公開日 2018/04/24 10:05
エソテリックのフォノイコライザー「E-02」。全段フルバランス設計による“アナログの頂点”を聴く
MCヘッドアンプから出力バッファアンプまで全段フルバランス
MCカートリッジの全段バランス伝送・増幅を実現した、ESOTERICのフルバランス回路設計のフォノアンプ「E-02」。国内外で高評価を得た「E-03」のフィロソフィを継承し、電源から増幅回路までデュアルモノ設計を徹底。MCヘッドアンプは新設計のフルバランスを搭載し、NF-CR型RIAAアンプもフルバランスで、±0.2dBという優れたRIAA特性とNF量の低減を両立させた本機をレビューする。
■理に適ったMCバランス増幅、徹底して凝った機能と構成
“高精度なドライブメカを搭載した12cmディスクプレーヤーに秀作が多いブランド”という印象が強いエソテリックだが、アンプ類の充実も近年目覚ましい。すでに何度か世代交代している機種もあるのだが、本機「E-02」も、8年のロングセラーモデル「E-03」の後継機種となるフォノイコライザーアンプだ。
先代機と最も大きく異なる点は、MCカートリッジに対する全段バランス伝送/増幅による回路構成となったことだ。元来MCカートリッジの発電構造は平衡伝送になっており、バランス増幅は理に適った手段といえる。そのメリットを享受するには、トーンアームの出力ケーブルからバランス伝送に換装しなければならないが、幸いなことに近年その長所を活かすべく、汎用性の高いバランス対応トーンアームケーブルが市販されているので、それらを活用すればいいだろう。
さて話をE-02に戻し、仕様を見ていこう。MCヘッドアンプからNF-CR型RIAAイコライザー、出力回路に至るまでフルバランス回路で構成した本機は、L/Rの回路を2階建てに配置したレイアウトのデュアルモノラル回路仕様となっている。同社最高峰のプリアンプ「Grandioso C1」と同じ、独自の電流伝送強化型出力バッファーアンプ「ESOTERIC-HCLD(ハイ・カレント・ライン・ドライバー)」を採用している点に着目したい。チャンネルあたり2回路を配備し、バランス出力ではディファレンシャル(差動)出力、アンバランス出力ではパラレル構成になるという凝り様である。
付帯機能としては、MMを含めた9系統の負荷インピーダンス・ポジションを装備し、サブソニックフィルターのオン/オフを含め、3つの入力系統ごとにメモリーしておくことが可能。また、モノラル盤再生用のモノポジションの他、簡易消磁機能を備えている点も嬉しい。
一連のエソテリック製アンプでお馴染み、曲面カッティングによる優美なフロントパネルを備えた高剛性の筐体を纏い、前面に備わった大型ノブもアルミニウム無垢材からの削り出しだ。電源部はRコアトランスから左右独立という十分な容量である。
■カートリッジの持ち味を発揮、バランスのメリットを実感
試聴にあたって、ラックスマンのアナログプレーヤー「PD-171A」からの出力ケーブルをバランス仕様に変更。MCカートリッジは2機種用意した。
ミューテック「LM-H」で聴くダイアナ・クラールは、グラマラスで骨格のしっかりとした音像フォルム。ハイゲインということもあって、闊達で躍動感のある演奏に感じられる。スウィング感も申し分ない。『マイルス・デイヴィス/デコイ』では、規則正しいリズムの上をギターが浮遊し、ミュートトランペットが突き抜けるという感じだ。S/Nが良く、周波数レンジも広く感じられるのは、バランス伝送/増幅のメリットだろう。
フェーズメーション「PP-2000」でのダイアナは、ヴォーカルと伴奏に立体的な距離感が醸し出され、空間再現力に長けたPP-2000の持ち味が如何なく発揮されている印象だ。声に嫌味のない色気と温度感が乗っている。ムーティの指揮、フィラデルフィア響による『ムソルグスキー/展覧会の絵』では、どっしり安定したファンダメンタルに、管楽器の分厚い広がりと弦楽部の華やかなハーモニーが積み重なり、重厚さが際立った。
(小原由夫)
■開発者より「内部構造を幾度となく検討し、磨き上げられた本機の音を体感してほしい」
新フォノイコライザー検討のため、初めてMCカートリッジのバランス接続の音を聴いてみました。いつも使っているカートリッジからは想像していなかったような空間表現力に、細かなニュアンスまで伝える豊かな情報量を持った音が出てきて、「こんなにも違うのか!」と強い衝撃を受けました。どうしたらバランス接続の感動的な音質を少しも漏らさずに、増幅・出力できるかを考えた結果、回路規模は大きくなりますが、MCヘッドアンプから出力バッファアンプまで全段フルバランス回路としました。そして回路レイアウトや内部構造の検討を幾度となく重ね、音質を磨き上げたのがE-02です。ぜひ、E-02のMCバランス入力を使って、お気に入りのレコードをもう一度聴いてみてください。きっと新たな発見や感動で、次から次とレコードを聴き続けてしまうはずです。
