公開日 2012/12/26 17:28
DSD対応USB-DAC一斉レビュー<第3回>フォステクス「HP-A8」
大本命7モデルを野村ケンジが一斉テスト
DSD対応USB-DACを7モデルにわたって一斉試聴する今回の企画。第3回目は、SDカードに保存したDSD音源を再生でき、かつアップデートでDoP再生にも対応したUSB-DAC搭載ヘッドホンアンプ「HP-A8」(関連ニュース)を紹介する。
※第1回 ラトック「RAL-DSDHA1」「RAL-DSDHA2」のレビューは(こちら)
※第2回 コルグ「DS-DAC-10」のレビューは(こちら)
■SDカードとDoPでDSD再生が可能なヘッドホンアンプ「HP-A8」
そもそもSDカードスロットからのみDSDファイル再生が可能となっていたフォステクスの最上級DAC/ヘッドホンアンプ「HP-A8」は、2012年11月のアップデートにより、DoPによるDSDネイティブ再生に対応した(同社はβ版としての先行公開としている)。
「HP-A8」がフォステクス製品のラインナップのなかで特別な存在に位置づけされているのは、単に“DSD対応”だからではない。そのサウンドクォリティはもとより、ブラックを基調としたシックなデザインから伺えるとおり、業務用モデルでも定評のあった同社がコンシューマー向けを強く意識し、USBオーディオからヘッドホン再生まで網羅する多機能モデルに仕上げたからだ。
さて、まずはそのスペックを見ていこう。搭載されているDACは、最高192kHz/24bitに対応した旭化成エレクトロニクス製の32bitDAC「AK4399」。これにオールディスクリートのヘッドホン回路を組み合わせることで、ハイクオリティなサウンドを実現しているという。一方で、入力はUSBのほか、光デジタル2系統、同軸デジタル2系統、AES/EBUを1系統に加えて、SD(SDHC)カードスロットや、アナログ入力も用意されている。デジタル入力の対応は、USB、光/同軸デジタル共に最高192kHz/24bitまでと十分以上のレベルだ。対して出力は、ヘッドホン2系統に加えて、アナログRCA、光/同軸デジタルを1系統ずつ用意。そのなかでもアナログRCA出力は、電子ボリューム「MUSES 72320」をチョイスすることで音質劣化を最低限に抑えている他、ボリュームのオン/オフが設定可能となっている。多機能DACとしてだけでなく、デジタルプリアンプとしても活用できるようになっているのはありがたい限りだ。これらに加えて、2倍/4倍のアップサンプリング機能やデジタルフィルター切換え、24段階のヘッドホン出力ゲイン切換え、リモートコントローラー標準装備など、多くの機能性を持ち合わせており、多機能かつ便利に使えることが「HP-A8」のメリットといえる。
そのサウンドクオリティを確認すべく、今回はアナログRCA出力を使って試聴を行った。CDからのリッピング、ハイレゾ音源と、いくつかの曲を聴いて感じたのは、再生音のストレートさ、素直さだ。ちょっと硬質なイメージのあるフォーカス感の高いサウンドで、各楽器を見事にセパレートしつつ、詳細まで漏らさず再生してくれる。そんなイメージのサウンドテイストだ。こういう表現をすると、とてつもなく分析的な音と誤解されてしまうかもしれないが、実はそうでもない。確かに、きっちりしっかり音を出すタイプだが、かといって真面目すぎて面白みがない、というわけでもない。細やかな表現が得意な分、抑揚のニュアンス再現も達者で、ボーカルやメイン楽器などは表情豊かに再生してくれる。その上、フォーカス感の高さのおかげもあってか、音がフレッシュに感じられるのもいい。本来の味わいを損なわない程度の良質なリマスターを施したかのように、聴き慣れたはずの楽曲が生き生きした演奏に感じられるのだ。このダイレクト感の演出は、フォステクスならでは、いや「HP-A8」ならではの魅力といえるだろう。
さて、最後にDoP再生でDSD音源を聴いてみた。こちらもなかなかのもの。抑揚表現がとてつもなく丁寧になり、音色傾向もやや自然な印象にシフトしたおかげか、演奏が一段とリアルに感じられる。特にギターやチェロなどのアコースティック系の楽器では、胴鳴りが間近で演奏しているかのような錯覚をおぼえるくらい、自然な音色と響きを聴かせてくれる。これはいい。DSD音源との相性はかなりよさそうだ。
