公開日 2019/11/18 19:24
ELO作品のなかでも出色の完成度!―ジェフ・リンズ・ELO最新作アナログ盤『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』
特別使用ジャケットも注目!
ジェフ・リンズ・ELOが、前作『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』以来4年ぶりとなるスタジオ録音の新作『フロム・アウト・オブ・ダークネス』を11月1日に世界同時発売という形でリリースした。
ロンドンのウェンブリー・アリーナで収録されたライヴ盤『ウェンブリー・オア・バスト』と、そのDVD版が17年に出ているから久しぶりという感じはしないが、開き直ったかのように、たったひとりで全盛期のELOを再生させているような “ジェフ・リンズ・ELO” は、この人の甘さがあまり得意ではない私をも納得させる素晴らしいプロジェクトになってきている。
そう。ジェフ・リンは2001年にリリースされた、ELO名義では15年ぶりだったアルバム『ズーム』からは、ひとりでELOを背負っているのだ。いわゆるワンマン・バンドである。そこにはジョージ・ハリスンやリンゴ・スターの参加もあったが、14年ぶりのアルバムとして15年に発表された『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』からは、名義も“ジェフ・リンズ・ELO”と改められ、ファンが望むELOが再現されるようになった。
それは12年に出た22年ぶりのソロ・アルバム『ロング・ウェイヴ』が、「ELOとどこが違うの?」と評されたこともあったからだろうが、87年にジョージ・ハリスンの復活作『クラウド・ナイン』を成功に導いて以来、プロデューサーとしての仕事がメインになったことに由来する英断だったのかもしれない。つまりプロデューサー目線でELOを客観視し、世界的ヒットを連発した名バンドの復活を手がけたわけである。
■ELOからプロデューサーとしての不動の地位、そしてELOの復活
1947年12月30日にバーミンガムのシャート・エンドで生まれたジェフ・リンは、アイドル・レースのフロントマンとして1968年にデビュー。2枚のアルバムを残したあと、同郷の先輩バンドであるムーヴに加わり、そのリーダー、ロイ・ウッドが考えたロック・オーケストラを具現化するために、ムーヴの残党とエレクトリック・ライト・オーケストラを結成した。ところがロイ・ウッドがアルバム一枚で脱退してしまったため、ジェフがELOを引き継ぐことになった。
73年の『ELO2』と『オン・ザ・サード・デイ』には試行錯誤も見えたが、『エルドラド』(74年)、『フェイス・ミュージック』(75年)、『ア・ニュー・ワールド・レコード』(76年)と一作ごとに評判を高めていったELOは、77年の『アウト・オブ・ブルー』を全英、全米とも4位という大ヒット作にして不動の人気を得たのだ。
パンク/ニュー・ウェイヴ勢がロックに原点回帰を迫り、音楽界を揺さぶり始めた時期だったが、ビートルズ直系の曲をシングル・ヒットさせ、その勢いでアルバムを売るELOの“オールド・スタイル”は、単純にいい音楽を求めるポップス・ファンを安心させるものだった。
当時私はパティ・スミスやラモーンズを聴き、セックス・ピストルズやクラッシュがどうなっていくかに注目していたが、「テレフォン・ライン」が英米でトップ・テン・ヒットになっている最中にリリースされた『アウト・オブ・ブルー』は買ったし、こういうバンドにはずっと存在していてほしい、と思っていた。
79年の『ディスカヴァリー』は英1位/米5位、81年の『タイム』は英1位/米16位と成功したが、軽妙なエイティーズ・サウンドが大衆に好まれ始めると人気は下降し、83年の『シークレット・メッセージ』は英4位/米36位、86年の『バランス・オブ・パワー』は英9位/米49位に終わり、ジェフ・リンはELOに終止符を打ったのだ。
しかし翌年、ジョージ・ハリスンを復活させたジェフは、ジョージ、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソンが顔を揃えた覆面バンド、トラヴェリング・ウィルベリーズを成功させてプロデューサーとしての地位を不動にする。
リンゴ・スターやトム・ペティのアルバムで、彼が引っぱり出した“ビートルズ・テイスト”は注目され、90年代にはビートルズのアンソロジー・プロジェクトにも関わったのだから言うことはなかったはずだが、2001年11月29日にジョージが亡くなったあとは、プロデューサーとしても精彩を欠くようになってしまった。
■ “ポップスのエンタテインメント性” にこだわってきた人らしい到達点
私はジェフ・リンが書く曲は嫌いではないが、何でもかんでも大仰なサウンドにしてしまうELOには早々に飽きてしまったし、プロデューサーとしての音づくりも好みではなかった。とくにリズムに関しては、グルーヴの追求がないところが納得できなかったから、リンゴのドラムの音色に感心しつつもそんなに評価していなかったのだが、“ジェフ・リンズ・ELO”の曲と、全盛期を再現しながら現代的なテイストを加えているサウンドには脱帽だった。
『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』も悪くなかったが、今度の『フロム・アウト・オブ・ダークネス』はELOの全作の中でも出色と言える完成度だ。70歳を超えてこの音というのは尋常ではないし、 “ロックの精神性” よりも “ポップスのエンタテインメント性” にこだわってきた人らしい到達点は有無を言わせぬものだと思う。
今回、限定版としてリリースされたLPは、3Dジャケット史上でもトップ・クラスと言える立体感が凄いし、通常ジャケのブラック・ヴァイナル版も、レギュラーCDもリリースとなった。
