公開日 2022/12/12 06:30
テレビにつなげるプリメインvs高級サウンドバー。マランツ「NR1200」とB&W「Panorama 3」を比較視聴!
「テレビシアター」の切り口から魅力を探る
今回の視聴システムで使っているテレビは43インチで、今となっては大型テレビとも言えないサイズだが、たとえ組み合わせるテレビが55インチや65インチ、それ以上に大きくなっても、画面のサイズに対して音の広がりが不足するなんて事態はまず起こらないだろう。
しかも、このレベルの音がHDMIケーブル一本でテレビと繋ぐだけで得られる。サウンドバーならではのセットアップの手軽さも含めて、普段は6.1.4chのシステムで映像鑑賞をしている筆者から見ても、Panorama 3がもたらす体験は実に魅力的だ。
ただ、Panorama 3は優れたサウンドバーである一方、それ以上の発展性を求めるのは厳しい。スマートフォンやタブレット経由で音楽を鳴らすことは可能で、その際の音質も決して悪いものではない。それどころか、むしろサウンドバーでよくぞここまで、とも思う。しかし、接続性の乏しさを考えると、Panorama 3をHi-Fiシステムの中心として捉えることは難しく、本機における音楽再生はあくまでも魅力的な付加価値として捉えるべきだろう。使用用途として音楽再生に重きを置いているとすれば、この点は注意が必要だ。
映像だけでなく「音楽もいい音で楽しみたい」ならNR1200
続いて、NR1200を試す。組み合わせるスピーカーは、システムトータルでPanorama 3と定価ベースで同等の金額になることを念頭に、ParadigmのMonitor SE Atomを用いた。なお、同様の観点からスピーカースタンドもごくベーシックなものを使用している。
NR1200とMonitor SE Atomの組み合わせは、さすがはHi-Fiオーディオアンプを核とするシステムといったところであり、上下方向へのレンジの伸び、ディテールの描写力、立体的な空間表現など、オーディオ的な能力全般において優位を示す。低域の充実度でもサブウーファー内蔵のPanorama 3を上回ったのは少々意外だった。
ネットワーク経由でのハイレゾ音源の再生をはじめ、音質的により高品位なソースを受けられることも含めて、音楽を聴いた際の満足度はPanorama 3を明らかに凌駕する。「テレビシアター」とはいえ四六時中映像コンテンツを見ているわけではないので、「音楽もいい音で楽しみたい」と思った時、NR1200の純粋な音質と、それに伴う音楽再生能力の高さは大きな魅力となる。
ただしソースがHDMI経由の映像コンテンツになると、個々の音の描写では上回るも、上下左右前後の音の広がりや豊かな包囲感でPanorama 3に軍配が上がる。一例として、Netflixで配信されているアニメ映画「BLAME!」の序盤で放たれる重力子放射線射出装置の激烈な威力は、サラウンド感を含めてPanorama 3の方が真に迫る。筆者が今までに聴いたエントリークラスのブックシェルフスピーカーで傑出した完成度を持ち、特にストレスのない音の広がりが美点のMonitor SE Atomを使ってなおこの印象なのだから、ここは素直にPanorama 3を褒めるべきだろう。
ちなみに、複数の入力端子を搭載して接続性に優れると言っても、「テレビの音を出す」という点ではHDMI ARCのおかげでPanorama 3をはじめとするサウンドバーと同様の手軽さも備えており、使い方が複雑になることはない。
スピーカーを変えてグレードアップできるのもNR1200の魅力
せっかくなので、「投資金額を同等にする」という縛りを外して、NR1200により上位クラスの、筆者の手持ちのブックシェルフを組み合わせてみた。