公開日 2012/11/14 10:34
ヤマハのネットワークCDプレーヤー「CD-N500」を岩井喬が徹底レビュー
192/24ネットワーク再生に対応する高C/Pモデル
■ネットワーク再生機能とCD再生機能をバランス良く両立する高C/Pモデル登場
ネットオーディオの世界が徐々に浸透し、ファイル再生派のユーザーも多くなる一方で、「これまで集めてきたCDを大事に聴いていきたい」「パッケージメディアの単純な操作性の良さは譲れない」という、既存のプレーヤーを求めるユーザーの声も根強いという。それではネットワークプレーヤーとCDプレーヤーが一体化した製品がこれまであったかというと、あまりに相反するスタイルのはざまでユーザー層も解離的と思われていたせいなのか、手頃な価格帯の実力機はほぼ皆無と言っていい状況であった。
そこへ彗星のごとく登場したヤマハ「CD-N500」は、CD再生機能とネットワーク環境からのファイル再生機能をリーズナブルな価格の中でバランス良く両立させており、驚くほど機能性が充実したハイコストパフォーマンス機となっている。
■単体ネットワークプレーヤーとしても使える高スペック
CD-N500は、外見上はヤマハのエントリークラスCDプレーヤーとあまり変わらないが、実際に本体を持ちあげてみると見かけ以上に重く、しっかりした作りであることが分かる。CDメカの振動抑制のため天板に0.6mm厚、底板には1mm厚の鉄製制振材をパネルやシャーシ材とは別に取り付けている。個性は違えど、ハイレゾ音源のデータをストレートに再生するネットワークプレーヤー機能とそこまでクオリティの差が出ないよう細部まで配慮された作りであるといえよう。
CDドライブには剛性を高めるとともに振動の抑制を図るオリジナルサポートローダーを採用。再生するディスクによってコンディションが違うため、その都度サーボコントロールを最適化させるインテリジェントデジタルサーボも搭載している。また独自のバッファリングアルゴリズムによってバッファリング量と読み込み時のデータ転送レートを最適化させ、1倍速でデータを読み込むことでディスク回転数を一定に保ちメカノイズを低減させているという。
ネットワーク環境からのファイル再生では、最高192kHz/24bitまでのWAV/FLACやApple Lossless(48kHzまで)にも対応する。ギャップレス再生も可能としており、機能性としては上位モデル「NP-S2000」と同等といえるだろう。DACチップには192kHz/32bit処理対応のバーブラウン製PCM5101を採用。同軸・光デジタル出力端子からは192kHz信号も取り出せるため、単体のネットワークプレーヤーとしても十分活用できるスペックを持つといえる。
なお、CD部とネットワーク&USB部の電源は各々独立した電源が用意され、基板もブロック化し、音声信号の相互干渉も最小限に抑え込んだ。加えて音声信号経路は最短で結べるよう設計され、DACを電源部から遠ざけるなど、ピュアオーディオとしての基礎構造を踏襲したつくりとしている。さらにFLディスプレイを消灯しデジタル出力も停止させるピュアダイレクトモードも用意されているので、一層音の純度感や鮮度を向上させて楽しむことができるだろう。
■iPhoneデジタル接続対応やインターネットラジオ、スマホ/タブレット用アプリなど機能性も魅力的
iPod/iPhone/iPadをデジタル接続できるフロントのUSB入力端子では、MP3やWMAファイルを収録したUSBメモリーの直接再生も可能だ。インターネットラジオを手軽に楽しめるvTuner機能も内蔵したほかRadiko.jpにも対応予定であり、様々なメディアを一台で楽しめる点も本機の魅力となっている。
さらにWi-Fi環境で利用できる利便性の高いiOS/Android用アプリケーション「NETWORK PLAYER CONTROLLER」も用意されており、ネットワーク環境からのファイル操作だけでなくCDプレーヤーの操作も可能というユニークなものだ。基本的な操作感として、CDのTOC読み込みやサーチアクセスも昨今のモデルとしては素早く、ネットワークプレーヤーとしてのファイル認識や操作の俊敏性は同価格帯の製品の中では随一のレスポンス感といえよう。特に電源投入からNASを認識し動作するまでの待機時間も、競合機と比べて圧倒的に早い。
■試聴レビュー − CD再生とネットワーク再生で異なるサウンドチューニング
基本的にCD再生とネットワーク環境からのファイル再生では意図的にサウンドの質を変えており、どちらが優位という設計思想ではない。CDでは艶っぽい生々しさが加わる高域での倍音の豊かさに加え、音像の厚みを感じさせながらキレ良くタイトに引き締める中低域に特徴がある。対してファイル再生ではハイレゾ音源の良さを活かしたストレートかつナチュラルで高解像度なサウンドだ。
