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公開日 2011/06/10 10:45

ELAC「50 LINE」の5.1chサウンド試聴 − 山之内正が映画&音楽のBDリファレンスを聴く

コンパクトな形状で設置も自由自在
レビュー/山之内 正
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欧州を代表するスピーカーブランドであるエラックから、最新モデル「50 LINE」が登場した。連続レポート企画の最終回となる今回は、フロアスタンド型の「FS 57.2」、ブックシェルフ型の「BS 53.2」「BS 52.2」に、センタースピーカーの「CC 51.2」とサブウーファー「SUB 50 ESP」を加えた5.1chマルチサラウンド環境をつくり、本機のシアター再生の魅力を評論家の山之内正氏が体験した。

50 LINEのコンパクトな形状はマルチチャンネル設置にもメリットをもたらす

エラックがエントリークラスに導入した「50 LINE」は、ステレオからホームシアターまで幅広い用途を想定しており、フロア型からサブウーファーまですべてのタイプを用意している。採用するユニットの内容は異なるものの、上位シリーズから様々なノウハウを継承することで、エラックならではの質感豊かなサウンドを実現。サイズなど物理的な制約を意識させないクオリティに到達した。その詳細は前回前々回のレポートで紹介した通りで、特にスケール感や空間の伸びやかさなどは上位機種に迫るゆとりを実感することができた。


今回のテーマはELAC「50 LINE」による5.1chサラウンド試聴。テストは音元出版の試聴室で行った
そのパフォーマンスを活かし、5.1chのサラウンドシステムでマルチチャンネル音源を聴くことが今回のテーマだ。試聴したスピーカーは、既に取り上げたフロアスタンド型の「FS 57.2」、ブックシェルフ型の「BS 53.2」、「BS 52.2」に加え、今回新たにセンタースピーカー「CC 51.2」と、サブウーファー「SUB 50 ESP」の2機種を用意し、シリーズ全機種を勢揃いさせた。今回はフロントを「FS 57.2」で固定し、リアのみ「BS 53.2」と「BS 52.2」を入れ替え、5.1chサラウンド環境で試聴しているが、サラウンドバックに「BS 52.2」を活用するなど、7.1chを含めた色々なバリエーションが考えられる。また、密閉型の「BS 52.2」は本体背面に壁掛け設置用のフック孔を設けているので、リアスピーカーの壁掛け設置には本機が最適な選択となるはずだ。

フロント左右には「FS 57.2」を配置。なお、今回紹介するサブウーファー「SUB 50 ESP」と比べたサイズ感はご覧の通りだ

リアスピーカーにはブックシェルフ「BS 53.2」を配置


シリーズのもう一つのブックシェルフ「BS 52.2」と入れ替えて比較試聴も行った

密閉型の「BS 52.2」は背面に壁掛け設置に便利なフック孔を設けている


「CC 51.2」は、140mmウーファー2基とドーム型トゥイーターを組み合わせた使いやすいサイズのセンタースピーカーで、「SUB 50 ESP」は27cmの大口径ウーファーを積む本格派のサブウーファーだ。いずれも「50 LINE」の他の製品とデザインや仕上げが共通し、引き締まったブラックの外見がスリムな印象を与える。

実際にサイズはミニマムなので、リアチャンネルやセンターチャンネルに十分なスペースを確保しにくい環境では、50 LINEのコンパクトな形状が威力を発揮すると思われ、音質に加えてハンドリング面でも期待がふくらむ。

センタースピーカー「CC 51.2」

シリーズ共通のメタルグリルを装着したところ


新開発のシルク・ファブリックドーム・トゥイーターを1基搭載

140mm口径のパルプコーン・ウーファーは2基搭載する


背面にはバスレフポートを設ける

木目の美しさを活かしたキャビネットに、フロントバッフルに別途ラッカー仕上げを施している


アンプ内蔵型サブウーファー「SUB 50 ESP」

本機の背面。メインスピーカーとセンタースピーカーのバス・マネージメントを可能にする3系統のスピーカー・ターミナルを備える


底部には270mm口径のELACオリジナル・パルプユニットを搭載

4つの強靱なスパイクを装備



【映画再生】各チャンネルのつながりが良好。ニュアンス豊かな台詞の再現力

『インセプション』のサウンドはエフェクト音が部屋の空間を高密度に満たしつつ、スクリーンに映し出した映像に負けない広々とした空間を再現した。音圧感の大きさは期待以上で、爆発音や破壊音などにも十分なインパクトがあり、説得力がある。大音量で聴いたときはもちろんだが、家庭で楽しむ現実的な音量でも現実感が後退しないのは、リアやサラウンドを含め、すべてのスピーカーが実体感豊かな芯のある音を出していることに理由がありそうだ。


