公開日 2009/09/30 16:52
オンキヨーのiPod&PCトランスポート「ND-S1」レビュー ー iTransport 170とも比較してみた
高橋 敦氏が音質を徹底チェック
iPodとデジタル接続可能な機器が次々と発売されている。AVアンプでは珍しくない機能となり、CDプレーヤーへの搭載例も増えてきた。しかし、iPodからのデジタル音声データを一般的なデジタル音声信号にして送り出すシンプルなiPodトランスポートは、ワディアの「iTransport 170」(関連ニュース)以降、選択肢が増えていなかった。
そこに遂に登場したのが「ND-S1」(製品データベース)だ。しかも先行製品に対していくつかの優位を持っている。まずは価格。予想実売20,000円程度と62,790円(税込)の 「iTransport 170」よりも手に入りやすい価格に設定されている。
次にUSBトランスポートとしての機能。PCのUSB端子と接続してPCの音声もデジタル出力することが可能で、iPodだけでなくPCもオーディオシステムに組み込める。そしてUSB接続時には普通のドックのようにPCとiPodの同期にも利用でき便利だ。
加えて細部の気配りも国内大手ならでは。ドック部分にはシャッターを装備。端子への埃の付着を防げる。収納式なのでふたを紛失する恐れもない。リモコンも(シートキーではなく)押しやすいゴム製ボタンを持つしっかりとしたもので使いやすい。
まずは「ND-S1」と同時発売の同社の小型コンポ「X−S1」(製品データベース)と組み合わせ(外観の整合性も高いセットだ)で、「X−S1」のCDドライブと「ND-S1」の音質を比較してみた。
「ND-S1」での再生は音場全体のコントラストが高まり、声も明るく抜ける。エッジも明瞭度を増し解像感を高めるが、きつさは出さない。手応えは良好だ。
しかし「ND-S1」にはまだ余力を感じる。ハイエンドシステムに接続して音質をさらに確認。アキュフェーズのCDプレーヤー「DP-700」と接続し、DP-700の内蔵DACを利用して視聴してみた。
女性ボーカルは低域からファルセットまで滑らか。コーラスの重なり具合も緻密で美しい。奥に定位したドラムスは、シンバルの音色や配置が明瞭で、立体的だ。バスドラムやタムなどの低域もぶれない。ヘンドリックスやヴァン・ヘイレンのギターの音は、粒の粗さを適度に残すのが好印象。
iPodの価格を含めても3万円程度〜なトランスポートとしては、驚きの音質。価格的に無理のないDACとの組み合わせでも、多くのCDプレーヤーに劣らない音質に達するだろう。
PCと接続しUSBトランスポートとしての音質も確かめてみたが、こちらも同傾向。しかしiPod再生時の方が雑味が少なくクリアと感じる。音質的に上を狙うときはiPodの利用がおすすめだ。
最後にやはり、「iTransport 170」との比較は避けて通れない。全体の感触として、イマドキのピュアオーディオらしいシャープネスと情報量を感じさせるのが「iTransport 170」(iTransport 170の詳しいレビュー)。対して「ND-S1」はやや穏やかで落ち着いた印象を受けた。一般論的により高音質と言えるのは「iTransport 170」だろう。しかしその差は、確かではあるが決定的ではない。
「ND-S1」は、iPod&PCというリスニングスタイルとオーディオの架け橋となる機能を持つキーアイテムだ。音質面もそのポジションを担うにふさわしいレベルに達している。こういうのを待っていたんだ!という方の期待に十分に応えてくれる製品である。
高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。
そこに遂に登場したのが「ND-S1」(製品データベース)だ。しかも先行製品に対していくつかの優位を持っている。まずは価格。予想実売20,000円程度と62,790円(税込)の 「iTransport 170」よりも手に入りやすい価格に設定されている。
次にUSBトランスポートとしての機能。PCのUSB端子と接続してPCの音声もデジタル出力することが可能で、iPodだけでなくPCもオーディオシステムに組み込める。そしてUSB接続時には普通のドックのようにPCとiPodの同期にも利用でき便利だ。
加えて細部の気配りも国内大手ならでは。ドック部分にはシャッターを装備。端子への埃の付着を防げる。収納式なのでふたを紛失する恐れもない。リモコンも(シートキーではなく)押しやすいゴム製ボタンを持つしっかりとしたもので使いやすい。
まずは「ND-S1」と同時発売の同社の小型コンポ「X−S1」(製品データベース)と組み合わせ(外観の整合性も高いセットだ)で、「X−S1」のCDドライブと「ND-S1」の音質を比較してみた。
「ND-S1」での再生は音場全体のコントラストが高まり、声も明るく抜ける。エッジも明瞭度を増し解像感を高めるが、きつさは出さない。手応えは良好だ。
しかし「ND-S1」にはまだ余力を感じる。ハイエンドシステムに接続して音質をさらに確認。アキュフェーズのCDプレーヤー「DP-700」と接続し、DP-700の内蔵DACを利用して視聴してみた。
女性ボーカルは低域からファルセットまで滑らか。コーラスの重なり具合も緻密で美しい。奥に定位したドラムスは、シンバルの音色や配置が明瞭で、立体的だ。バスドラムやタムなどの低域もぶれない。ヘンドリックスやヴァン・ヘイレンのギターの音は、粒の粗さを適度に残すのが好印象。
iPodの価格を含めても3万円程度〜なトランスポートとしては、驚きの音質。価格的に無理のないDACとの組み合わせでも、多くのCDプレーヤーに劣らない音質に達するだろう。
PCと接続しUSBトランスポートとしての音質も確かめてみたが、こちらも同傾向。しかしiPod再生時の方が雑味が少なくクリアと感じる。音質的に上を狙うときはiPodの利用がおすすめだ。
最後にやはり、「iTransport 170」との比較は避けて通れない。全体の感触として、イマドキのピュアオーディオらしいシャープネスと情報量を感じさせるのが「iTransport 170」(iTransport 170の詳しいレビュー)。対して「ND-S1」はやや穏やかで落ち着いた印象を受けた。一般論的により高音質と言えるのは「iTransport 170」だろう。しかしその差は、確かではあるが決定的ではない。
「ND-S1」は、iPod&PCというリスニングスタイルとオーディオの架け橋となる機能を持つキーアイテムだ。音質面もそのポジションを担うにふさわしいレベルに達している。こういうのを待っていたんだ!という方の期待に十分に応えてくれる製品である。
高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。