう点に注意が必要だろう。
またeximoポイ活では新たに、NTTドコモが子会社化したマネックス証券の積み立てをdカードGOLDでした場合、積立額に応じて1%を加算したdポイントを進呈する仕組みも提供されている。こちらは、金融サービスとの連携を強めたauマネ活プランを意識したものといえるが、ポイントの追加はdカードGOLDによる積み立てが前提とされており、dカードに軸を置いた仕組みであることは間違いない。
■対象の決済サービスに違いが生じた背景
なぜ、ahamoポイ活とeximoポイ活で対象となる決済サービスに違いが生じているのだろうか。NTTドコモ側の説明によると、ahamoポイ活の提供以降、dカードによる決済をポイントアップの対象にして欲しいという声が挙がったためだとしている。それゆえeximoポイ活を機として、他のカードに分散している支払いをdカードにまとめてもらうことにより、クレジットカードの決済需要を “総取り” する狙いがあるようだ。
なのであれば、ahamoポイ活もdカードを対象にすべきでは?という声も出てくるだろう。ただ同社によると、ahamoは若い世代の利用が多く、キャッシュレス決済が定着していることから、ニーズが大きければ検討はするとしながらも、当面はd払いのみを対象にする方針を変えないとのことだ。
ただNTTドコモを取り巻く環境を見ると、eximoポイ活の軸をdカードに変えたのは、むしろdカードの顧客基盤を生かして料金が高いeximoに顧客を取り込みたい狙いが大きいためではないかと筆者は見る。なぜならNTTドコモの携帯話契約者は、以前よりdカードの利用者が非常に多いとされているからだ。
実際、2023年度末時点でのdカード契約数は1,775万。全てのdカード契約者がNTTドコモの携帯電話サービスを契約しているわけではないだろうが、そうでなければdカードを契約する理由に乏しいだけに、その比率はかなり高いものと考えられる。
しかもそのうち、年間1万1,000円の年会費がかかるdカードGOLDの契約者は1,065万と過半数を超えていることから、優良顧客を非常に多く抱えている様子も見て取ることができる。
その一方でNTTドコモの携帯電話サービスは、低価格の「irumo」に顧客が流れたことでARPUが減少していることが大きな課題となっている。そこで忠誠心が高いdカード利用者に対し、eximoポイ活でお得感を打ち出すことによって、上位プランへの移行を促しARPUの向上につなげたいというのが、NTTドコモの大きな狙いといえるのではないだろうか。
ただその狙いがうまくいくかどうかは、正直なところキャンペーン施策に左右される部分が大きいようにも感じる。eximoポイ活はahamoポイ活と同様に、サービス開始当初からキャンペーン施策を展開し、当面はdカードとdカードGOLDの利用者ともにポイント進呈率が10%にアップするとしている。
eximoポイ活で進呈されるdポイントの上限は5,000ポイントなので、キャンペーン期間中は毎月5万円を支払えば、上限の5,000ポイントを得ることができる。しかもキャンペーンは終了日が未定とされていることから、eximoポイ活契約者は当面キャンペーンの恩恵を受けられるものの、当然ながらこの施策はあくまでキャンペーンなのでいずれは終了することになる。
終了した場合のポイント進呈率は、先にも触れた通りdカードGOLDで5%、dカードで3%と大幅に下がってしまい、ポイントを上限まで獲得するためのハードルも大きく上がってしまう。それゆえキャンペーン期間中はeximoポイ活の利用者が増える可能性が高い一方で、終了時にどれだけのユーザーが残るかという点には不安が残る。
キャンペーン終了後にeximoポイ活ユーザーがirumo、あるいは他社サービスへ流れてしまうとなれば、ARPUを上げるというNTTドコモの狙いは大きく外れてしまうだろう。
eximoポイ活の認知と利用を増やすためにも、キャンペーンの展開は不可欠なのだろう。だが、その終了後もユーザーを多く残すためにいかにソフトランディングを図ることができるかが、NTTドコモにとって大きな課題となりそうだ。