50 LINEのマルチチャンネル試聴を行う山之内氏
各チャンネルのつながりは良好で、前後方向に音が移動するシーンでも密度感にはまったく違和感がなかった。台詞は中低音にこもりがなく発音が明瞭で、大音量のエフェクトや音楽に重なっても音像がぶれることがない。

リアスピーカーを密閉型の「BS 52.2」に変更しても音調に大きな変化はなく、つながりの良さもキープしている。衝撃音の深みなどは「BS 53.2」の方がゆとりがあるが、空間の広がりや奥行き方向への距離感はほとんど同じ水準をキープしており、小型スピーカーとは思えないほどスケールが大きい。ピンポイントでリアスピーカーが鳴っているようなダイレクト感は気にならず、むしろ間接音がいい具合に拡散してくれる印象があり、場面ごとのエコーの違いも正確に聴き取ることができた。

『月に囚われた男』では、台詞のニュアンスの豊かさに感心した。サム・ロックウェルが2人の男を演じ分ける場面はこの作品の核心なので、声で微妙に表情を変える部分を正確に再現する必要がある。ケヴィン・スペイシーが演じるロボットの声もそうだが、「CC 51.2」は静かな会話の中での表情の変化を忠実に引き出し、緊張した空気を見事にキープしてくれた。


【音楽再生】豊穣な音場再現。力強く安定したサウンドを聴かせる

バイロイト音楽祭をライヴ収録したワーグナーの『ワルキューレ』では、DTS-HD Master Audioならではのダイナミックレンジの大きさをどこまで再現できるかが聴きどころだ。50 LINEのスピーカーは「BS 52.2」を除いていずれもインピーダンスが4Ωなのだが、今回組み合わせたデノンのAVアンプ「AVR-4311」では大編成のオーケストラ、ワルキューレたちの力強い歌唱と、いずれも安定したサウンドを堪能することができた。

また、組み合わせるスピーカーのインピーダンス仕様が6Ωの、パイオニアのAVアンプ「VSA-921」でも試聴してみたが、かなり大きめの音量で鳴らした場合でも、アンプへの負荷を気にする必要はなかった。「240 LINE」などにも当てはまることだが、エラックは各スピーカーのインピーダンス値を実質的な最低値で表記している。そのため、4Ωと表示されていても、実際にその値を大きく下回ることはないという。市販スピーカーの中には表示が6Ωでも、実際には周波数によって2Ω台まで下がる例もあるが、エラックの場合はその心配がないのだ。たとえAVアンプ側が6Ωまでの対応でも、実用上はまず問題ないと考えていいだろう。


BS 53.2の本体背面。4Ωのインピーダンス表記は実質的な最低値での記載となる
50 LINEはコンパクトで設置性が優れているが、今回のマルチチャンネル再生の試聴からも、他のレンジの製品と同様、再生音には妥協がないことがわかった。また、アンプへの負荷の少なさなど、エラックのスピーカーは扱いやすさにも大きなメリットがあるが、それはこの50LINEにもそのまま当てはまる。低価格モデルでも手を抜かないところに、このブランドのこだわりを見出すことができた。


良質なサウンドとの出会いをもたらしてくれるスピーカー

3回の連続試聴により、ネットオーディオのハイレゾ音源やBDサラウンドなど、高品位な音楽ソースを聴きながら、様々な角度からエラック「50 LINE」のパフォーマンスを徹底検証してきた。どのジャンルの音楽を再生してみても、またステレオ再生・サラウンド再生といずれのスタイルで試聴してみても、エラックが一貫して追求するサウンドデザインが本シリーズにも継承されていることがわかる。フロア型の「FS 57.2」、ブックシェルフ型の「BS 53.2」「BS 52.2」はいずれも個性豊かなスピーカーであるが、それぞれに共有する新開発のシルク・ファブリックドーム型トゥイーターとパルプコーン型ウーファーの完成度は非常に高く、これら新規のユニットがクラスを超えた音楽再生をもたらす原動力になっていることは間違いない。