CDのクラシックではオーケストラの旋律を華やかに描き、ローエンドもふくよかで押し出し良く表現。ジャズにおいてもクリアでキレ良いピアノのタッチと弦のたわみをハリ良く響かせるウッドベースが弾力良く耳元に届く。女性ボーカルは口元をハリ艶良くソリッドに際立たせる。リズム隊は密度を持たせつつアタックは腰高に見せる。ロックギターはキレ良いピッキングでボーカルは伸び良く自然な輪郭感を結ぶ。
ネットワークからのファイル再生では解像感高く鮮やかに音像を描き出す。クラシックでは管弦楽器の旋律がしなやかに表現し、ホールトーンも爽やかに響いてくる。打楽器の弾力はウォームで耳当たり良く、音場は広く奥行き深い。ジャズも素直に楽器を描写し、質感は一層滑らかになる。音像の分離も高く立体的に浮かぶ。ロックでも個々の楽器の密度が増し音像も太く安定してくる。
192kHzのハイレゾ音源となると音場表現が緻密となり、S/Nも格段に向上。音像の存在感がリアルで、弦楽器の艶やボーカルの口元のウェットで色っぽい表現も実在感に溢れる。音像定位も自然であり、有機的な質感描写が誇張感のない鮮やかさに繋がっているようだ。
<試聴ソース>
○クラシック
・『ホルスト:惑星・木星/レヴァイン指揮・シカゴ交響楽団』
→44.1kHz/16bit・WAV:CDリッピング
○ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー
→44.1kHz/16bit・WAV:CDリッピング
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』〜届かない恋、夢であるように
→192kHz/24bit・WAV:マスターファイル
○ポップス
・『音展』ライブレコーディングイベントにおける長谷川友二氏のギター弾き語り(ウッドベース:土井孝幸氏、筆者によるDSD録音)
→192kHz/24bit・WAVへコンバートしたファイル再生
○ロック
・デイブ・メニケッティ『MENIKETTI』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ
→44.1kHz/16bit・WAV:CDリッピング
< 岩井 喬 プロフィール >
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。
ネットオーディオの世界が徐々に浸透し、ファイル再生派のユーザーも多くなる一方で、「これまで集めてきたCDを大事に聴いていきたい」「パッケージメディアの単純な操作性の良さは譲れない」という、既存のプレーヤーを求めるユーザーの声も根強いという。それではネットワークプレーヤーとCDプレーヤーが一体化した製品がこれまであったかというと、あまりに相反するスタイルのはざまでユーザー層も解離的と思われていたせいなのか、手頃な価格帯の実力機はほぼ皆無と言っていい状況であった。
そこへ彗星のごとく登場したヤマハ「CD-N500」は、CD再生機能とネットワーク環境からのファイル再生機能をリーズナブルな価格の中でバランス良く両立させており、驚くほど機能性が充実したハイコストパフォーマンス機となっている。
■単体ネットワークプレーヤーとしても使える高スペック
CD-N500は、外見上はヤマハのエントリークラスCDプレーヤーとあまり変わらないが、実際に本体を持ちあげてみると見かけ以上に重く、しっかりした作りであることが分かる。CDメカの振動抑制のため天板に0.6mm厚、底板には1mm厚の鉄製制振材をパネルやシャーシ材とは別に取り付けている。個性は違えど、ハイレゾ音源のデータをストレートに再生するネットワークプレーヤー機能とそこまでクオリティの差が出ないよう細部まで配慮された作りであるといえよう。
CDドライブには剛性を高めるとともに振動の抑制を図るオリジナルサポートローダーを採用。再生するディスクによってコンディションが違うため、その都度サーボコントロールを最適化させるインテリジェントデジタルサーボも搭載している。また独自のバッファリングアルゴリズムによってバッファリング量と読み込み時のデータ転送レートを最適化させ、1倍速でデータを読み込むことでディスク回転数を一定に保ちメカノイズを低減させているという。
ネットワーク環境からのファイル再生では、最高192kHz/24bitまでのWAV/FLACやApple Lossless(48kHzまで)にも対応する。ギャップレス再生も可能としており、機能性としては上位モデル「NP-S2000」と同等といえるだろう。DACチップには192kHz/32bit処理対応のバーブラウン製PCM5101を採用。同軸・光デジタル出力端子からは192kHz信号も取り出せるため、単体のネットワークプレーヤーとしても十分活用できるスペックを持つといえる。
