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公開日 2019/12/05 19:48
クアルコム「Snapdragon 865」詳報 - Dolby Visionの動画撮影やaptX Adaptiveの96/24伝送が可能に
性能向上と省電力化を追求
米クアルコムがモバイル向けのハイエンドSoCであるSnapdragonシリーズの最新モデルを、ハワイで開催中のイベント「Snapdragon Tech Summit」で発表した。現地時間12月4日の基調講演では、最新の「Snapdragon 865」「Snapdragon 765/765G」の詳細が明らかになった。
Snapdragon 865シリーズは台湾TSMCの先端7nmプロセスルールにより製造される。前日のレポートでお伝えしているように、別途5G対応のモデムICなどクアルコムの通信コンポーネントを組み合わせることにより、理論値で下り最大7.5Gbps、上り最大3Gbpsのマルチビットスピードの5Gネットワーク通信が可能になるほか、CPUとDSP、GPUを組み合わせたAIプラットフォーム「Qualcomm Artificial Intelligence Engine」が第5世代に進化を遂げている。
Snapdragon 765/765Gシリーズは、サムスン電子の7nmプロセスルールによる製造ラインから供給されるかたちになる。5Gのマルチモード対応モデムICチップなどを含む通信プラットフォームを一体化したSoCは、5G通信時では理論値で下り最大3.7Gbps、上り最大1.6Gbpsのスループットを実現する。
以下ではフラグシップのSnapdragon 865について仕様をお伝えしていく。発表会の壇上ではクアルコム テクノロジーズのSVP兼プロダクトマネージャーのKeith Kressin氏が各詳細のプレゼンテーションを行った。
毎秒2ギガピクセルの高速処理性能を実現した画像信号処理プロセッサー「Spectra 480」は、モバイル端末に8K動画の撮影・編集機能を持たせることができるほどの高いパフォーマンスを実現した。
HDR動画記録はHDR10とHLG、HDR10+に加えて、このたび初めてDolby Vision対応が実現した。上位865シリーズのオプション機能として提供される。発表会の壇上ではドルビー側のビジネスモデルについて触れられることはなかったが、SoCのオプション機能を使用するメーカーがドルビーから認証を取得することによって機能を実装する形になるものと考えられる。
Spectra 480には4K/HDR動画を撮影しながら64MPの静止画を同時記録したり、静止画では最大200MPの撮影が行えるパフォーマンスを備えている。静止画は855シリーズに引き続きHEIFのファイルフォーマットをサポートする。
独自設計のCPU「Kyro 585」はSnapdragon 855に搭載されているKyro 485と比べてパフォーマンスが約25%向上したほか、駆動効率も約25%の省電力化を果たしている。CPUは8コアで、全体の処理パフォーマンスを制御する1基のプライムコアに加えて、3基の高性能コアと4基の高効率コアという構成になる。
GPUの「Aderno 650」は現行世代と比べて、さらに約25%も画像レンダリング処理の性能が上がっている。いよいよ次世代の8K、360度VRエンターテインメントの普及を見越したパフォーマンスにまで到達してきた格好だ。なおSnapdragon 765シリーズは「Adreno 620」を採用しており、ゲーミング仕様の765Gシリーズは同GPUをベースに性能を約10%ほど強化している。
無線LANについては、今年の秋から商用化がスタートした新世代規格「Wi-Fi 6/11ax」をサポート。Wi-FiについてはBluetooth 5.1への対応も含めて、セルラー以外の無線通信機能を「Qualcomm FastConnect 6800」と呼ぶサブシステムにパッケージングして大容量・低遅延伝送の高性能をアピールする。
Bluetoothオーディオのコーデックでは、aptX Adaptiveを標準搭載のオプションとして備える。これまでaptX Adaptiveの最大伝送スペックは48kHz/24bitだったが、865シリーズのローンチ時点から96kHz/24bitに拡張されることになった。左右それぞれのイヤホンに音声を送るTWS Plusのワイヤレス接続技術についても標準仕様として組み込まれる。こちらの詳細については、クアルコムのオーディオ部門の責任者に訊く機会を別途設けてレポートしたい。
オーディオ関連では、VoLTE音声通話にも用いられるSWB(超広帯域 )音声コーデックをBluetooth技術と結びつけて、ワイヤレスヘッドホンなどでも最高32kHzの高品位な音声通話を可能にするコーデック「aptX Voice」が新設される。なお本技術を活用するためには、送り出しと受け側、双方の端末がaptX Voiceに対応する必要がある。
Qualcomm Artificial Intelligence Engineの中核であるDSP「Hexagon 698」プロセッサーは、これまで外側に独立していた音声処理用のチップをDSPの中にまとめたことにより、AIアシスタントはスタンバイ状態からの常時ウェイクアップにより素速く反応ができるようになったほか、従来の855シリーズと比べて一段と省電力化が図られている。
