公開日 2018/09/28 06:00
安くて旨いアンプを選ぶ! 5万円で買えるプリメイン、注目9製品を一斉比較レビュー(前編)
ハイエンド機の試聴経験などを総動員
オーディオは、とにかくお金がかかる。オーディオ趣味が敬遠されるもっとも大きな理由のひとつだろう。筆者は音楽制作からスタートしただけに、こうやってオーディオ機器のレビューをさせていただいている現在も、お金がかかるので敬遠するというのはよく分かる。
だが、たとえ業務用のオーディオ機器であっても、精確かつ豊かな「音楽再生」をメディアから引き出そうとすれば、最低限それなりのコストを投資しなければならないことに変わりはない。そしてこれは、オーディオに限らず全ての分野に言えることだろう。
それでは、求める音とその適正な投資額はどの程度なのか。なるべく予算を圧迫せず、よりよいパフォーマンスを楽しむにはどの機器を選べばよいか。それを探るために実施するのがこの企画である。今回は「5万円」という価格で線を引き、注目製品を横並びで試聴した。一斉視聴したのは、以下の9モデルだ。
【試聴モデル】
<前編>
・FX-AUDIO-「D802J+」 11,850円(税抜)
・FOSTEX「AP20d」 14,800円(税抜)
・CAMBRIDGE AUDIO「AM5」 19,800円(税抜)
・SONY「STR-DH190」 ¥OPEN(予想実売価格22,500円前後)
<後編:記事はこちら>
・MARANTZ「PM5005」 32,500円(税抜)
・PIONEER「A-10AE」 38,800円(税抜)
・YAMAHA「A-S301」 40,000円(税抜)
・TEAC「AI-301DA-SP」 ¥OPEN(予想実売価格42,000円前後)
・DENON「PMA-30」 50,000円(税抜)
もちろんこの価格で、万能性や最高峰のクオリティが望めないのは当然だろう。
しかしながら、最近のエントリーモデルは実に侮れない音がするのも事実で、組み合わせる機器との相性や聴くソースによっては、「これで充分かも」とまで思わせるような、相当なパフォーマンスを楽しむこともできる。そんな「安くて旨い」モデルを、今回は探っていきたいと思う。日々、オーディオ製品のレビューをする中で、数千円から数百万円までの現行製品や、果ては数千万円以上の機器を揃えるマニア宅で試聴した経験などを総動員してお届けしたい。
テストは、今回試聴するアンプと同価格帯のスピーカーやプレーヤーを用いて実施した。試聴ソースは『ロック/ポップス』『ジャズ』『クラシック』という、異なる収録手法で制作された音源を用い、それらとの相性も踏まえてレビューしていく。
各製品のレポートには「音楽ジャンル別の相性評価」を加えている。これはあくまでコストパフォーマンスも加味した相対的な評価なので、その点をふまえて参考にしてほしい。
スピーカーは、音質はもちろん、仕上げが美しいという観点からソニー「SS-HW1」を選んだ。明瞭で解像度が高く、モニター調のサウンドで癖が少ないため、アンプのキャラクターを見極める基準機として最適だからだ。
低域は、量感たっぷり型のバスレフだが、ブーミーになり過ぎず、楽器間の見通しもいい。総じて、輝きと滑らかさが同居するバランスのよいサウンドが楽しめる。天板に設置されたトゥイーターが効いており、音の空間的な拡がりを心地よく展開。ゴールドのリングがあしらわれた天板トゥイーターや突板ピアノ塗装仕上げなど、この値段ではなかなか得がたい仕様となっている。
プレーヤーにはDACを用い、ラックスマン「DA-06」を規範としつつも、価格も近いiFI Audio「micro iDSD Black Label」をメインに用いて確認した。また、トランスポートにはアイ・オー・データ「Soundgenic」を用いた。
それでは、各モデルのレポートを価格の安い順に、前後編に分けて紹介していく。
<試聴モデル1>
・FX-AUDIO- 「D802J+」 11,850円(税抜、ACアダプター別売)
【主なスペック】出力:80W×2(4Ω)、入力端子:アナログRCA×1/USB×1/光デジタル×1/同軸デジタル×1、スピーカー端子:バナナプラグ対応、外形寸法:117W×35H×206Dmm、質量:685g
■奥行きのある音を展開。素直な音の広がりが心地よい
圧倒的なコストパフォーマンスで大注目の小型デジタルアンプ。この価格ながら、96kHz/24bit対応のUSB入力、192kHz/24bit対応の光/同軸デジタル入力を搭載することが特徴。文字は小さいながら視認性の良い小型ディスプレイまで搭載している。
その出音は、スピーカー後方まで奥行きのある音を展開することが印象的。楽器単体の音を詳細に描くというよりも、全体像として俯瞰した視点で描写していくタイプだ。音色は、潤い豊かな瑞々しさがある。素直に音が広がっていく様が心地よい。
USB入力の音は、基準機と比べると、さすがにS/N感や解像度は価格なりで、センターに音がまとまり、それぞれの音はやや団子状になる感は否めないものの、肌触りの良い素直な音色を楽しめる。価格を考えると十分な音質で、ファイル再生を始めてみるには持ってこいの機能だ。
ポップスやロックでは、オンマイクで録られたボーカルやギターが、逆にほど良い距離感と瑞々しい質感を持って再現される。低域の制動も良好で、ベースやバスドラムの余韻がタイトで心地よい。
ジャズでは、ピアノの打鍵やウッドベースの歯切れが良く、演奏が聴き取りやすい。シンバルもクリアに浮き立つ。デジタルアンプらしく、スッキリとした音切れで爽やかな質感を楽しめ、全般的にエモーショナルになり過ぎない、聴きやすい音だ。
