公開日 2015/09/07 08:00
<IFA>テクニクスヘッドホンやリッピングサーバーなどを山之内正が速攻レビュー
オールインワン型「SC-C500」も試聴
■テクニクス新モデルのサウンドをさっそく確認
昨年ブランドを復活させたテクニクスが第二弾の製品群を発表した。R1シリーズとC700シリーズの日本市場導入から、まだ半年しか経っていない。かなり速いペースでの展開からは、同ブランドの「本気度」を読み取ることができる。
今秋以降に導入されるGrandシリーズの「SU-G30」と「ST-G30」、そしてPremiumシリーズのオールインワン型「SC-C500」は、価格帯で見るといずれも既存シリーズの隙間を埋める製品という位置付けだが、製品構成とコンセプトに工夫があり、新しい提案が盛りだくさんだ。特にGrandシリーズの2機種はリッピング機能付きサーバーとアンプ内蔵プレーヤーという異色の組み合わせで、2機種の信号伝送にあえてUSB接続を選んだ点も目を引く。外部入力にフォノ入力を用意している点にも注目したい。いずれ登場するターンテーブルシステムをSU-G30に接続することも当然想定しているはずで、そうなるとカートリッジの新規開発にも期待が募る。ちなみにSU-G30のフォノ入力はMM型のみに対応する予定だ。
音質や使い勝手にどんなメリットがあるのか、大いに気になったので、早速実機に触れてみた。
IFAのパナソニックブースは、昨年と同様にテクニクスに広いスペースを確保して特設リスニングルームを用意しており、S/Nの良い環境で全シリーズの試聴ができる。石井式リスニングルームのアプローチで作られた2つの試聴ルームは設営に1週間以上かけたそうで、優れたアコースティックと、高い天井が生む開放的な響きが心地よい。
■準フラグシップにふさわしい「SU-G30」のサウンド
「ST-G30」は現在鋭意開発中とのことだったので、今回はアンプ内蔵ネットワークプレーヤー「SU-G30」にQNAPのNASを組み合わせ。今後日本でも発売予定だというブラック仕様のスピーカーシステム「SB-C700」でノラ・ジョーンズのハイレゾ音源を聴いた。
まず感心したのは声と楽器のイメージのフォーカスが非常に鮮明で、にじみやぼやけ感のないクリアな音像を再現することだ。一音一音の粒立ちは鮮やかだが、それを強調する音調ではない点にも好感を持つ。ひとことで言えば、鮮明さは十分だが、鮮鋭な硬さやきつさとは無縁ということだ。ヴォーカルとギターの質感の高さやニュアンスの豊かさは、R1シリーズのプレーヤーとアンプの組み合わせに共通していて、準フラグシップというGrandシリーズにふさわしい。付帯音のない純度の高さは、やはりR1から受け継いだジッター低減技術の成果だろう。さらに、ST-G30がストレージにSSDを採用していることと、そこに保存した音源をルーターを介さずにUSB接続で直接DACに送り出すメリットも大きいと感じた。
DLNA再生ではルーターやスイッチングハブなど、コンピューター周辺機器で信号を中継するため、環境によっては外来ノイズが音質を左右する心配がある。USB接続はそれを回避できる良さがあるが、サーバーとプレーヤーを別の場所に置いたり、一台のサーバーを複数のプレーヤーで共有するといった使い方には向いていない。そこを割り切り、ペア使用を想定したコンセプトは、あくまで音質重視の基本思想が感じられる。R1とも共通するスパルタンなアプローチは、新生テクニクスの個性なのかもしれない。選曲操作などの使い勝手は、秋以降に予定される操作アプリのアップデートを待って、あらためて紹介する。
■音の広がりと定位を両立した「SC-C500」
スピーカーを含むオールインワン型のSC-C500は、1台で様々な音源をカバーする使い勝手の良さが最大のセールスポイントだが、配線や接点を最小に抑えるなど、音質上のメリットも少なくない。さらに今回はスピーカー設計に工夫があり、270度のワイドな指向性で音の広がりを引き出す点は特に注目に値する。設置スペースを最小に抑えながら、サービスエリアを広げて広い音場を獲得する発想は、日常的に音楽に浸るライフスタイルにマッチする手法といえるだろう。
