公開日 2022/06/02 06:35
EMTのフォノイコライザー「EMT128」を聴く。独創的な回路デザインと真空管ならではの豊潤な倍音が魅力
<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
今年も数々のモデルが「アナロググランプリ2022」を受賞しました。いずれのモデルにもブランドの最新技術が投入され、その音質も実に魅力的ですし、この数年間の受賞モデルも振り返ってみても、いかにアナログ人気が上昇気流に乗っているかが理解できます。
■往年のEMTデザインを意識した最新フォノEQ
こうした数々の受賞モデルのうち、私が特に興味をもった製品は、昨年の秋に登場したEMTの管球式MC専用フォノイコライザー「EMT128」です。EMTは2020年に創業80周年を迎えましたが、その数年前からMCカートリッジの生産拠点をターレスのトーンアームなどを開発したミッハ・フーバーが率いるハイフィクション内のEMT専用工場に移転しました。今回のEMT128は、その工場で新開発されたものです。
スリムなデザインには、どことなくハイエンドなフレーバーを漂わせていて、実に魅力的です。筐体は、高品位アルミ・ブロックを高精度切削されています。フロント右側は尖っていますが、これはEMTの伝統的な針先、SFL(スーパー・ファイン・ライン)をイメージしてデザインされています。往年のEMTファンなら、欲しくなるかもしれませんね。
その特徴は、現代主流となる内部コイル・インピーダンス10Ω以下のMCカートリッジにも対応していますが、特筆すべきことは、EMT伝統の内部インピーダンス24Ω、1mV出力にもベスト・マッチするように開発されていることです。回路面の特徴は、伝送距離をできる限り最短にし、余分な接点などもできる限り減らし、S/Nなどの諸特性を向上させていることです。ですから入出力は実にシンプルで、RCA入力とXLRバランス出力が各1系統です。
機能も、ステレオ/モノラル・セレクター、DIN78/RIAAセレクター、MUTEスイッチというシンプルな構成です。標準ゲインは64dBですが、内部ジャンパーを付け替えることで70dBに変更できます。内部インピーダンス10Ω以下で出力電圧の低いMCカートリッジの場合は、70dBにした方が良い場合があると思います。
■精緻な内部技術に感激! フォノEQ部にはサブミニチュア真空管を採用
私が感激したのはその内部技術です。トップパネルを開けると、AC電源入力部、トランス、電源部、フォノイコライザー回路が干渉を避けるために完璧に分離されていることがわかります。中央の電源部では、スイッチ/リレー制御用電源が独立配置され、微弱信号を扱うフォノイコライザー回路との電源干渉までも避けていることが理解できます。
フォノイコライザー部で特筆すべきは、真空管に全段サブミニチュア真空管(米国ミサイル技術用に開発された「RAYTHEON」レイセオン製SMT管)を6本使用したことと、ルンダールの高精度、高音質カスタムメイド・トランス(MC昇圧と出力トランス)を搭載したことです。基板の回路構成としては、左右シンメトリーで、真空管は1chあたり3本使用します。アナログ出力のカップリングコンデンサーとしてムンドルフの大型高音質コンデンサーも使用しています。
信号の流れとしては、まずMCからの信号は、昇圧トランスと1本の真空管で増幅され(64/70dBゲイン切り替えジャンパー付き)、1本の真空管を使用したCR型イコライザー回路を経て、1本の真空管と大型コアを使用する出力トランスを組み合わせた出力段で、アナログ出力される方式のようです。
さらに注目したことは、6本真空管の先端が金属製中空棒を樹脂でカバーしたポールで支持され、両側の専用アルミブロックで固定されていることです。これは、真空管の振動を低減するためと、放熱効果も高めるためと考えられます。トップパネルと筐体下部にも細かな多数の開口を設け、内部放熱効果を高め、真空管回路に対しての振動を低減する樹脂製インシュレーター・フットも採用しています。