Snapdragon 865に搭載されるAIエンジンの処理性能が毎秒15兆回(15TOPS)のパフォーマンスに到達していることは既報の通りだ。これはクアルコムのライバル企業が、Android OSを搭載するデバイス向けとして開発するSoCのオンデバイスAI処理と比較して、約3倍の実力差にもなるという。会場ではこの高度な処理性能を活かせる例として、外国語のリアルタイム翻訳エンジンのプロトタイプのデモンストレーションが行われた。
ゲーミングについては、昨年にSnapdragon 855を発表した際に「Snapdragon Elite Gaming」というブランドを立ち上げ、モバイルゲーミングに適したSnapdragonシリーズの特徴を切り出しながらアピールしている。今回のイベントで発表されたSoCの中では、Snapdragon 865とSnapdragon 765GがSnapdragon Elite Gamingを冠しており、「デスクトップ用コンポーネントの性能に迫るゲーミング体験をモバイルでも楽しめる」とうたっている。
また最新世代のSnapdragonからは、Adreno GPUのドライバーをGoogle Playストアを経由してアップデートができるようになることも発表された。これによりモバイルゲーミングで最先端の体験を楽しむために必要なGPUのスペックを、ハードウェアの限界まで常時更新して引き出すことが可能になる。この戦略は、クアルコムとグーグルの密な連携によって実現するものになるという。他社のSoCでも同様のサービスを提供することが今後可能になるのか注目したい。
日本国内の5G事情については、NTTドコモが2019年に5Gのプレサービスを開始し、2020年春から商用サービスを立ち上げる計画を公表している。そしてKDDIとソフトバンクも、2020年の商用化に向けタイミングを見計らっている。Snapdragon 865シリーズは、日本国内では5G対応も含めてどのような形でスマホなどの端末が投入されることになるのだろうか。来年以降の展開に注目したいと思う。
今回発表されたSnapdragon 865/765/765Gを搭載するデバイスは2020年の第一四半期(1〜3月)ごろから順次商品化が始まる見込みであるという。
クアルコムのKressin氏は「フラグシップのSnapdragon 865は2016年に要素技術の企画を立ち上げてから、今回のイベントで発表を迎えるまで足かけ3年をかけてきた。その間にモバイルデバイスを取り巻く環境も大きく様変わりしているが、総勢1万人を超える当社の技術者たちがそれぞれの役割を誠実に果たしながら、最先端の技術やトレンドを取り込んだ最高のモバイル向けSoCを提供できることをとても誇らしく思う」と振り返り、本格的な5G時代の到来に向けて万全の構えで臨む姿勢を打ち出した。
Snapdragon 865シリーズは台湾TSMCの先端7nmプロセスルールにより製造される。前日のレポートでお伝えしているように、別途5G対応のモデムICなどクアルコムの通信コンポーネントを組み合わせることにより、理論値で下り最大7.5Gbps、上り最大3Gbpsのマルチビットスピードの5Gネットワーク通信が可能になるほか、CPUとDSP、GPUを組み合わせたAIプラットフォーム「Qualcomm Artificial Intelligence Engine」が第5世代に進化を遂げている。
Snapdragon 765/765Gシリーズは、サムスン電子の7nmプロセスルールによる製造ラインから供給されるかたちになる。5Gのマルチモード対応モデムICチップなどを含む通信プラットフォームを一体化したSoCは、5G通信時では理論値で下り最大3.7Gbps、上り最大1.6Gbpsのスループットを実現する。
以下ではフラグシップのSnapdragon 865について仕様をお伝えしていく。発表会の壇上ではクアルコム テクノロジーズのSVP兼プロダクトマネージャーのKeith Kressin氏が各詳細のプレゼンテーションを行った。
毎秒2ギガピクセルの高速処理性能を実現した画像信号処理プロセッサー「Spectra 480」は、モバイル端末に8K動画の撮影・編集機能を持たせることができるほどの高いパフォーマンスを実現した。
HDR動画記録はHDR10とHLG、HDR10+に加えて、このたび初めてDolby Vision対応が実現した。上位865シリーズのオプション機能として提供される。発表会の壇上ではドルビー側のビジネスモデルについて触れられることはなかったが、SoCのオプション機能を使用するメーカーがドルビーから認証を取得することによって機能を実装する形になるものと考えられる。
Spectra 480には4K/HDR動画を撮影しながら64MPの静止画を同時記録したり、静止画では最大200MPの撮影が行えるパフォーマンスを備えている。静止画は855シリーズに引き続きHEIFのファイルフォーマットをサポートする。