豊富なメディアの選択肢のなかから、今回はUSBメモリーの音を聴いた。スピーカーに音が張り付かず、前後左右はもちろん、上下の広がりさえ感じさせる再生音は、既存のシステムとは一線を画す。広がりのある音と言うと茫洋としたイメージを持つかもしれないが、ヴォーカルやパーカッションは予想以上に実在感があり、正面以外のポジションで聴いても定位はほとんど揺るがない。共振を抑えたキャビネット構造やバイアンプ駆動が威力を発揮しているのだろう。音とは関係ないことだが、本体ベース部分にUSB端子を配置しているため、本体からメモリが飛び出さない点も気に入った。特に、最近増えてきたミニマムサイズのUSBメモリを使うと、どの音源が鳴っているのかわからないさり気なさがあり、非常にスマートだ。
■各帯域の絶妙なバランスが魅力のヘッドホン「EAH-T700」
Grandシリーズ、Premiumシリーズとほぼ同時期の発売が見込まれるヘッドホン「EAH-T700」についても簡単に触れておこう。テクニクスブランドとしては本当に久しぶりの新製品で、内容も大変に充実している。スーパートゥイーターを加えた2ウェイ構成を採用し、100Hzまで再生帯域を広げたハイレゾ対応モデルである。
SU-R1と組み合わせて聴いた本機の再生音は、適度に制動の効いた低音と誇張のない中高域のバランスが絶妙で、モニター的に集中して聴く用途だけでなく、リラックスしたリスニングスタイルとも相性が良さそうだ。ブース内での試聴なのでホームオーディオとは環境が異なるが、小音量でも実在感を失わないなど、リニアリティの高さを実感することができた。
新しい提案に富む2つの新シリーズ、日本ではCEATECとオーディオ・ホームシアター展で実機が公開されるはずだ。話題沸騰のターンテーブルシステムを含め、テクニクスの動向からしばらく目が離せない。
昨年ブランドを復活させたテクニクスが第二弾の製品群を発表した。R1シリーズとC700シリーズの日本市場導入から、まだ半年しか経っていない。かなり速いペースでの展開からは、同ブランドの「本気度」を読み取ることができる。
今秋以降に導入されるGrandシリーズの「SU-G30」と「ST-G30」、そしてPremiumシリーズのオールインワン型「SC-C500」は、価格帯で見るといずれも既存シリーズの隙間を埋める製品という位置付けだが、製品構成とコンセプトに工夫があり、新しい提案が盛りだくさんだ。特にGrandシリーズの2機種はリッピング機能付きサーバーとアンプ内蔵プレーヤーという異色の組み合わせで、2機種の信号伝送にあえてUSB接続を選んだ点も目を引く。外部入力にフォノ入力を用意している点にも注目したい。いずれ登場するターンテーブルシステムをSU-G30に接続することも当然想定しているはずで、そうなるとカートリッジの新規開発にも期待が募る。ちなみにSU-G30のフォノ入力はMM型のみに対応する予定だ。
音質や使い勝手にどんなメリットがあるのか、大いに気になったので、早速実機に触れてみた。
IFAのパナソニックブースは、昨年と同様にテクニクスに広いスペースを確保して特設リスニングルームを用意しており、S/Nの良い環境で全シリーズの試聴ができる。石井式リスニングルームのアプローチで作られた2つの試聴ルームは設営に1週間以上かけたそうで、優れたアコースティックと、高い天井が生む開放的な響きが心地よい。
■準フラグシップにふさわしい「SU-G30」のサウンド
「ST-G30」は現在鋭意開発中とのことだったので、今回はアンプ内蔵ネットワークプレーヤー「SU-G30」にQNAPのNASを組み合わせ。今後日本でも発売予定だというブラック仕様のスピーカーシステム「SB-C700」でノラ・ジョーンズのハイレゾ音源を聴いた。