(エソテリック株式会社・開発部 仙土和弘氏)
本記事は季刊・analog vol.57号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。
■理に適ったMCバランス増幅、徹底して凝った機能と構成
“高精度なドライブメカを搭載した12cmディスクプレーヤーに秀作が多いブランド”という印象が強いエソテリックだが、アンプ類の充実も近年目覚ましい。すでに何度か世代交代している機種もあるのだが、本機「E-02」も、8年のロングセラーモデル「E-03」の後継機種となるフォノイコライザーアンプだ。
先代機と最も大きく異なる点は、MCカートリッジに対する全段バランス伝送/増幅による回路構成となったことだ。元来MCカートリッジの発電構造は平衡伝送になっており、バランス増幅は理に適った手段といえる。そのメリットを享受するには、トーンアームの出力ケーブルからバランス伝送に換装しなければならないが、幸いなことに近年その長所を活かすべく、汎用性の高いバランス対応トーンアームケーブルが市販されているので、それらを活用すればいいだろう。
さて話をE-02に戻し、仕様を見ていこう。MCヘッドアンプからNF-CR型RIAAイコライザー、出力回路に至るまでフルバランス回路で構成した本機は、L/Rの回路を2階建てに配置したレイアウトのデュアルモノラル回路仕様となっている。同社最高峰のプリアンプ「Grandioso C1」と同じ、独自の電流伝送強化型出力バッファーアンプ「ESOTERIC-HCLD(ハイ・カレント・ライン・ドライバー)」を採用している点に着目したい。チャンネルあたり2回路を配備し、バランス出力ではディファレンシャル(差動)出力、アンバランス出力ではパラレル構成になるという凝り様である。
付帯機能としては、MMを含めた9系統の負荷インピーダンス・ポジションを装備し、サブソニックフィルターのオン/オフを含め、3つの入力系統ごとにメモリーしておくことが可能。また、モノラル盤再生用のモノポジションの他、簡易消磁機能を備えている点も嬉しい。
一連のエソテリック製アンプでお馴染み、曲面カッティングによる優美なフロントパネルを備えた高剛性の筐体を纏い、前面に備わった大型ノブもアルミニウム無垢材からの削り出しだ。電源部はRコアトランスから左右独立という十分な容量である。
■カートリッジの持ち味を発揮、バランスのメリットを実感
試聴にあたって、ラックスマンのアナログプレーヤー「PD-171A」からの出力ケーブルをバランス仕様に変更。MCカートリッジは2機種用意した。
ミューテック「LM-H」で聴くダイアナ・クラールは、グラマラスで骨格のしっかりとした音像フォルム。ハイゲインということもあって、闊達で躍動感のある演奏に感じられる。スウィング感も申し分ない。『マイルス・デイヴィス/デコイ』では、規則正しいリズムの上をギターが浮遊し、ミュートトランペットが突き抜けるという感じだ。S/Nが良く、周波数レンジも広く感じられるのは、バランス伝送/増幅のメリットだろう。
フェーズメーション「PP-2000」でのダイアナは、ヴォーカルと伴奏に立体的な距離感が醸し出され、空間再現力に長けたPP-2000の持ち味が如何なく発揮されている印象だ。声に嫌味のない色気と温度感が乗っている。ムーティの指揮、フィラデルフィア響による『ムソルグスキー/展覧会の絵』では、どっしり安定したファンダメンタルに、管楽器の分厚い広がりと弦楽部の華やかなハーモニーが積み重なり、重厚さが際立った。
(小原由夫)
■開発者より「内部構造を幾度となく検討し、磨き上げられた本機の音を体感してほしい」
新フォノイコライザー検討のため、初めてMCカートリッジのバランス接続の音を聴いてみました。いつも使っているカートリッジからは想像していなかったような空間表現力に、細かなニュアンスまで伝える豊かな情報量を持った音が出てきて、「こんなにも違うのか!」と強い衝撃を受けました。どうしたらバランス接続の感動的な音質を少しも漏らさずに、増幅・出力できるかを考えた結果、回路規模は大きくなりますが、MCヘッドアンプから出力バッファアンプまで全段フルバランス回路としました。そして回路レイアウトや内部構造の検討を幾度となく重ね、音質を磨き上げたのがE-02です。ぜひ、E-02のMCバランス入力を使って、お気に入りのレコードをもう一度聴いてみてください。きっと新たな発見や感動で、次から次とレコードを聴き続けてしまうはずです。
(エソテリック株式会社・開発部 仙土和弘氏)
本記事は季刊・analog vol.57号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。