「いまさらELOって」と言う人も少なくないだろうが、アナログ映えする限定版を投資のつもり(値上がり必至!)で入手するのでもいいから、“ジェフ・リンズ・ELO”を聴いてみてください。きっとあなたのところにも夢のような宇宙船が降りてきます。
ロンドンのウェンブリー・アリーナで収録されたライヴ盤『ウェンブリー・オア・バスト』と、そのDVD版が17年に出ているから久しぶりという感じはしないが、開き直ったかのように、たったひとりで全盛期のELOを再生させているような “ジェフ・リンズ・ELO” は、この人の甘さがあまり得意ではない私をも納得させる素晴らしいプロジェクトになってきている。
そう。ジェフ・リンは2001年にリリースされた、ELO名義では15年ぶりだったアルバム『ズーム』からは、ひとりでELOを背負っているのだ。いわゆるワンマン・バンドである。そこにはジョージ・ハリスンやリンゴ・スターの参加もあったが、14年ぶりのアルバムとして15年に発表された『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』からは、名義も“ジェフ・リンズ・ELO”と改められ、ファンが望むELOが再現されるようになった。
それは12年に出た22年ぶりのソロ・アルバム『ロング・ウェイヴ』が、「ELOとどこが違うの?」と評されたこともあったからだろうが、87年にジョージ・ハリスンの復活作『クラウド・ナイン』を成功に導いて以来、プロデューサーとしての仕事がメインになったことに由来する英断だったのかもしれない。つまりプロデューサー目線でELOを客観視し、世界的ヒットを連発した名バンドの復活を手がけたわけである。
■ELOからプロデューサーとしての不動の地位、そしてELOの復活
1947年12月30日にバーミンガムのシャート・エンドで生まれたジェフ・リンは、アイドル・レースのフロントマンとして1968年にデビュー。2枚のアルバムを残したあと、同郷の先輩バンドであるムーヴに加わり、そのリーダー、ロイ・ウッドが考えたロック・オーケストラを具現化するために、ムーヴの残党とエレクトリック・ライト・オーケストラを結成した。ところがロイ・ウッドがアルバム一枚で脱退してしまったため、ジェフがELOを引き継ぐことになった。
73年の『ELO2』と『オン・ザ・サード・デイ』には試行錯誤も見えたが、『エルドラド』(74年)、『フェイス・ミュージック』(75年)、『ア・ニュー・ワールド・レコード』(76年)と一作ごとに評判を高めていったELOは、77年の『アウト・オブ・ブルー』を全英、全米とも4位という大ヒット作にして不動の人気を得たのだ。
パンク/ニュー・ウェイヴ勢がロックに原点回帰を迫り、音楽界を揺さぶり始めた時期だったが、ビートルズ直系の曲をシングル・ヒットさせ、その勢いでアルバムを売るELOの“オールド・スタイル”は、単純にいい音楽を求めるポップス・ファンを安心させるものだった。
当時私はパティ・スミスやラモーンズを聴き、セックス・ピストルズやクラッシュがどうなっていくかに注目していたが、「テレフォン・ライン」が英米でトップ・テン・ヒットになっている最中にリリースされた『アウト・オブ・ブルー』は買ったし、こういうバンドにはずっと存在していてほしい、と思っていた。
79年の『ディスカヴァリー』は英1位/米5位、81年の『タイム』は英1位/米16位と成功したが、軽妙なエイティーズ・サウンドが大衆に好まれ始めると人気は下降し、83年の『シークレット・メッセージ』は英4位/米36位、86年の『バランス・オブ・パワー』は英9位/米49位に終わり、ジェフ・リンはELOに終止符を打ったのだ。
しかし翌年、ジョージ・ハリスンを復活させたジェフは、ジョージ、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソンが顔を揃えた覆面バンド、トラヴェリング・ウィルベリーズを成功させてプロデューサーとしての地位を不動にする。
リンゴ・スターやトム・ペティのアルバムで、彼が引っぱり出した“ビートルズ・テイスト”は注目され、90年代にはビートルズのアンソロジー・プロジェクトにも関わったのだから言うことはなかったはずだが、2001年11月29日にジョージが亡くなったあとは、プロデューサーとしても精彩を欠くようになってしまった。
■ “ポップスのエンタテインメント性” にこだわってきた人らしい到達点
私はジェフ・リンが書く曲は嫌いではないが、何でもかんでも大仰なサウンドにしてしまうELOには早々に飽きてしまったし、プロデューサーとしての音づくりも好みではなかった。とくにリズムに関しては、グルーヴの追求がないところが納得できなかったから、リンゴのドラムの音色に感心しつつもそんなに評価していなかったのだが、“ジェフ・リンズ・ELO”の曲と、全盛期を再現しながら現代的なテイストを加えているサウンドには脱帽だった。
『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』も悪くなかったが、今度の『フロム・アウト・オブ・ダークネス』はELOの全作の中でも出色と言える完成度だ。70歳を超えてこの音というのは尋常ではないし、 “ロックの精神性” よりも “ポップスのエンタテインメント性” にこだわってきた人らしい到達点は有無を言わせぬものだと思う。
今回、限定版としてリリースされたLPは、3Dジャケット史上でもトップ・クラスと言える立体感が凄いし、通常ジャケのブラック・ヴァイナル版も、レギュラーCDもリリースとなった。
「いまさらELOって」と言う人も少なくないだろうが、アナログ映えする限定版を投資のつもり(値上がり必至!)で入手するのでもいいから、“ジェフ・リンズ・ELO”を聴いてみてください。きっとあなたのところにも夢のような宇宙船が降りてきます。