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公開日 2012/06/13 14:03

【速攻レビュー】画音質の向上を図ったAVアンプ新中位機「SC-LX56」を山之内正がレビュー

取材・執筆/山之内 正
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本日発表されたパイオニアの新AVアンプ「SC-LX56」(ニュースはこちら)。効率が良く高い全ch同時駆動能力を持つ、パイオニア独自の「ダイレクトエナジーHDアンプ」が、ついに中級モデルにも搭載された。上位機から引き継いだ部品と豊富な機能を搭載した本機を山之内氏が視聴した。

中級機にも「ダイレクトエナジーHDアンプ」を搭載

AVアンプの分野でパイオニアが積極的に攻勢をかけている。5月に導入したエントリー機種2モデルに続き、この夏には上位モデルを複数投入してラインナップの大半を一新。しかも、後半に登場する上位LXシリーズはいずれもパイオニアの「ダイレクトエナジーHDアンプ」を積んでおり、クラスDアンプならではの強力なパワーを発揮する。ここでは、前作SC-LX55に比べて大幅なグレードアップを果たした話題作、SC-LX56に焦点を合わせて紹介しよう。

SC-LX56

SC-LX56の背面部


フロントパネルを開けたところ。右端にMHL対応HDMI端子を備えている
パイオニアは新世代のクラスDアンプ技術「ダイレクトエナジーHDアンプ」の搭載をハイクラスの製品から順次進めてきたが、今年は初めて10万円台半ばの中級機にまで採用を踏み切る。それと同時にパワーアンプを7チャンネルから9チャンネルに拡大して、まるで1クラス上の製品にアップグレードするような思い切りの良いモデルチェンジを実現したのだ。

ダイレクトエナジーHDアンプ技術はパワーアンプの効率の良さが際立ち、小型のヒートシンクで十分な放熱効果を発揮するため、同じスペースに出力の大きなアンプ回路を効率よく並べることができる。しかも、最新世代のダイレクトパワーFETは、素子を基板に直付けすることによって信号経路の短縮とインダクタンス成分の低減を図っており、スペース効率の高さが際立っているのだ。同時多チャンネル駆動時の出力をはじめとするアンプの基本性能は確実に向上しており、本機は今回THXの認証を得ることに成功している。

ネットワークオーディオ関連の機能はほぼ前作と同様で、WAV及びFLACで最大192kHz/24bitまでのデコードをサポートするほか、AirPlayにも対応。インターネットラジオやUSBメモリーなど、ネットワーク入力の多様性とファイル再生機能の充実ぶりではいまも他社のAVアンプをリードする存在だ。

今回のモデルチェンジに伴ってスマートフォン/タブレットによるコントロール機能を最新世代に更新したことも大きなニュースである。5月に発売されたVSA-922が先行してサポートした「iControlAV2012」に対応し、グラフィカルな「サウンドエクスプローラー」などの新機能が本機でも利用できるようになっている。直感的に楽しく操作できるように工夫された画面を見ていると、AVアンプの敷居を少しでも低くし、豊富な機能を十分に使いこなして欲しいという設計陣の願いが伝わってくるようだ。

「サウンドエクスプローラー」からも簡単にアクセスできる新機能の一つに「オートフェーズコントロールプラス」がある。オーディオ信号をリアルタイムで連続的に解析してコンテンツの種類を判別し、リズムと相関のある低音成分を検出した場合に位相補正を適用するというのが動作の基本で、フェーズコントロール機能のインテリジェント版という位置付けだ。これまでなんとなくぼやけていた低音の輪郭がクリアになり、リズムの切れが改善するなど、特に音楽プログラムで絶大な効果を発揮する。従来はソフトごとに適切と思われる設定をユーザーが手動で設定する必要があったが、自動化することによってその手間が不要になり、使い勝手は飛躍的に向上している。ちなみに音楽とは関連のないサウンドにはフェイズコントロールを適用しないので、映画で頻繁に使われる低音域のエフェクト音の量感や質感が変化する心配はない。そのほか、バーチャルスピーカーモードにバーチャルワイドを追加したり、4K信号のパススルーに対応するなど、確実な進化を積み重ねていることも付け加えておこう。

明らかなアドバンテージが感じられる、予想以上の高再生力

新世代のダイレクトエナジーHDアンプのサウンドは、従来機との違いが最初の一音からすぐにわかるほど、はっきりとした特徴を聴き取ることができる。音の立ち上がりがなめらかさと力強さを兼ね備え、浸透力と到達力が高いサウンドを再現するのだ。私が試聴したのは量産前の試作機だが、その段階ですでに明らかなアドバンテージが感じられ、確固とした説得力を持って迫ってくる。

イタリアのベースとボーカルのデュオ「ムジカ・ヌーダ」のCDを聴くと、ベースのピチカートに勢いがあり、音が飛んでくると形容したくなるスピードを実感。声は硬さのない澄んだ質感をたたえ、ベースのハーモニクスときれいに溶け合う。

サラウンド再生は、『ハンナ』の脱出シーンを通常よりも大きめの音量で聴いてみることにした。ダイレクトエナジーHDアンプの威力を同時多チャンネル出力で確認しようという、少し意地の悪い実験である。そんな私の意図とは裏腹にSC?LX56は余裕を持って7本のスピーカーをドライブし、期待以上のパワー感を引き出してきた。ビートの利いた低音を芯のある音色で鳴らしつつ、衝撃音や銃弾の鋭い音を正確に再現。台詞も輪郭がぼやけず、明瞭な発音を終始キープしている。『ラスト・ターゲット』では意識を集中しないと聴き取りにくいような小さな音まで鮮明に描写し、S/Nの良さを強く印象付ける。ライフルの試射音は鋭く乾いた音色で空気を切り裂き、アタックの鋭さを実証して見せた。

発売までにさらに練り込めば、再生音にはさらなる向上が期待できるだろう。本機の登場によってパイオニアのAVアンプはその存在感を一気に強めることになりそうだ。


(レビュー:山之内 正)

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