なお、CD部とネットワーク&USB部の電源は各々独立した電源が用意され、基板もブロック化し、音声信号の相互干渉も最小限に抑え込んだ。加えて音声信号経路は最短で結べるよう設計され、DACを電源部から遠ざけるなど、ピュアオーディオとしての基礎構造を踏襲したつくりとしている。さらにFLディスプレイを消灯しデジタル出力も停止させるピュアダイレクトモードも用意されているので、一層音の純度感や鮮度を向上させて楽しむことができるだろう。
■iPhoneデジタル接続対応やインターネットラジオ、スマホ/タブレット用アプリなど機能性も魅力的
iPod/iPhone/iPadをデジタル接続できるフロントのUSB入力端子では、MP3やWMAファイルを収録したUSBメモリーの直接再生も可能だ。インターネットラジオを手軽に楽しめるvTuner機能も内蔵したほかRadiko.jpにも対応予定であり、様々なメディアを一台で楽しめる点も本機の魅力となっている。
さらにWi-Fi環境で利用できる利便性の高いiOS/Android用アプリケーション「NETWORK PLAYER CONTROLLER」も用意されており、ネットワーク環境からのファイル操作だけでなくCDプレーヤーの操作も可能というユニークなものだ。基本的な操作感として、CDのTOC読み込みやサーチアクセスも昨今のモデルとしては素早く、ネットワークプレーヤーとしてのファイル認識や操作の俊敏性は同価格帯の製品の中では随一のレスポンス感といえよう。特に電源投入からNASを認識し動作するまでの待機時間も、競合機と比べて圧倒的に早い。
■試聴レビュー − CD再生とネットワーク再生で異なるサウンドチューニング
基本的にCD再生とネットワーク環境からのファイル再生では意図的にサウンドの質を変えており、どちらが優位という設計思想ではない。CDでは艶っぽい生々しさが加わる高域での倍音の豊かさに加え、音像の厚みを感じさせながらキレ良くタイトに引き締める中低域に特徴がある。対してファイル再生ではハイレゾ音源の良さを活かしたストレートかつナチュラルで高解像度なサウンドだ。
CDのクラシックではオーケストラの旋律を華やかに描き、ローエンドもふくよかで押し出し良く表現。ジャズにおいてもクリアでキレ良いピアノのタッチと弦のたわみをハリ良く響かせるウッドベースが弾力良く耳元に届く。女性ボーカルは口元をハリ艶良くソリッドに際立たせる。リズム隊は密度を持たせつつアタックは腰高に見せる。ロックギターはキレ良いピッキングでボーカルは伸び良く自然な輪郭感を結ぶ。
ネットワークからのファイル再生では解像感高く鮮やかに音像を描き出す。クラシックでは管弦楽器の旋律がしなやかに表現し、ホールトーンも爽やかに響いてくる。打楽器の弾力はウォームで耳当たり良く、音場は広く奥行き深い。ジャズも素直に楽器を描写し、質感は一層滑らかになる。音像の分離も高く立体的に浮かぶ。ロックでも個々の楽器の密度が増し音像も太く安定してくる。
192kHzのハイレゾ音源となると音場表現が緻密となり、S/Nも格段に向上。音像の存在感がリアルで、弦楽器の艶やボーカルの口元のウェットで色っぽい表現も実在感に溢れる。音像定位も自然であり、有機的な質感描写が誇張感のない鮮やかさに繋がっているようだ。
<試聴ソース>
○クラシック
・『ホルスト:惑星・木星/レヴァイン指揮・シカゴ交響楽団』
→44.1kHz/16bit・WAV:CDリッピング
○ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー
→44.1kHz/16bit・WAV:CDリッピング
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』〜届かない恋、夢であるように
→192kHz/24bit・WAV:マスターファイル
○ポップス
・『音展』ライブレコーディングイベントにおける長谷川友二氏のギター弾き語り(ウッドベース:土井孝幸氏、筆者によるDSD録音)
→192kHz/24bit・WAVへコンバートしたファイル再生
○ロック
・デイブ・メニケッティ『MENIKETTI』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ
→44.1kHz/16bit・WAV:CDリッピング
< 岩井 喬 プロフィール >
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。