独自設計のCPU「Kyro 585」はSnapdragon 855に搭載されているKyro 485と比べてパフォーマンスが約25%向上したほか、駆動効率も約25%の省電力化を果たしている。CPUは8コアで、全体の処理パフォーマンスを制御する1基のプライムコアに加えて、3基の高性能コアと4基の高効率コアという構成になる。
GPUの「Aderno 650」は現行世代と比べて、さらに約25%も画像レンダリング処理の性能が上がっている。いよいよ次世代の8K、360度VRエンターテインメントの普及を見越したパフォーマンスにまで到達してきた格好だ。なおSnapdragon 765シリーズは「Adreno 620」を採用しており、ゲーミング仕様の765Gシリーズは同GPUをベースに性能を約10%ほど強化している。
無線LANについては、今年の秋から商用化がスタートした新世代規格「Wi-Fi 6/11ax」をサポート。Wi-FiについてはBluetooth 5.1への対応も含めて、セルラー以外の無線通信機能を「Qualcomm FastConnect 6800」と呼ぶサブシステムにパッケージングして大容量・低遅延伝送の高性能をアピールする。
Bluetoothオーディオのコーデックでは、aptX Adaptiveを標準搭載のオプションとして備える。これまでaptX Adaptiveの最大伝送スペックは48kHz/24bitだったが、865シリーズのローンチ時点から96kHz/24bitに拡張されることになった。左右それぞれのイヤホンに音声を送るTWS Plusのワイヤレス接続技術についても標準仕様として組み込まれる。こちらの詳細については、クアルコムのオーディオ部門の責任者に訊く機会を別途設けてレポートしたい。
オーディオ関連では、VoLTE音声通話にも用いられるSWB(超広帯域 )音声コーデックをBluetooth技術と結びつけて、ワイヤレスヘッドホンなどでも最高32kHzの高品位な音声通話を可能にするコーデック「aptX Voice」が新設される。なお本技術を活用するためには、送り出しと受け側、双方の端末がaptX Voiceに対応する必要がある。
Qualcomm Artificial Intelligence Engineの中核であるDSP「Hexagon 698」プロセッサーは、これまで外側に独立していた音声処理用のチップをDSPの中にまとめたことにより、AIアシスタントはスタンバイ状態からの常時ウェイクアップにより素速く反応ができるようになったほか、従来の855シリーズと比べて一段と省電力化が図られている。
Snapdragon 865に搭載されるAIエンジンの処理性能が毎秒15兆回(15TOPS)のパフォーマンスに到達していることは既報の通りだ。これはクアルコムのライバル企業が、Android OSを搭載するデバイス向けとして開発するSoCのオンデバイスAI処理と比較して、約3倍の実力差にもなるという。会場ではこの高度な処理性能を活かせる例として、外国語のリアルタイム翻訳エンジンのプロトタイプのデモンストレーションが行われた。
ゲーミングについては、昨年にSnapdragon 855を発表した際に「Snapdragon Elite Gaming」というブランドを立ち上げ、モバイルゲーミングに適したSnapdragonシリーズの特徴を切り出しながらアピールしている。今回のイベントで発表されたSoCの中では、Snapdragon 865とSnapdragon 765GがSnapdragon Elite Gamingを冠しており、「デスクトップ用コンポーネントの性能に迫るゲーミング体験をモバイルでも楽しめる」とうたっている。
また最新世代のSnapdragonからは、Adreno GPUのドライバーをGoogle Playストアを経由してアップデートができるようになることも発表された。これによりモバイルゲーミングで最先端の体験を楽しむために必要なGPUのスペックを、ハードウェアの限界まで常時更新して引き出すことが可能になる。この戦略は、クアルコムとグーグルの密な連携によって実現するものになるという。他社のSoCでも同様のサービスを提供することが今後可能になるのか注目したい。
日本国内の5G事情については、NTTドコモが2019年に5Gのプレサービスを開始し、2020年春から商用サービスを立ち上げる計画を公表している。そしてKDDIとソフトバンクも、2020年の商用化に向けタイミングを見計らっている。Snapdragon 865シリーズは、日本国内では5G対応も含めてどのような形でスマホなどの端末が投入されることになるのだろうか。来年以降の展開に注目したいと思う。
今回発表されたSnapdragon 865/765/765Gを搭載するデバイスは2020年の第一四半期(1〜3月)ごろから順次商品化が始まる見込みであるという。
クアルコムのKressin氏は「フラグシップのSnapdragon 865は2016年に要素技術の企画を立ち上げてから、今回のイベントで発表を迎えるまで足かけ3年をかけてきた。その間にモバイルデバイスを取り巻く環境も大きく様変わりしているが、総勢1万人を超える当社の技術者たちがそれぞれの役割を誠実に果たしながら、最先端の技術やトレンドを取り込んだ最高のモバイル向けSoCを提供できることをとても誇らしく思う」と振り返り、本格的な5G時代の到来に向けて万全の構えで臨む姿勢を打ち出した。