【執筆者プロフィール】
野村ケンジ
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。
※第1回 ラトック「RAL-DSDHA1」「RAL-DSDHA2」のレビューは(こちら)
※第2回 コルグ「DS-DAC-10」のレビューは(こちら)
■SDカードとDoPでDSD再生が可能なヘッドホンアンプ「HP-A8」
そもそもSDカードスロットからのみDSDファイル再生が可能となっていたフォステクスの最上級DAC/ヘッドホンアンプ「HP-A8」は、2012年11月のアップデートにより、DoPによるDSDネイティブ再生に対応した(同社はβ版としての先行公開としている)。
「HP-A8」がフォステクス製品のラインナップのなかで特別な存在に位置づけされているのは、単に“DSD対応”だからではない。そのサウンドクォリティはもとより、ブラックを基調としたシックなデザインから伺えるとおり、業務用モデルでも定評のあった同社がコンシューマー向けを強く意識し、USBオーディオからヘッドホン再生まで網羅する多機能モデルに仕上げたからだ。
さて、まずはそのスペックを見ていこう。搭載されているDACは、最高192kHz/24bitに対応した旭化成エレクトロニクス製の32bitDAC「AK4399」。これにオールディスクリートのヘッドホン回路を組み合わせることで、ハイクオリティなサウンドを実現しているという。一方で、入力はUSBのほか、光デジタル2系統、同軸デジタル2系統、AES/EBUを1系統に加えて、SD(SDHC)カードスロットや、アナログ入力も用意されている。デジタル入力の対応は、USB、光/同軸デジタル共に最高192kHz/24bitまでと十分以上のレベルだ。対して出力は、ヘッドホン2系統に加えて、アナログRCA、光/同軸デジタルを1系統ずつ用意。そのなかでもアナログRCA出力は、電子ボリューム「MUSES 72320」をチョイスすることで音質劣化を最低限に抑えている他、ボリュームのオン/オフが設定可能となっている。多機能DACとしてだけでなく、デジタルプリアンプとしても活用できるようになっているのはありがたい限りだ。これらに加えて、2倍/4倍のアップサンプリング機能やデジタルフィルター切換え、24段階のヘッドホン出力ゲイン切換え、リモートコントローラー標準装備など、多くの機能性を持ち合わせており、多機能かつ便利に使えることが「HP-A8」のメリットといえる。
そのサウンドクオリティを確認すべく、今回はアナログRCA出力を使って試聴を行った。CDからのリッピング、ハイレゾ音源と、いくつかの曲を聴いて感じたのは、再生音のストレートさ、素直さだ。ちょっと硬質なイメージのあるフォーカス感の高いサウンドで、各楽器を見事にセパレートしつつ、詳細まで漏らさず再生してくれる。そんなイメージのサウンドテイストだ。こういう表現をすると、とてつもなく分析的な音と誤解されてしまうかもしれないが、実はそうでもない。確かに、きっちりしっかり音を出すタイプだが、かといって真面目すぎて面白みがない、というわけでもない。細やかな表現が得意な分、抑揚のニュアンス再現も達者で、ボーカルやメイン楽器などは表情豊かに再生してくれる。その上、フォーカス感の高さのおかげもあってか、音がフレッシュに感じられるのもいい。本来の味わいを損なわない程度の良質なリマスターを施したかのように、聴き慣れたはずの楽曲が生き生きした演奏に感じられるのだ。このダイレクト感の演出は、フォステクスならでは、いや「HP-A8」ならではの魅力といえるだろう。
さて、最後にDoP再生でDSD音源を聴いてみた。こちらもなかなかのもの。抑揚表現がとてつもなく丁寧になり、音色傾向もやや自然な印象にシフトしたおかげか、演奏が一段とリアルに感じられる。特にギターやチェロなどのアコースティック系の楽器では、胴鳴りが間近で演奏しているかのような錯覚をおぼえるくらい、自然な音色と響きを聴かせてくれる。これはいい。DSD音源との相性はかなりよさそうだ。
【執筆者プロフィール】
野村ケンジ
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。