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公開日 2014/08/29 14:18

ZOOMのThunderboltオーディオインターフェース「TAC-2」を鈴木裕がレポート

ハイレゾ再生に最適なハイC/Pモデル
鈴木 裕
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大きな盛り上がりを見せるハイレゾオーディオ。数多くのハイレゾ再生対応機が登場する中で、有力な選択肢となるのがオーディオインタフェースだ。再生機器よりも一足先にハイレゾへの対応が進んでいたこの分野の製品には、価格帯を超える仕様や音質を備えるモデルが多く存在する。中でも注目したいのがZOOM「TAC-2」だ。国内ブランドとして初となるThunderbolt伝送の採用をはじめ、随所にTAC-2ならではの魅力が満載されている。その実力をレポートしたい。

ZOOM「TAC-2」¥38,000(税抜)

■優れた電源供給を可能とするThunderbolt接続を採用

ズームは日本のメーカーで、ギター用のエフェクターやハンディレコーダー等で定評あるブランドだ。ほかのメーカーにはない、一味違うポジショニングの製品を高いコストパフォーマンスでリリースしてくれる印象がある。そして、先日発売された同社初となるオーディオインターフェース「TAC-2」もユニークな製品だ。

TAC-2は伝送方式にThunderbolt接続を採用。このThunderboltに対応した製品は、日本ブランドとして初となる。そのデザインや実際に触れてみての作りの良さ、そして後述するような音質や使い勝手など、4万円を切る価格を考えると非常に満足度の高い製品だ。まず試聴に入る前に、このThunderbolt伝送を採用したことによるメリットを解説したい。

Mac Book Proに搭載されたThunderbolt端子。端子はDisplayPortだが、古いタイプのMacBook ProではThunderboltをサポートしていないモデルもある。Thunderbolt対応機には稲妻のロゴが印字されている

Thunderboltは、インテル社とアップル社が共同開発したデータ伝送技術である。その優位性は、現在主流であるUSB2.0と比較してみると分かりやすいだろう。まず、データ伝送速度は、USB2.0が480Mbpsなのに対してThunderboltは10Gbpsと、およそ20倍もの伝送速度となる。このことは音楽制作では必須となる、さらなる低レイテンシー化を可能としている。

また、給電能力ではUSB2.0の2.5W(5V/500mA)に対して、Thunderboltでは10W(18V)という対比になる。特にこの潤沢な電源供給能力の実現こそがTAC-2のような機器に効くポイントで、DACデバイスにAKM社のAK4396を採用したり、録音用に使うADコンバーターのチップにバーブラウンのPCM4022、マイクプリアンプに同じくバーブラウンのPGA2505といった、通常バスパワー機では採用することが難しいパーツを搭載することが可能となったのである。

TAC-2の前面には、ヘッドフォン出力を搭載。もうひとつの入力端子は、楽器の入力に使用するINSTRUMENT入力となっている

TAC-2の背面パネル。デジタル入力はMacと接続するThunderboltの1系統に特化。出力端子はTRSフォーンを採用するので、接続の際は変換アダプターやTRSフォーン-RCAなどのケーブルが必要となる。XLR/TRSフォーンのコンボジャックはアナログ入力となる

さらによりオーディオ的な目線で言うと、Thunderboltの端子は精度が高いようで、USB端子のようにグラグラすることもない、カッチリとハマる端子なのだ。これも実際に使用してみると気持ち良い部分でもあるし、音にも効いてくる。

■ハイレゾならではの高い情報量。タフネスさを感じさせる音

本誌試聴室で、MacBook Pro(Late 2011)と組み合わせて聴いた。 フォーン端子によるバランス出力も持っているが、今回は片側がフォーン端子、反対側がRCA端子のケーブルを用意。アンバランス出力でテストした音質評価だ。TAC‐2のボリューム機能を使ってアキュフェーズのパワーアンプ「P-4200」にダイレクトに入力。エラックのスピーカー「FS249BE」を鳴らしている。ちなみにボリュームとして使った大型のツマミはTAC-2のさまざまな操作に使えるもので、操作する感触の適度なトルクも心地よいものだ。なお、TAC-2が対応しているフォーマットはPCM系で、最大192k㎐/24bit。Macと接続する際には、事前に専用ドライバーをインストールしておく必要がある。

TAC-2をMacと接続する際には、事前にMacに専用ドライバーをインストールしておく必要がある

まず、CDからリッピングした山下達郎『ソノリテ』から「マイダス・タッチ」を聴くと音の安定度は申し分なく、S/Nもきちんとしたレベルを達成。音の色彩感は端正で、色ムラみたいなものを感じない。2Lの音源からモーツァルトのヴァイオリン協奏曲を聴くと、ハイレゾならではの高い情報量が伝わってくる。小編成のオーケストラだが、手前側のソロ・ヴァイオリンと背後の弦楽合奏、木管という並び方がきれいに定位。音に何かをつけ加えない方向で、例えば低弦は若干量感成分を感じるものの曖昧にならず、ソロ・ヴァイオリンの高域にも元にないツヤの成分を無用に増やしたりしない。特色としては音にたくましさというか、タフネスさを感じた。

エリック・クラプトンの『アンプラグド』でも、音の粒子のきめ細かさよりも、音自体に力を感じる音。音場自体は比較的手前に展開されるのだが、奥行きもきちんと表現される。

なおTAC-2では、A/D変換、D/A変換共に4倍までのアップサンプリング機能を内蔵。また、音楽製作はもちろん、レコードのデータ化などの際に活躍するであろう専用コントロールアプリケーションTAC-2 MixEfxの使い勝手が高かったことも報告しておこう。

TAC-2は専用のコントロールアプリケーション「TAC-2 MixEfx」を用意。TAC-2の全ての機能を直感的に操作することが可能なデザインとなっている。再生時はもちろんのこと、アナログ音源のデータ化などでも活躍するだろう

▶▶高い電源供給能力によって高品位なパーツの採用が可能に
TAC-2は世界的に見てもまだまだ採用例が少ない、Thunderbolt伝送を採用したオーディオインターフェースだ。Thunderboltはオーディオ信号のストリーム速度が極めて早く、音楽制作環境では必須となる優れたレイテンシー性能を実現できるなどのメリットがあるが、音楽再生としてみた場合は、TAC-2のようなバスパワー機でこそ生きてくるメリットがある。

その代表的なものが電源供給能力。一般的に採用されるUSB 2.0が最大2.5Wであるのに対し、Thunderboltでは最大10Wで供給が可能。これにより安定した電源供給を可能としていることはもちろん、USB伝送採用のバスパワー機では使用できなかった高品位パーツを採用することが可能となったのである。バスパワーというとこれまでは「手軽な機器」というイメージが強かったかもしれないが、TAC-2は本格オーディオ用途にも相応しい仕様を実現しているといっていいだろう。(編集部)

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