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公開日 2010/12/08 15:26

稀に見る難関ソフト「エイリアン・アンソロジー」にWoooが挑む

話題のソフトをWoooで見る
大橋伸太郎
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この連載「話題のソフトを“Wooo"で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo"薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。

20世紀フォックス・エンターテインメントから『エイリアン・アンソロジー』(BD6枚組BOXセット)が発売された。今月の「Woooで見る話題のソフト」は、これを日立のプラズマテレビ「P50-XP05」で視聴してみよう。

ブルーレイBOX「エイリアン・アンソロジー」FXXA-50070 ¥15,800(税込)

『エイリアン』第一作が公開されたのは1979年のことだった。大学最終年だった私は都内の単行本出版社で編集助手を続けていたが、会社が夏に倒産状態になった。

大学の就職部に顔を出すと「何で今頃来たの?」と呆れ顔をされる始末。隣のカウンターの学生が職員に「丸紅と日商岩井に内定して今(どっちに行こうか)迷っているところです」と満足げに報告しているのが別世界の出来事に見えた。

秋を過ぎても就職は決まらず、木枯らしが吹くようになった頃、面接の帰りに新宿のガラガラの映画館で『エイリアン』を見た。

冒頭、宇宙貨物船が暗黒の宇宙空間に巨大な姿を現すと、映像の寂寥感が私の冷え切っていた心に沁みた。しかし映画の後半の盛り上がりは凄く、モヤモヤした気持ちをすっかり忘れ、興奮して映画館を出た(外はやっぱり寒かったけど)。傑作としかいいようがなかった。

実は公開当時『エイリアン』第一作の評判は好不評相半ばしていた。不評の筆頭は、SFXのスケールが小さく安っぽいというものだった。

前々年に『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』が公開され大ヒットしたので、それらと比較されてしまったわけである。しかし、映画として見せようとしているものが違う。

■妖しい魅力を放つ「エイリアン」

SFスリラーというジャンルは『エイリアン』が初めてではない。同ジャンルの先行作『禁断の惑星』(1956)『宇宙水爆戦』(1954)は私の好きな映画だ。『エイリアン』第一作はサスペンスにエキセントリックな造形感覚、アクション演出が加わり掛け算になりパワフルな傑作になった。その功績の大半はリドリー・スコットの演出とビジュアルメイクにある。

しかし、本作がSFとして妖しい魅力を放つのはそれ以前のコンセプトと世界観に、ニューロティック(精神分析的)でエロティックな象徴性が息づいているからである。

『禁断の惑星』は、文明の滅亡した惑星クレルで美しい一人娘と暮らす老科学者の潜在意識(嫉妬)が「イドの怪物」に変って宇宙船の男性乗組員を次々に襲う設定だが、優れたモンスター映画はセクシャルな象徴性を必ず隠し持っている。

宇宙を舞台にしたモンスター映画でもある『エイリアン』も例外ではない。宇宙航海士エリー・リプリーの母性と女のセックスがドラマの中核にあり、娘を地球に残し宇宙に飛び立ったシングルマザーが、宇宙のさいはてでもう一つの原始的「母性」と遭遇する幻想的な一種の因果応報物語である。

次ページ歴代「エイリアン」を振り返る

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