クラシックは、楽器の陰影表現やダイナミクスの表現が穏やかで、一歩引いた視点から演奏全体を俯瞰して楽しめる。大人しく客観的な描写だ。
【音楽ジャンル相性】
ポップス/ロック:A
ジャズ:B
クラシック:B
だが、たとえ業務用のオーディオ機器であっても、精確かつ豊かな「音楽再生」をメディアから引き出そうとすれば、最低限それなりのコストを投資しなければならないことに変わりはない。そしてこれは、オーディオに限らず全ての分野に言えることだろう。
それでは、求める音とその適正な投資額はどの程度なのか。なるべく予算を圧迫せず、よりよいパフォーマンスを楽しむにはどの機器を選べばよいか。それを探るために実施するのがこの企画である。今回は「5万円」という価格で線を引き、注目製品を横並びで試聴した。一斉視聴したのは、以下の9モデルだ。
【試聴モデル】
<前編>
・FX-AUDIO-「D802J+」 11,850円(税抜)
・FOSTEX「AP20d」 14,800円(税抜)
・CAMBRIDGE AUDIO「AM5」 19,800円(税抜)
・SONY「STR-DH190」 ¥OPEN(予想実売価格22,500円前後)
<後編:記事はこちら>
・MARANTZ「PM5005」 32,500円(税抜)
・PIONEER「A-10AE」 38,800円(税抜)
・YAMAHA「A-S301」 40,000円(税抜)
・TEAC「AI-301DA-SP」 ¥OPEN(予想実売価格42,000円前後)
・DENON「PMA-30」 50,000円(税抜)
もちろんこの価格で、万能性や最高峰のクオリティが望めないのは当然だろう。
しかしながら、最近のエントリーモデルは実に侮れない音がするのも事実で、組み合わせる機器との相性や聴くソースによっては、「これで充分かも」とまで思わせるような、相当なパフォーマンスを楽しむこともできる。そんな「安くて旨い」モデルを、今回は探っていきたいと思う。日々、オーディオ製品のレビューをする中で、数千円から数百万円までの現行製品や、果ては数千万円以上の機器を揃えるマニア宅で試聴した経験などを総動員してお届けしたい。
テストは、今回試聴するアンプと同価格帯のスピーカーやプレーヤーを用いて実施した。試聴ソースは『ロック/ポップス』『ジャズ』『クラシック』という、異なる収録手法で制作された音源を用い、それらとの相性も踏まえてレビューしていく。
各製品のレポートには「音楽ジャンル別の相性評価」を加えている。これはあくまでコストパフォーマンスも加味した相対的な評価なので、その点をふまえて参考にしてほしい。
スピーカーは、音質はもちろん、仕上げが美しいという観点からソニー「SS-HW1」を選んだ。明瞭で解像度が高く、モニター調のサウンドで癖が少ないため、アンプのキャラクターを見極める基準機として最適だからだ。
低域は、量感たっぷり型のバスレフだが、ブーミーになり過ぎず、楽器間の見通しもいい。総じて、輝きと滑らかさが同居するバランスのよいサウンドが楽しめる。天板に設置されたトゥイーターが効いており、音の空間的な拡がりを心地よく展開。ゴールドのリングがあしらわれた天板トゥイーターや突板ピアノ塗装仕上げなど、この値段ではなかなか得がたい仕様となっている。
プレーヤーにはDACを用い、ラックスマン「DA-06」を規範としつつも、価格も近いiFI Audio「micro iDSD Black Label」をメインに用いて確認した。また、トランスポートにはアイ・オー・データ「Soundgenic」を用いた。
それでは、各モデルのレポートを価格の安い順に、前後編に分けて紹介していく。
<試聴モデル1>
・FX-AUDIO- 「D802J+」 11,850円(税抜、ACアダプター別売)
【主なスペック】出力:80W×2(4Ω)、入力端子:アナログRCA×1/USB×1/光デジタル×1/同軸デジタル×1、スピーカー端子:バナナプラグ対応、外形寸法:117W×35H×206Dmm、質量:685g
■奥行きのある音を展開。素直な音の広がりが心地よい
圧倒的なコストパフォーマンスで大注目の小型デジタルアンプ。この価格ながら、96kHz/24bit対応のUSB入力、192kHz/24bit対応の光/同軸デジタル入力を搭載することが特徴。文字は小さいながら視認性の良い小型ディスプレイまで搭載している。
その出音は、スピーカー後方まで奥行きのある音を展開することが印象的。楽器単体の音を詳細に描くというよりも、全体像として俯瞰した視点で描写していくタイプだ。音色は、潤い豊かな瑞々しさがある。素直に音が広がっていく様が心地よい。
USB入力の音は、基準機と比べると、さすがにS/N感や解像度は価格なりで、センターに音がまとまり、それぞれの音はやや団子状になる感は否めないものの、肌触りの良い素直な音色を楽しめる。価格を考えると十分な音質で、ファイル再生を始めてみるには持ってこいの機能だ。
ポップスやロックでは、オンマイクで録られたボーカルやギターが、逆にほど良い距離感と瑞々しい質感を持って再現される。低域の制動も良好で、ベースやバスドラムの余韻がタイトで心地よい。
ジャズでは、ピアノの打鍵やウッドベースの歯切れが良く、演奏が聴き取りやすい。シンバルもクリアに浮き立つ。デジタルアンプらしく、スッキリとした音切れで爽やかな質感を楽しめ、全般的にエモーショナルになり過ぎない、聴きやすい音だ。
クラシックは、楽器の陰影表現やダイナミクスの表現が穏やかで、一歩引いた視点から演奏全体を俯瞰して楽しめる。大人しく客観的な描写だ。
【音楽ジャンル相性】
ポップス/ロック:A
ジャズ:B
クラシック:B
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