こうして回路全体を見渡すと、あえてSMT管を採用した理由の一つとして、ハンダ付けにより、接点不良のないピュアで最短の信号伝送が可能になることが理解できます。随所に高音質パーツを投入していることも分りました。その結果として、真空管方式としては、S/N80dB以上、歪み率0.05%という良好な性能値を実現しています。
■往年のEMTデザインを意識した最新フォノEQ
こうした数々の受賞モデルのうち、私が特に興味をもった製品は、昨年の秋に登場したEMTの管球式MC専用フォノイコライザー「EMT128」です。EMTは2020年に創業80周年を迎えましたが、その数年前からMCカートリッジの生産拠点をターレスのトーンアームなどを開発したミッハ・フーバーが率いるハイフィクション内のEMT専用工場に移転しました。今回のEMT128は、その工場で新開発されたものです。
スリムなデザインには、どことなくハイエンドなフレーバーを漂わせていて、実に魅力的です。筐体は、高品位アルミ・ブロックを高精度切削されています。フロント右側は尖っていますが、これはEMTの伝統的な針先、SFL(スーパー・ファイン・ライン)をイメージしてデザインされています。往年のEMTファンなら、欲しくなるかもしれませんね。
その特徴は、現代主流となる内部コイル・インピーダンス10Ω以下のMCカートリッジにも対応していますが、特筆すべきことは、EMT伝統の内部インピーダンス24Ω、1mV出力にもベスト・マッチするように開発されていることです。回路面の特徴は、伝送距離をできる限り最短にし、余分な接点などもできる限り減らし、S/Nなどの諸特性を向上させていることです。ですから入出力は実にシンプルで、RCA入力とXLRバランス出力が各1系統です。
機能も、ステレオ/モノラル・セレクター、DIN78/RIAAセレクター、MUTEスイッチというシンプルな構成です。標準ゲインは64dBですが、内部ジャンパーを付け替えることで70dBに変更できます。内部インピーダンス10Ω以下で出力電圧の低いMCカートリッジの場合は、70dBにした方が良い場合があると思います。
■精緻な内部技術に感激! フォノEQ部にはサブミニチュア真空管を採用
私が感激したのはその内部技術です。トップパネルを開けると、AC電源入力部、トランス、電源部、フォノイコライザー回路が干渉を避けるために完璧に分離されていることがわかります。中央の電源部では、スイッチ/リレー制御用電源が独立配置され、微弱信号を扱うフォノイコライザー回路との電源干渉までも避けていることが理解できます。
フォノイコライザー部で特筆すべきは、真空管に全段サブミニチュア真空管(米国ミサイル技術用に開発された「RAYTHEON」レイセオン製SMT管)を6本使用したことと、ルンダールの高精度、高音質カスタムメイド・トランス(MC昇圧と出力トランス)を搭載したことです。基板の回路構成としては、左右シンメトリーで、真空管は1chあたり3本使用します。アナログ出力のカップリングコンデンサーとしてムンドルフの大型高音質コンデンサーも使用しています。
信号の流れとしては、まずMCからの信号は、昇圧トランスと1本の真空管で増幅され(64/70dBゲイン切り替えジャンパー付き)、1本の真空管を使用したCR型イコライザー回路を経て、1本の真空管と大型コアを使用する出力トランスを組み合わせた出力段で、アナログ出力される方式のようです。
さらに注目したことは、6本真空管の先端が金属製中空棒を樹脂でカバーしたポールで支持され、両側の専用アルミブロックで固定されていることです。これは、真空管の振動を低減するためと、放熱効果も高めるためと考えられます。トップパネルと筐体下部にも細かな多数の開口を設け、内部放熱効果を高め、真空管回路に対しての振動を低減する樹脂製インシュレーター・フットも採用しています。
こうして回路全体を見渡すと、あえてSMT管を採用した理由の一つとして、ハンダ付けにより、接点不良のないピュアで最短の信号伝送が可能になることが理解できます。随所に高音質パーツを投入していることも分りました。その結果として、真空管方式としては、S/N80dB以上、歪み率0.05%という良好な性能値を実現しています。
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