公開日 2017/04/26 10:00
ライフスタイルの中でスタイリッシュに音楽を楽しめる、B&O PLAYのBluetoothヘッドホン「H4」
アプリと使ってシーンに合わせた音質選びも可能
趣味が多様化する現代において、「音楽」をコテコテな趣味というよりはファッションと同じように、ライフスタイルの一部として楽しんでいるケースは多くなっている。そこを一脱して音質に邁進するのが僕みたいなマニアなのだが、いずれにせよ音楽と人をつなげるのはオーディオ。特にライフスタイルの中で音楽を楽しむ人たちにとって、外出時に身につけるヘッドホンにスタイリッシュさを求めるのは自然な流れだろう。
今回ご紹介する、B&O PLAYのBluetooth対応ヘッドホン「H4」は、まさに優れた音楽とスタイリッシュなライフスタイルを両立するオーディオ製品と言える。“B&O PLAY”は、2012年に北欧のハイエンドメーカーBang&Olufsen社が発表したカジュアルブランドだ。
本機はオーバータイプのヘッドホンで、B&Oのエンジニアがチューニングした独自設計のφ40mmダイナミックドライバーを搭載する。Bluetoothによるワイヤレス接続に対応し、本体着脱式のステレオミニケーブルによる有線接続も可能な1台である。
H4の実機を一目見て「なるほど」と感心した。デザインを担当したのは、世界を代表するデンマーク出身のプロダクトデザイナー、ヤコブ・ワグナー。ブロンズカラーのアルミハウジングと周囲を覆うチャコールグレーのカバーの質感は美しく、メカメカしさとは一切無縁のスタイリッシュな美しさがある。そしてラムスキン製イヤークッションは見るからに着け心地が良さそうだ。
開封した直後に部屋のデスクの上にポンと置いてみると、デスク周りがちょっとお洒落に見えて嬉しくなり、とあることを思い出した。僕はレコードプレーヤーの整備をするときに、ドライバーやスパナなどの工具を床に並べるのだが、そこらへんで売っている普通の工具を置くと、当然その周りのスペースが乱雑に見えてしまう。しかしデザインの良い海外製の工具だと、適当に置いてもなぜか部屋がカッコよく見えるのだ。決して大げさに書くつもりはないけど、H4からも同じように、置くだけでも成り立つかっこ良さを感じてしまった。
それでは実際の音質はどうだろうか?いくらデザインが優れていても、オーディオ機器として音が良くないのは絶対ダメだから、ここはきっちり評価したい。
まずは、iPhone 7 PlusとiPhone 5s(画面キャプチャー用)を用意して、Bluetooth再生から試してみた。タッチでペアリング可能なNFCに対応していないのは少々残念だが、コーデックがSBCのほかにAACにも対応しているのは嬉しいところ。
今回は『ハンス・ジマー 偉大なる映画メロディー~The Classics covered by 11artists』を聞く。パイレーツ・オブ・カリビアン、ライオン・キングなどの映画音楽をSONYクラシカルレーベルに属す有名アーティストが演奏する1枚。収録されているほとんどが聞き慣れた楽曲だから、クラシックが苦手な方々にもおすすめで、しかも音が良く一押しのアルバムだ。
H4の音質は、音楽を楽しむ大切な要素の1つである「グルーヴ感」に溢れている。オーディオ的な表現をするのであれば、ツヤがある気持ち良い高域をリッチな中低域が支えているイメージだ。決して耳ざわりな音は出さず密度感の高い音は、オーケストラを壮大なスケール感で聞かせてくれるし、ヴァイオリンやピアノの粒立ちが気持ち良い。20Hz〜22kHzとアナウンスされている再生周波数帯域の全域で躍動感を感じる。
グルーヴ感があって低域のノリが良いということで、定額ストリーミングサービスのSpotifyからEDMジャンルの楽曲を聞いてみたのが、思わず音量を上げたくなるほどビートの効いた曲調で楽しめた。このヘッドホンは気持ち良く音楽が聴けると感じた。
なお、本機は235gと重量が軽く、形状記憶フォームを用いたイヤーパッドクッションやワイヤレスの手軽さも相まって、とても着け心地が良い。また、ハウジングに設けられた3つのボタンで曲の停止や再生、ボリューム調整、電話の応答/終了も行えるので、スマホをカバンの中に入れっぱなしでも使いやすい。
続いてラインケーブルを接続して、いま話題のミュージカル映画のサウンドトラック『ラ・ラ・ランド[コンプリート・ミュージカル・エクスペリエンス]』を再生した。米Billboard 200で2位、全英アルバムチャートでも1位になるなど高い評価を受けている1枚だ。
トラック1の「アナザー・デイ・オブ・サン」を聞くと、こちらも自然と体でリズムをとりたくなるような楽しい音が聞けた。イントロのピアノからノリが良く、ドラムとベースにはスピード感がある。この楽曲はボーカル以外に95人構成のオーケストラと40人の合唱団の音が入り、意外とヘッドホンの再生能力が要求されるのだが、マニア目線で聞いてもかなり良好な再生音だ。
やはりBluetooth接続と比べて、有線接続のほうが絶対的なレンジの広さはあるが、本機ではBluetooth接続時の音作りがしっかりされているようで、ワイヤレス再生による音質的なネガティブさを感じにくかったことが印象に残った。最近ではBluetooth接続でも音質の高いヘッドホンが増えていて、本機もそのうちの1つであると言えるだろう。
また、iPhoneやAndroidスマホにインストール可能なアプリ「Beoplay」により、音色や音調を変えられるので試してみた。Warm、Excited、Ewlxed、Brightといった項目が用意されていて、何度も使いたくなる楽しい画面インターフェイスと併せ、スムーズに音色/音調を可変できる。もう高域や低域といった要素だけで、音を変える時代ではないのかもしれないと思った。プリセットされた4つのサウンドプロフィールも利用できる。例えば、「Commute (通勤・通学)を選択」すると音により躍動感が出て、「Clear (クリア)」では低域が抑えられて聴きやすくなる。
H4は、音楽と人の距離をギュッと短くするような臨場感の高い音がする。モニタリングヘッドホンのような鋭い音とは一味違う音楽性を備えているが、作品が意図する表現を的確に再現する、オーディオ的な能力も併せ持っている。そして何よりも、外出時に何回も持ち出してしまいたくなるほど、H4で聴く音楽は楽しいのである。
実は、文頭で書いた“街で見かけるカッコ良いヘッドホン”は、B&O PLAYブランドのものが多い。今年は間違いなくワイヤレスヘッドホンがブレイクするが、音質とデザイン、そして着け心地の良い本機は、中でも見逃せない1台になると思う。