音質だけでなく美観に配慮したデザインも満足度が高い。コンパクトなサイズと、ミニマルなデザインは多くのユーザーのリスニングスタイルに無理なくフィットするはずだ。新たに購入した大画面テレビを軸にサラウンドシステムの導入を検討している方々には、22万円前後で高品位な5.1chスピーカーセットが揃えられることも「50 LINE」の魅力として紹介しておきたい。今夏発売のAVアンプは10万円以下のエントリークラスの新製品が充実している。これらのAVアンプの中にはiPodのデジタル再生に対応するものや、手軽にネットワークオーディオ再生が楽しめる製品もあり、エラック「50 LINE」と組み合わせることで、従来の音楽再生のクオリティを高め、楽しみ方をさらに広げてくれるはずだ。多くの人々に良質なサウンドとの出会いをもたらす、画期的なスピーカーがエラックから誕生した。

【CC 51.2 スペック】●価格:26,250円(1本・税込) ●型式:2ウェイ・バスレフ型 ●ウーファー:140mm ELACオリジナル・パルプコーン×1 ●トゥイーター:25mm ELACオリジナル・シルクドーム×1 ●クロスオーバー周波数:2,200Hz ●能率:89dB(2.83 V/1m) ●インピーダンス:4Ω ●周波数特性:44〜25,000Hz ●定格入力:70W ●最大入力:110W ●外形寸法:445W×160H×280Dmm ●質量:7kg

【SUB 50 ESP スペック】●価格:57,750円(1本・税込) ●型式:アンプ内蔵型サブウーファー ●ウーファー:270mm ELACオリジナル・ユニット×1 ●クロスオーバー周波数:40〜180Hz調整可能 ●周波数特性:28〜240Hz ●外形寸法:325W×450H×370Dmm ●質量:18kg


■Part.1:フロアスタンド「FS 57.2」で聴くハイレゾ音源 登場モデル「FS 57.2」

【FS 57.2 スペック】●価格:84,000円(ペア・税込) ●型式:2.5ウェイ・バスレフ型 ●ウーファー:145mm ELACオリジナル・パルプコーン×2 ●トゥイーター:25mm ELACオリジナル・シルクドーム×1 ●クロスオーバー周波数:700/2,000Hz ●能率:89dB(2.83 V/1m) ●インピーダンス:4Ω ●周波数特性:38〜25,000Hz ●定格入力:80W ●最大入力:120W ●外形寸法:200W×940H×300Dmm ●質量:14kg


■Part.2:充実のサウンドパフォーマンス − ブックシェルフの2モデルを聴く 登場モデル「BS 53.2」「BS 52.2」

【BS 53.2 スペック】●価格:52,500円(ペア・税込) ●型式:2ウェイ・バスレフ型 ●ウーファー:145mm ELACオリジナル・パルプコーン×1 ●トゥイーター:25mm ELACオリジナル・シルクドーム×1 ●クロスオーバー周波数:2,200Hz ●能率:87dB(2.83 V/1m) ●インピーダンス:4Ω ●周波数特性:46〜25,000Hz ●定格入力:50W ●最大入力:70W ●外形寸法:170W×285H×235Dmm ●質量:5.5kg

【BS 52.2 スペック】●価格:42,000円(ペア・税込) ●型式:2ウェイ・密閉型 ●ウーファー:110mm ELACオリジナル・パルプコーン×1 ●トゥイーター:25mm ELACオリジナル・シルクドーム×1 ●クロスオーバー周波数:2,500Hz ●能率:84dB(2.83 V/1m) ●インピーダンス:6Ω ●周波数特性:65〜25,000Hz ●定格入力:40W ●最大入力:60W ●外形寸法:136W×210H×165Dmm ●質量:2.3kg

【問い合わせ先】(株)ユキム Mail/support@yukimu.com TEL/03-5743-6202


山之内正 プロフィール
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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