まず感心したのは声と楽器のイメージのフォーカスが非常に鮮明で、にじみやぼやけ感のないクリアな音像を再現することだ。一音一音の粒立ちは鮮やかだが、それを強調する音調ではない点にも好感を持つ。ひとことで言えば、鮮明さは十分だが、鮮鋭な硬さやきつさとは無縁ということだ。ヴォーカルとギターの質感の高さやニュアンスの豊かさは、R1シリーズのプレーヤーとアンプの組み合わせに共通していて、準フラグシップというGrandシリーズにふさわしい。付帯音のない純度の高さは、やはりR1から受け継いだジッター低減技術の成果だろう。さらに、ST-G30がストレージにSSDを採用していることと、そこに保存した音源をルーターを介さずにUSB接続で直接DACに送り出すメリットも大きいと感じた。
DLNA再生ではルーターやスイッチングハブなど、コンピューター周辺機器で信号を中継するため、環境によっては外来ノイズが音質を左右する心配がある。USB接続はそれを回避できる良さがあるが、サーバーとプレーヤーを別の場所に置いたり、一台のサーバーを複数のプレーヤーで共有するといった使い方には向いていない。そこを割り切り、ペア使用を想定したコンセプトは、あくまで音質重視の基本思想が感じられる。R1とも共通するスパルタンなアプローチは、新生テクニクスの個性なのかもしれない。選曲操作などの使い勝手は、秋以降に予定される操作アプリのアップデートを待って、あらためて紹介する。
■音の広がりと定位を両立した「SC-C500」
スピーカーを含むオールインワン型のSC-C500は、1台で様々な音源をカバーする使い勝手の良さが最大のセールスポイントだが、配線や接点を最小に抑えるなど、音質上のメリットも少なくない。さらに今回はスピーカー設計に工夫があり、270度のワイドな指向性で音の広がりを引き出す点は特に注目に値する。設置スペースを最小に抑えながら、サービスエリアを広げて広い音場を獲得する発想は、日常的に音楽に浸るライフスタイルにマッチする手法といえるだろう。
豊富なメディアの選択肢のなかから、今回はUSBメモリーの音を聴いた。スピーカーに音が張り付かず、前後左右はもちろん、上下の広がりさえ感じさせる再生音は、既存のシステムとは一線を画す。広がりのある音と言うと茫洋としたイメージを持つかもしれないが、ヴォーカルやパーカッションは予想以上に実在感があり、正面以外のポジションで聴いても定位はほとんど揺るがない。共振を抑えたキャビネット構造やバイアンプ駆動が威力を発揮しているのだろう。音とは関係ないことだが、本体ベース部分にUSB端子を配置しているため、本体からメモリが飛び出さない点も気に入った。特に、最近増えてきたミニマムサイズのUSBメモリを使うと、どの音源が鳴っているのかわからないさり気なさがあり、非常にスマートだ。
■各帯域の絶妙なバランスが魅力のヘッドホン「EAH-T700」
Grandシリーズ、Premiumシリーズとほぼ同時期の発売が見込まれるヘッドホン「EAH-T700」についても簡単に触れておこう。テクニクスブランドとしては本当に久しぶりの新製品で、内容も大変に充実している。スーパートゥイーターを加えた2ウェイ構成を採用し、100Hzまで再生帯域を広げたハイレゾ対応モデルである。
SU-R1と組み合わせて聴いた本機の再生音は、適度に制動の効いた低音と誇張のない中高域のバランスが絶妙で、モニター的に集中して聴く用途だけでなく、リラックスしたリスニングスタイルとも相性が良さそうだ。ブース内での試聴なのでホームオーディオとは環境が異なるが、小音量でも実在感を失わないなど、リニアリティの高さを実感することができた。
新しい提案に富む2つの新シリーズ、日本ではCEATECとオーディオ・ホームシアター展で実機が公開されるはずだ。話題沸騰のターンテーブルシステムを含め、テクニクスの動向からしばらく目が離せない。